リーンマネジメント:8つの無駄とプロジェクト管理プロセスの最適化

The 8 wastes of Lean

リーンプロジェクト管理における「無駄」という考え方は、生産性や成果の低下とコストの増加につながる、非効率的なワークフロープロセスを指します。トヨタ生産方式から生まれたリーンマネジメントという概念は、生産性、収益性、効率性を向上させるために、作業工程において、生産性に悪影響をもたらす要素を排除する生産性モデルです。

リーンマネジメントで最初に定義された7つの無駄、つまり「運搬の無駄(transport)」、「在庫の無駄(inventory)」、「動作の無駄(motion)」、「手待ちの無駄(waiting)」、「造りすぎの無駄(overproduction)」、「加工の無駄(over-processing)」、「不良/手直しの無駄(defects)」は、それらの頭文字をとった「TIM WOOD」という略称で知られていました。その後、8つ目の無駄である「スキルの無駄(skills)」が追加されたことで、「TIM WOODS」に改称されました。

本記事では、リーンマネジメントにおける8つの無駄とは何か、それらを排除することの利点、導入方法について解説します。

Lean waste #1: Transportation

1.運搬の無駄

運搬の無駄とは、ツール、人、設備、製品を移動する際に失われるリソースを指します。当初の定義では、過剰な在庫を倉庫に返送したり、ある場所から別の場所に設備を移動させたりすることによる、リソースの浪費を意味していました。

プロジェクト管理における運搬の無駄

オフィス環境における運搬の無駄は、在宅勤務が可能であるにもかかわらず、従業員がオフィスに出社することを意味する場合があります。オフィスへの出社が、ワークフローの効率性、職場の士気、従業員のモチベーションの低下につながる場合、それはムダであると見なされます。

ビジネスにおける運搬の無駄には、作業内容の頻繁な変更や中断も含まれます。作業が中断するたびに、従業員はゼロからやり直す必要があるため、集中力の低下につながります。つまり、オフィスにおける運搬の無駄は、多くの場合、時間を浪費したり、プロジェクトを完了できないことを意味します。

運搬の無駄の特定と排除

運搬の無駄を特定するには、作業の各工程と望ましい成果を検証します。どこから始めればよいかわからない場合は、従業員の調査を実施し、見落としている運搬の無駄を見つけ出しましょう。従業員は、日々の作業工程を熟知しているため、運搬の無駄の特定に貢献できます。

例えば、在宅勤務やハイブリッド型の働き方に関するポリシーを見直すことで、運搬の無駄を削減できます。勤務時間の一部を在宅勤務に移行しても、オフィスでの勤務と同等以上のパフォーマンスを発揮できる役割があるかもしれません。また、作業をスムーズに進めるために、従業員に対して、週ごとに作業時間を区切るよう促しましょう。

Lean waste #2: Inventory

2.在庫の無駄

在庫の無駄とは、販売されずに保管されたままとなっている過剰な在庫を指します。これは、予算、保管スペース、時間の浪費につながります。その主な原因には、非効率な追跡と管理、信頼性の低いサプライチェーン、過剰生産などがあります。プロジェクトを遂行するために、必要以上の在庫やリソースを確保すると、生産のリードタイムが長期化する可能性があります。

プロジェクト管理における在庫の無駄

事業部門における在庫の無駄には、未納品の製品、未使用のソフトウェア、準備が完了したものの開始されていないプロジェクト、未使用の家具、過剰な事務用品などが含まれます。

オフィスでは、在庫の無駄とは、チームが対応しきれないほど多くのプロジェクトや顧客の要求を引き受けることを意味します。同様に、従業員のニーズを上回る、さまざまな種類のソフトウェアを導入すると、一部のソフトウェアが十分に活用されないため、在庫の無駄につながります。

在庫の無駄の特定と排除

在庫の無駄を排除するためには、顧客の獲得や企業の買収に関する戦略の再検討、プロジェクトの提案の見直し、パフォーマンスの検証を実施する必要があります。また、四半期ごとの予算を見直し、未処理の作業を支援するために、人員を補充できるかどうかを検討しましょう。

Lean waste #3: motion

3.動作の無駄

動作の無駄は、最終的な生産に価値をもたらさない、不必要な動作によって引き起こされます。つまり、タスクを遂行するために、必要以上の工数を費やすことを意味します。動作の無駄は運搬の無駄と類似していますが、両者には違いがあります。運搬の無駄では、運搬プロセスによって失われたリソースに焦点を当てます。一方動作の無駄は、生産および運搬における過剰な工数を指します。

プロジェクト管理における動作の無駄

プロジェクト管理では、パソコンのファイルや社内データベースが整理されていない、作業内容の変更が頻繁にあるなど、デジタルと物理的な作業環境が緊密に連携していないことで、動作の無駄を生みます。動作の無駄は不要な工数を指すため、冗長で不要なミーティングも含まれます。動作の無駄は、社内における分断や矛盾を反映しており、多くの場合、従業員の士気の低下につながります。

動作の無駄の特定と排除

動作の無駄を特定するのは、容易なことではありません。チーム内の統制が取れておらず、従業員が不満を抱いている場合は、動作の無駄が生じていることを示唆している可能性があります。共通のプロセスを検証し、動作の無駄を排除しましょう。具体的には、不要なミーティングをキャンセルする、アセット管理システムを強化してファイルを整理する、プロジェクト計画により多くの時間を費やし、作業開始後の変更を低減する、といった措置を講じることができます。

Lean waste #4: Waiting

4.手待ちの無駄

手待ちの無駄とは、従業員の手が空いてしまうことで失われるリソースを指し、非効率なワークフローやプロセスの原因となります。従来の定義では、生産を完了するための部品や設備が不足している場合に、工場や倉庫で手待ちの無駄が発生します。

プロジェクト管理における手待ちの無駄

オフィスでは、従業員に指示や情報を提供していない場合に手待ちの無駄が発生します。従業員が特定の作業を進めるために、管理職からの承認を待たなければならない場合、ダウンタイムが発生する可能性があります。つまり、非効率なプロセス、不十分なコミュニケーション、不適切なスケジュール管理によって、手待ちの無駄が引き起こされます。

手待ちの無駄の特定と排除

手待ちの無駄を特定するには、ワークフローにおける課題を明らかにします。従業員に聞き取りをおこない、作業が滞っている部分を見つけ出します。

続いて、作業を割り当て直し、プロセスを刷新することで、手待ちの無駄を排除します。ワークフローの各プロセスを定期的に見直し、新たな組織構造、成果物の変更、部門編成、事業変革などの変化に適応して、効率的に作業を進めることができるようにします。各工程が価値をもたらしているかどうかを確認しましょう。価値がない場合は、ワークフローから除外します。

Lean waste #5: Overproduction

5.造りすぎの無駄

造りすぎの無駄は、必要以上に生産することを指します。従来のリーンマネジメントでは、企業が保管、販売、利用できる範囲を超えて、文字通り製品を過剰に生産することを意味します。

プロジェクト管理における造りすぎの無駄

プロジェクト管理では、従業員が不要または重複する作業をおこなうと、造りすぎの無駄が発生します。オンラインで送信できるファイルや、リソースの浪費につながる不適切に定義された作業範囲など、あらゆるものが無駄であると見なされます。

ビジネスでは、不適切な計画とコミュニケーション不足が、造りすぎの無駄につながります。従業員が、他の従業員との関係における自身の役割を適切に理解していない場合、必要以上の成果物を納品したり、的外れな作業に時間を費やしたりする可能性があります。

造りすぎの無駄の特定と排除

造りすぎの無駄を特定する最適なタイミングは、プロジェクトの最終段階でチームのパフォーマンスを確認するときです。スケジュールとKPIを検証し、プロジェクトを遂行するうえで不要だった作業について話し合いましょう。

計画の改善や従業員のコミュニケーションの促進といった調整をおこない、造りすぎの無駄を排除します。例えば、カンバンボードを導入して、プロジェクト管理を合理化できます。カンバンボードを利用すれば、従業員は作業を自身で管理および整理できるため、プロジェクトの範囲に関するコミュニケーションを強化できます。これにより、従業員は、プロジェクトに価値をもたらさない不要な作業を引き受けなくなります。

Lean waste #6: Overprocessing

6.加工の無駄

加工の無駄は、プロジェクトにおいて、顧客に付加価値を生み出さない作業が追加されたときに発生します。

動作の無駄と加工の無駄はどちらも、ワークフローにおける過剰な工数に焦点を当てます。動作の無駄は、適切な範囲でプロジェクトを遂行するうえで不要な工数を指します。一方加工の無駄は、顧客に対する価値の向上につながらない機能や情報を追加することで、プロジェクトの範囲を必要以上に複雑化させます。

プロジェクト管理における加工の無駄

プロジェクト管理における加工の無駄は、従来の製造環境によく似ています。多くの場合、顧客が必要としていない製品情報や装飾を指しますが、プロジェクトの遂行に必要のない、冗長な工程が追加されることで、複数のマネージャーが作業を確認して承認することも、加工の無駄として見なされます。

加工の無駄の特定と排除

作業の重複を生み出す非効率的なワークフローや、顧客からのフィードバックにもとづいていないアップデートでは、加工の無駄が発生しやすくなります。加工の無駄を排除する方法のひとつは、プロダクトバックログを利用してプロジェクトを整理し、優先順位を付けることです。バックログでは、プロジェクト候補のリストを管理し、従業員が連携して優先順位を決定します。顧客が本当に求めている機能やアップデートのみに取り組むようにすることで、加工の無駄を阻止できます。

Lean waste #7: Defects

7.不良/手直しの無駄

不良/手直しの無駄とは、製品が適切に機能しないことによる経済的損失とリソースの浪費を指します。企業は、製品の返品、再設計、交換の費用を負担する必要があります。

プロジェクト管理における不良/手直しの無駄

プロジェクト管理における不良/手直しの無駄は、従来の製造環境と同様です。通常、物理的な製品ではなくデジタル製品における無駄を指しますが、その原則は同じです。不良/手直しの無駄は、顧客の不満、プロジェクトの質の低下、ビジネス機会の損失につながる可能性があります。

不良/手直しの無駄の特定と排除

製品の性能が低下すると、顧客はすぐに企業に通知するため、不良/手直しの無駄を特定することは、それほど難しいことではありません。製品を販売する前に、チームのプロセス、機能、役割、インターフェイス、ワークフローモデルにおける不良/手直しの無駄を特定するには、社内におけるコミュニケーションと組織構造が重要となります。

不良/手直しの無駄は、不適切な品質管理が原因であるため、プロセスを改善することでこうした無駄を低減できます。重要なプロセスや成果物について、品質管理のチェックをおこなう期間を設けましょう。これらの期間中に、あらゆる関連情報が適切であるかどうか再確認し、懸念事項を特定して、課題を解決するための計画を策定することで、欠陥のない状態でプロジェクトを開始できるようにしましょう。

Lean waste #8: Skills

8.スキルの無駄

スキルの無駄とは、従業員の才能やクリエイティビティを活用しないことです(7つの無駄の略称である「TIM WOOD」に追加しやすいように、英語では8つ目の無駄を「skills」と呼びます)。「スキルの無駄は、従来の製造環境から生じるものではありません。従業員が業務において、自身のスキルや専門知識を発揮できない場合に失われるリソースを指します。

スキルの無駄は、従業員が反復的な作業で行き詰まっている場合や、人員が不足している場合に発生します。この場合、従業員は日々、急なニーズへの対応に追われ、大局的な視点からクリエイティブな業務を進めるという、本来の役割を果たすことが難しくなります。

スキルの無駄は、企業に多大な悪影響をもたらします。高度なスキルを有する従業員が単純な作業を強いられるだけでなく、それに対して高額な報酬を支払うことになるからです。また、職場の士気の低下、「静かな退職」の助長、ストレスの多い企業文化、従業員の離職率の増加などにつながります。

スキルの無駄の特定と排除

スキルの無駄を特定するためには、従業員が最も多くの時間を費やしている作業を把握する必要があります。従業員が提供できる独自の価値と、実際に遂行している日々の業務との間にギャップがある場合、スキルの無駄によってリソースを浪費している可能性があります。単純なパルス調査も、スキルの無駄を特定する有効な手段です。従業員が過小評価されていると感じている場合、匿名の調査を通じてその旨を報告する可能性があります。

従業員のニーズ、部門の構造、プロジェクト向けソフトウェアを見直し、スキルの無駄に対応しましょう。高度なスキルを有する従業員を単純な作業から解放するために、事務担当者を新たに雇用する必要があるかもしれません。また、テクノロジースタックの一部をアップグレードして、単純な反復作業を自動化することを検討しましょう。

リーンマネジメントを導入し、8つの無駄を排除しましょう

リーンマネジメントにおける8つの無駄はすべて、業務プロセスが必要以上に複雑化し、リソースを浪費していることを示唆しています。可能な限り多くの無駄を特定して排除することで、プロセスを合理化し、従業員の士気とROIを向上させることができます。

リーンマネジメントを導入する際は、これらの無駄をひとつずつ排除していくことが重要です。リソースを浪費している課題を既に把握している場合は、その課題から着手しましょう。そうでない場合は、これまでに解説したムダをひとつずつ検証しましょう。

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