顧客関係を強化するアカウントマネジメント入門
既存顧客と良好な関係を維持することは、新規顧客を獲得するよりも大きなROIをもたらします。しかし、バイヤーと健全かつ長期的な関係を構築、維持するのは容易なことではありません。企業は、顧客企業に合わせてワークフローを構築し、複数のチャネルでエンゲージメントして、バイヤーが求めるパーソナライズされた体験を提供する必要があります。
アカウントマネジメントは、バイヤーと緊密な関係を構築し、満足度を高めるための手段となります。本記事では、その概要からベストプラクティスに至るまで、アカウントマネジメントについて包括的に解説します。
- アカウントマネジメントとは?
- アカウントマネジメントの重要性
- アカウントマネジメントと営業の違い
- アカウントマネージャーの役割
- アカウントマネジメントのベストプラクティス
- アカウントマネジメントツール
アカウントマネジメントとは?
アカウントマネジメントとは、顧客との緊密な関係を構築および維持し、顧客維持率を高め、その価値を最大化する取り組みです。
アカウントマネージャーは、バイヤーと、製品またはサービスを提供する自社の従業員との間に立ち、最初の連絡先や日常的な窓口としての役割を担います。プロジェクトのスケジュールと予算の管理、課題の解決、品質管理、顧客の目標を達成するための提案などをおこないます。優れたアカウントマネジメントは、顧客と自社の双方に有益な関係を長期にわたって維持するのに役立ちます。
アカウントマネジメントの重要性
アカウントマネージャーは、効果的かつポジティブな顧客体験を構築し、新規顧客を獲得するだけでなく、バイヤーとの長期的な関係を構築する必要があります。
- McKinsey & Companyの調査によると、顧客体験を向上させることで、顧客満足度が20%向上し、売上が15%増加することが明らかになっています
- Gallupのガイドでは、B2B顧客の69%が、期待する体験を得られない場合は他社に乗り換えると報告されています
アカウントマネジメントを実施することで、スケジュールと予算を維持しつつ、顧客にの期待に応えるサービスを提供することができるため、解約を防ぎ、顧客生涯価値(CLV)を向上させることができます。また、顧客との緊密なコミュニケーションを促進し、優れた顧客体験を創出して、アップセル、クロスセル、契約の更新など、さらなるビジネス機会につなげることができます。
アカウントマネジメントと営業の違い
営業とアカウントマネジメントは、混同されがちです。どちらも、顧客と直接やり取りして商談を成立させることを目的としていますが、その役割は大きく異なります。
- 営業:新たな 顧客や顧客企業を開拓および獲得する責任を負います。一部の企業では、営業担当者を「アカウントエグゼクティブ」と呼んでいます。顧客との関係は短期間に限られます
- アカウントマネジメント: 最初の商談が成立したあと、顧客のフォローアップをおこなう責任を負います。一部の企業では、いくつかの重要な顧客企業に対して、主任アカウントマネージャーや戦略的アカウントマネージャーを割り当てています。顧客との関係は長期にわたります
一部の企業では、アカウントマネジメントを任命していないため、営業部門の担当者がその職務を担います。しかしその場合は、営業担当者に負担がかかり、見込み客への対応が疎かになる可能性があります。また、アカウントマネジメントの役割が営業担当者に必ずしも適しているとは限りません。新規顧客との関係を構築し、製品やサービスを売り込むためには、長期的なパートナーシップを維持し、部門間の連携を図るだけでなく、さまざまなスキルが必要となります。
アカウントマネージャーの役割
アカウントマネージャーは、顧客と接触し、進捗状況をアカウントディレクターやエージェントディレクターに報告します。アカウントマネージャーは通常、重要な顧客との取引額を増加させた場合、給与とは別に、その成果報酬を得ることができます。アカウントマネージャーの一般的な役割には、次のようなものがあります。
顧客維持率の向上
営業部門が顧客との商談を成立させたあと、その顧客との関係を維持するのは、アカウントマネージャーの責任です。このプロセスでは、あらゆる段階で慎重に対応することが求められます。
- オンボーディング:電話や電子メールを通じて、顧客が自社とスムーズに取引できるようにします。製品の概要説明、初回ログインのサポート、フォローアップなどをおこない、試用期間中の離脱を最小限に抑えます
- 定期的なミーティング:ビデオミーティングや対面による面談を通じて、顧客とエンゲージメントし、自社に投資する価値を強調します
- 継続的な接触:電話や電子メールを通じて、顧客との継続的なつながりを維持します。業界や製品の最新情報を提供し、関係を維持するためのあらゆる機会を創出します
- 顧客の状況の把握:主要な顧客に対してアンケート調査や面談を定期的におこない、新たな課題に対応します
- 再交渉:契約満了までに、契約の更新、アップセル、クロスセルの機会を見つけ出し、新たな契約につなげる必要があります
顧客体験の管理
アカウントマネージャーは、顧客一人ひとりのニーズと期待を把握し、他の従業員と連携してそれらのニーズに対応する必要があります。各部門や経営陣と日々の進捗を共有し、顧客体験の価値を最大化します。
- 顧客ニーズの共有: 顧客が求めていることを各部門に伝達し、目標を達成するための取り組みを監督します
- パフォーマンスの追跡と検証: プロジェクトマネージャーやデータアナリストと連携し、KPI(重要業績評価指標)とプロジェクトの進捗状況を追跡して、改善すべき点を特定します
- 苦情への対応: 他の部門と連携して技術的な課題に対応し、クリエイティブな解決策を提案することで、顧客満足度を向上させます
- 経営陣への報告: 経営陣に対して、顧客との関係とプロジェクトの進捗状況をリアルタイムで報告し、必要に応じて経営陣が介入できるようにします
顧客を導く
アカウントマネージャーは、ロードマップを提示して方向性を明確にする必要があります。これにより、顧客は、どの業務が引き渡されるのか、いつ成果物が納品されるのか、今後の業務に必要なものは何かを把握することができます。
- 戦略の策定: 顧客のビジネスを促進するためのアイデアを提案し、連携して計画プロセスを進めることで、顧客とビジョンを共有します
- 業務範囲の明確化: 顧客の目標と自社が提供できるサービスのバランスを取りながら、プロジェクトのスケジュールと予算を立てます
- 変更の伝達: 遅延が発生した場合は、顧客にその旨を通知し、影響を低減します。各部門と連携し、プロジェクトを予定どおりに遂行します
アカウントマネジメントのベストプラクティス
アカウントマネージャーは、自社の代表として顧客とやり取りし、主要な連絡先としての役割を果たします。長期的な関係を構築できるかどうかは、アカウントマネージャーによる顧客の対応にかかっています。ここでは、顧客関係の価値を最大化するためのヒントをいくつか紹介します。
積極的なコミュニケーション
優れたアカウントマネジメントを実現するには、顧客に対する十分な理解と配慮が求められます。その成功の鍵を握るのは、迅速なコミュニケーションです。アカウントマネージャーは、顧客の話に耳を傾けてそのニーズを把握し、検証してから、最適な方向性を示す必要があります。
優れたアカウントマネージャーは、EQ(感情知能)、透明性、柔軟性、共感力、自己認識に優れています。顧客の要求にすばやく対応し、必要に応じて 対応できない ことを正直に伝え、その責任を果たします。スムーズなコミュニケーションを促進することで、顧客はより積極的にエンゲージメントするようになり、有意義なフィードバックを提供してくれるようになります。これにより、顧客と継続的な関係を維持できる可能性が高まります。
アカウントマネジメントの役割は、顧客との関係を強化するだけではありません。社内のさまざまな部門や関係者とやり取りし、それらの連携を構築する必要があります。その際は、顧客と同様に、積極的かつ協力的なコミュニケーションを図りましょう。
目標の設定
顧客一人ひとりと緊密に連携し、現実的で測定可能な目標を設定しましょう。顧客にとって意味のあるベンチマークと指針を確立するために、顧客の優先事項を考慮しましょう。期待できる成果を定量化し、同意することで、顧客と自社の双方に安心をもたらすことができます。
次に、プロジェクトを予算内およびスケジュールどおりに遂行し、成果を上げるために、ロードマップを作成します。タイムラインは業界やプロジェクトによって異なります。一般的には、段階的に時間配分を増やし、規模を徐々に拡大します。
顧客のロードマップを作成する際は、現在の施策だけでなく、今後のプロジェクトも見据えて、より包括的に捉える必要があります。顧客から依頼される前に、ニーズに即したアイデアの創出や戦略の策定に取り組むようにしましょう。そうすることで、さらなる取引につなげるための準備を整えることができます。顧客が取引に同意した場合を想定し、先手を打っておくことで、一貫性のある方法でビジネスを柔軟に拡大させることができます。
顧客の信頼を獲得
顧客の目標に向けて、最大限の成果を生み出すために、自社の製品やサービスを活用するためのガイダンスを提供しましょう。顧客にとって信頼できるアドバイザーとして、また最大の支持者として行動することが大切です。電話や電子メールを通じて、課題や懸念事項について顧客から相談を受けた際に、アカウントマネージャーが成功に向けて全力で支援してくれていると感じてもらえるようにしましょう。
顧客から直接関係のないプロジェクトについてアドバイスを求められたり、紹介状が送られてきた場合は、信頼を勝ち得たことになります。
関係の構築
優れたアカウントマネジメントを実現するための戦略とベストプラクティスは、顧客と緊密な関係を構築するのに役立ちます。しかし、実際にそのような関係が構築されていなくとも、適切に取り組む方法はあります。アカウントマネージャーは、信頼できるアドバイザーとして、顧客との友好的な関係を育むことを念頭に置く必要があります。
顧客との関係を強化するための戦略には、次のようなものがあります。
- 調査:顧客に初めて電話または面談する前に、その企業の歴史、現在の組織構造、競争環境を調査しましょう。顧客から目標や懸念事項について相談を受けたときに、アカウントマネージャーは、顧客企業について把握しており、質問に答えることができなければなりません
- フィードバックループの確立:顧客と自社のつながりを強化するために、顧客の反応を収集して記録し、コメントを分析して、フィードバックを反映させたことを実証するための仕組みを構築しましょう
- 情報の提供:最初のオンボーディングだけにとどまらず、製品やサービスに関する情報を顧客に継続的に提供しましょう。職務の範囲外であっても、役立つ専門知識を共有することで、顧客との信頼関係を強化できます
- パーソナライズされたメッセージの配信:顧客への訴求を推進するために、ビジネスメールだけでなく、顧客の誕生日や記念日に特別なオファーを提供しましょう
アカウントマネジメントツール
適切なアカウントマネジメントをおこなうことで、顧客企業の成長に貢献し、顧客維持率を向上させることができます。アカウントマネージャーは、顧客の代理人であるだけでなく、自社の代表者でもあります。優れたアカウントマネージャーは、顧客を信頼できるパートナーへ転換させることができるのです。
多くの顧客を擁している場合は、専任のアカウントマネージャーを任命する必要があります。まず、現在のチームを検証し、その役割を果たしている従業員がいるかどうか、またその従業員がどの程度の成果を上げているのかを把握しましょう。専任のアカウントマネージャーを既に任命している場合は、リソースを検証し、必要なツールが揃っているかどうかを確認しましょう。
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オンボーディングからアップセルに至るまで、顧客との関係を強化するために、Adobe Marketo Engageがどのように役立つのか、概要ページと製品ツアーをご覧ください。