スクラムマスターとは:その定義、役割、責任

A woman in an office uses her laptop to learn about Scrum Master.

アジャイルプロジェクトマネジメントのフレームワークである「スクラム」という言葉は聞いたことがあるかと思います。しかし、スクラムマスターとは何なのか、何をする人なのかは知らないかもしれません。これからスクラムチームで働く、あるいはスクラムマスターになろうとする人は、スクラムマスターという職務についてより詳細に理解する必要があります。

スクラムマスターは、スクラムチームを成功に導くために不可欠なリーダー的役割を担います。スクラムマスターの仕事には、スプリント計画、毎日のスタンドアップミーティングの主導、レトロスペクティブ(ふりかえり)の実施などがあります。

この記事は、アジャイルプロジェクト管理に不慣れな人、スクラムチームに参加する人、スクラムマスターの役割に就く人などが、必要なことを学ぶのに役立ちます。スクラムマスターの定義、スクラムマスターの主な職務内容、スクラムマスターと他のマネジメント業務との違いなどについて説明します。

主な内容:

スクラムマスターとは?

スクラムマスターとは、アジャイルプロジェクト管理のスクラムフレームワークでの役割のひとつです。スクラムマスターは、アジャイルチームをリードし、スクラムプロセスを促進します。主な役割は、チームの自己組織化をサポートし、チームメンバーがスクラム手法を用いて業務をおこなえるように、準備を整えることです。また、スクラムプロセスが確実に実行されるように、チームの足かせとなるような課題の解決策を見出すことも重要な役割です。

スクラムマスターという肩書きは権威的に聞こえますが、スクラムマスターはサーバント(奉仕型)リーダーとも呼ばれます。スクラムマスターは、スクラムチームのファシリテーターでありコーチです。また、スクラムマスターは、チームに全面的に意思決定権を委ね、進行中のプロジェクトに対するオーナーシップの意識をチームに育てます。

通常、スクラムマスターは、アジャイルプロジェクト管理のフレームワークを深く理解している経験豊富なスクラムのベテランです。スクラムマスターは、スクラム手法の価値観とベストプラクティスを活用して、チームのメンバーを導き、プロセスに組織性を持たせます。

スクラムマスターの責任

Some of Scrum Master's responsibilities are to lead the daily stand-up, guide the spirit, and conduct retrospectives.

スクラムマスターはさまざまな場面で活躍しますが、主な責任は次の通りです。

  1. デイリースタンドアップミーティングの主催: スクラムマスターは、毎日のスタンドアップミーティングを主催します。このミーティングでは、チームメンバーが昨日の成果や今日の計画、直面している課題などについて話し合います
  2. スプリントのガイド: スプリントとは、スクラムチームがタスクを完了するために指定された短い期間のことです。スクラムマスターは、チームがスプリントの目標に集中し、スクラムプロセスに従うようスプリントをガイドします
  3. 他のメンバーの作業のサポート: スクラムマスターは、ガイダンスとフィードバックを提供し、チームの進捗歩を妨げている可能性のある障害を取り除きます
  4. レトロスペクティブの実施: スクラムマスターは、各スプリントの終わりにレトロスペクティブ(ふりかえり)を実施してスプリントをふりかえり、改善すべき部分を特定します
  5. 進捗の報告: スクラムマスターは、チームの進捗状況を関係者に報告し、プロジェクトの透明性と可視性を確保します

スクラムマスターの役割は、他のチームメンバーが既に担っているのではないかと考える企業も少なくありません。しかし、スクラムマスターの責任について誤解があると、他のチームリーダーの負荷が過剰になったり、得意ではない役割を引き受けることになりかねません。

さて、スクラムマスターの責任が明らかになったところで、なぜこの役割にリーダーシップを委ねることがアジャイルチームにとって有益なのかをさらに理解するために、スクラムマスターと他のリーダーの役割の違いを見ていきましょう。

スクラムマスターとプロジェクトマネージャーの違い

スクラムマスターの役割は、プロジェクトマネージャーの役割とも、プロダクトマネージャーやスクラムプロダクトオーナーの役割とも異なるものです。スクラムマスターとプロジェクトマネージャーの違いは、そのチームとの関わり方にあります。

まず、スクラムマスターはスクラムチームの一員です。目標は、チームをリード、コーチングし、チームができる限り機能するよう支援することです。スクラムマスターは、チームにとってどのような戦略が有効かを分析し、チームが対応に苦慮している課題に対処し、効率化を支援するなど、細かい部分にまで踏み込みます。スクラムマスターは、従来のリーダーのようにチームをコントロールするのではなく、深く関わり、作業に協力します。

一方、プロジェクトマネージャーは、スクラムチームの状況を確認したり、タスクの進捗状況をまとめたり、完了したサブタスクに対してフィードバックを提供したりするなど、異なるタイプの関わり方をします。プロジェクトマネージャーはメンバーと一対一で関わることはしないため、スクラムマスターがチームをリードする必要があります。

また、プロジェクトマネージャーが大局的な視点や長期的な視点に立つのに対して、スクラムマスターは、日々の業務に重きを置くという違いもあります。スクラムマスターは、毎日のスタンドアップミーティングを主催するため、チームが取り組んでいること、計画していること、達成していること、そして直面している課題などを常に把握しています。

スクラムマスターは、日々これらのニーズを評価しながら、チームの生産性を向上させるためにリーダーシップを発揮することができます。プロジェクトマネージャーは、よりマクロな視点に立つため、スクラムマスターの役割を果たすことはできません。

A Scrum Master's responsibilities compared to a project manager's responsibilities.

スクラムマスターとプロダクトマネージャーの違い

スクラムマスターとプロダクトマネージャーの違いは、企業内での目的の違いに起因します。

一般的に、プロダクトマネージャーの役割は、顧客のニーズに注目することにあります。プロダクトマネージャーは、スクラムチームを直接率いるのではなく、製品のより包括的なレベルで、全体的な方向性に注力します。プロダクトマネージャーは、スクラムチームにタスクやサブタスクを割り当てることが有益である場合にスクラムマスターと協力することはありますが、スクラムマスターと同じレベルでチームに関与することはありません。

スクラムマスターを目指すには

スクラムマスターを目指すには、オンラインコースを受講する、実務経験を積む、認定プログラムに参加するなどの方法があります。

スクラムマスターになるには、実務経験を積むことが重要ですが、オンラインコースは、無料でトレーニングを受けることができ、スクラムマスターに興味がある人がその役割について詳しく知り、自身に向いているかかどうかを確認するのための優れた手段です。一般的に、スクラムマスターになるためのコースを修了した後は、認定を取得するためにテストを受ける必要があります。

スクラムマスターのレーニングと認定資格

認定プログラムは、より詳細なカリキュラムを提供します。修了までに時間がかかり、費用もかかりますが、スクラムマスターの認定を受けることで、その役職に就ける可能性が高まります。Scrum.orgのスクラム認定試験は、修了者に高いレベルの資格を与えるものであり、同団体のProfessional Scrum Master Certifications(プロフェッショナルスクラムマスター認定)は高く評価されています。自身のスケジュール、学習スタイル、予算に合った選択肢について調べることが、スクラムマスターになるという目標を達成するための最良の方法です。

スクラムマスターになるもうひとつの方法はOJTです。これは、スクラムチームのメンバーとして働き、経験を通してスクラムプロセスについて徐々に学んでいくものです。チームのミーティングやセレモニーに参加することで、スクラムのフレームワークを実践的に学ぶことができ、スクラムマスターの職務についてより深く理解することができます。さらに、組織やコミュニティのほかのスクラムマスターから学んだり、ワークショップや勉強会に参加したり、スクラムに関する書籍や記事を読んで学んだりすることもできます。

さらに、スクラムマスターとして成功するためには、適切なテクニカルスキルとソフトスキルを持つことが不可欠です。たとえば、効果的なコミュニケーション、リーダーシップ、問題解決、ファシリテーションなどのスキルが重要です。スクラムマスターは、チームメンバーや関係者と効果的にコミュニケーションをとり、チームをリードし、意思決定プロセスを促進する必要があります。また、スクラムマスターは、状況の変化に柔軟に対応し、高い労働倫理を保ち、物事を組織立て、継続的な学習と改善に取り組むことが求められます。

また、スクラムマスターになれば終わりではないことを意識することが大切です。スクラムプロセスの進化に伴い、スクラムマスターは常に学び、最新のアイデアや動向について把握する必要があります。そのためには、トレーニングプログラムに参加し、会議やワークショップに出席し、コミュニティ内の他のスクラムマスターとの人脈を築く必要があります。そうすることで、スクラムマスターとしてのスキルや総合力を高め、チームの成功に継続的に貢献することができます。

スクラムマスターの主な役割は、チームが目的を達成できるようにプロセスを円滑に整えることです。通常、スクラムマスターは、プロダクトオーナーを助け、チームを軌道に乗せるためのツール、テクニック、専門知識を提供します。

チームがスクラムプロセスを習得するのを支援

スクラムマスターは、チームメンバーが、継続的で反復的な作業サイクルを特徴とするアジャイル開発プロセスに従うことを支援する重要な役割を担っています。スクラムマスターは、日々のミーティングを管理し、障害を取り除き、組織運営の優先順位を決めることで、スピードと柔軟性が求められる市場において、チームが迅速かつ効果的に製品を開発できるよう支援します。

スクラムプロセスを習得することは、アジャイル環境で業務をおこなうチームにとって不可欠です。チームに組織化とコーチング機能をもたらしたいのであれば、スクラムマスターの役割を導入することを検討してください。スクラムマスターは、専任か非常勤かにかかわらず、スクラムプロセスを通じてチームを指導し、チームの意思を統します。

次のステップをいくつか紹介します。

  1. もし自社にスクラムマスターがいるのであれば、その経験やその役割に就いた経緯、そして自身がその役割に就くためにはどのようなステップを踏むべきかなどについて話を聞いてみましょう
  2. チームにスクラムマスターがいない場合は、スクラムマスターを置く利点について話し合い、その役割を担う人を採用することを検討します
  3. 自身でスクラムマスターの責任を負う準備ができていて、組織でそのポジションを担う人が必要な場合は、認定プロセスについて調べ、その道を先に進みましょう

アドビはスクラム目標の達成を支援します

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Adobe Workfrontに関して詳しくは、製品ツアーまたは概要動画でご確認ください。