医療における顧客体験(CX) - とは?-その重要性と優れたCXの実現方法

医療費が上昇し、デジタルマーケットプレイスがこれまで以上に多くの選択肢を提供する中、患者と医師の関係は、ますます顧客主導型になっています。医療プロバイダーとその利用者は、シームレスかつ便利で柔軟な関係を望んでいますが、多くの医療従事者は、思いやりのあるケアと効率的で収益につながるプロセスを優先した顧客体験(CX)の構築に苦慮しています。

医療プロバイダーは、適切な戦略やツールを利用することで、患者の定着率を高め、費用を削減することができます。

質の高い医療体験を実現するために、この記事では以下のことを解説します。

  1. 医療における顧客体験とは
  2. 医療における顧客体験が重要な理由
  3. 医療における顧客体験の最新トレンド
  4. 医療における顧客体験を向上させる方法

医療における顧客体験とは

医療における顧客体験(CX) とは、患者が医療システムや医療機関とのオンラインおよびオフラインでのやりとりを、どのように受け止めているかを示します。待合室で過ごす時間からオンライン患者ポータルの利用まで、患者のあらゆる体験が含まれます。

医療CXは、医療業界ではまだ新しい領域ですが、患者が将来再診するか、別の医療機関に移るかに大きく影響し、看護師や医師とのやり取り以上にその判断を左右します。

Press Ganeyの「Consumer Trends Report」では、コミュニケーションとカスタマーサービスが病室における体験よりも重要であると医療利用者は回答しています。しかし、医療業界では、医療CXのベストプラクティスの導入に苦慮しています。なぜなら、独立系プロバイダーが患者が使いやすいポータルサイトを設計し、プロセスを自動化して、リソースを最適化することが困難であるからです。

医療CXが重要な理由

Accentureによると、患者の67%は医療でネガティブな体験を経験しています。つまり、優れた顧客体験を構築することで、医療機関は差別化を図り、成功することができるのです。

優れた医療CXを提供することで、医療機関は次のような重要なメリットを得ることができます。

医療における顧客体験の最新トレンド

医療業界は、医療のコンシューマー化に伴い、従来のプロバイダー重視のモデルから利用者中心の医療モデルへと変化しています。モノのインターネット(IoT)、AI(人工知能)、マシンラーニング(機械学習)などの進歩により、医療における顧客体験は劇的に向上しました。

医療プロバイダーは、医療CXが病室の中だけにとどまらないことを理解するようになり、レスポンシブで効率的な顧客体験がトレンドになりつつあります。

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チャットボットと自動化

チャットボットは、患者に24時間365日のサポートを提供する優れた方法です。AIを活用したチャットボットは、基本的な質問に回答し、看護スタッフの負担を軽減することができます。

自動化は、記録の保存、請求の処理、予約の調整など、繰り返しおこなわれる作業の管理に役立ちます。これにより、事務作業を迅速化し、患者の信頼に取り返しのつかないダメージを与える人為的なミスを防ぐことができます。

デジタルアクセス

患者ポータルから医療ツールへのデジタルアクセスにより、情報を一ヶ所に集め、シームレスなセルフサービス体験を実現できます。患者は、このような医療プラットフォームにより、自身の医療記録を確認したり、一般的な質問に対する回答を見つけたり、予約を入れたりすることができます。これにより、患者は、電話でおこなっていた時間を節約でき、医療従事者は、他の重要な業務に集中することができます。

顧客データ

医療従事者は、患者データを活用して体験をパーソナライズすることで、質の高い医療をおこなっていることを示すことができます。

たとえば、患者データを利用して検査のお知らせを送ったり、患者の病歴にもとづいてカスタマイズされた治療計画を立てたりすることができます。患者は、自身の健康に関する重要な決定に必要な情報を得ることで、自身に注目し、大切に扱われ、支援を提供されたと感じるようになります。

遠隔医療

体調がすぐれないとき、大切な人が心配なとき、難しい判断を迫られる診断を受けたときなど、待合室に座っていると、挫折感を感じることがあります。遠隔医療を利用すれば、患者は診察室で待つ必要がなく、自宅にいながら医師と話をすることができます。患者は、遠隔医療を積極的に利用しています。Press Ganeyの「Consumer Trends Report」では、2020年に遠隔医療の利用率が337.6%増加したことが明らかになっています。

遠隔医療は、病院まで足を運ぶのが大変な患者にとって特に便利なものです。また、医療行為をより効率的におこない、接触感染症の蔓延を防ぐことにもつながります。遠隔医療では、医療従事者が患者に直接メッセージを送ることができるため、フォローアップのプロセスも迅速化されます。

医療における顧客体験を向上させる方法

医療費の上昇やオンライン保険市場によって、患者と医療プロバイダーから利用者と企業へと、その関係性が変化する中、医療機関の利用者は最高品質の医療と優れた顧客サービスを期待しています。

医療における強力かつ効果的な顧客体験を構築するには、共感、テクノロジー、効率性が必要です。しかし、多くの医療プロバイダーでは、次のことが課題になっています。

医療において最も重要なことは、思いやりです。適切な戦略やツールを利用することで、医療CX全体を合理化し、患者に寄り添うことができます。

1.コミュニケーションのパーソナライゼーション

医療の顧客体験を向上させるためにパーソナライズすることは、どのような医療機関にとっても必要なことです。例えば、パーソナライゼーションにより、次のことが可能になります。

モダンなメールマーケティング基盤では、マシンラーニングを利用して、メールの自動配信や個人情報の自動入力など、さまざまなパーソナライゼーションをおこなえます。患者は、こうしたパーソナライゼーションにより、自身が認識されていると感じることができるため、より優れたCXを構築するための最良の方法のひとつです。

2.費用削減

医療サービスの利用者にとって最大の障害のひとつは費用です。医療機関は、医療費の上昇に対抗するため、可能な限り患者のために費用を削減または抑制しています。

患者の流れの最適化、契約のセット化や標準化などは、費用削減戦略のひとつの例です。費用削減のために変更する際には、何をしているのか、なぜそうするのかを必ず患者に伝えてください。また、費用を削減できない場合は、費用を一定に保つためにどのような取り組みをしているかを伝えます。患者はその努力を評価してくれるはずです。

3.待ち時間の短縮

患者が医療機関に抱く最大の不満のひとつが、待ち時間の長さです。Press Ganeyの「Consumer Trend Report」では、調査対象者の62%が、電話保留時間が長いことを含め、医療機関に連絡を取りにくいことが、そうした医療機関を避ける大きな理由になっていると回答しています。

ここでは、患者の待ち時間を短縮するための方法をいくつかご紹介します。

4.透明性の向上

患者は、医療従事者に対して安心感や信頼感を持つ必要があります。利用者は、関わりを持つほぼあらゆる企業に透明性を求めますが、医療従事者はその中でも最も高い水準を要求されます。

透明性とは、患者に対して、費用について常に率直に説明し、医療内容についてわかりやすく説明することです。透明性のある医療行為を維持することは、患者が自身の健康について決定権を持つことにつながるだけでなく、医療プロバイダーにとってもメリットがあります。医療機関が信頼を確立することで、患者の定着率や紹介率が向上することも少なくありません。

5.あらゆるチャネルに対応

利用者は、自分の好みのチャネルで連絡できることに慣れています。医療機関は最新のCXを提供するために、その期待に応える必要があります。Press Ganeyのレポートによると、調査対象者の24.7%が、プライベートメッセージを使用できるかどうかが医療機関を選ぶ際の決め手になると回答しています。また、回答者の48%が、オンラインで予約を取ったり変更したりできることが、医療機関を選ぶ際の重要な要素であると回答しています。

メール、ライブチャット、電話、対面で対応できるようにしましょう。最も重要なことは、顧客体験の品質が、チャネル全体を通じて一貫していることです。つまり、最高の患者CXを実現するには、患者が多くの異なるチャネルを利用して医療機関とやり取りしていても、それぞれの患者の統合されたプロフィールを構築できる顧客関係管理(CRM)ツールが必要になります。

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6.24時間365日のアクセス提供

営業時間内外を問わず、患者の健康管理をサポートする顧客接点を設けましょう。患者は、いつでも連絡が取れることがわかれば、連絡が取りにくい他の医療機関よりも優先して選択する可能性が高まります。ここでは、「常時稼働」サービスを提供するための3つの方法を紹介します。

このような常時稼働は、利用できるだけでなく、使いやすいものでなければなりません。自動化されたセルフサービスは、レスポンスが良く、迅速でなければなりません。そうでなければ、フラストレーションが溜まり、エンゲージメントを低下させる原因となります。

7.反復作業の自動化

自動化は、患者と医療スタッフの双方にとってワークフローの最適化に役立つため、非常に貴重なCXツールです。患者の時間を節約するプロセスやソフトウェアに投資することで、信頼を築き、全体的な顧客満足度を向上させることができます。

たとえば、ソフトウェアを使って患者データをデジタル保存し、自動入力に対応することで、患者が再来院のチェックインや、問い合わせのたびに氏名や生年月日などの情報を繰り返し入力する必要がなくなります。

また、予約のリマインダーを送信したり、患者がモバイルやPCを使ってチェックインできるようにすることで、スタッフの負担を軽減することもできます。管理業務に費やす時間を減らすことで、スタッフはより優れた患者ケアに集中でき、介護者の負担も軽減されます。

8.最新の技術やトレンドの導入

医療の原動力は「共感」であるべきですが、それと同じくらい重要なのが「データ」です。データは、医療従事者が患者のニーズを把握して、改善の機会を特定し、顧客体験を向上させるために利用することができます。

技術的なトレンドを把握することは、ビジネス機会の創出や患者の定着につながります。たとえば、フィットネストラッカーのようなウェアラブルデバイスを導入することで、患者の体験をより心地よく魅力的なものにすることができます。

9.データの保護

医療データは非常に機密性の高いものです。プライバシーは質の高い医療体験に不可欠であり、患者の信頼を得るためには、患者の情報を保護する必要があります。強力なセキュリティソフトウェアを導入し、スタッフに最新のコンプライアンス基準を教育することで、あらゆる患者データの安全性を確保します。患者のプライバシーが侵害されると、現在および将来の顧客が離れてしまう可能性があるため、データの保護は最優先事項でなければなりません。

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10.フィードバックの収集

患者が何を望んでいるかを知る最良の方法は、患者に尋ねることです。人は自分の意見を聞いてもらいたいものなので、質問するという単純な行為で、CXを向上させることができます。患者に自身の考えを伝える機会を提供することは、患者に対する気遣いを示すことであり、大きな効果を発揮します。ここでは、患者からフィードバックを得るための戦略をいくつか紹介します。

データを収集したら、パターンや共通する課題を探し、そこから得られるインサイトをもとに、より優れたCXに向けた実行可能なプランを作成します。

医療CXの向上にむけて

医療機関が長く存続していくためには、質の高い顧客体験の創出が欠かせません。医療費の上昇や医療プロバイダーの選択肢の増加により、現代の医療利用者は医師に対して高い期待を寄せています。

医療機関は、リアルタイムのデータ分析と進化するテクノロジーにより、患者に充実した思いやりのある体験を提供することができます。患者は、セルフサービスツールによって、自身の手で記録を確認し、予約を取ることができます。また、パーソナライズされたカスタマージャーニーによって、医療従事者が本当に気に留めてくれていると感じるようになります。

優れた医療体験を構築するための第一歩を踏み出すには、段階的な患者体験を理解し、それを活用するための基盤が必要です。

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