EC(eコマース)とは?ビジネスモデルのあり方や店舗連携などを解説

EC(eコマース)とは、インターネットなどのデジタルチャネルを通じて商品やサービスを商取引する行為です。英語表記は e-commerce で、日本語では電子商取引とも呼ばれます。より広い概念として「デジタルコマース」があります。

目次

  • eコマースとは何ですか?
  • eコマースと従来のコマースの違いは何ですか?
  • eコマースの最大の利点は何ですか?
  • Eコマースによって、ビジネスのあり方はどのように変化していますか?
  • Eコマースは顧客にどのような影響を与えますか?
  • Eコマースが対応しているのはB2Cのみですか?
  • Eコマースにはどのような課題がありますか?
  • Eコマースと実店舗を連携させるにはどうすればよいですか?
  • 今後、eコマースはどうなっていくのでしょうか?

ポイント

eコマースに関する様々な疑問に、Pat Toothakerが回答します。Patは、Adobe Commerceのシニアプロダクトマーケティングマネージャーを務めています。約10年間にわたり、NetSuite、Oracle、Magento、アドビでeコマースのテクノロジーに取り組んできました。

eコマースとは何ですか?

eコマースとは、商品やサービスをオンラインで販売することです。売買するものが何であれ、インターネットやインターネットサービスを通じて売買をおこなっていれば、購入者と販売者のどちらもがeコマースに関わっていることになります。

eコマースと従来のコマースの違いは何ですか?

eコマースが従来のコマースや実店舗と大きく異なる点は、物理的な場所に縛られることなく商品やサービスにアクセスできることです。つまり、顧客は長い行列や店舗への往復手段を心配する必要がなく、どこにも出かける必要がありません。インターネット接続さえあれば、誰でも利用できます。また、物理的な場所に縛られることがないため、より多くの販売者にアクセスできます。

販売者にとっては、インターネットにアクセスできるほぼすべての人にリーチできるようになります。

eコマースの最大の利点は何ですか?

これは販売者の目的によって異なりますが、eコマースには従来のコマースにおける物理的な制約から開放されること以外にもいくつかの魅力的な点があります。

そのひとつは、サブスクリプションビジネスなどの新しいビジネスモデルを構築できることです。BarkBoxやBirchBoxの例を見てみましょう。これらはeコマースなしに実現することはできませんでした。しかも、これらのサービスではこれまでなかった新しい種類の製品を提供しているわけではありません。eコマースによって、これまで一般的ではなかったDirect to Consumer(D2C)を実現したのです。

eコマースが登場する前は、メーカーが小売業者に販売し、小売業者が顧客に販売していました。eコマースにより、ブランドやメーカーが顧客に直接販売できるようになったのです。様々な企業が、ニッチなマーケットに向けた特定の製品を提供できるようになったことで成功を収めています。流通方法を心配する必要はありません。販売しようとする相手を特定してリーチすればよいのです。eコマースでは、従来の小売では対応できない方法でこれを実現できます。

さらに、店舗内の在庫スペースなどの物理的な制約がないので、実店舗を構える小売業者よりもはるかに容易にビジネスを拡大できます。店舗の裏にどれだけのスペースがあるのか心配する必要はありません(そもそも店舗の裏自体が存在しません)。ビジネスが拡大しても、実質的に在庫が無制限にある倉庫から出荷することができます。もちろん、追加の倉庫や物流オプションが必要になる場合があることから、取引の複雑性が増す可能性はあります。しかし、物理的な場所を追加する必要はありません。そのため、ランニングコストや運用コストを抑えることができます。

また、グローバルに展開するチャンスも広がります。ヨーロッパやアジアで出店する方法について心配する代わりに、その地域に出荷できるかどうかが主な懸念事項になるでしょう。

eコマースによって、ビジネスのあり方はどのように変化していますか?

実際のところ、これまでに販売できなかった商品を販売できるようになりました。先ほどサブスクリプションについて触れましたが、新製品や新サービスの分野として音楽、eBook、ソフトウェアなどのデジタル商品があります。

これは、eコマースにおける興味深い点のひとつです。eコマースは消費財の販売にとどまりません。例えば、デジタルで提供されるコンテンツに対価を支払うオンライン大学などが考えられます。この場合は教育ですが、これもまたeコマースです。

全般的に、eコマースはビジネスのあり方と所有コストを大きく変えます。eコマースを利用することで、賃料や在庫を所有するコストを気にせずビジネスを拡大できます。また、ドロップシッピングなどのサプライチェーンのイノベーションを導入すると、取引のみを担当することになるので、さらに大きく状況が変わります。その場合、エンドユーザーに商品を販売するだけの役割を担い、実際に商品に触れることはありません。他の誰かが代わりに発送します。

eコマースは顧客にどのような影響を与えますか?

利便性については既にお伝えしました。理論上は、従来の流通モデルのような経費がかからないので、購入者に利点があります。しかしさらに重要な点として、全体的な顧客体験が変わります。

アドビでは常に顧客体験を重視しています。そのためには、データを活用し、顧客プロファイルとして顧客を特定して、顧客の興味を把握することが重要です。これらの情報をもとに顧客体験をカスタマイズできます。単純な製品レコメンデーションを提供することであっても、それがeコマースにおけるパーソナライゼーションの出発点となります。

例えば、靴を見ている人にその靴に合わせるパンツを提案することや、顧客のショッピングジャーニー全体を把握するなど、より複雑なケースが考えられます。顧客が車を購入するために様々な調査をおこなっている場合もあるでしょう。顧客が何を求め、何を重視しているかを明確に理解することで、顧客の期待に応えるコンテンツマーケティングをおこない、適切な情報を顧客に提示することができます。このように顧客体験をカスタマイズすることは、実店舗ではできません。これはデジタルチャネルならではの機能です。

eコマースが対応しているのはB2Cのみですか?

それは違います。B2Bコマースは大規模です。eコマースのデジタルチャネル導入では後れを取りましたが、B2Bには膨大なチャンスがあります。実際、マーケット規模においてはB2Cをはるかにしのぎます。Forresterによると、米国におけるB2Bのeコマースの売上は2023年までに1.8兆ドルに達すると予測されています。これはB2Cの2倍にあたります。B2B業界におけるeコマース導入は依然としてあまり進んでいませんが、B2B業界では購入者が増え始め、この非常に手軽なオンラインデジタル体験に期待が寄せられています。

これらのデジタルトランザクション体験を提供できない理由はどこにもありません。確かにB2BコマースはB2Cとは異なり、より複雑であることが一般的です。例えば、通常B2Bの販売サイクルは長く、見積り管理や交渉で何度もやり取りが必要な場合もあります。しかし、これをオンラインでおこなえないわけがありません。これがB2Bに大きなビジネスチャンスがあると確信する理由です。

eコマースにはどのような課題がありますか?

現在、eコマース企業にとっての現実的な課題はAmazonです。Amazonの規模に太刀打ちするのは困難です。Amazonは基本的に独自の流通、物流、運送会社を持ち、翌日配送のみならず無料返品も実現しています。商品を取り寄せ、試着して合わなければ別の商品を入手できます。Amazonと競争するのはコストがかかり、困難です。

しかも、単にAmazonに追随するよりも複雑です。Adobe Commerceを利用している多くの販売者は、Amazonがパートナーであり競合でもあるという現状のバランスを取ることに苦慮しています。販売者の多くはAmazon Web Servicesでストアを展開しています。しかし、Amazonで販売されている製品と競合する製品を販売している場合もあります。このような場合、販売者はどの程度の「競争」を許容するかを判断する必要があります。

現実的には、多くの買い物客が製品の検索を開始するときにAmazonにアクセスすることから、Amazonに出品することで販売者のリーチを広げることができます。もし新しいシャンプーを探しているとしたら、恐らくAmazonにアクセスして「シャンプー」と入力するでしょう。利用者に見つけてもらいたいなら、Amazonに出品することが新しい顧客や新しいオーディエンスを探すのに最適な方法です。しかし同時にAmazonのエコシステムに取り込まれ、製品に関する価値あるデータも取り込まれてしまいます。

このことがデータというeコマースのもうひとつの大きな課題につながります。データセキュリティは恐らくeコマースの最大のリスクです。誰もがハッキングされているかのように思えるほど多くのセキュリティ侵害が発生しており、ストアのセキュリティと安全性を確保することは非常に困難になっています。eコマース企業にとって、データの保護には莫大な費用がかかります。

さらにGDPRなどの新しい規制によって、状況は複雑さを増しています。GDPRに迅速に適応することができず、違反に対する費用が高すぎるため、ヨーロッパでの販売を止めてしまう企業もあります。データ、プライバシー、セキュリティに関するこれらの課題には多くの時間とリソースが必要です。適切に対応しないとハッキングされる可能性があるだけでなく、規制に違反したことにより、政府機関に対して金銭の支払い義務が生じる場合があります。

eコマースと実店舗を連携させるにはどうすればよいですか?

販売者は実店舗とデジタル体験をつなげるために興味深いことをおこなっています。販売者によっては、実店舗はあるものの、在庫を持たない場合があります。例えば、店舗に行くと、店員が製品を探して選択するのを手伝ってくれ、その後でスムーズにオンラインで注文できます。

他にも、店舗内に設置したデジタルディスプレイで買い物できるようにしている場合や、試着室にスマートミラーを設置して、試着した服に合わせて靴を提案してくれるようにしている場合もあります。時間とともに、eコマースと従来の実店舗の垣根が低くなり、融合が進んでいます。

今後、eコマースはどうなっていくのでしょうか?

どこでも購入することのできる一般的な製品の販売にとどまらない企業が、今後の差別化に成功すると期待されています。このような企業では、心のつながりのようなものを感じさせます。パーソナライゼーションとデータについて触れましたが、全体的な顧客体験も重要です。現実問題として、今すぐ必要なものを購入するときに、ブランドにも品質にもそれほどこだわりがなければ、恐らくAmazonにアクセスするでしょう。明日には手元に届き、価格も手頃であると考えられます。この点について直接対決することは困難です。

しかし、靴を1足買うごとに途上国の誰かに無料の靴を贈るTOMS Shoesのような企業が増えています。このような社会貢献を推進するビジネスは、消費者との真のつながりを生み出します。その他にも、製品が持続可能な方法で製造されていることや、米国で作られているので米国の経済と雇用に貢献していることを宣伝する企業もあります。

または起業のストーリーを伝え、創業者が製品を生み出した経緯や情熱を注ぐ理由に共感を呼ぶ場合もあります。企業とのこのような結びつきを創出すると、顔の見えない大企業よりもこうした企業から購入することを願う顧客が増えます。

そして、当然ながら、そのつながりからオフラインかデジタルに関わらず、優れた顧客体験を生み出すことが重要です。将来的に成功する企業は、デジタル体験とオフライン体験が補完し合う企業だと考えられます。言い換えると、顧客体験とトランザクションを組み合わせる方法を見つけ出すことが重要です。

eコマースビジネスでは、より多くのトランザクションを促進し、デジタルストアフロント(デジタル店舗)のデータを使用してカスタマイズした顧客体験を提供できます。しかし、小売業者はこれらをどのような方法で取り入れて対面でのデジタル体験を実現することができるのでしょうか。店舗では、どのようにして個人を特定し、興味があるものを自動的に選択したり、以前のブランドとのやり取りの履歴にもとづいて新しい製品を紹介したりできるのでしょうか。ある靴小売店では、拡張現実を利用して様々な種類の靴を試したり、オンラインで様々なオプションの価格を表示したりしています。実店舗でこのようなデジタル体験を提供する方法を模索することは実に興味深い課題となります。

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参照トピック