電子メールサービスプロバイダー
電子メールサービスプロバイダーとは、電子メールを利用したマーケティングサービスを、企業向けに提供するテクノロジーベンダーです。 【英:Email service providers | 略:ESP】
ポイント
電子メールサービスプロバイダーと連携すると、大規模な電子メールキャンペーンを展開することができます。
中小企業は一般に、大企業とは異なる特徴や機能を必要とするので、自社のニーズに応じて最適な電子メールサービスプロバイダーを選択する必要があります。
電子メールサービスの活用では、IPウォーミング(企業が電子メールのベストプラクティスに準拠し続けるために、電子メール送信量を徐々に増やしていく手法)が欠かせません。
利用者のオプトインにもとづくことなく、購入したリストに電子メールを配信したり、大量の電子メールを頻繁に送信したりすることで、問題が発生することがあります。
目次
- 電子メールサービスプロバイダーとは何ですか?
- 様々な電子メールサービスプロバイダーには、どのような違いがありますか?
- 電子メールサービスを導入するには、どうすればよいですか?
- 電子メールサービスプロバイダーを活用する主な利点は何ですか?
- 電子メールと他のマーケティング戦略を結び付けるうえで、電子メールサービスプロバイダーはどのような役割を果たしますか?
- 電子メールマーケティングで陥りやすい失敗には、どのようなものがありますか?
- 電子メールサービスプロバイダーはこれまでどのように発展してきましたか?
電子メールキャンペーンに関する様々な疑問に、Bridgette Darlingが回答します。Bridgetteは、アドビのB2C電子メールマーケティングとオムニチャネルキャンペーンの管理アプリケーションであるAdobe Campaignを担当する、シニアプロダクトマーケティングマネージャーです。Adobe Campaignプロダクトマネージャーとして5年の経歴を有しています。アドビに入社する前は、Experian Data Qualityでプロダクトアナリスト兼プロダクトマーケティングマネージャーを務めていました。
電子メールサービスプロバイダーとは何ですか?
電子メールサービスプロバイダーとは、電子メールキャンペーンの作成と展開に使用するプラットフォームを指す場合と、電子メールマーケティングキャンペーンを問題なく展開できるように支援する企業のサービスを指す場合の両方があります。この用語は、かつて企業向け電子メールマーケティングプラットフォームでサービスが非常に重視されていたころに、このテクノロジー分野の業界で使われていたものです。当時、企業はこれらのプラットフォームを使用してデリベラビリティを管理したり、電子メールメッセージやキャンペーンを管理して実行したりする場合に、フルサービスの代理店を必要としていました。
こうした初期の電子メールプロバイダーはテクノロジー企業でありながらも、企業向けの入念なサービスに注力していました。その後、このテクノロジー分野は変化していき、現在の市場では、電子メールマーケティングテクノロジーのプラットフォームを包括的に指して、電子メールサービスプロバイダーという呼称が使用されています。ここで言う電子メールサービスプロバイダーとは、個人のYahooメールアカウントやGmail受信トレイではありません。対象とするのは、マーケターが電子メールマーケティングプログラムを送信するために使用するツールです。
様々な電子メールサービスプロバイダーには、どのような違いがありますか?
ほとんどの電子メールサービスプロバイダーは、コンテンツのアップロードとパーソナライズ、登録者リストのアップロード、電子メール配信の各機能を提供しています。これらは基本的な機能です。Zohoメールのように無料オプションや低コストのオプションを提供するプロバイダーもあります。こうしたオプションでは、ストレージ容量のアップグレードなど、高度な機能を購入できるのが一般的です。Outlook.comなど、有償で購入することができる大規模なプラットフォームもあります。
このテクノロジー分野の電子メールサービスプロバイダーは、中小企業(SMB)に適したB2C向けのConstant ContactやB2B向けのHubSpotから、Adobe CampaignやSalesforce Marketing Cloudといった大企業のマーケター用のものまで多岐にわたります。電子メールサービスプロバイダーの特徴や機能は、それぞれが対応している市場によって異なる場合があります。
小規模な企業向けの電子メールサービスプロバイダーは、プラットフォームの使いやすさを重視し、通常はあまり多くのカスタマイズオプションを提供しません。無料の電子メールアカウントを持つ小規模な企業を数千以上サポートできる体制をとっています。一方、大規模な企業向けのプロバイダーは、非常に細かなニーズのある大企業をサポートすることを目的としています。豊富なカスタマイズオプションを用意したり、大規模なビジネスモデルを採用した顧客がデータの作成、送信、管理を実行できる機能を提供したりしています。
電子メールサービスを導入するには、どうすればよいですか?
電子メールサービスの設定プロセスは、企業のニーズと、利用する電子メールサービスプロバイダーのタイプによって異なります。Adobe Campaignなどの大規模な企業向けのプロバイダーを利用する場合は、実装チームと協力して、特に電子メールサービスのデータスキーマ、パーソナライゼーション属性、プログラム、イニシアチブツールなどの機能に関する理解を深めることになるでしょう。その後、用意されているオプションを適用してキャンペーンを設定します。さらに、サービスプロバイダーと協力して「IPウォーミング」をおこないます。これは、エンドカスタマーへの配信プロセスを把握するためにGoogle、Yahoo、Verizonなどのインターネットサービスプロバイダーで採用されている手法です。
IPウォーミングでは、企業は電子メールをいくつかのまとまりに分けて送信します。これにより、インターネットサービスプロバイダーは、送信者が電子メールをどのように配信しているか、またベストプラクティスに従っているかどうかを追跡することができます。続いて、送信する電子メールの量を徐々に増やしていきます。IPウォーミングを通じて、自社が送信者として信頼でき、正当なIPを使用していることを証明できます。こうしたIPのウォームアップは、実装プロセスのなかで大きな部分を占めています。マーケターは問題のないIPを使用し、いかなる面でもIPに懸念が生じないようにしなければなりません。それらのIPアドレスで、規模を徐々に拡大していきます。その後、ようやく完全な規模でキャンペーンを展開することができます。
電子メールサービスプロバイダーの利用を始めるのは、電子メールをひとつ用意し、リストをアップロードして、登録者に電子メールを配信するというワークフローを進める程度の手間しかかかりません。しかし非常に広範囲で、かなり複雑なものになる可能性もあります。実際にどうなるかは、企業の規模や総合的な目標に応じて異なります。
電子メールサービスプロバイダーを活用する主な利点は何ですか?
大規模法人向け市場で活動しているマーケターは、電子メールサービスプロバイダーを活用することで、電子メールを介して顧客に働きかけることができます。電子メールは、特にモバイルデバイスからアクセスできるなどの理由で、消費者が支持または愛好しているブランドとのやり取りするために最もよく使用しているチャネルです。また、顧客がオファーに応答する場合にも、検索エンジンの次によく使用しているチャネルです。そのため、電子メールサービスプロバイダーの活用は、企業が登録者のロイヤルティを高め、顧客を育成していくために役立ちます。
テクノロジーの観点では、Adobe Campaignのようなエンタープライズレベルのサービスプロバイダーを使用すると、大企業は大規模なコミュニケーションに対応できるようになります。例えば電子メールであれば、総数が数百万件から、ときには何十億件に及ぶこともあるので、それらのデータすべてに対応し、それだけの電子メールを実際に配信することができるレベルのテクノロジーが必要になります。これほどの規模になると、単にGmailアカウントに登録者リストをアップロードして、電子メールを送信するだけでは済みません。データが多すぎるのです。こうした場合のデリベラビリティ、コンテンツ、顧客データを管理する機能を備えているという点が、電子メールマーケティングプラットフォームや電子メールサービスプロバイダーを使用する理由のひとつになります。さらに、電子メールサービスプロバイダーを活用すれば、スパムフィルターや電子メールストレージなどの機能をこれまで以上に制御することができます。
電子メールと他のマーケティング戦略を結び付けるうえで、電子メールサービスプロバイダーはどのような役割を果たしますか?
アドビなどの一部のプロバイダーでは、モバイルのプッシュ通知やSMS、webパーソナライゼーション、ダイレクトメールなど、他のあらゆるアウトバウンドチャネルで利用可能な電子メールマーケティングテクノロジー用のプラットフォームを提供しています。つまり、キャンペーンを準備し、利用できる他のあらゆるチャネルからエンゲージメントデータを取得して、電子メールプログラムの登録者用のデータに組み入れることができるのです。Adobe Campaignでは、オムニチャネルアプローチを採用し、電子メールを閲覧しても、webサイトで購入するためのリンクをクリックしていない顧客を把握できます。さらに、POSデータを取り込んでその顧客のプロファイルに結び付けると、顧客が電子メールに反応した後でオフラインになり、店舗での購入をおこなったことまで把握できます。
電子メールマーケティングで陥りやすい失敗には、どのようなものがありますか?
よくある失敗のひとつは、オプトインに同意した顧客だけに配信するのではなく、登録者リストを購入してしまうことです。消費者は、配信される電子メールを自らの意思で決定したいと考えており、頼んでいない電子メールが届くと、その企業に対する評価を下げることがあります。また、企業が電子メールを多く送りすぎたり、頻繁に送りすぎたりするという失敗も見られ、その結果、登録者が興味を失ったり、登録解除するようになったりすることがあります。
これらの失敗を避けるには、エンゲージメントを管理し、必ずベストプラクティスに従って電子メールリストに顧客を追加するようにします。つまり、消費者が接触してきて、自社のリストに入ることを選んだ場合にのみ、その依頼を受ける形で電子メールを送信するということです。
単なる販売促進のオファーではない電子メールを送信したり、パーソナライズされたキャンペーンを展開したりすることも、電子メールマーケティングの問題を予防する方法のひとつです。対象の顧客に固有の結びつきがあるコンテンツや、それまでの顧客との関わり方を踏まえたコンテンツ、自社webサイトでの過去の閲覧行動を反映したコンテンツを提供することで、企業は顧客とうまくつながることができます。例えば、男性用と女性用の両方の製品を扱う小売ブランドであれば、女性用の衣類だけを購入している顧客に男性用衣類のオファーを送信しないようにしましょう。
電子メールサービスプロバイダーはこれまでどのように発展してきましたか?
以前のように、企業があらゆるテクノロジーやサービスを電子メールサービスプロバイダーに依存することは、今では少なくなっています。キャンペーンの迅速な実行力を高めるために、外部の代理店とテクノロジーの連携をおこなったり、社内で担当する業務を増やしたりする企業が増えています。また、こうした変化により、キャンペーンやデータ、コンテンツ、配信に対する企業の自主性も高くなっています。そのため、電子メールサービスプロバイダーは、大規模な電子メールマーケティングプログラムの作成、パーソナライズ、配信をおこなうための企業向け機能(カスタムドメインや無制限ストレージなど)を追加するようになっています。また、キャンペーンの開始までの時間を短縮する機能も提供しています。
このような変化が原因で、電子メールサービスを利用する企業は運用にかける時間を減らし、戦略に多くの時間を割くようになっています。過去には、これらのツールが備えていた特徴や機能の多くは非常に扱いにくく、ジュニアレベルの職を中心に離職が起きていたので、企業は戦術的戦略だけに多大な時間を費やしていました。電子メールというメディアがこれまであまり進歩してこなかった原因のひとつは、こうした状況にあります。
しかし現在では、ディープリンク機能を備えた電子メールなど、インタラクティブ性を強化した電子メールを実現するGoogle AMP for Emailのようなプロバイダーが登場しています。この機能は電子メール上でwebサイトとほとんど同じ動作を実現するので、消費者は電子メールから離れることなく、製品の購入、動画の視聴、リンクのクリック、調査への参加などをおこなえます。今後のさらなる機能の進歩に合わせて、引き続き、電子メールを介したユーザーインタラクションと全体的な顧客体験は向上していくでしょう。