ヘッドレスCMSとは?オムニチャネル配信の仕組みや利点を解説

ヘッドレスCMSとは、コンテンツの配信レイヤーからプレゼンテーションレイヤーを分離したCMS(コンテンツ管理システム)です。フロントエンド開発者はこのテクノロジーを利用すれば、コンテンツリポジトリーから直接、HTTP APIを介してコンテンツにアクセスし、そのコンテンツを様々なチャネルに配信できます。

目次

  • ヘッドレスCMSとは何ですか?
  • ヘッドレスCMSはどのように開発されましたか?
  • ヘッドレスCMSを使用する利点は何ですか?
  • ヘッドレスCMSとハイブリッド型CMSの違いは何ですか?
  • ヘッドレスCMSを使用する場合の課題は何ですか?
  • ヘッドレスCMSと静的サイトジェネレーターの違いは何ですか?
  • ヘッドレスCMSのアーキテクチャは今後どう変化しますか?

重要ポイント

ヘッドレスCMSに関する様々な疑問に、Mathias Siegelが回答します。Mathiasは、Adobe Experience Manager Sitesのプリンシパルプロダクトマネージャーです。製品管理を監督しており、アドビのwebコンテンツ管理機能の開発に関する計画、優先順位付け、エンジニアリング部門との連携などを管理しています。

ヘッドレスCMSとは何ですか?

ヘッドレスCMSとは、オムニチャネルコンテンツ配信を容易に実現できるようにする、開発者向けのシステムです。開発者は、コンテンツを取得し、どこにでも配信することができます。ヘッドレスCMSを使用すると、CMSからコンテンツを取得し、好みのツールで任意のフロントエンドに配信することが可能になります。その際の手順は使用するCMSの種類により異なります。

純粋なヘッドレスCMSには、コンテンツリポジトリーしか含まれていません。APIを使用すればコンテンツを取得することはできますが、それを表示する機能がありません。表示機能を使用する場合は、UI(ユーザーインターフェイス)を新たに作成する必要があります。ヘッドレスCMS機能に加えて、強力な機能を備えたCMSも存在しています。

ヘッドレスCMSの一例として、フロントエンドにwebブラウザーで実行される純粋なJavaScriptアプリケーションを配置し、バックエンドシステムから取得したコンテンツを使用してエクスペリエンスを生成する仕組みを挙げることができます。ヘッドレスCMSでは、サーバー上でその他のHTMLが生成されません。ヘッドレスCMSは、モバイルアプリやIoTデバイス、チャットボット、音声アシスタントへのコンテンツ配信にも使用されます。

エクスペリエンス管理ではこうしたアーキテクチャに加えて、フロントエンドアプリケーションとコンテンツリポジトリーが通信するためのAPIが必要です。あらゆるヘッドレスアーキテクチャには、フロントエンドのアプリケーションとバックエンドのコンテンツリポジトリーを仲介するAPIが欠かせません。このAPIが、実装されたヘッドレスCMSがバックエンドリポジトリーからコンテンツを取得するためのゲートウェイになります。

ヘッドレスCMSを使用するアプローチは、webアプリ、モバイルデバイス、IoTデバイスなどの様々なデバイスやチャネルへの迅速なコンテンツ配信に役立ちます。

ヘッドレスCMSはどのように開発されましたか?

ヘッドレスCMSは、過去数年間のトレンドが重なったことで生み出されたシステムです。ひとつ目のトレンドは、エンドユーザーが常に即座の結果を求めることです。誰もが迅速なwebエクスペリエンスを求めています。

ふたつ目のトレンドは、モバイルデバイス人気の高まりです。モバイルは、ブラウザーにHTMLを送信せずに、モバイルアプリケーションのみを対象とするという、従来とは異なるフロントエンドを備えた最初のチャネルでした。初期のスマートフォンでは、低速な接続を利用してwebページを読み込むのが大変だったので、開発者が解決策を探し始めることになりました。

3つ目のトレンドは、フロントエンド開発者の増加とツールの充実です。フロントエンド開発者の役目は、エクスペリエンスを表示するクライアントサイドアプリケーションの開発です。こうした開発者向けのクライアントサイドアプリケーション開発用ツールはここ数年の間に増加しており、完成度も高くなっています。

この3つのトレンドが重なり、サーバーサイドでのHTMLレンダリングから、チャネルと目的に応じてクライアント上で直接エクスペリエンスをレンダリングする方式への潮流が生まれました。

モバイルアプリケーションが急成長した理由のひとつは、この種のアプリケーションに、ごく短時間でコンテンツの表示や切り替えをおこなえる特性があることです。この点とフロントエンド開発ツールの増加が、ヘッドレスCMSの導入を加速しています。

ヘッドレスCMSを使用する利点は何ですか?

ヘッドレスCMSを使用すると、より迅速にwebエクスペリエンスを提供することに加えて、web開発者が使いやすいツールやフレームワークを柔軟に選択することができます。つまり、HTMLの生成とレンダリングをおこなううえで、特定のアプリケーションスタックに縛られることがなくなります。現在では、アプリケーションプログラミングインターフェイス(API)を介してバックエンドコンテンツリポジトリーと通信し、特定のユースケースやチャネルでコンテンツをレンダリングする専用のアプリケーションを作成することができます。コンテンツAPIは、異種のテクノロジーやプラットフォーム間のやり取りを可能にします。

ヘッドレスCMSとハイブリッド型CMSの違いは何ですか?

純粋なヘッドレス型のCMSアーキテクチャは、コンテンツリポジトリーだけを備え、表示機能を持ちません。この方式では、新しいエクスペリエンスの開発やテストのハードルが下がり、迅速な実行が可能になる一方で、カスタム実装のための管理が難しくなる場合もあります。

ハイブリッド型のヘッドレスCMSはデカップルドCMSとも呼ばれ、HTMLをブラウザーに送信する従来のCMSとヘッドレスCMSの中間的な存在です。ひとつのチャネルだけでなく、オムニチャネルのエクスペリエンスをサポートしており、社内の様々な部門をまたいでコンテンツを管理できます。その一方で開発者には、チャットボットや音声アシスタント、その他のIoTデバイスといったあらゆるエンドポイントへの配信コンテンツに直接アクセスするためのシンプルなツールを提供します。

ハイブリッド型CMSを使用すると、ヘッドレスコンテンツ管理に必要な機能に加えて、他の一通りの機能もすぐに使用できるので、オーサリングやマルチサイト管理、言語翻訳などの機能を一から作成する必要はありません。自社のwebサイトからヘッドレス方式でコンテンツを再利用するという、純粋なヘッドレスCMSではできないことも可能です。純粋なヘッドレスCMSは、グローバルなwebサイト運営に欠かせない強力な機能を駆使したマルチページwebサイト管理に対応しておらず、ヘッドレス方式でコンテンツを再利用することもできません。

ハイブリッド型CMSを導入して、新旧両方のエクスペリエンス管理方式をサポートすることには、多くの利点があります。webエクスペリエンスを作成する新たな手法にはそれなりの困難もあるので、多くのwebコンテンツ所有者は、ビジネスにとって意味のある方法で新技術と従来のwebサイトやページを組み合わせています。

ヘッドレスCMSを使用する場合の課題は何ですか?

ヘッドレスCMSを運用する場合は、組織的な課題に対処する必要があります。ヘッドレスCMSシナリオでの長期にわたるコンテンツ管理では、主な役割が開発者に集中します。なぜならば、コンテンツエクスペリエンスを継続的に管理するには、コンテンツに対するIT開発者の関与が必要になるからです。通常、このシナリオでは、マーケターなどの事業担当者は、自らの手でコンテンツ(またはプレゼンテーション)を変更することができなくなります。

あらゆる変更が、アプリケーションを作成した開発者頼みになる場合も珍しくありません。そのため、開発者が従業員ではない場合や、ヘッドレスCMSアプリケーションの開発を外注した場合は、そのアプリケーションや関連コンテンツに対する変更はすべて、社外でおこなわなければならなくなります。このような状況では、企業のコンテンツ運用が大幅にスローダウンし、webエクスペリエンスに対する更新や変更のコストがかさむ可能性があります。こうした理由もあって、コンテンツ所有者が時間と価値にもとづく指標を使用して、コンテンツ管理の手法と適用場所を決定する傾向が強まりつつあり、その結果、さまざまなユースケースや優先事項ごとのアプローチから最適なものを組み合わせる動きが高まっています。

ヘッドレスCMSと静的サイトジェネレーターの違いは何ですか?

端的に言えば、静的サイトジェネレーターは静的なwebページやサイトを生成するツールのことを指します。webコンテンツの大半が動的になり、webエクスペリエンスがコンテクストにもとづいた分析パーソナライゼーションに主導されている現在では、採算のとれる静的サイトジェネレーターのユースケースは限られています。ヘッドレスCMSの機能を示すサンプルデモとして使用されることもあります。

ヘッドレスCMSのアーキテクチャは今後どう変化しますか?

今後も、ヘッドレスCMSは急速な革新を続けることでしょう。フロントエンドフレームワークは進化を続け、旧式のツールは廃れ、新たな優れたツールにとって代わられます。迅速なプログラミングが可能で、チャネルや目的に結びついたクライアントアプリケーションの魅力は、さらに増大していきます。利用者からすれば、こうした傾向により、この目まぐるしい発展をみせる領域で革新のサイクルについていく負担が生じ続けるでしょう。

一方で、大企業向けソリューションには、新しいアプローチやユーティリティがますます組み込まれていきます。また、大規模なコンテンツ管理の要件に、最先端のweb開発がもたらす利点を組み込む試みがなされるでしょう。

エンドユーザーが重視されることはこれからも変わりません。利用するチャネルやデバイスにかかわらず、これまで以上のスピードと魅力を備えたwebエクスペリエンスを、いつでも楽しむことができるようになります。

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