セールスパイプラインとは:概要、重要性、売上を促進する方法
たとえ営業プロセスを標準化できていたとしても、多くの企業では売上目標の達成に苦慮しています。営業プロセスの途中でリードが古くなったり、失ってしまったりすることはよくあることです。
セールスパイプラインは、見込み客の追跡や、販売に向けた育成に必要な可視性をチームに提供します。しかし、セールスパイプラインを一から構築したり、現在のパイプラインを見直したりすることは、大変な作業のように思えます。あらゆる企業では、既にさまざまな戦略やツールを利用していることと思いますが、効率的なセールスパイプラインなくして成功は望めません。
この記事では、どのようにセールスパイプラインを構築し、最適化するのかを包括的に解説します。
セールスパイプラインとは?
セールスパイプラインとは、潜在的なビジネス取引を視覚的に表現したもので、営業部門がその取引を開始し、成約させるまでのステップを表したものです。 成約する可能性が高い取引、その潜在的な価値、そして営業部門のパフォーマンスに関するインサイトを提供します。
セールスパイプラインは、営業プロセスを特定のフェーズや個々のタスクに分解し、営業プロセス全体を管理しやすくします。また、営業プロセスで失敗するポイントや、改善が必要なステップを特定するのにも役立ちます。営業担当者がノルマを達成しているかどうか、どの取引が最も成立しやすいか、どの取引が行き詰っているかなどを正確に把握することができます。
セールスファネルとセールスパイプラインの違い
セールスファネル と セールスパイプライン は似たような意味で使われることが多いのですが、ふたつの異なる戦略を指しています。
- セールスファネル は、顧客の視点でカスタマージャーニーを可視化したものです。ニーズの把握から、製品の調査、製品の比較、購入に至るまで、バイヤーがたどる過程を可視化します。通常、マーケティング目的で使用されますが、営業部門も少なくともファネルの最下部で関与します
- セールスパイプライン は、セールスオペレーションでの観点からバイヤージャーニーを可視化したものです。見込み客の特定から、機会の調査、商談、成約に至るまで、営業部門が取るべきステップを図式化したものです。セールスパイプラインは営業部門のみで使用されます
パイプラインを構築する前に考慮すべきこと
パイプラインの構築や見直しを実施する前に、ターゲットオーディエンスや自社の目標について具体的な情報を収集します。必要な内容は市場や業界によって異なりますが、有意義なセールスパイプラインを構築するための基本的な前提条件は3つあります。
- 見込み客を知る:ターゲットオーディエンスに関する情報を収集し、バイヤーペルソナを構築または更新することから始めます。優良顧客から始めるとよいでしょう。業種、規模、市場シェアなどのハードデータだけでなく、悩みや顧客独自の課題などのソフトデータも含めるようにしましょう。バイヤーペルソナをより具体的かつ詳細に設定すれば、セールスパイプラインもより詳細で、機能的なものにすることができます。バイヤーペルソナは、ターゲット全体を表すために必要な数だけ作成します
- ターゲットと目標を設定する: セールスパイプラインには、営業部門および各担当者のの目標やゴールを設定する必要があります。これらは、企業全体の目標を反映したものです。パイプラインに明確な目標を設定することで、営業部門全体の生産性を把握し、営業プロセスにおける失敗のポイントを特定することができます。目標がなければ、成功や説明責任を評価するためのベンチマークを欠くことになります
- 関係者と調整する:セールスパイプラインの構築プロセスを関係者に公開しましょう。 構築プロセスを共同作業にすることで、自社の営業プロセスに固有の要因に沿ったパイプラインを設計するために必要なインサイトを得ることができます。営業部門の全員にパイプラインの構造について発言権を与えることで、コラボレーション、コミュニケーション、取引管理が効果的なものになります
セールスパイプラインの構築方法
セールスパイプラインは、企業によって少しずつ異なります。まずは基礎固めから始め、フィードバックとレビューを繰り返しながら、顧客のコンバージョンパスに合わせたパイプラインを構築していきましょう。
1.パイプラインのステージを定める
見込み客の認知から購入までのステージを明確化し、各ステージで必要なセールス活動を決定します。一般的に、セールスパイプラインのステージは、セールスファネルのステージと一致しているため、セールスファネルのモデルを見直すことから始めるとよいでしょう。
セールスパイプラインの各ステージは、顧客のタイプや提供する製品やサービスによって異なりますが、少なくとも5つの基本的なステージがあります。
リードジェネレーション
常に、リードを見つけることが最初のステップであり、プロスペクティングやディスカバリーとも呼ばれます。パイプラインのこのステージは、セールスファネルおよびマーケティングファネルの 認知 ステージと一致し、一般的にマーケティング部門はここに注力しています。企業によっては、営業部門とは別に、リードジェネレーション専用の戦略やチームがあるところもあります。
しかし、営業担当者もリードジェネレーションに携わることができます。マーケティング部門やリードジェネレーションチームと協力して、新しいリードをどのように調達しているかを確認し、戦略のギャップを見極めるようにしましょう。営業部門の理想的な顧客像(ICP)をやり取りに取り入れ、マーケティング部門が計画を立てていない顧客層やペルソナにアプローチする機会を探しましょう。
クオリフィケーション
リードクオリフィケーションとは、パイプライン内にあるリードをレビューし、コンバージョンする可能性のあるリードと追跡する価値のないリードを早期に見極める営業プロセスのことです。セールスパイプラインにおける クオリフィケーション は、一般的に、セールスファネル内の 興味・関心 ステージと一致しています。
たとえば、あるリードは、他のリードよりも顧客生涯価値(CLV)が高かったり、コンバージョンに至るまでに多くの労力を必要とする場合があります。リードクオリフィケーションプロセスを構築し、営業プロセスにとって重要な基準に従ってリードをランク付けし、優先順位を付けます。
- 潜在的な顧客生涯価値
- 意思決定力
- バイヤージャーニーにおける位置付け
営業部門は、リードクオリフィケーションプロセスにより、最小の投資で最大の価値をもたらす可能性のある見込み客に努力を集中させることができます。これにより、売上目標を達成したり、それを上回ったりすることができるようになります。
コンサルテーション
コンサルテーションステージでは、リードと営業部門がコンタクトします。パイプラインのこのステージは、一般的に、セールスファネルの 欲求 ステージと一致します。
多くのバイヤーやリードは、ファネルの最初の部分で学習することを好むため、リードが購入の意思を示したときにコンサルテーションが始まることがよくあります。一部の企業では、マーケティングクオリファイドリード(MQL)が十分に育成され、セールスクオリファイドとみなされる時期を判断するために、リードスコアリングを利用しています。
コンサルテーションステージは、一回のコミュニケーションで済む場合もあれば、数カ月かけて関係を構築していく場合もあります。リードの数が多い場合や、意思決定に至るまでに数回のミーティングが必要な場合は、コンサルテーション を コンタクト、ミーティング、デモ の各ステージに分けることができます。
最終目的は、見込み客にコミットメントにつながる行動をとってもらうことです。これは、製品デモや再ミーティングの日程調整であったり、製品やサービスを検討する際に潜在顧客が必要とする追加情報の要求であったりします。
交渉
セールスパイプラインの交渉ステージでは、営業部門がリードとの取引条件を最終調整します。一般的に、交渉 はセールスファネルの 欲求 や 行動 のステージと一致します。
交渉は、数通のメールを送るだけの簡単なものから、数回のミーティングを必要とするものまであります。リードは、より柔軟な支払いスケジュール、大量購入による割引などの譲歩を要求するかもしれません。
取引の成立可能性や、交渉に要する妥当な時間など、具体的な判断基準を作成しましょう。これにより、営業部門は、譲歩できない具体的な条件を確認し、交渉を中止して新たなリードを追求すべきタイミングを知ることができます。このようなルールがないと、交渉が長引いたり、見込み客が興味を失ったり、取引を進めるために営業部門が多くのリソースを消費してしまったりする可能性があります。
クロージング
セールスパイプラインの クロージングステージ は、通常、提案書(取引に関するあらゆる交渉を含む)から始まり、新規顧客のオンボーディングで終了します。セールスパイプラインのこのステージは、セールスファネルの 行動 ステージと一致しています。
営業部門は、クロージングステージで起こりうるあらゆる展開について、いくつかのプロセスを定義する必要があります。
- レビュー期間: 顧客が提案書をレビューする時間です。特に、複数の関係者の承認が必要な場合は、そのための時間を確保します
- クロージングの成功および移行: 提案が受理されたら、新規顧客を、サービスや製品を提供する部門にスムーズに引き渡す必要があります
- 却下: 交渉を完了した後でも、提案が却下されることがあります。営業部門は、このような場合に従うべき明確なプロセスを必要としています。たとえば、提案を却下された理由を明確にする、リードから最新のニーズを収集する、再交渉する、などのステップが考えられます
- コールドリード: リードは常にコールドリードになる可能性があります。提案書を送った後にこのような状態になった場合に、リードをセールスパイプラインの初期ステージに戻したり、パイプラインから外したりするプロセスを確立し、行き詰まったリードにさらなるリソースを費やさないようにすることが必要です
2.ターゲットと理想的なバイヤーを特定する
セールスパイプラインのステージを定めたら、ターゲットとなる人物や企業を特定します。バイヤーペルソナを利用して、ターゲット市場の理想的な顧客を特定します。そうすることで、パイプラインをすぐに埋めることができる見込み客のリストができるはずです。
潜在的なリードの数とコンバージョンの可能性を把握します。そうすることで、パイプラインの中で適切に配置することができます。営業部門が現在の見込み客への対処方法を把握したら、バイヤーペルソナを利用して新しい見込み客を探します。
見込み客を特定したら、それぞれの見込み客に接触するための最適な方法を分類します。電話で話すことを好む人もいれば、メールやテキストメッセージでコミュニケーションを取りたい人もいます。見込み客と連絡を取る方法を間違えると、連絡が取れなくなる可能性があるので、これらのインサイトを記録しておきましょう。
3.指標を定め、データを収集する
セールスパイプラインの各ステージで使用する指標を定め、見込み客が次のステージに移るタイミングを確認し、セールス目標に対する進捗を測定するために使用します。また、これらの指標は、データ収集と分析をより重要な情報に注力するのに役立ちます。
- 取引数:現在パイプラインにある潜在的な取引の数です。この指標によって、優良な商談が何件あるのかを把握し、自社の目標達成に向けて順調に進んでいるかどうかが明らかになります。
- 成約率:見込み客が顧客にコンバージョンする割合です。この指標は、新規取引の成約数の営業目標を達成するために、パイプラインにどれだけの取引が必要かを示しています。また、個々の営業担当者のパフォーマンスを測定するのにも役立ちます
- 平均取引額:一件当たりの平均売上額です。この指標は、企業全体の売上目標を達成するために、セールスパイプラインにどれだけの案件が必要かを示しています
- 次ステージへのコンバージョン率:パイプラインのあるステージから次のステージに移行するリードの割合を示しています。この指標は、パイプラインのどのステージに効果があり、どのステージの見直しが必要かを特定するために使用できます
以上が優れた基本指標ですが、ニーズに応じて他の指標を優先してもよいでしょう。どのような指標を利用しても、パイプラインのどの部分に効果があるのか、目標達成のペースを維持しているかどうかを確認するのに役立つはずです。
4.見込み客をパイプラインに導く
既存の取引をパイプラインの適切なステージに注意深く配置します。あらゆる見込み客を最初からパイプラインに配置する必要はありません。育成済みのリードや購入に近づいているリードは、初期ステージをスキップして、コンサルテーション や クロージング のステージに入れることもあります。
営業部門は、まず、コンサルテーション ステージの取引に注力しましょう。このステージでは、見込み客に自社の価値を証明するために必要な作業のほとんどをおこないます。リードとのやり取りを通じて関係を構築し、リードのセグメンテーションに必要な情報を収集します。
リードをセグメンテーションすることで、特定のニーズや予算などのセグメントに共通の属性にもとづいて顧客に対応できるようになります。見込み客をさまざまなセグメントに分類することで、営業担当者はコンサルテーションや交渉に個別のアプローチを適用し、取引を成立させる可能性を高めることができます。
5.パイプラインを改善し、最適化する
セールスパイプラインを改善するためにデータを収集することは、継続的なプロセスです。必要に応じてステージを追加、調整、削除し、コンバージョンに至る道筋を改善するためにタスクを効率化します。顧客データを利用して、標準的なフォローアップ手順を構築することで、取引を継続的に進め、失注や放置を防ぐことができます。
セールスパイプラインが長い場合や、リードが多数存在する場合は、収集した膨大なデータを記録、整理、活用する方法が必要です。優れた顧客関係管理(CRM)ソフトウェアでは、これらの情報を保存、分析し、リアルタイムでアクセスすることができます。また、営業担当者は、新規アカウントであっても、取引状況を把握し、それに対応することができるようになります。
常に新しいリードでセールスパイプラインを満たしましょう。定期的に、パイプラインの健全性に関するミーティングを開催し、レポートを作成することで、課題を早期に発見し、必要に応じて変更を加えることができます。セールスパイプラインのレビューを実施し、各営業担当者からフィードバックを収集し、売上目標の達成に役立てるのもよいでしょう。
6.パイプラインを定期的にクリーニングする
パイプラインに滞留している取引を定期的にクリーニングし、肥大化を防ぎましょう。取引をパイプラインから取り除く際の判断材料にする滞留時間は、企業の目標や、コンタクトから取引失注までに要した時間などの過去のデータを参考にします。見込み客をパイプラインから取り除く前に、必ずフォローアップおこない、好印象を残すようにしましょう。
このクリーニングプロセスは、セールスパイプラインを改善する機会として捉えましょう。滞留取引を取り除くことで、パイプラインをスムーズに稼働させることができ、パイプライン全体の健全性を維持することができます。営業部門のパフォーマンスについても、より明確に把握することができるようになります。また、成功事例や改善機会を特定することができるようになります。さらに、パイプラインデータが改善されるので、より正確な売上予測を立てることができるようになります。
取引の優先順位付けができるCRMでパイプラインを構築すれば、より分かりやすくなります。CRMを利用すれば、顧客とのやり取りを残らず記録し、いつでも記録した情報にアクセスすることができます。また、リスタートする可能性が高い滞留取引を発見して、適切なパイプラインのステージに移動させることもできます。
セールスパイプラインの構築を始める
強固なパイプラインを構築し、維持することで、営業部門が商談をまとめ、自社の目標を達成するための調整をおこなうのに必要なインサイトを得ることができます。まず、理想的な顧客プロフィールを構築し、自社のソリューションに合致しないリードに時間を費やすことがないようにします。そして、ステージとプロセスを明確に定義して、途中で迷うことがないようにし、見込み客を次のステージにスムーズに移行させます。
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