ユーザー生成コンテンツ(UGC)入門ガイド
かつて企業は、マーケティングをラジオ、テレビ、雑誌などの伝統的なメディアに依存していました。しかし、今日では、企業が認知度や売上を高めるための選択肢はかつてないほど増えています。マーケティング予算を最大限に活用し、コンテンツを制作して、オーディエンスのエンゲージメントを高めたいと考えている企業にとって、ユーザー生成コンテンツ(UGC)は優れた手段となります。
ここでは、UGCがユーザー間の強いコミュニティ意識を構築し、信頼とロイヤリティを高めるのに効果的である理由を、以下の項目に従って解説します。
- ユーザー生成コンテンツとは?
- ユーザー生成コンテンツの利点
- ユーザー生成コンテンツの種類
- ユーザー生成コンテンツの供給元と入手方法
- ユーザー生成コンテンツのベストプラクティス
- ユーザー生成コンテンツの優れた実践例
- ユーザー生成コンテンツとインフルエンサーマーケティング
ユーザー生成コンテンツとは?
ユーザー生成コンテンツとは、企業、企業の従業員、代理店などではなく、顧客や企業の支持者によって制作された企業に関連するンテンツのことを指します。 ユーザー生成コンテンツには、Instagramにおける新商品に関するファンの投稿、TikTokにおける顧客の商品開封動画、webサイトにおける顧客の評価など、さまざまな形態があります。
ユーザー生成コンテンツの利点
ユーザー生成コンテンツに価値があるのは、それが効果的だからです。実際、「The State of User-Generated Content」レポートによれば、消費者の72%が、企業が自社商品について語るよりも、顧客の意見の方が信頼できると考えています。消費者がユーザー生成コンテンツを好むことで、それを活用する企業は、次のような効果を期待できます。
信頼の構築
顧客の多くは、広告主やマーケター、あるいは企業を信用していません。この一因には、ソーシャルメディアの台頭とコンテンツの民主化があります。マーケターとは異なり、ソーシャルメディアのユーザーは、ほとんどの場合、企業と利害関係がないため、本物で信頼できるとみなされています。ユーザー生成コンテンツは、口コミ広告のデジタル版として機能し、個人的な推薦によってつながりを生み出し、ストーリーを伝えることができます。
ブランドロイヤルティの構築
顧客は、企業のwebサイトやソーシャルメディアのページで紹介されることで、企業のストーリーに関与していると感じ、エンゲージメントを深めることができます。「The State of User-Generated Content」レポートによれば、消費者の64%が、オーディエンスによるコンテンツを再共有している企業について投稿する傾向があります。ユーザー生成コンテンツは、顧客に、ソーシャルメディアのエコシステムにおいて自然で重要な要素であるコミュニティの感覚をもたらします。
企業の信頼性の向上
顧客は、企業に対して信頼性と透明性を求めています。従来のマーケティング手法は、計算ずくであり、信頼を置けないみなされることがありますが、ユーザー生成コンテンツは、他のユーザーから直接発信されたものであるため、信憑性があるとみなされています。ユーザー生成コンテンツは、一般的なマーケティング施策ほど洗練されていないため、素直に受け止めてもらえます。
コンバージョン率の向上
ユーザー生成コンテンツは、商品ページやメールマーケティングでのコンバージョン率を向上させます。「Power Reviews」レポートによれば、ユーザー生成コンテンツに接するオーディエンスは、コンバージョンする可能性が100.6%高くなります。ソーシャルプルーフは、成約のための効果的なツールであり、ユーザー生成コンテンツは、ソーシャルプルーフを容易に特徴づける方法です。
容易な拡張
企業が成長するにつれ、利用できるユーザー生成コンテンツの量も増え、マーケティングニーズに合わせてさまざまなタイプのコンテンツ(動画、静止画、体験談など)を選択し、組み合わせて利用できるようになります。コンテンツを検索して収集するプラットフォームを利用することは、時間と労力を節約するための簡便な解決策です。
ROIの向上
ユーザー生成コンテンツは、大半のマーケティングメディアよりもコストがかかりません。顧客は、コンテンツの制作を依頼されれば、コミュニティに属しているように感じたり、好きな企業と接することができるため、進んでコンテンツを制作してくれるでしょう。ユーザー生成コンテンツには、コンテンツを自社で制作するための多大な時間やコストが発生しないにもかかわらず、優れたコンテンツの利点を企業にたらしてくれます。
ユーザー生成コンテンツの種類
ユーザー生成コンテンツには、企業との距離感によって、さまざまな種類があります。しかし、どの種類のユーザー生成コンテンツも、ブランドの構築や認知度向上の重要な要素であり、健全な戦略には、さまざまな種類のユーザー生成コンテンツを活用することが必要です。
ビジュアルコンテンツ
ビジュアルコンテンツには、画像、動画、ライブストリームなどがあります。ユーザー生成コンテンツの中で最も一般的な種類であり、ソーシャルメディアや電子メールなどのマーケティング施策ですぐに再利用することができます。ビジュアルコンテンツには、商品やサービスを使用している人物、企業イベントに参加している利用者の写真、利用者が自分の感覚で商品を紹介している様子など、多種多様な種類があります。
動画コンテンツには、商品の開封、ライブストリーミングによるレビュー、商品デモ、あるいは商品とは関係のない動画に映った商品など、さまざまなものがあります。利用者が商品を使い、楽しんでいる様子を写真や動画で投稿することで、他の人も自然にその商品を試したくなります。
レビューと評価
多くの顧客はレビューや評価を残すことを好みますが、これは将来の顧客が購入を決定する際に非常に有用です。顧客は、レビューが真実であると思い、企業の言葉よりもレビューの方を信用します。評価は、数回クリックするだけで投稿できるため、顧客に関与してもらう簡単な方法です。
そして、どちらも非常に汎用性の高い方法です。Amazonのようなオンライン小売事業者のページに表示されるもの以外にも、メール施策やソーシャルメディア、個々の商品ページでレビューを利用することで、ショッピング体験を向上させることができます。これらの評価は、優れた広告施策よりも説得力がある場合があります。
ソーシャルメディアの記事
ユーザー生成コンテンツは、多くの企業のソーシャルメディア戦略において主要な位置を占めています。ユーザー生成コンテンツをソーシャルメディア戦略の一環として活用する方法は数多くあります。たとえば、Twitterで好意的なレビューのスクリーンショットを共有し、それを企業のInstagramアカウントに投稿することができます。あるいは、TikTokを再投稿して、Instagramのリールとしても使用することもできます。ユーザー生成コンテンツをさまざまなソーシャルメディアプラットフォームで利用し、最大限に活用しましょう。
UGCの供給元
ユーザー生成コンテンツは、さまざまな情報源から入手できます。ユーザーの投稿をどこで探すかは、求めるコンテンツの種類によってまったく異なります。業界によっては、その業界特有の情報源があるかもしれませんが、多くの企業にとって、ユーザー生成コンテンツの主な供給元は次の3つです。
- 顧客: 多くのユーザー生成コンテンツは、自社の商品やサービスについて投稿する顧客から得られます。顧客は、ユーザー生成コンテンツを自発的に投稿することもあれば、メール施策に応えてレビューや意見などのコンテンツを投稿することもあります。
- ブランドの支持者: ブランドの支持者は、すでにロイヤルティの非常に高い顧客であり、純粋に楽しみのために、商品やサービスに関するコンテンツを制作します。このグループは、特定の作品を制作するように依頼されることもあります。ブランドと支持者の関係は貴重なものであり、大切に育てる必要があります。
- 従業員: 従業員が制作したコンテンツは、厳密にはユーザー生成コンテンツではありませんが、従業員は、企業の本質を表すコンテンツを制作することができます。これには舞台裏の画像や動画などがあります。従業員も、顧客と同じように、商品やサービスを純粋に愛し、使用している人たちであることを示すには、この種類のコンテンツが最適です。顧客によっては、大きな組織よりも特定のオンラインパーソナリティに興味を示す人もいるため、従業員をソーシャルメディアのインフルエンサーとして位置づけることもできます。
ユーザー生成コンテンツの入手方法
さまざまな種類のユーザー生成コンテンツについて解説してきましたが、次にそのコンテンツを探し、収集する方法をご紹介します。
検索
自社に関するコンテンツは、すでに制作されている可能性があります。ソーシャルメディアプラットフォームで、自社名やソーシャルチャンネルで使用しているハッシュタグを検索してみると、すでに存在しているコンテンツを確認できます。あとは、紹介したいコンテンツを選び、クリエイターに連絡して、共有の許可を求めるだけです。
共有可能な体験の構築
デジタル時代においても、生の体験は重要です。視覚的に見栄えのする店構え、美しい商品、没入感のあるイベントなど、オンラインで共有したくなるようなものを生み出すことで、顧客に企業をアピールしてもらうことができます。
依頼
企業のユーザー生成コンテンツの作品集を構築する最も簡単な方法は、顧客にそれを求めることです。これは、ソーシャルメディアで共有を促すという単純なものでも、体験談や動画など、特定の種類のコンテンツに対するより具体的な依頼でもかまいません。
また、ハッシュタグを付けてマーケティング施策を実施し、顧客やファンのユーザー生成コンテンツを簡単に見つけることができるようにすることもできます。
コンペティションの開催
ユーザー生成コンテンツの依頼を一歩先に進め、懸賞付きのコンテストを実施します。自社のソーシャルメディアでのプレゼンスが十分に大きい場合は、単に企業アカウントでの紹介を賞品にすることもできます。
適切であれば、マーケティング施策に組み込むなど、何らかの形で企業の顔として顧客のコンテンツを使用することもできます。これは、企業にとって、オンライン、テレビ、印刷物の施策が重要である場合、または企業がソーシャルメディアの支持者を増やしている途中である場合に、特に魅力的な方法かもしれません。また、賞品は、商品の無料提供、1回限りの割引コード、イベントへの参加権など、顧客にとって価値のあるものであれば何でもかまいません。
コンテンツ収集ツールの利用
既存のユーザー生成コンテンツを自動的に探して収集するツールを使えば、自分で探さなくてもコンテンツを見つけることができます。ユーザー生成コンテンツ収集ツールは、さまざまなソーシャルメディアプラットフォームで、自社について言及していたり、タグ付けしていたりする投稿を探し出し、レビューに関連する投稿をキュレーションすることができます。
ユーザー生成コンテンツのベストプラクティス
ユーザー生成コンテンツを収集したら、次はその活用方法について考えまます。時間をかけて独自のベストプラクティスを確立していくことになりますが、力強いスタートを切るのに役立つ実証済みの戦略がいくつかあります。
目標を設定し、計画を立てる
ユーザー生成コンテンツの世界は、一見単純明快に見えますが、準備が不十分だと手に負えなくなることがあります。ユーザー生成コンテンツの活用を始める前に、まず何を達成したいのか、そして進捗を測るためにどのような指標を用いるのかを決めましょう。これらの目標にもとづいて、どれだけのコンテンツを集めるかを決め、1日1回や週1回などの投稿頻度を決めます。このように計画を立てておくことで、後々の面倒な作業を軽減することができます。
チャンネルごとにコンテンツを使い分ける
ソーシャルメディアやマーケティングチャネルごとに、適切な種類のユーザー生成コンテンツを選択することは非常に重要です。ユーザー生成コンテンツを投稿する適切な場所を決めることは、さまざまなプラットフォーム、ブランドボイス、そして顧客について把握することを意味します。たとえば、画像は電子メールや商品ページに掲載したほうがよいかもしれませんし、面白い動画はTikTokに掲載したほうがよいかもしれません。写真によっては、Instagramでは見栄えがしても、Twitterでは見落とされる可能性があります。また、ユーザー生成コンテンツによっては、複数のプラットフォームで有効なものもあるので、その際は双方に投稿しましょう。
顧客に明確に伝える
ユーザー生成コンテンツを依頼する場合は、どのようなコンテンツを求めているのか、それを使って何をするのか、コンテンツが選ばれた場合に賞品があるのか、などをコミュニティに通知するようにします。問題を回避するために、法律の専門家の助言を受けて規則や利用規約を作成するとよいでしょう。
常に許可を求め、ユーザーをクレジットする
誰かが自社のハッシュタグを使用したり、タグ付けする場合を考慮して、コンテンツを共有する際には常に許可を得るようにしましょう。これにより、ユーザー生成コンテンツのガイドラインに従う以上に、オーディエンスやコミュニティの人々との信頼関係が構築されます。同意が得られたら、投稿に制作者のクレジットとタグを付けることも必要です。TwitterやInstagramなどのプラットフォームでは、ユーザーが制作したコンテンツをプラットフォーム上で共有すると、自動的にそのユーザーのクレジットが表示されます。
すべてのソーシャルメディアにおける成功を目指さない
ソーシャルメディアは、それぞれ利用者が異なるため、それらすべてで成功を収めることは困難です。あらゆるソーシャルメディアで成功しようとするのではなく、自社に最も適したもの見つけ、そこに大半の活動を集中することが効果的なソーシャルメディア戦略です。
自社ブランドがユーモアと親和性があり、短く表現しやすいものであれば、Twitterが適しているかもしれません。若年層が多い場合は、TikTokから始めるとよいでしょう。美的センスに優れ、写真映えする商品を多く扱っているのであれば、Instagramが最適かもしれません。
トレンドの変化は激しいので、他のソーシャルメディアも模索する価値はあります。他のメディアを使いこなし、存在感を示したいところですが、あまり無理はしないでください。
ポジティブなコンテンツを紹介し、ネガティブなコンテンツは改善に役立てる
ソーシャルメディアには否定的な意見が多く、企業のユーザー生成コンテンツにも当てはまります。不満のある顧客から悪い評価や動画を受け取ることは避けられないでしょう。たとえ自社を擁護したくなったとしても、ネガティブなコンテンツに注意を向けるのはやめましょう。ネガティブなコンテンツは、自社ビジネスがうまく機能していない可能性がある部分を特定し、それを改善する戦略を実行する機会として利用しましょう。
ユーザー生成コンテンツの優れた実践例
ユーザー生成コンテンツについて理解を深めたところで、実際のユーザー生成コンテンツを見てみましょう。
Michaelsの#MadeWithMichaelsプログラムでは、顧客がテーマや季節にもとづいたクラフトプロジェクトをデザインし、それを投稿すると、ブランドのソーシャルメディアに掲載されるチャンスがあるというインセンティブが与えられています。
Walmartは、学用品を購入する従業員のビデオを投稿し、新学期のソーシャルメディア施策を締めくくりました。これは、自社のソーシャルメディアコンテンツをより本物らしく、親近感のあるものにするための簡単で効果的な方法です。
Starbucksは、顧客が制作した、いくつかのStarbucks商品を紹介する、シンプルで美しく魅力的な動画を、Instagramのリールとして再投稿しました。キャプションで顧客をタグ付けし、クレジットを入れていることに注目してください。
スキンケアブランドのStarfaceは、顧客からのツイートをブランドの美学に合うように黄色の背景で再投稿しました。シンプルで効果的なユーザー生成コンテンツが、最も人目を引くこともあるのです。
ユーザー生成コンテンツとインフルエンサーマーケティング
ユーザー生成コンテンツは、インフルエンサーマーケティングとは異なりますが、このふたつは共存します。ユーザー生成コンテンツでは、誰もがインフルエンサーとなり、多くの顧客にアピールすることができます。企業にとっての利点は、商品を販売するために、大量のフォロワーを持つインフルエンサーを高額で雇う必要がないことです。その代わりに、自社について投稿してくれるマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーたちのグループを見つけます。
1,000人から10,000人程度のフォロワーを持つユーザーは、ユーザー生成コンテンツを検討する価値があるほどのリーチを持ちながら、まだ新規顧客との信頼関係を維持するのに十分小規模な立場にいます。
また、企業は、ユーザー生成コンテンツによって、サービスや商品について定期的に投稿する支持者で構成される、独自の制作者コミュニティを構築することができます。これにより、企業側がある程度コントロールできるオーガニックコンテンツを生み出すことができます。
ユーザー生成コンテンツは、インフルエンサーマーケティングよりも費用対効果の高いオプションですが、インフルエンサーマーケティングの取り組みは、特にブランド認知度向上のために利用する場合は、依然として重要です。インフルエンサーマーケティングは、同一人物から複数の投稿が必要な長期間の施策において、ブランド認知度を高め、まとまったストーリーを伝えるために有効です。インフルエンサーを活用してユーザー生成コンテンツを制作することは、コミュニティを構築し、エンゲージメントやブランド認知度を高めるための効果的な方法です。
ユーザー生成コンテンツを始めるにあたって
ユーザー生成コンテンツの価値を理解したところで、どのように活用していくのか、アクションプランを立てる段階に入ります。ソーシャルメディア、体験談、動画、画像など、どのような方法であっても、自社に関心があるものの、接触できていない顧客にリーチすることができます。
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