ガントチャートとは:概要、利点、活用方法を解説

Gantt charts for project management

PM(プロジェクトマネージャー)は、プロジェクトのスケジュール、目標、リソースの割り当てなど、さまざまな業務に絶えず取り組んでいます。タスクがひとつでも遅延すれば、プロジェクト全体に影響を与えるという認識のもと、プロジェクトを予定通りに遂行しようとします。複雑なプロジェクトの場合、さまざまな変更に対応し、多くの関係者と連携する必要があります。そのため、PMは、プロジェクトの進捗状況を包括的に把握するために、スケジュール設定ツールを必要としています。

そのような理由から、多くのPMから注目を集めているのが、ガントチャートです。ガントチャートとは、プロジェクト全体を詳細に可視化するためのツールです。タスクの内容、所要時間、各タスクの関連性を明確にします。大規模なプロジェクトをより小さなタスクに細分化することで、それぞれのタスクがもたらす影響と潜在的な課題をより詳細に把握できます。

ガントチャートを初めて導入する場合であれ、ガントチャートをより効果的に活用したい場合であれ、本記事では、ガントチャートの概要からプロジェクト管理における活用方法に至るまで、役立つ情報を提供します。

ガントチャートとは?

ガントチャートとは、横棒グラフを使用して、プロジェクト計画を視覚化するためのプロジェクト管理ツールです。 左の列には必要なタスクが一覧表示され、横のX軸はプロジェクトのタイムラインを表しています。ガントチャートでは、プロジェクトの開始日、終了日、目標、タスクの依存関係および担当者、配属されたチームメンバーなど、プロジェクトの全体像を把握するために必要な情報がすべて提供されています。

ガントチャートに記載される主な情報は、次のとおりです。

これらの情報をもとに、各タスクの進捗状況、期日、担当者など、プロジェクトのスケジュールを包括的に把握できます。

ガントチャートは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて生み出されました。1896年、ポーランド出身のエンジニアであるKarol Adamieckiは、生産スケジュールを視覚化するために最初のガントチャートを作成しました。しかし、このガントチャートは、1930年代まで公開されませんでした。1910年頃、米国出身のエンジニアであるHenry Ganttは、プロジェクトスケジュールを管理するためのチャートを作成しました。このチャートには、生産スケジュールと従業員のパフォーマンスを可視化するために、より多くの視覚要素と図が含まれていました。

これらの初期のチャートは、今日多くのPMが採用しているガントチャートへと進化しました。PCの発明により、ガントチャートの普及はさらに加速しました。従来は手間のかかっていたチャートの更新作業が、わずか数回のクリック操作で完了できるようになったのです。

ガントチャートの活用方法

ガントチャートを利用すれば、プロジェクトの全体像を容易に把握できます。しかし、多くのPMがガントチャートを導入する目的は、それだけではありません。ガントチャートは、視覚的なレポートとしての機能だけでなく、プロジェクトの開始から終了までの計画策定にも役立ちます。プロジェクトの全体または一部の要素を明確化し、管理できます。

1. 目標とスケジュールの設定

ガントチャートの視覚的なタイムラインは、目標とスケジュールの管理に役立ちます。

目標は、財務分析、外部機関による検査、会議など、プロジェクトの進捗における重要な節目です。タイムライン上に、各工程の目標を示すひし形などの記号を付けることで、方向性を見失うことなく、日々の多忙なスケジュールをこなすことができます。

ガントチャートを利用すれば、各工程においてどの程度作業が完了しているのか、残りの作業量はどのくらいかを把握し、目標を達成できるように管理できます。期日の数週間前と数日前に、進捗状況を定期的に確認して、プロジェクトが順調に進んでいるかどうかを判断し、必要に応じてチームを調整します。例えば、タスクが予定より遅れている場合、PMは追加のリソースを投入したり、プロジェクトのスケジュールを調整したりできます。

ガントチャートを用いてプロジェクトを視覚化すれば、スケジュールが短い場合でも、進捗状況の追跡と管理が容易になります。横棒を用いて、タスクごとに可能な限り早い開始日と遅い終了日を設定します。これにより、あらゆるプロジェクトのスケジュールがタイムライン上で明確化され、それらのスケジュールが妥当であるかどうかを判断できます。調整が必要な場合は、プロジェクトを開始する前にスケジュールを変更しましょう。

2. プロジェクトの分割

優れたPMは、大規模なプロジェクトをより小さなタスクに分割して管理します。しかし、それをどのように実行するのかが 課題となります。ガントチャートを利用すれば、大規模なプロジェクトを戦略的に分割できます。

ガントチャート上で目標やその他の重要なスケジュールに目印を付けたら、次の手順に従って、メインタスクとサブタスクを設定しましょう。

それぞれのタスクを検証し、大規模なタスクをいくつかの小さなタスクに分割します。その際、そうしたサブタスクが有意義なものであることを確認することが重要です。

3. タスクの依存関係の視覚化

今日のプロジェクトでは、多くのチームメンバーが連携し、それぞれのタスクに取り組みます。そのようなタスク間のつながりは、依存関係と呼ばれています。タスクの依存関係には、4つのタイプがあります。

ガントチャート上で、矢印を使用してタスクの実行順序を示し、依存関係にあるタスクを視覚的に関連付けます。例えば、FS型の依存関係を視覚化する方法を見てみましょう。

タスクBは、タスクAが終了した後に開始されます。そのため、タスクAからタスクBに向けて矢印を付ける必要があります。ガントチャートを使用してワークフローを視覚化することで、タスク間の依存関係を把握し、プロジェクト計画が合理的であることを確認できます。

4. プロジェクトの進捗状況の追跡

計画を策定し、作業を開始したら、ガントチャートを使用してその進捗を管理し、遅延などの課題に対応する必要があります。

ガントチャートを利用すれば、プロジェクトの進捗状況をいつでも確認できます。作業の遅延やスピードの鈍化を把握し、課題に素早く対応できるようにすることが重要です。

ガントチャートの利点

ガントチャートは、幅広い用途に対応するだけでなく、チームの生産性と効率性の向上にも役立ちます。プロジェクト管理におけるガントチャートの利点には、次のようなものがあります。

あらゆるレベルでの時間管理が容易に

プロジェクト全体を一元管理し、チームメンバー全員が予定通りに作業を進められるようにします。

プロジェクトレベルでは、チームメンバー全員が足並みを揃え、タスク間の関係を詳細に把握することで、プロジェクトを予定どおりに遂行できます。

依存関係を戦略的に定義

あらゆる大規模プロジェクトでは、タスクの重複や依存関係が生じます。ガントチャートは、そうした依存関係を明らかにし、遅延や課題を解決するのに役立ちます。遅延にすばやく対応し、必要に応じてリソースを割り当て直して、依存関係がプロジェクトの進行を妨げないようにします。

例えば、建設プロジェクトにおいて、建物の骨組みの組み立てをタスクA、ドアと窓の設置をタスクBとして設定します。この場合、これらのタスク間には、FS型の依存関係が生じます。つまり、タスクBを開始するには、タスクAを完了させる必要があります。骨組みの組み立てが遅れている場合、PMはガントチャート上で、タスクAの横棒を延長させます。タスクBの横棒と重複した場合、PMはタスクB、すなわちドアと窓の設置スケジュールを変更し、従業員に残業を依頼する必要があることを瞬時に判断して、プロジェクトの遅延に備えることができます。

プロジェクト計画の簡素化

ガントチャートを利用すれば、プロジェクトの全体像を詳細に把握し、作業の計画を大幅に簡素化できます。特に、プロジェクトのクリティカルパスを特定するのに役立ちます。クリティカルパスとは、プロジェクトにおける最長のタスクを指します。ガントチャートでは、最長の横棒として表します。このタスクが遅れると、後続のタスクに大きな影響を与えるため、クリティカルパスを適切に管理することが重要となります。ガントチャートを利用すれば、どのタスクが最も長く、優先的に取り組む必要があるのかを明確に把握できます。

ガントチャートの作成は、包括的なプロジェクト管理計画を策定するための前提条件となる場合もあります。視覚的なレイアウトと柔軟なフォーマットを備えた、モダンなツールを導入すれば、プロジェクトの全体像を把握し、実行可能なタスクに分割してスケジュールを設定し、全体のバランスを取りながら計画を調整できます。ガントチャート上ですべてのスケジュールと依存関係を明確にし、それらのデータを関係者が求めるフォーマットに変換して共有できます。

透明性の向上

チームメンバー全員がガントチャートにアクセスできるようにすることで、誰が何を担当しているのかを把握し、チームワークと説明責任を強化できます。プロジェクトを単一の基盤で可視化すれば、メンバー間の透明性と信頼の向上につながります。

例えば、ガントチャートでは各タスクの担当者が明示されるため、期日に間に合わない可能性があるタスクを、誰もがひと目で特定できます。これにより、従業員同士が早期に連絡を取り、助け合えるようになります。既に目標を達成した従業員は、課題に直面している他の従業員とリソースを共有し、プロジェクトを予定通りに進めることができます。

説明責任の強化

ガントチャートは、説明責任の強化にも役立ちます。従業員は、ひとつでもタスクが遅延すれば、プロジェクト全体の進捗に影響を与えることを認識しています。そのため、従業員全員が、遅延に対する責任を避けるために、期日に間に合わせようと自然に努力するようになります。また、予定よりも早く目標を達成した従業員は、その努力に見合った評価を得ることができます。

リソース配分の改善

多くのタスクを伴う複雑なプロジェクトでは、各従業員が複数のタスクを同時に進める必要があるかもしれません。しかし、一人ひとりの作業量が多すぎると、失敗するリスクが高まります。ガントチャートを利用すれば、作業負荷が大きすぎたり、同時進行のタスクが多すぎたりする従業員を容易に特定し、リスクを回避できます。また、従業員が抱える課題に対応し、作業やリソースを割り当て直すことで、プロジェクトを予定通りに進めるだけでなく、職場の健全性と従業員の福祉を向上できます。

柔軟性の向上

優れたプロジェクト管理を実現するには、柔軟性が必要です。やむを得ないタスクの遅延、顧客によるプロジェクト範囲の変更、リソースの不足など、プロジェクトの途中で不測の事態がいくつも発生し、戦略、リソース、タスクの変更を迫られることがあります。

ガントチャートを利用すれば、そうした変更に柔軟に対応できます。どの部分を変更できるのか、その変更がチームやプロジェクト全体にどのような影響を与えるのかを把握できます。また、ガントチャート機能を搭載したツールを導入すれば、数回クリックするだけで、リソースのスケジュール調整、タスクの再割り当て、依存関係の変更をおこなうことができます。

リモート環境における生産性の向上

ガントチャートは、リモート環境での共同作業を管理する優れたツールです。単一のプロジェクトタイムラインに、どこからでもアクセスできるようにすることで、離れた場所で作業している従業員の足並みを揃えることができます。。

これにより、従業員は、物理的に離れていてもチームの一員であることを認識し、目標の達成に向けて、他の従業員と連携を図ることができます。ガントチャートは、優れたリモート管理ツールであるだけでなく、チームの士気を高める原動力でもあるのです。

ガントチャートを導入しましょう

ガントチャートがプロジェクト管理ツールとして注目を集めているのは、それなりの理由があります。チーム全体の作業のながれ、タスク間の関係、利用可能なリソースを明確に把握できるだけでなく、チームメンバー全員がチャートを確認し、複雑なスケジュールを容易に理解できるようになります。

ガントチャートを導入する準備が整ったら、チームと協力して、タイムライン上に各工程の目標を設定することから始めましょう。続いて、それらの目標を達成するために必要なタスクを明確化しましょう。

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