DXPとは?概要から活用方法まで詳しく解説

Illustration of how a digital experience platform offers customer profiles


顧客接点としてのデジタルチャネルは、ビジネスのあらゆる局面で関わってきます。直接か間接かを問わず顧客と関与する、マーケティング、営業、カスタマーサービスなどのあらゆる部門において、顧客接点を通じてビジネスが行われる過程で、膨大なデータが生成されます。そしてそのデータを活用することで、業務効率化の推進、コスト削減、ビジネスのスケール拡大など、さまざまな価値が得ることができます。しかし、ただデータを収集するだけでは不十分です。そのデータが何を意味するのかを把握し、そこから導かれたインサイトをもとに意思決定し、より良い顧客対応に活かすことが求められます。

データを活用し、プロセスをパーソナライズすることがますます重要視される中、DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)への需要が急速に高まっています。DXPを利用することで、データからより多くの情報を取得して、価値のあるインサイトを導き出し、意思決定に役立てることができます。この記事では、DXPの概要から導入方法まで、包括的に解説します。

目次

  • DXPとは?
  • DXPを活用する利点
  • DXPと既存システムとの違い
  • DXPの仕組み
  • DXPを検討すべき理由
  • DXPの選定方法

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DXPとは?

DXPとは、顧客の状況に応じてデジタル体験を構築、管理、提供、最適化するための、一連のコアテクノロジーを統合した基盤です。 DXPは、digital experience platformの略称で、「デジタルエクスペリエンス」とあるように、あらゆるデジタル技術に関わる基盤です。DXPは、単体で利用することも、複数のアプリケーションを組み合わせたソフトウェアスイートとして利用することもできます。

デジタル技術は、 webを始め、モバイルアプリからデジタルサイネージ、スマートデバイス、IoTなどの顧客と接するデジタルチャネルはもちろん、POSやコールセンターシステムのように接客を担当する社員向けアプリケーションまで、幅広く普及し、さらに広がっています。そのためDXPは、企業と顧客の仲立ちをするための基盤、と言い替えることもできます。

DXPは、顧客データを収集および整理し、そこから真の価値を引き出し、顧客の期待に応える体験へと転換すること、を目的としています。言い替えると、DXPの担うべき重要な機能は、顧客理解のためのデータ基盤の側面と、顧客体験のためのコンテンツ基盤の側面、となります。

ひとつめのDXPの重要な機能は、データ基盤の側面です。データ基盤の役割は、複数の情報源から収集したデータを標準化し、さまざまな部門で利用できるようにすることです。例えば、登録時には顧客の名前とメールアドレスだけを取得し、その後電話番号を取得したとします。DXPは、それらのデータをひとつの顧客プロファイルに統合し、営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの部門をまたいで利用することを可能にします。

データ基盤を整備することで、デジタルエクスペリエンスにどのような価値がもたらされるかについては、以下のガイドが参考になります。

ふたつめのDXPの重要な機能は、コンテンツ基盤の側面です。コンテンツ基盤の役割は、あらゆるデジタル顧客接点で、接触してきた顧客に対して、最適なコンテンツを配信することです。例えば、ショッピングモールを歩いていた見込客が、気になったブランドを見つけ、スマートフォンから検索して、ブランドサイトを訪れます。商品展開に興味を持ち、店舗に入るとQRコードが提示されており、それをスキャンすることで公式アプリを入手します。アプリで簡単な認証で情報通知を許可すると、位置情報をもとに、その店舗で使うとお得なクーポンがプッシュ通知されてきました。ブランドサイト、モバイルアプリ、プッシュ通知などは、チャネルは異なれども、同じブランドの世界観を描く一貫したコンテンツによって表現されています。チャネルを問わず適切なコンテンツを配信するのが、コンテンツ基盤の役割です。

コンテンツ基盤を整備することで、デジタルエクスペリエンスにどのような価値がもたらされるかについては、以下のガイドが参考になります。

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DXPを活用する利点

DXPでは、これまで複数のアプリケーションに分散されていた機能が集約されています。典型的には、コンテンツ基盤、すなわちCMS(コンテンツ管理システム)に相当する機能が包含されています。またそれだけでなく、それらの機能を他のツールと連携させることができます。これにより、アプリケーション間の分断を軽減し、プロセスを効率化できます。

DXPには、主に次のような利点があります。

DXPによって、分断されていたアプリケーション間がつながることは、企業側から見た利点、となります。それは、顧客対応の各段階で使われていたアプリケーションの分断をつなぐことを意味します。その意味することは極めて重要で、顧客対応の各段階で分断していた顧客体験に、一貫性がもたらされるのです。つまり顧客側から見た利点は、カスタマージャーニーのどの段階でも、企業側からは顧客のその段階における適切な体験が提供される、ことになります。

DXPによって、カスタマージャーニーがどのように改善されるのかについては、以下のガイドが参考になります。

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DXPと既存システムとの違い

DXPは、ポータルやCMS、デジタルコマースなど、既存のテクノロジー分野から派生して開発されました。そうした既存システムとDXPの決定的な違いは、他にもさまざまな機能を備えていることです。

モダンなDXPの能力は、その原型となったソフトウェアの種類に応じて決定されます。例えば、CMSをもとに開発されたDXPは、ポータルやコマース基盤から派生したDXPよりも多くの機能を搭載しています。

一般的に、ひとつのカテゴリーから派生したDXPは、汎用性を強化するために、他のDXPの機能を追加することができます。しかし、DXPの機能や目的は、その種類に応じて大きく異なります。例えば、コマース基盤から派生したDXPの多くは、強力なセールス機能を有している一方で、既存顧客との関係を管理する能力に欠けています。

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DXPの仕組み

DXPの基本的な能力は、次のとおりです。

従来のツールの制約に対応するために、DXPを導入する企業は増え続けています。今日の顧客が求めているのは、シームレスな顧客体験です。そうした期待に応えるために、DXPは進化を遂げています。

多くのDXPは、同じ基幹システムに連携できるさまざまなモジュールを提供しています。例えば、そうしたモジュールを利用して、ひとつのDXPから、パートナーリレーションシップ管理、コンテンツ管理、カスタマーサービス、B2Bコマース、外部のアプリやポータルに接続できます。

一部のDXPでは、それらのモジュールに加えて、次のような幅広い機能を提供しています。

上記のいずれかの分野で課題を抱えている場合は、DXPの導入を検討すべき時期に来ているかもしれません。ここからは、DXPが必要かどうかを判断し、自社にとって最適なDXPを特定する方法について解説します。

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DXPを検討すべき理由

DXPを導入することは、企業にとって大きな決断となります。しかし、本当に投資する価値があるのかを見極めるのは、容易ではありません。導入プロセスは複雑で、時間がかかるかもしれません。しかし、強力なDXPには、一時的な混乱を相殺するだけの長期的な利点があります。

多くの企業は、コンテンツとデータのいずれかに関する課題に直面したときに、DXPの導入を検討し始めます。

DXPは、データの活用において特に効果を発揮します。あまりにも多くの企業が、重要なデータを取得していながら、その価値を最大限に活用できていません。膨大な情報源から収集したデータを一元管理し、適切な場所とタイミングで活用できるようにするためには、包括的なDXP基盤が必要です。

DXPを活用してビジネス課題を解決

ここでは、自社がどのようなビジネス課題を抱えており、信頼性の高いDXPによってその課題を解決できるかどうかを検討しましょう。

例えば、優れたブログ記事やソーシャルメディアコンテンツを配信しているにもかかわらず、期待するほどの成果を達成できていないとします。直帰率が高い、電子メールの開封率が低いといった具合です。こうした状況は、適切なコンテンツを正しいオーディエンスに届けることができていないことを示唆しています。その場合、DXPがコンテンツ戦略の改善に役立つかどうか検討しましょう。

企業がDXPの採用を進めている要因として、いくつかのトレンドが考えられます。そのひとつは、モバイルデバイスの利用が増加したことです。スマートフォンやタブレットでインターネットを利用する人は、かつてないほど増えています。実際、Statistaの調査レポートによると、インターネットトラフィックの約60%が、モバイルデバイスから流入していることが明らかになっています。優れたDXPなら、チャネルを問わずモバイル利用者のデータを収集し、あらゆる接点で最適な顧客体験を提供できます。

さらに、多くの企業は、クロスチャネルのコンテンツ管理プロセスを合理化するために、DXPを利用しています。それらの企業は、電子メール、ブログ、ソーシャルメディアなど、さまざまなチャネルをまたいで、コンテンツを配信しています。DXPを導入する目的が、チャネル全体におけるコンテンツ管理を実現することである場合は、コンテンツに重きを置いたDXPツールを探してみましょう。

自社のニーズを理解することが、DXPを導入する第一歩となります。解決したい課題を明確にすることで、関係者からの賛同を得やすくなり、必要な機能を提供しているDXPをスムーズに探し始めることができます。

さまざまな顧客対応の段階に応じて使われてきた、自社内の膨大なシステムやアプリケーション、すなわちマーケティングテクノロジースタックを、DXPをハブとして接続し、ひとつの顧客対応アプリケーションのような姿へと統合することが、DXPによって可能となります。これまで分断していたテクノロジースタックを統合し、合理化することによって得られるメリットについては、以下のガイドが参考になります。

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DXPの選定方法

DXPに対する要件を特定したからといって、すぐに導入できるわけではありません。ここでは、自社のニーズに最適なDXPを選定、導入、運用するための具体的な方法について解説します。

  1. 解決したい課題に焦点を当てて、DXPツールを絞り込むことが重要です。プロバイダーは、それぞれ独自の強みやサービスを謳っており、どれも魅力的に思えるかもしれません。しかし、それらに惑わされることなく、自社のユースケースに最適なDXPを冷静に判別する必要があります
  2. 自社が必要としているDXPの種類をもとに、短いリストを作成します。続いて、実際の利用者のレビューを確認します。リストを作成する際は、プロバイダーの候補を3社から7社に絞り込みます
  3. 各プロバイダーの営業担当者に連絡を取り、自社のニーズにどのように対応できるのかについて話を聞きます。それぞれの欠点を明確にすることで、話し合いをスムーズに進めるだけでなく、ツールを比較するための基準を確立できます
  4. 最終候補を2社から3社に絞り込みます。それらの候補を各部門の関係者と共有し、意見を交換します。ひとりでも全部門のニーズを正確に理解していなければ、意思決定に影響を与えます

このように、戦略的に候補を絞り込み、主要な関係者と意見を交換することで、最適なDXPを選定するプロセスがはるかに容易になります。

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最適なDXPを見つけましょう

自社に適切なDXPにたどり着くまでの道のりは、単純なものではないでしょう。CMS、ポータル、コマースサービスなど、DXPはかつてないほど多様化しています。いずれにしても、自社のニーズと予算に合致するプロバイダーを見つけることが重要です。

DXP分野で業界をリードするAdobe Experience Cloudは、企業が直面している現在のデジタル変革の課題だけでなく、VUCAと呼ばれるような不確実な市場情勢のなかでも、柔軟に対応することのできるデジタル基盤です。またAdobe Experience Cloudはオープンなアーキテクチャのため、アドビ製品だけでなく、幅広いサードパーティ製品とも連携でき、企業の投資を保護し、柔軟な拡張を実現することができます。DXP基盤としてのAdobe Experience Cloudが、どれほどの拡張性を備えているのか、詳しくは以下のガイドが参考になります。

関連資料

次のステップ

DXP分野のリーダーである Adobe Experience Cloudは、コンテンツ管理、パーソナライゼーション、オンボーディング、B2Cカスタマージャーニーの最適化、B2Bマーケティングオートメーションなど、DXPとして求められるデータ基盤やコンテンツ基盤としてのあらゆる機能を備えた、オールインワンの基盤です。Adobe Experience Cloudについてより詳しく知りたい場合は、アドビにお問い合わせください。