RevOps:概要からビジネスへの影響までを徹底解説
企業は長年、マーケティング、営業、カスタマーサービスの連携を強化することで、セールスファネルの強化に努めてきました。しかし、成功を収めている企業はごくわずかです。顧客行動とビジネスモデルは、この数年間で大きく変化しました。特に、サブスクリプションモデルへの移行が加速しています。企業が売上を向上し、成長するうえで、人、データ、プロセスを結び付けることが、これまで以上に重要になっています。
従来、マーケティング、営業、顧客サービスなどの部門が、緊密に連携することは非常に困難でした。しかし、テクノロジーの進化により、それがようやく可能になりました。RevOps(レベニューオペレーション)とは、そうした部門間の連携を促進するための取り組みです。近年、RevOpsを導入する企業は急増しています。
本記事では、RevOpsの概要、利点、役割、重要性が高まっている理由について解説します。
RevOpsとは?
RevOpsとは、マーケティング、営業、カスタマーサービスを連携させて、顧客体験の向上と売上の最大化を図る取り組みです。 その目的は、売上とビジネス成長をより的確に予測できるようにすることです。
その目的を達成するために、部門、プロセス、テクノロジースタックの分断によって生じていた矛盾や非効率性を解消し、共通の目標に向けてあらゆる部門が協働して、売上を向上させることができるようにします。
RevOpsを導入すれば、次の3つの要素を結び付けることができます。
- 人: 営業、マーケティング、カスタマーサービスは、ひとつのチームとして連携する必要があります。そうした部門横断的な取り組みを統括する責任者は、売上の向上について最終的な責任を負います
- ツール: RevOpsチームは、信頼できる唯一の情報源を軸として業務を進めることが求められます。つまり、あらゆる部門が顧客データにアクセスできる単一の基盤を構築する必要があります
- プロセス: RevOpsは、バイヤーズジャーニー全体にわたって、ブランディング、メッセージ配信、セールス施策、カスタマーサービスの戦略を統合するのに役立ちます
RevOpsの利点
マーケティング、営業、カスタマーサービスを連携させることは、さまざまな利点をもたらします。LSA Globalによると、部門横断的な取り組みを推進している企業は、そうでない企業に比べて、売上の増加スピードが58%速く、売上が72%高くなっていることが明らかになっています。また、Boston Consulting Groupのレポートでは、RevOpsを導入することで、デジタルマーケティングのROIを100%から200%に向上させることができることが示されています。
こうした売上の増加は、RevOpsがもたらす次のような効果の賜物であると言えます。
- ビジョンの明確化: 顧客と接触する部門間で十分な透明性を確保し、ひとつのRevOpsチームとして協働することで、今後の方向性をより明確にすることができます
- 顧客体験の向上: マーケティング、営業、カスタマーサービスが連携し、一貫性のある方法で顧客とコミュニケーションすることで、顧客の満足度を高めることができます。ジャーニー全体を通じて、マーケティング資料、営業担当者によるプレゼンテーション、カスタマーサービスの対応を包括的に管理しながら、顧客のニーズの変化に応じて調整できます
- より信頼できる指標: 各部門がデータセットを別々に保持して追跡するよりも、データとパフォーマンスの計測結果を部門間で共有することで、信頼できる唯一の情報源を構築できます。これにより、透明性とアカウンタビリティを向上させることができます
- 業務効率の向上: RevOpsは、社内の連携と透明性を強化することで、アカウンタビリティの向上、ワークフローの合理化、非効率な作業の削減、迅速な対応を実現します
- より予測可能な成長: 顧客のライフサイクル全体を追跡し、必要に応じて施策をすばやく調整することで、目標を達成して売上増加につながる可能性がはるかに高まります
RevOpsチームの役割と必要なスキル
RevOpsチームの編成プロセスは、それほど複雑ではありません。チームをすばやく立ち上げて、拡大させながら調整していくことが重要です。
RevOpsチームに必要な役割は、次のとおりです。
- RevOpsマネージャー
- マーケティング、営業、カスタマーサービスの各代表者
- 中立な立場でツールとデータを管理するシステム管理者
まずはRevOpsマネージャーだけを選出し、RevOpsの役割を拡大する必要が生じたら、チームを編成することもできます。
RevOpsマネージャー
RevOpsマネージャー(RevOpsディレクター)は、CROやCEOに報告する役割を担います。小規模な企業では、CROがRevOpsマネージャーを兼任することもできます。RevOpsマネージャーは、あらゆるビジネスチャネルにおける売上に対して責任を負います。
RevOpsマネージャーは、マーケティング、営業、カスタマーサービスの代表者で構成される、部門横断的なチームを統括し、チームメンバーのコミュニケーションを促進します。その具体的な役割は、「インサイト」、「プロセス」、「システム」、「イネーブルメント」に分類できます。
インサイト
RevOpsマネージャーは、意思決定に必要なデータを収集する責任を負います。具体的には、次のような業務をおこなう必要があります。
- 既存のテクノロジー、データ、コンテンツを検証する
- ツールの選出、導入、統合を管理する
- KPIの定義と追跡
- 売上予測の実行と検証
- 進捗状況を継続的に追跡し、ミーティングを主催してチームの連携を図る
プロセス
RevOpsマネージャーが担うべきもうひとつの重要な役割は、顧客ライフサイクル全体を通じて、共通の戦略とプロセスを策定することです。具体的には、次のような業務をおこなう必要があります。
- 目標とターゲットアカウントを設定し、売上を向上させるための機会を創出する
- マーケティング、営業、カスタマーサービスのプロセスとワークフローを合理化し、非効率な作業や利益につながらない施策を排除して、課題を解決する
- バイヤーズジャーニー全体にわたって、部門間の一貫性を維持する
システム
単一のテクノロジー基盤でプロセスのスケーラビリティと自動化を管理することも、RevOpsマネージャーの役割です。その業務には、次のようなものがあります。
- 統合されたツールを、信頼できる唯一の情報源として使用する
- プロセスを自動化する方法を特定する
- データの質とインサイトの深さを向上させる仕組みを構築する
- 顧客体験を包括的に追跡および検証する
イネーブルメント
RevOpsマネージャーは、社内におけるRevOps施策を強化する役割も担います。プロセスとツールについて、従業員をトレーニングします。具体的には、次のような業務をおこなう必要があります。
- トレーニング教材の制作を監督する
- 施策の責任者と担当者に対して、トレーニング、コーチング、メンタリングを実施する
RevOpsマネージャーは、ビジネス全体を指揮する役割を担います。そのため、課題の解決と部門間のコミュニケーションを促進することで、売上を向上させる能力が必要となります。例えば、次のようなスキルが求められます。
- 効果的なコミュニケーション
- 戦略的な問題解決能力
- チーム管理能力
- CRM、セールスイネーブルメントツール、MAツールなど、一般的なビジネスツールに関する知識
- データドリブン型の意思決定
- ミーティング、専門的なトレーニング、人材育成を推進する能力
オペレーションマネージャー
オペレーションマネージャーは、RevOpsマネージャーに報告する役割を担います。
- マーケティング担当オペレーションマネージャー
- 営業担当オペレーションマネージャー
- カスタマーサービス担当オペレーションマネージャー
営業、マーケティング、カスタマーサービスは、顧客と接触して売上を促進する責任を負います。これらの部門から、それぞれ代表者を選出します。一般的に、オペレーションマネージャーを新たに雇用するのではなく、各部門の責任者が兼任します。オペレーションマネージャーの主な役割は、各部門のデータとプロセスをRevOpsチームと共有し、他のオペレーションマネージャーと協力して課題の解決策を導き出し、各部門のパフォーマンスを向上させることです。
システムオペレーションマネージャー
優れたRevOpsチームを編成するには、システムオペレーションマネージャーを配置する必要があります。サブスクリプション型のビジネスモデルでは特に、顧客ライフサイクル全体を通じて、請求などの財務プロセスを適切に管理することが不可欠となります。また、売上創出に関するあらゆるデータとプロセスを一元管理する基盤を構築することも、同様に重要です。システムオペレーションマネージャーは、部門間で共有するツールを中立な立場で管理し、技術的な面から、請求プロセスをスムーズかつ適切に進めることができます。
RevOpsチームメンバー
RevOpsチームを拡大して人員を増やす際は、RevOps担当者をサポートする管理チームを編成することを検討してみましょう。次のようなメンバーを配置できます。
- レベニューインサイトマネージャー: 営業、マーケティング、カスタマーサービスのデータ分析を監督する
- レベニュープロセスマネージャー: 部門横断的な施策の分析を監督し、「ディールデスク」を通じてあらゆる営業施策を技術的にサポートする
- レベニューシステムマネージャー: CRM、webサイト、アプリケーション、MA、サブスクリプション請求を包括的に管理する
- レベニューイネーブルメントマネージャー: オンボーディング、トレーニング、能力開発、コーチング、製品とコンテンツの教育について責任を負う
RevOpsの指標
RevOpsを導入してプロセスを合理化するには、それらのプロセスがどの程度効率的なのかを把握する必要があります。複数の主要な指標をもとに、バイヤーズジャーニー全体にわたって、各部門の施策が売上にどの程度貢献しているのかを測定することができます。RevOpsチームは、それらの指標を分析し、課題を特定して解決することで、施策の価値と売上を最大化することができます。
- セールスサイクル: 見込み客と最初に接触してから成約に至るまでの期間です。セールスサイクルが長い場合、営業担当者が顧客に接触するタイミングを早める必要があることを示唆しています
- パイプラインベロシティ: 見込み客がセールスパイプラインを移動する速度です。時間を軸に、営業の成果を計測します。パイプラインベロシティは特に、売上を予測するのに役立ちます。RevOpsチームは、この指標をもとに進捗が滞っている箇所を見つけ出し、戦略を練り直してセールスプロセスを加速させることができます
- 更新とアップセル: 顧客の離脱率が低下し、売上が増加していることを示す指標です。サブスクリプションの更新数や商品のアップセル数が多い場合、顧客の満足度が高いことを示唆しています。既存顧客を維持するほうが、新規顧客を獲得するよりもコストを抑えられるため、これらは重要な指標となります
- CLV(顧客生涯価値): 顧客が商品やサービスの利用を開始してから終了するまでの間に、企業にどの程度の価値をもたらしたのかを示す指標です。初回の購入ではなく、アップセルや更新の効果を測定します。CLVが低い場合、新規顧客の獲得に割り当てる予算を削減する必要があります
- 解約率: 商品の利用を停止した顧客の割合です。解約率が高い場合、顧客維持戦略が効果を発揮していないことを示唆しています
- CAC(顧客獲得コスト): 新規顧客を獲得するために、マーケティングと営業にどの程度投資すべきかを示す指標です。最適なCACは、CLVと解約率に応じて異なります。CACが高い場合、ブランディングの一貫性が欠けているか、広告の配置が不適切であるか、的外れなオーディエンスにターゲティングしている可能性があります
- ARR(年間経常収益): サブスクリプションサービスからどの程度売上を獲得したのかを示す指標です。この指標は、売上の予測精度を大きく左右するため、RevOpsチームにとって不可欠なものです。このデータを活用して、進捗状況を追跡し、今後のビジネス成長を予測できます
- 予測精度: RevOpsがビジネス成長の予測を強化するうえで、重要な役割を果たします。予測精度を計測することで、売上の予測可能性を把握できます
- 成約率: 取引が成立した割合です。営業部門のパフォーマンスを検証するのに不可欠な指標です。営業手法が有効かどうか、適切な見込み客にターゲティングしているかどうかを把握できます
高まり続けるRevOpsの重要性
RevOpsの重要性が高まっている背景には、企業が、ビジネス環境における大きな変化への適応を迫られていることが挙げられます。次のような理由により、従来の縦割り組織は通用しなくなっています。
- バイヤーは、企業と接触する際に、一貫性と透明性のある、パーソナライズされた体験を常に期待しています。そうした体験を実現するために、リアルタイムのデータと部門間の連携が不可欠なものとなった
- バイヤーは、購入する前にオンラインで調べたいと考えるようになり、従来の営業とマーケティングの役割が大きく変化した
- B2BとB2Cの両方で、サブスクリプション型のビジネスモデルが拡大し、アップセルと更新を促進することで、顧客のライフサイクルへの取り組みを強化する必要が生じた
エンタープライズレベルのオートメーションツールの進化も、企業によるRevOpsの導入を後押ししています。統合型ツールを利用すれば、マーケティング、営業、カスタマーサービスの施策を連携させて、全社を挙げて信頼できる唯一の情報源を構築し、共通の目標に向けた取り組みを推進できます。
RevOpsとSalesOpsの違い
RevOpsとSalesOpsは混同しやすいですが、大きな違いがいくつかあります。SalesOpsは、リード管理、テリトリー計画、売上とパイプラインの予測など、営業部門の活動をサポートします。
一方RevOpsは、複数の部門にわたって、顧客体験を包括的に管理することに焦点を当てています。つまり、SalesOpsはRevOpsの一部なのです。SalesOpsマネージャーは、RevOpsマネージャーに報告する役割を担います。
RevOpsツール
CRMは、RevOpsの中核となるツールです。次のような機能を備えている必要があります。
- 接点の追跡: 顧客一人ひとりが、ジャーニーのどの段階にいるのかを把握することは、RevOpsにおいて不可欠です。CRMは、匿名での最初の接触から成約に至るまでのあらゆる行動を追跡できなければなりません
- アトリビューションモデル: バイヤーズジャーニーを把握できたら、リード、売上、ROIに対する各接点の貢献度を割り当てる必要があります。アトリビューションモデルを利用すれば、必要なデータを収集し、どのマーケティング施策の投資を強化すべきか判断できます
- 統合: RevOpsには、情報源を集約させた基盤が必要です。CRMは、MAツールや営業ツールと統合できなければなりません
- 分析とレポート: 優れたCRMは、AI(人工知能)とマシンラーニング(機械学習)を利用して、膨大なデータセットを分析し、プロセスの合理化に必要なインサイトを提供できます
- 売上の分析と予測: 売上データを収集および分析し、その結果をもとに自社の強みと改善すべき点を把握することで、今後の売上を予測できるようになります
- オムニチャネルパーソナライゼーション: 複数のチャネルと接点から収集したデータをつなぎ合わせることで、顧客をより的確に把握できるようになります。そうしたインサイトにもとづいて体験をパーソナライズし、顧客の期待に応えることができます
RevOpsを始めましょう
RevOpsを導入すれば、データとツールを共有し、顧客に最適な体験を届けるという共通の目標に向けて、売上の創出に欠かせない部門の足並みを揃えることができます。これにより、業務を効率化し、ビジネス成長を促進できます。
自社のチームや戦略が分断されているかどうか、注意深く観察しましょう。顧客への対応が非効率であったり、顧客の維持に苦慮しているようであれば、戦略を見直すべき時です。
RevOpsチームを立ち上げる第一歩は、売上データとプロセスを一元管理することです。
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