プロジェクト管理入門:レトロスペクティブとは?

A laptop shows an example of an agile retrospective.

ソフトウェア開発やプロジェクト管理においてアジャイル手法を導入している場合、レトロスペクティブがもたらすメリットを理解しているでしょう。しかし、その概要や実践方法を把握していないかもしれません。

この記事では、レトロスペクティブの概要、手順、利点、導入方法を包括的に解説します。

主な内容:

レトロスペクティブとは?

レトロスペクティブとは、スクラムマスター、プロダクトオーナー、開発者が、スプリントと呼ばれるタスクのイテレーション後に実施するミーティングを指します。その目的は、成果と改善点を特定し、次のイテレーションに向けて調整することにあります。

レトロスペクティブは、プロジェクトのどの時点においても実施できますが、フィードバックをすぐに反映させるために、通常は短期間で繰り返しおこないます。スプリント後に実施するレトロスペクティブは、スプリントレトロスペクティブと呼ばれます。

レトロスペクティブでは、過去の取り組みを振り返りますが、成長することに焦点を置いています。各工程が完了するたびにその成果を検証することで、次の工程を正しい方向へ導くことができます。レトロスペクティブを適切に実施することで、プロセス全体のパフォーマンスと効率を向上できます。

レトロスペクティブは、2001年にアジャイルソフトウェア開発宣言が発表されて以来、アジャイル文化の発展を支えてきた概念です。アジャイル手法では、適応性と持続的な改善を重視しますが、それらを実現するには、プロセスに組み込む必要があります。レトロスペクティブは、タスクの成果を検証してフィードバックを収集し、プロセスを調整および改善する絶好の機会となります。シンプルかつ戦略的なミーティングを通じて、チームが各イテレーションの効果を最大化し、優れた製品の開発と顧客満足度の向上につなげることができます。

レトロスペクティブでは、チーム全員でタスクを振り返り、その成果と改善点を特定して、今後のタスクを改善する方法を見出す機会を提供します。

レトロスペクティブミーティングは、対面またはオンラインで実施できます。リモートミーティングでは、Googleドキュメントなどの共有可能なドキュメントを通じて、効果的なコミュニケーションを促進できます。対面ミーティングでは、付箋やホワイトボードを活用することで、チーム全員でアイデアを共有できます。

レトロスペクティブミーティングの所要時間は、参加人数、開催頻度、振り返るタスク数に応じて異なります。1週間のスプリントの場合、45分が目安となります。1ヶ月のタスクを振り返る場合、3時間ほどかかる場合もあります。

続いて、レトロスペクティブミーティングの手順を詳しく解説します。

レトロスペクティブの手順

プロジェクト管理のアジャイル手法におけるレトロスペクティブは、主に5つの段階があります。ただし、自社のニーズに応じてプロセスを調整できます。まず、各段階を詳しく説明し、続いてレトロスペクティブの事例をいくつか紹介します。

The phases of agile retrospective are to set the stage, gather data, generate insights, decide what to do, and close the retrospective.

1. 準備

ミーティングのトピックを決定する前に、ミーティングを効率的に進めるための準備を整えることが重要です。チーム全員で課題について率直に話し合い、考えられる解決策を見出せるようにする必要があります。そのため、最初の段階では、いくつかのルールを設定し、チームメンバーが自身の考えを表明できるようにすることが大切です。このような安心感を与えることで、より生産的なコラボレーションを促進できます。また、優れたリーダーは、時間を有効活用するために、目標を明確に設定します。

まず、プロジェクトの期間とスコープを明確にすることで、チーム全員が全体像を把握できるようにしましょう。続いて、前向きな姿勢を持つ、改善を重視する、チーム全員に発言する機会を提供するなど、ミーティングのルールを策定します。各チームメンバーに、タスクに関する意見を簡潔に述べてもらうことで、全員の考えをすばやく把握できます。

2.データの収集

客観的なフィードバックを収集する必要があります。前回のスプリントまたはタスクのイテレーションについて、事実確認をおこないます。この段階では、チーム全体で知識を共有し、一貫性のあるマインドセットを醸成することを目的としています。必要なあらゆるデータを収集することで、客観的な分析を開始できます。

定性データと定量データの両方を収集しますが、ここではデータの意味を解釈しようとせず、データが正確であること、そして同じ情報をもとにタスクを遂行することについて、チーム全員の同意を得る必要があります。そのため、ツールを活用して情報を記録し、文書化することが重要です。

3.インサイトの獲得

この段階では、収集したデータをもとに、タスクの成果、改善点、進捗状況を振り返ります。これは、パターンを見出し、客観的事実にもとづいて、より主観的なフィードバックを提供する機会となります。

チームメンバーに、改善策を提案してもらいましょう。その際、インサイトを引き出し、アイデアをブレインストーミングするための構造化されたアクティビティを活用しましょう。

4.今後の施策の決定

共有されたデータを活用してチームの基盤を確立したら、次のタスクサイクルで時間を投資するべきタスク、優先すべきタスク、タスクの成功率について、チーム全員で意思決定をおこないます。

これは、レトロスペクティブミーティングを実施する主な理由のひとつでもあるため、特に重要です。大きな目標と小さなタスクを明確にし、フォローアップの担当者を割り当てましょう。

5.終了

準備段階と同様に、チームの満足度と意欲を高めるような方法で、ミーティングを締めくくりましょう。決定事項のまとめをおこない、参加者全員に感謝の意を表し、次のステップを説明しましょう。

レトロスペクティブの事例

前回のスプリントの成果と改善点を検証するための手法は、多岐にわたります。各手法には、異なる強みがあります。ここでは、いくつかの例を紹介します。

Two co-workers in an office put affinity mapping into practice.

レトロスペクティブの課題

多様な人材で構成されるチームの連携を強化することは、容易なことではありません。しかし、留意点を把握しておけば、いくつかの一般的な心理的障壁を克服できます。ここでは、主な課題に対するクイックトラブルシューティングを解説します。

エンゲージメントの低下

チームがレトロスペクティブに関心を示さず、提案や発言をほとんどおこなわずに静観していることがよくあります。スプリントを完了したばかりで疲れているか、ミーティングに意義を見出せないのかもしれません。ミーティングへの積極的な貢献を促すためには、さまざまな学習スタイルを考慮する必要があります。五感を刺激するアクティビティを取り入れることで、チームメンバーが通常の行動パターンを脱し、クリエイティビティを発揮できるようにします。

信頼の欠如

誰もが表面的な会話のみをおこない、否定的な意見を回避しようとするのは、自然なことです。自身の取り組みを否定されたり、相手を不快にさせることを恐れるからです。ファシリテーターは、誰もが自身の考えを率直に共有できる機会を提供する必要があります。問題が発生したときにこそ、チームメンバーにインセンティブを与えることで、問題を早期に特定して解決するよう促しましょう。問題が発生したことに落胆するのではなく、成長の機会として前向きに捉えることが大切です。より深刻な問題が発生しているかどうかを確認するために、各メンバーに対して個別のフィードバックを求めてみるのも良いでしょう。その場合、フィードバックを機密情報として扱う必要があります。

フォローの不足

チームメンバーがミーティングに参加する意義を見出せない場合、エンゲージメントの低下や信頼の欠如につながります。そして、最終的には誰も発言しなくなります。こうした事態を回避するには、問題やアイデアをしっかりと検証し、対処することが重要です。次のスプリントで必要な調整をおこなうか、実行可能な目標を設定し、進捗状況を全員に報告しましょう。

レトロスペクティブを成功させるためのヒント

チームが冗長な日常業務から脱却し、振り返りと共同作業を重視するマインドセットへ移行するのに役立つヒントを紹介します。

  1. チームメンバーにアイデアの立案を事前に依頼: ミーティングに参加する前に、どの程度の準備が必要で、どのように準備すればよいかを明確にします。例えば、参加者に自身の考えを共有ドキュメントに記入するように依頼します。1行から2行程度または1段落のテキスト、例の提示など、具体的な形式を指定しましょう。意見を共有するための代替オプションを用意することで、ミーティングで発言することが苦手なメンバーからも意見を聞き出しやすくなります
  2. タスクに焦点を当て、時間を有効活用: レトロスペクティブミーティングは、問題を深く掘り下げる絶好の機会ですが、一部のメンバーやひとつの問題がミーティングを独占し、他のメンバーが蚊帳の外に置かれてしまうというリスクあります。アジェンダと時間配分を明確にし、ミーティングをスケジュール通りに進めることが重要です
  3. 新たな手法を導入: 従来のアプローチでは、タスクの成果、改善点、次回の施策を話し合いますが、これらの質問に詳細かつ有益な方法で回答することは、容易なことではありません。新しいアクティビティや手法を積極的に導入し、より具体的で焦点を絞った議論を促進しましょう

ビジネス目標を達成するために

レトロスペクティブミーティングは、アジャイルフレームワークにおいて重要な役割を果たします。誰もが安心して意見を共有できる機会を提供することで、問題解決の促進、パフォーマンスと信頼関係の向上、イノベーションと新たなインサイトの獲得につなげることができます。

アジャイルチームを編成するには、レトロスペクティブをプロセスに組み込む必要があります。まだ導入していない場合は、次回のスプリントの完了後に、ここで解説した原則にもとづいてレトロスペクティブミーティングを実施しましょう。ミーティングを対面でおこなう場合は、必要な資料や設備を整えましょう。オンラインミーティングを実施する場合は、チームメンバーにアクセス権を付与しましょう。チーム全員をミーティングに招待し、初めて参加するメンバーにはプロセスを事前に説明する必要があります。

アドビがお役に立ちます

効果的なコミュニケーションを図るためのシステムを構築すれば、インサイトを共有したり、問題に迅速に対処したりすることが容易になります。Adobe Workfrontは、あらゆる規模のプロジェクトを成功させるために、チームの戦略的な連携をサポートするプロジェクト管理ソフトウェアです。

Adobe Workfrontの詳細については、製品ツアー動画をご覧ください。