その「カスタマージャーニー」はもう古い!? マーケターが陥りがちな勘違いとは

その「カスタマージャーニー」はもう古い!? マーケターが陥りがちな勘違いとは | UNITE

深い洞察に基づいた顧客体験を提供しようとする前に、まずマーケターが取り組むべきことは、自分たちに深く染みついたやり方から脱却するということだ。マーケターの進歩を阻んでいるものは、いったい何なのだろうか?

顧客満足度向上の取り組みは、これまでになく重要になっている。消費者が不満を感じた場合、平均で100人中18人がネガティブな体験をSNS等でシェアしている。しかもその数は18歳から24歳の層では29人に増える。そして嫌な思いをした場合、41%の消費者はオンラインや電話、または対面での話し合いに持ち込むという。

このような事実を裏付ける数字があるのに、企業はなぜ、的外れなコミュニケーションを続けるのだろうか。顧客の気持ちが離れてしまうリスクがあるというのに。

…おそらく、以下のような理由である。

企業からすれば、ちゃんと「ジャーニーマップ」に基づく対応をしていると考えるだろう。そして「それなのになぜ?」と思うだろう。しかし、いわゆるジャーニーマップは、カスタマージャーニーを企業側から見た「仮説」にすぎない。

マーケターは、「今までやってきたことが間違っていた」ということに気づくべきだ。カスタマージャーニーによって顧客の行動をあらかじめ定義できるという考え方がそもそも間違っている。そして、勘違いをしたままだからこそ、今日のオムニチャネルかつマルチデバイスという状況にそぐわない、しかも柔軟性に欠けた顧客体験を生み出してしまうのだ。

これは非常に大きな問題だ。CMOカウンシルのレポート(Predicting Routes to Revenue Report)によると、カスタマージャーニーを予測し対応できる能力があると自負しているマーケターは、全体の5%しかいない。つまり、大部分のマーケターは、タイミングを外したちぐはぐなコミュニケーションを続けており、そのため、顧客が企業に大事にされているとは言いがたい状況が続いていると言える。

今こそ、マーケティングの進化を邪魔する、古臭い勘違いを捨て去らなければならない。顧客がブランド企業とのコミュニケーションと取ろうとしているならば、いついかなる場合でも、深い洞察に基づいた、顧客が興味を持つ顧客体験を途切れることなく提供しなければならない。そのためには、いままでのやり方のどこが間違っていたのかを検証する必要がある。では以下に、代表的な「マーケターの間違い」を解説しよう。

もちろん、ジャーニーマップにまったく価値が無いというわけではない。ただ、それが通用する期間はあまりにも短い。その結果、変化の速さに対応できず、すぐに廃れてしまうということを知っておくべきだろう。

勘違いその1: 「カスタマージャーニーの型は決まっている」

消費者が購入にいたるまでの行動は変わることなく一定のものだと考えている企業が多いが、これは完全に間違っている。カスタマージャーニーは、そのような不変のものではない。消費者一人ひとりの欲求は時間とともに変わり、その行動も常に変化している。消費者の行動を一般化することはできないのだ。消費者の行動をマーケターの思い込みで理解しようとすれば、常に想定外の事態にあわてる結果になる。

ブランド企業は、顧客を型にはめるのではなく、顧客の声に耳を傾け、満足させるように努めなければならない。英国のトラベルエージェンシー「サーガ(Saga)」は、ビジネス全体において自社の顧客とのコミュニケーションが時代遅れであり、顧客のニーズを反映していないことに気づいた。そこで、それまで別々に存在していたデジタル/コールセンター/宣伝部署の各コミュニケーションを統合するオムニチャネルプログラムを作成したところ、よりパーソナライズされた活発な対話を実現することに成功。その結果たった6週間で、なんと売り上げ増加率59%という驚くべき結果を達成したのだ。

勘違いその2:「カスタマージャーニーはマーケターがコントロールできる」

テクノロジーとソーシャルメディアの進歩により、ブランド企業と顧客のコミュニケーションが大きく変わってきた。これまではブランド企業が顧客とのコミュニケーション方法を決定し、顧客はそれに従うしかなかった。しかし、顧客がさまざまなチャネルで膨大な情報にアクセスできるようになった現在、顧客は自分で関心のある製品を見つけ出し、それについてブランド企業とどのようにコミュニケーションするか(オープンに、またはプライベートに)を決定できる。つまり、カスタマージャーニーは、ブランド企業側ではなく、顧客が決めるものなのだ。このようなジャーニーにあっては、当然ながら、一貫して顧客のニーズが満たされなければならない。

消費者主体の時代になった今、ブランド企業は顧客一人ひとりのコンテクスト(背景や心情)を理解し、顧客目線でカスタマージャーニーに素早く対応する必要がある。世界最大のビール醸造会社であり、パブレストラン老舗の「マーストンズ(Marston’s)」では、ウェブとメールで寄せられた意見と顧客データのマッチングを行うことで、これまでにないレベルのパーソナライズされたコミュニケーションが可能になることに気がついた。そしてこのアプローチにより、顧客の反応率は以前の6倍に跳ね上がった。

勘違いその3: 「カスタマージャーニーを分析することで、適切なアクションが可能になる」

現在の分析ツールは、グラフィカルに「見える化」された履歴データを提供してくれる。しかし、こうしたツールの多くは、カスタマージャーニーに対するひとつの見方を示してはいるが、オムニチャネル時代のカスタマージャーニーを反映した、有用なアクションに結びつく知見を提供してはくれない。

分析結果から得られた洞察は、すべてのチャネルを通じて入手したパーソナライズされた情報とともに活用してこそ、はじめて役に立つ。このふたつが揃うと、実際に顧客と接する現場のスタッフに最善の対応策を提供でき、究極的には、コンテクストに基づいたリアルタイムでの強い結びつきが可能となる。これは、密室の中で履歴データだけを見続けていては達成できないものだ。

リアルタイムでのやりとりを考慮した洞察によって、臨機応変な調整が可能になる。その結果、信頼関係に基づいた貴重な関係の構築も可能になる。マーストンズでは、顧客とのやり取りから得られた情報を活用し、子連れ客にファミリー向けメニューのプロモーションなどを行っている。このようなパーソナライズされた「おすすめ」を提案することで、ダイナミックかつ顧客のニーズとも関連性が高い体験を提供することに成功した。これは顧客満足度の向上に大きく貢献し、結果としてコンバージョンの上昇にもつながった。

勘違いその4:「カスタマージャーニーはひとつである」

顧客は常に、購入にいたる段階で何のルールや決まりにも縛られず、決まりきった手順を強制されることはない。さらに、さまざまなきっかけで、ひとつのジャーニーが同時に複数のジャーニーに分岐していくこともあり、いつ何が変わってもおかしくない。ブランド企業と、どのチャネルでどういったコミュニケーションを行うかは、顧客が自分のタイミングで決定する。ブランド企業は、その瞬間瞬間に備え、すべてのステップで価値を提供しなければならない。

顧客との効果的なエンゲージメントを望むマーケターは、顧客はいくつものジャーニーを行き来するものだということを理解し、機敏に対応するべきだ。この点を理解しているブランド企業は、その対応に注力すれば大きな成果を出すことができ、顧客満足度の向上にもつながると気がつくだろう。たとえば、電話での対話とウェブ上での対話を統合して使い勝手をよくすることで、顧客により多くの選択肢を提供でき、顧客とのつながりを全体的に改善することが可能となる。

ダイレクトメール、店舗、コールセンターといったチャネルだけで、ブランド企業が顧客とのコミュニケーションを管理できた時代は終わった。今日の顧客は、ブランド企業とコミュニケーションを取る方法を考えたりはしない。時間と場所に関係なく必要を感じたときに、顧客の方からコミュニケーションを取ろうとする。そして彼らは、それぞれのチャネルを別個に存在するものだとは考えていない。どのような方法でブランド企業とコミュケーションをとったとしても、同じ対応をしてくれるものと思っているのだ。

ブランド企業側の都合に合わせてカスタマージャーニーを管理できるという最大の勘違いを捨てない限り、マーケターは真の意味で顧客と「つながる」ことはできない。より自由度が高く柔軟な体験を提供してこそ、マーケターは自社の価値に基づく長期的な関係を顧客との間に構築し、彼らを「ひいきの客」とすることができるのだ。

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