顧客に寄り添う3つの視点で、カスタマージャーニーを理解せよ
- 今やモバイル端末は、道具というより、世界や人々との繋がりを実感できる素晴らしい体験ができる場である
- カスタマージャーニーの入口と出口だけでなく、ジャーニー全体において、顧客を理解する必要がある
- 大きな(または複雑な)決断を行うとき、対話の相手はどんなによくできたロボットであっても、生身の人間との対話にはかなわない
顧客に喜んでもらうこと、それは誰にでも共通する願いだろう。しかし、昨今の顧客の期待値は非常に高く、顧客満足度の向上は容易ではない。「相手をわかっている」マーケティングが望まれる。自宅、移動中、職場など、顧客は場面によってモバイルとPCなどのデバイスを使い分けているが、ブランド企業のサイトを訪れるたび、前回訪問時からの続きの体験を得たいと考えている。事実、Inforsysの調査によると、86%の消費者は、購入の決定を左右する一要因として、個人に特化した対応、すなわちパーソナライゼーションを挙げている。
ある人が企業サイトで特定の製品に興味を持ち、質問したとしよう。一ヶ月後、その人が商品購入を決めて戻ってきたとして、初回訪問客として扱われたくはない、と考えるだろう。そうではなく、「以前質問した者だ」と企業に覚えていて欲しいはずだ。これがいまどきの顧客だ。
顧客が商品に出会い、興味、検討、購入、利用へと進む過程を、目的地へ向かう旅になぞらえて「カスタマージャーニー」と呼ぶ。当然、旅の行程やペースは一人ひとり異なるはずだ。では、そうした顧客一人ひとりの旅、つまり「個客」のカスタマージャーニーの状況を、ブランド企業が把握することは、現実的に可能なのだろうか?
これには、旅の状況を把握し対応を効率化するマーケティング技術、旅の各段階で顧客対応する社内の複数部署の連携などが欠かせない。しかし、それだけでも実現できない問題だ(誤解しないで欲しいが、そもそもマーケティング技術と他部署の連携だけでも非常に難しい課題である)。ここで注目すべきなのは、消費者行動に影響を及ぼし、ブランド企業と消費者の関わり方に影響を及ぼす要因、すなわち市場トレンドやテクノロジートレンドを、いかにして理解し活用すべきかという点にある。
一貫性のあるスムーズなカスタマージャーニーを整えることがひとつだが、より本質的な要因がある。それは、期待を上回る対応で顧客に喜んでもらうこと。それこそマーケティングの究極の目的といってよいだろう。顧客が購入に至るまでの旅には、曲がりくねった道のりがある。顧客が旅をあきらめることなく、また道に迷うことなく、快適な旅を送れるよう導かなければならない。
では、「個客の旅の行程」を快適に導く3つの視点を、ブランド企業の事例を挙げながら見ていこう。
視点1:より“人間らしい体験”の提供にモバイルを活用する
誰もがモバイル端末を使用している現代において、何をいまさら、と思われるかもしれない。しかし、スマートフォンを使って自分をとりまく世界や人々と繋がる方法は今、実に面白くなってきている。モバイル端末が「画面が小さくてクリックしづらく、使いにくい道具」だった時代は終わった。ポケモンGOのような「没入型」の拡張現実や、Facebookメッセンジャーやスナップチャットの即時性など、繋がりを実感できる素晴らしい体験ができる場、それが、今のモバイル端末だ。「作りもの感」を排除した、「本物のモバイル体験」をカスタマージャーニー全体へと活用する方法を発見したブランド企業が、これから市場を獲得していくことだろう。
たとえば、通信大手AT&Tでは、Facebookの360度動画を使用し、レースカーの運転をモバイル端末で体験できるようにした。興奮、恐怖、期待感といったリアルな感情をすぐに実感できる。ブランドのストーリーをオンラインでもっと見てみたいと思ったら、StrongCanハッシュタグをクリックすればいいように作られている。
視点2:オンラインとオフラインの一貫性を持つ
今日の消費者は、オンラインかオフラインかを意識していない。今この瞬間に、必要なものをどう手に入れるか、それしか考えていない。このため、使用されるチャネルと端末が頻繁に変わるという、これまでになかった状況が発生する。Googleによると、90%の消費者は、購入までの過程において複数の端末を使用しているという。
したがって、マーケターは、オンラインとオフラインでの関わり合いを、より一貫性のあるものにしなければならない。カスタマージャーニーの入口と出口だけでなく、ジャーニー全体において、顧客を理解する必要がある。つまり、顧客の好み、何をクリックしたか、どういった件で電話をしてきたのか、どの程度真剣に購入を検討しているのか等々を把握し、これに基づいた施策を取っていくということだ。
たとえば、マットレス販売Tuft & Needleでは、「お値打ちマットレスのナンバーワン」を目指し、複数チャネルでこのメッセージの拡散に成功している。同社は見込み客が「購入検討中」のどの段階にいるかを把握している。そして、それにあったメッセージと資料を複数のチャネルや端末に渡って提供し、購入への到達を促している。
視点3:“実際の会話”を重要視する
大きな決断、あるいは複雑な要素が絡む決断を行うとき、相手がどんなによくできたロボットだろうと、生身の人間との対話にはかなわない。実際、米国の2,000人の成人を対象にしたInvocaの調査によると、一ヶ月のうちに企業に電話で問い合わせる人の数は、オンラインフォームを記入する人の2倍以上となっている。さらに、ミレニアム世代では、企業へのコンタクト手段として電話を使用する人が、ツイートを利用する人の3倍となっている。カスタマージャーニーにおいて、実際の会話は、多くのマーケターが思っているよりもはるかに重要でインパクトがあるのではないだろうか。カスタマージャーニーの重要ステップとして、電話での直接対話も、マーケターが最適化や評価を試みるほかのマーケティングチャネル(例:メール、ソーシャルメディア、ウェブ)と同等に扱うべきだろう。
実際の会話が注目されている証拠に、Facebookでは最近、オフラインコンバージョンAPIを発表した。これは、オフライン購入(店舗や電話での購入)に基づきFacebook広告を最適化できるようにするものだ。この動画(英語)で詳しく説明されている。このAPIを活用するブランド企業の例が間もなく見られるようになるだろう。
終わりに
カスタマージャーニーは、決まった筋道をたどるものでもなければ、一定したものでもない。つねに変化を続け、マーケティングという取り組みに影響を与えるものだ。課題の大きさに圧倒されるかもしれないが、競合や同業者が重要と見なしているものを追いかけるのではなく、「自分たちの顧客にとって重要なことは何か」を第一に考えるべきだろう。一貫性があり、スムーズで、忘れがたい体験の提供に専念するマーケターは、顧客に感謝され、努力が報われるに違いない。
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