顧客から「親近感」を得るには:ブランドアフィニティを強化する6ヶ条
- 顧客の期待値は常に上がり続けるため、消費者の欲求に対する継続的な対応は、企業にとって難しい課題となる
- 一旦問題を認識したら、顧客に向けた明確で効果的なコミュニケーションが必要となる
- 満足度の高い体験の実現は最も重要だが、その真の目標は「エラーのない製品やサービス」を実現することだ
顧客を喜ばせ、「親近感(ブランドアフィニティ)」を得る
企業が顧客の期待値を把握し、越えていかなければならないのは、もはや当然の話だ。
「ブランドアフィニティ(Brand Affinity)」=「消費者が企業に感じる親近感」の構築は、実際、顧客満足にかかっている。顧客満足を達成するには、顧客が何を欲しているか、何を必要としているかを予測しなければならない、これは簡単な話ではない。顧客の期待値は常に上がり続けるため、企業が継続的に消費者の欲求に対応していくのは難題だろう。
企業には、「一刻も早く競争力の高い選択肢を顧客に提供しなければ」という焦りが常にある。その焦りを抑え、顧客ニーズの特定、製品やサービスの開発、適切な市場投入といったことに、きちんと時間を取る必要がある。急ぐあまり不完全な製品を市場に出しては、顧客を喜ばせるどころか、逆効果になってしまう。
しかしもっと重要な点は、フィードバックループの形成である。すなわち、一旦製品が世に出たら、迅速な次回リリースを行えるようにすること、かつ、顧客体験の改善につながるような、建設的で忌憚のないフィードバックを得られるようにすることだ。
最善の策は、完璧を求めず、継続的なリリースとサービス改善をたゆまず繰り返していくこと
航空会社の機内WiFiを例に取ってみよう。人々は、どこでもネットに接続できて当たり前と思うようになっており、個人用端末が使えない状態が発生すると、不満を感じる。それに対し、顧客が求める体験を実現するべく、WiFiに対応したとしよう。しかし、そのWiFiにもし不具合が発生してしまったら、顧客のブランドアフィニティはリスクにさらされる。
しかしながら、我々は進化のスピードがおそろしく速い世界に住んでいる。現在の環境で、不具合が絶対に発生しない完全な製品の誕生を待っていては、永久に市場投入ができないことになってしまう。
それでは、ブランドアフィニティを保持するために企業にできる最善の策は何か?それは、正直に手の内を明かし、継続的なリリースとサービス改善をたゆまず繰り返していくことだ。
ブランドアフィニティを強化するポイント6ヶ条
企業が優先すべきは、常に改善すべく努力している姿勢が顧客にわかるような関係の構築だ。そうした関係構築に役立つ基本姿勢とはなにか、6ヶ条のポイントを見ていこう。
ブランドアフィニティを強化する基本姿勢 1.責任感を持つ
最も重要な点は、現状を顧客から隠さない姿勢だ。顧客に対してごまかしや責任転嫁をしてはならない。問題が発生したら、可能な限り人間的に対応すること。企業が顧客の不満に耳を傾け、問題解決のためにできる限りのことをしているかどうか、顧客は知りたがっている。これは、間違いがあったのなら認め、口先だけでなく実際に解決策を探すことを意味している。
ブランドアフィニティを強化する基本姿勢 2.適切なコミュニケーションを取る
一旦問題を認識したら、明確で効果的なコミュニケーションを顧客に向けて発信する。たとえば、顧客の行動にもとづいてリアルタイムでメッセージの内容を変更する、といったことが考えられる。うわべだけのメッセージは、顧客のいらだちを募らせるだけだ。問題の回避方法などを顧客に説明する場合は、極力わかりやすく、条件つきの説明は避け、実際の解決策につながるようにすること。
ブランドアフィニティを強化する基本姿勢 3.顧客の気持ちになって考える
顧客の期待値を理解するには、顧客の欲すること、そして、顧客が何を必要としているかを知らなければならない。後者は特に重要である。製品機能には、こうした期待値を反映させていく。引き続き、航空会社の例を見ていこう。なぜ旅行者は、Wi-Fiを使いたがるのか? その答えが「動画を見たいから」であったら、ストリーミング機能を提供するほうが、ショッピング用自動フォームよりも優先度が高いということになる。そのあと、動画鑑賞時に発生する可能性のある問題を想定し、どんな苦情や問い合わせが来るかを予測する。例えば、「困った顧客は誰に問い合わせてくるだろう?」「自力で問題解決をしてもらうにはどうしたらよいだろう?」と考えてみよう。
ブランドアフィニティを強化する基本姿勢 4.接客を担当する人員のトレーニングを行う
直接顧客に対応する人員は、技術を十分に理解し、発生し得る問題と解決策をよく頭にいれておくことが必要だ。すべての接客現場に技術者を配置したり、ITサポートデスク並みのトレーニングを受けさせたりするわけにはいかないだろうが、接客担当が、会社の代表/製品の責任者として前線に立っていることを忘れてはならない。
ブランドアフィニティを強化する基本姿勢 5.サービスの拡大を適切に行う
小規模な顧客、あるいは特定の顧客に対して製品を展開し、それがうまくいった場合、次は、より広く製品を売り出していきたいと考えるだろう。その際、新製品の企画時と同様、業務上のプロセスを整備し、複数の部署を連携させて、迅速なリリースとバージョンアップに備えること。すべての顧客に対応しきれないサービスを展開する場合は、善後策をきちんと考えることも必要だ。
満足度の高い体験の実現は最も重要だが、その真の目標は「エラーのない製品やサービス」を実現することだ。製品やサービスの利用体験と潜在的な問題をきちんと理解し、対応できる技能をもったリソースを製品機能の開発に当てること。UX研究者、クリエイティブITなどの設計エキスパートとエンジニアの協力体制は、製品やサービスの継続的な改善につながる。
故障しやすく不満を持たれる製品を急いで市場に出すよりも、機能的に安定した製品の完成を待つほうが好ましいが、そのような選択が必ずしも可能であるとは限らない。問題が起こることを前提に、賢く製品開発と顧客体験管理にあたる企業こそが、人間という不完全な存在が創るテクノロジーの世界で、より優れたサービス体験を提供できるだろう。
ブランドアフィニティを強化する基本姿勢 6.UX(ユーザー体験)研究者と製品エンジニアの知識を融合する
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デジタル社会の到来により、企業の対応すべき顧客接点が多様化しただけでなく、消費者と企業のエンゲージメントのあり方そのものが大きく変わりました。消費者がブランド企業とやり取りをするうえで様々な方法があるばかりか、その選択も消費者側で行われます。オンラインかオフラインか、外出先か自宅か、企業は受け身の立場に立たされるのです。