金融機関が顧客獲得競争を勝ち抜くには:リテール取引における顧客体験変革へのアプローチ

金融機関が顧客獲得競争を勝ち抜くには:リテール取引における顧客体験変革へのアプローチ

金融リテール分野で競合が過熱

金融リテール分野で競合が過熱

デジタルが、金融業界に新たな競争を持ち込んだ。伝統ある銀行やクレジットカード会社などの既存金融機関は、これまでのように業界内でしのぎを削るだけでなく、新たに異業種から参入するライバルとも顧客獲得競争を繰り広げなければならない。膨大な個人データを持ち、優れたデジタル体験を構築するノウハウを持っている企業も、金融サービス事業へと次々と参入し、あるいは虎視眈々と狙っている。モバイル決済アプリの乱立は、その最たる現象だろう。彼らの狙いは、リテール市場だ。新しい勢力図の中で、既存の金融機関はどうやって、リテール取引における競争に勝ち抜き、消費者から常に選ばれる取引相手になることができるだろうか。

金融機関が消費者の日常的な取引相手になることができれば、毎月の引き落としや給与振り込み、投資信託など金融商品の購入、自社グループのクレジットカードやデビットカードの利用などによる安定した収益を期待できる。取引の中で優れた「体験」を提供し続けることで、住宅ローンや自動車ローンといった比較的高収益を見込める契約先として、真っ先に検討してもらいやすくなる。

デジタルでの接触機会は増えている

デジタルでの接触機会は増えている

その「体験」の部分が、大きく変わってきた。銀行の場合、消費者との関係は、かつては窓口を通した人と人とのつながりだった。やがて、出入金はATMを通した機械と人との関係になり、いまではコンビニATMの台頭などにより、銀行のATMコーナーに並ぶ必要もなく、消費者が銀行の店舗を訪れる機会は、大幅に減っている。一方、消費者が銀行と接する「瞬間」は増えている。オンラインバンキングやモバイルバンキングを通して、彼らは月に何度も銀行のサービスに触れ、何らかの体験をしている。

なかでも、モバイルの需要は高まっている。アドビが2017年に実施した調査によると、大手リテール銀行のwebサイトへのアクセスのうち、モバイル経由のものは2014年から121%増加した。インターネット専業の金融機関の中には、スマートフォンアプリに注力してそこからのアクセスが過半を占めるところも出てきている。

モバイルをはじめとするデジタル技術を使えば、いつでも便利なサービス体験を誰にでも提供できる。デジタルなら、パーソナライズも容易だ。低コストに、何度でも、一人ひとりに最適な体験を届けることができるのだ。

データを中心に顧客体験を最適化する

データを中心に顧客体験を最適化する

そんなデジタル技術を有効活用するために不可欠なのは、データだ。銀行は長年、データの不整合を許さない優れた勘定系システムを運用している。これにより、顧客との取引履歴は出入金記録として完全にデータ化されてきた。一方、リテール顧客の属性などの情報は、勘定系ほど厳密に管理されていない。リテール業務におけるCRMのような仕組みも、完全に定着しているとは言えない銀行も多い。さらに、web周りになるとより課題は多い。新規顧客獲得のカギになるオンラインの匿名訪問者のデータを活用できている銀行は、いまだ少数にとどまっている。

「顧客」と一言でいうとき、暗黙のうちに「口座を持っている既存顧客」を指すことがあるが、実際には「潜在顧客」「見込顧客」も含まれなければならない。そして、金融機関の視点からある顧客を見たときの「潜在」か「見込」か「既存」かの違いは、ある一人の「金融機関との距離」の違いに過ぎない。顧客が時間とともに金融機関との距離を近づけ、口座を開設し、日常的に取引を行うに至るまでの課程を、旅になぞらえて「カスタマージャーニー」と呼ぶ。その旅の課程では、資料請求や口座開設などのできごとを境にして、「匿名の顧客」から「既知の顧客」へと変わるが、その前後において一貫して、あらゆる顧客接点で、金融機関は相手の一人ひとりを見分けなければならないのだ。

「顧客との関係」を扱うシステムとして使われてきたCRMは、「既存顧客」を扱う。相手は「誰か」を示すデータが前提だからだ。しかし、新規顧客開拓においては当然ながら、まだ「誰か」が判っていない、すなわち「匿名の顧客データ」を扱わなければならない。

匿名か既存か、オンラインかオフラインかを問わず、カスタマージャーニー全体に関わるデータを一元化することが、顧客に最適な体験を提供する第一歩になるのだ。

顧客データをつなげ、体験をつなげる

これは銀行だけでなく、証券会社や保険会社などの金融機関にとっても同様だ。消費者は、いつでも、どこからでも、デジタルを介して金融機関とつながることができる。その取引の際に発生したデータを、オフラインのデータや過去の取引履歴と統合管理する。顧客を一人の個人として認識しながら最適なサービスを提供することと、集団として把握して有効でありそうなプロモーションを打つことは、両立できるのだ。複数の金融機関の事例を含めて、アドビのガイド『デジタル時代の金融機関:データをつなげば、体験がつながる』が詳説している。ぜひ一読してほしい。

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