ITリーダーの責務としてのマーケティングテクノロジースタックの合理化
2020 年から 2023 年にかけて企業がマーケティングテクノロジー(マーテク)に費やした金額は年間 195 億ドルにのぼりますが、いまだに多くの企業が、その投資から最大限の利益を引き出せずにいます。多額の支出にもかかわらず、マーテクスタックに含まれる様々なコンポーネントがとてもうまく連携していると回答したビジネスリーダーは、わずか 17%にとどまります。テクノロジーポートフォリオに生じたこのズレにより、企業はデジタルチャネルの違いを超えて魅力的なカスタマーエクスペリエンスを提供することができず、時間、予算、リソースを無駄遣いする結果を招いています。
マーテクへの投資は 2024 年には 270 億ドルに到達すると予測され、IT部門はマーテクスタックの合理化を求められています。合理化の内容としては、技術的負債の削減、カスタム統合の保守頻度の抑制、機能が部分的/全体的に重複するシステムの廃止などがあります。
IT予算の 20~40%が技術的負債に関連する問題に費やされていることを考えると、マーテクの合理化はIT部門にとって避けられない課題です。肥大化したマーテクスタックは、これらの問題を悪化させて、データ共有を阻害し、コストを膨れ上がらせるだけです。
マーテクの合理化においてIT部門が果たす役割
システムのスムーズな稼働を維持するだけでなく、従業員の能力を最大限に引き出すテクノロジー基盤を利用して組織のROI向上を推進することも、IT部門の役割です。このようにテクノロジーシステムの改善に尽力しているにもかかわらず、2026 年までにおよそ 55%の企業がサイロ化したシステムと限定的なデータ共有に悩まされ続けると予測されています。
マーテクの現状
現在、マーテクをめぐる状況は活況を呈しており、11,038 社を超える様々なベンダーがIT担当者に注目されようと競い合っています。アドビとPKが行った調査によると、企業は機能が重複しているアプリケーションを 130 種類も使用していました(2020 年の平均)。また、44%のマーケティング用SaaSライセンスが十分に活用されていないか、まったく使われていない状態にありました。これは、調達されるツールと実際のニーズの間に大きなズレがあることを示唆しています。機能が重複する余分なツールへの投資は、戦略的合理化を通じた大幅なコスト削減の余地として企業内に存在しています。
そこで企業が進めているのが、プラットフォームソリューションへの移行によるコストの適正化とパフォーマンスの向上です。最近アドビが 137 社の企業を対象に行った分析では、プラットフォームテクノロジーへの移行が進む傾向が明確に示されています。この傾向は、マーテクスタックの中核をなす構築ブロックとして最も一般的な、以下の 6 つのテクノロジーで特に顕著です。
- データ管理
- 分析
- コアテクノロジー(セグメント化、ターゲティング、ジャーニー)
- コンテンツ管理システム
- パーソナライゼーションエンジン(または顧客データプラットフォーム)
- アカウントベースドマーケティング
合理化のメリット
おそらく最も早く享受できる合理化のメリットが、サポートコスト、技術的負債、ライセンス料金の減少に伴うコストの削減です。
コスト面以外にも、合理化により、セキュリティが強化され、未承認ソフトウェアの使用が減り、データの相互運用性が向上します。これらは、大半の組織を悩ませている顧客データ統合に関する課題の解決に欠かせません。また、マーテクの合理化により、ポイントソリューションの統合に要する時間と労力が減り、運用の複雑さが簡素化されます。簡素化が進むと、システムのスケーラビリティは向上し、開発とシステム管理の必要性が最小限に抑えられ、新しい機能の自動デプロイメントをしやすくなります。

マーテクスタック合理化の評価と査定
マーテクスタックの合理化には系統的アプローチが欠かせません。最初にやるべきことは以下のとおりです。
- すべてのマーテクアプリケーションを網羅するインベントリの作成: ライセンス料金とその詳細、契約期間、アプリケーションの目的、主な機能、所有者に関する情報を含めます。
- 社内における利用状況とビジネス価値の査定: アクティブログイン数、使用時間、毎月のアクティブ利用者数(MAU)といった指標を使用します。
- パフォーマンスが悪いソフトウェアの根本原因の特定: 愛好者の退職や基盤データの問題など
- 各アプリケーションの大まかなROIの計算
- 新たに購入するソリューションを評価するためのガバナンスプロセスの作成
上記の 5 つの手順を完了して実装を成功させるためには、早い段階で合理化プロセスに関する賛同を得ておくことが重要です。「このツールの現在の利用状況について、どう思いますか?」や「さらにトレーニングを受けたら、このツールからより大きな価値を引き出せますか?」といった質問は、合理化のリストに載っているほとんどのアプリケーションの必要性を見極めるのに役立ちます。
評価が終わったアプリケーションは、それぞれ 推奨、統合、要協議、廃止 の 4 つのカテゴリのいずれかに分類します。複数のアプリケーションが同じ機能を果たしているか、アプリケーションがセキュリティとデータプライバシーの要件を満たしているか、業界で広く使われているアプリケーションか、といったことを評価しながら分類していきます。アプリケーションの使いやすさ、ポジティブなビジネス成果との関連、代替アプリケーション候補が既存のスタックか市場にないか、といったことも重要な検討事項です。
マーテク合理化のユースケースと実例
- National Instrumentsは、24 のプラットフォームを単一のwebプラットフォームに合理化したことで、IT管理の負担を 50%軽減し、4 日かかっていた新しいエクスペリエンスの開発期間をわずか 1 日に短縮しました。
- IBMは、40 以上あったマーケティングソリューションをわずか 5 つの先進的な機能に集約し、1 億 2,000 万ドルのコスト削減を達成しました。
- Lenovoは、3 つのマーテク用ポイントソリューションを 1 つのプラットフォームに一本化したことで、年間 1,100 万ドルを節約し、コンテンツ量を 53%増やし、クリックスルー率を 12.5%高めました。
- 米国のある大手金融機関は、400 のビジネスプロセスを支えていた複数のシステムを統合したことで、アプリケーションポートフォリオを 36%スリム化し、コストを 16%削減し、レガシーアプリケーションコードを 34%減らしました。
マーテク合理化に関するその他の情報
健全なテクノロジースタックを維持するには、継続的な合理化が不可欠です。テクノロジー投資から期待される価値を引き出し、保守コストを最小限に抑え、戦略的意思決定のための時間的余裕を確保するためのマーテク環境の整備において、IT部門は、ますます積極的な役割を果たすことが求められるようになるでしょう。その求めに応えるために、IT部門は、合理的に整えられたマーテクスタックを通じた業務の効率化、データ使用状況の向上、ビジネスの成長において、主導的役割を果たすことになります。
マーテクの合理化について詳しくは、こちらのウェビナーをご覧ください。
ラザ アニーズは、アドビのデジタル戦略アソシエイトとして、重要顧客のデジタル変革の取り組みに指針を提供するために中心的な役割を担っています。イノベーションと運用効率に敏感なアニーズは、ビジネスとエンジニアリングに関する自らの専門知識を活かすべく、IT部門への支援を通じてマーテクでの競争力とROIの向上を推進するために情熱を傾けています。MBAとエンジニアリングの学位を取得しており、デジタル変革チームのリーダーとして、テクノロジーの戦略的最適化の評価と実装を手がけています。
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