Adobe AnalyticsのITP対応について

SafariにてアップデートされているITPは、Cookieベースでトラッキングする解析ツールに影響を与えることになります。本ブログではこのITPがAdobe Analyticsに起こす影響と対応策についてお伝えさせて頂きます。

※ ITP2.2の情報がリリースされていますがここでは主に2.0および2.1への対応について記載します。

ITPとは?

ITP(Intelligent Tracking Prevention)とは、Appleが中心となって開発されているレンダリングエンジンWebkitに搭載された、クロスサイトトラッキングを防ぐ為の新しい機能の事です。WebkitはAppleが提供しているブラウザである「Safari」に搭載されております。この新しい機能は、当ブログを投稿した2019年5月時点でITP2.1までバージョンアップされており、今後もバージョンアップが予定されております。

ITPを理解するためにはCookieの種類と発行方法を理解する必要があります。まず種類は大きく分けると1st Party Cookieと呼ばれるものと3rd Party Cookieと呼ばれるものに分類されます。簡単に触れると1st Party Cookieは「訪問先のサイト(ドメイン)が設定しているCookie」もの3rd Party Cookieは「訪問先以外のサイト(ドメイン)が設定しているCookie」となります。

1st Party Cookieは、利用するサイトのドメインで設定され、そこに保存される情報は基本的(注1)にそのドメインでの読み出ししか出来ません。3rd Party Cookieについては、サイト外のドメインで設定されることになります。オンライン広告に利用されるCookieはこの3rd Party Cookieを活用することで、サイトへの訪問と広告配信ツールで管理するCookieの紐づけを行っています。これが多用されてしまったため、AppleはITPを導入しセッション管理など必要な利用のみへのCookie利用を推進していっています。

ITP2.0での発生している制限のポイント

Intelligent Tracking Prevention 2.0 | WebKit

ITP2.1での発生している制限のポイント

Intelligent Tracking Prevention 2.1 | WebKit

Adobe Analyticsへの影響

冒頭に書いた通り、解析ツールはブラウザのトラッキングにおいてCookieを利用します。その為、ITPの制限により最も影響が出るのがこの部分になります。具体的には訪問をまたぐ計測に関わる部分、訪問者数(ユニークユーザー数)の上振れやセッション横断でのフロー分析が繋がらないケースが出るといった影響が考えられます。Adobe Analyticsにおいて、ITPの制限により発生する影響は設定状況によりその影響が変わってきます。

自社のAdobe Analyticsでの計測に影響があるかどうかについてですが下記、フローにまとめていますが、大きくはトラッキングドメイン、Experience Cloud ID Service(注2)の導入によってその影響が変わります。

影響のチェックフロー

Experience Cloud ID Service の導入について(Visitor APIの導入)

Experience Cloud ID Service(ECID/mid)はAdobe Experience Cloudの製品間の連携・活用を強化するもので、数年前よりこの導入も推進されています。こちらはかなり特殊な動作をしており、1st Party Cookie、3rd Party Cookieの両方を使いながら動作するものとなっています。

こちらはVisitor APIを導入することで実装され、このVisitor APIのコードが最新版である4.3.0では最新版においてはITP2.1に対応をしていますが、それ以前のバージョンについては影響が出てしまいます。

トラッキングドメインについて

Adobe Analyticsはトラッキングドメインをアドビが用意しているドメインにするか、自社のドメインにマッピングするかが選べるようになっています。

トラッキングサーバーとして、omtrdc.net、2o7.net が設定されている場合は、アドビのドメインとしてトラッキングしており、サイトにアクセスしたブラウザからは3rd Party Cookieとして扱われます。自社のドメインにマッピング(CNAMEの設定)している場合はサイトと同じドメインであれば1st Party Cookieとして扱われることになります。

Adobe Analyticsの計測サーバについて

ITPの視点で見た場合、アドビが用意しているドメインで計測している場合は3rd Party Cookieとして扱われるため、ITP2.0で設定された制限として影響が発生します。ドメインへのマッピングを行っている場合は、1st Party Cookieとして扱われます。そしてこれ自体、アドビの計測サーバーから設定されるため、ITP2.1の影響は受けることはありません。

フォールバック Cookieについて

Adobe Analyticsではサーバーサイド側で設定する3rd Party Cookieが設定されない場合、フォールバックCookie(s_fid)というのが発行されます。これにより、3rd Praty Cookieがブロックされている場合に、全く捕捉が出来なくならないようIDを発行し計測できるようにしています。

このフォールバックCookieはJavaScriptで発行されるため、3rd Party Cookieがブラウザにより受け付けられないITP2.1の制約により影響を受けることになります。(フォールバック ID による方法 – Adobe Analytics の導入

プラグインの利用

それ以外に、Cookieを利用しているプラグインの利用している場合も影響が出ますのでそちらも触れておきます。より多彩な分析の実現のためにAdobe Analyticsの計測コードでプラグインと呼ばれるコードを利用しているケースがあります。これはAdobeのコンサルタントやパートナー企業様に開発され導入もされているものです。

このプラグイン、種類によってはCookieを利用し、訪問を跨いだデータの引き継ぎなどを行っているケースがあります。これらについてはITP2.1の影響を受けることになりますので、利用されている場合は担当のコンサルタントやパートナー企業様にご確認をお願い致します。

影響の確認方法

自社のAdobe Analyticsがどの仕組みで計測されているか確認する方法として、以下の手順でご確認ください。なお、確認する際にはAdobe Experience Cloudの処理を確認する際に便利なAdobe Experience Cloud Debugger(注3)を利用します。

チェックする対象となるページを開き、Adobe Experience Cloud Debuggerを起動し、以下を参考にチェックをしてください。(データが表示されない場合は、一度サイトをリロードすると表示されることがあります)

デバッガでの確認方法

対応について

大きくは2つの対応をお薦めしております。Visitor APIの最新版の導入とトラッキングサーバーのドメイン対応です。

Experience Cloud ID Serviceの対応

Experience Cloud ID Serviceの最新版(v4.3.0)において、ITPへの対応を行いました。こちらへのコードの入れ替えを実施していただくことでVisitor APIのITPへの影響を無くする事が出来るようになります。

Experience Cloud ID Serviceのバージョン確認方法はチェックポイント2の最後にチェックした「Version」の数値をご参照ください。

Visitor APIのバージョン確認

トラッキングサーバーのドメイン対応

トラッキングサーバは前述の通り、アドビが管理しているサーバ(omtrdc.net または2o7.net)の場合は3rd party Cookieとして扱われます。現在、計測サーバがどのドメインで利用しているかは、前述のExperience Cloud ID Serviceと同様にデバッガを利用することで確認が可能です。計測サーバの確認方法はチェックポイント1にて確認した「Request URL – Hostname」の値となります。確認対象となるサイトとサブドメイン違いの同一ドメインであれば1st party Cookieでの対応となります。

トラッキングサーバの確認

トラッキングサーバのCNAME対応については、クライアントケアにて対応をさせて頂きます。必要な情報などご連絡させて頂きますのでご連絡頂ければと思います。

ITPについては、2.2の仕様も発表されました。詳細な仕様については引き続きグレイな部分もあり、開始をしてみないと不明な部分もあります。アドビでは継続的に対応を行い、アップデートのインフォメーションを行っていきますので引き続き、よろしくお願い致します。

注1:3rd Party Cookieとして扱われるケースにおいても、過去に訪問したことがあるサイト(ドメイン)の場合は読み出しが可能になっています。例えば mydomain1.com で発行された1st Party Cookieが、グループサイトの mydomain2.com の計測で利用される場合、ブラウザが過去に mydomain1.com に訪問したことがある場合は3rd Party Cookie扱いであったとしても発行・読み出しが可能になります。

注2:旧Marketing Cloud ID Serviceと呼ばれていたものと同様です。

注3:ブラウザ別のデバッガのインストールについてはヘルプに記載がありますので、リンク先をご参照ください。Experience Cloud デバッガー – Adobe Analytics の導入