MAツール活用に悩む企業様の特徴とその解決方法 vol.2
社内にMAのノウハウがなければ外部の力を積極的に活用すべき
マーケティングオートメーション(MA)の実現には、その目的をしっかり設定することが重要です。ところが、MAの実行よりもツールそのものの導入が目的化してしまう企業が多く存在します。vol.2では、なぜ「MA=ツールの導入」と考える企業が多いのか、またその事態を回避するにはどうすれば良いのかを、Adobe Marketo Engageのコンサルティングサービスを中心に取り扱う、アドビ株式会社 エクスペリエンスビジネスパフォーマンス部 マネージャーの冨田洋平より解説します。
vol.1:マーケティングオートメーションに行き詰まった企業に見られる2つの特徴
もくじ
- 「やらされ感」の中で導入したツールは必ず失敗する
- MAを機能させるには組織間の連携も重要
- 問題を解決するカギは、組織を横断した業務システムフローまで描くこと
- 外部の専門家に力を借りると割り切るのもあり
「やらされ感」の中で導入したツールは必ず失敗する
前回は、「MA実現のために、まず自社におけるマーケティングの目的を決めることが重要」というテーマでお話ししました。今回はそれを受けて、なぜ企業はマーケティングの目的を決められないのか、そして、目的を定め、実行するために企業はどうすれば良いのかをお話ししていきます。
まず、ツール導入が先行してしまうという問題があります。MAを導入するという言葉に象徴されるように、「MA=ツールの導入」と考えている企業が非常に多いのが実態です。そのため、MAツールを導入するプロジェクトが突然始まり、指名されたメンバーは一生懸命ツールの導入を進めてしまいます。
その理由として、昨今のMAブームとも言える状況もあるように思います。「競合他社も入れているから」「何となくデジタルツールを導入してなければ、時代に取り残されてしまうと感じるから」「社長に言われたから」など、きっかけは様々です。前回お話しした、自社にとってのマーケティングの目的は何か、というところを突き詰めて考えないまま、ツールの導入だけが一人歩きしてしまっているケースです。
この場合、一番問題なのは、ツールを導入する人自身が、当事者としての意識を持っていないことにあります。そのため、言われた通りにツールを使えるようにすることだけが目的になってしまい、誰が、何のために使うのかが宙に浮いたまま導入が進んでいきます。そして、導入後はツールを生かすことができず、無駄な投資として終わっていってしまう。これほど不幸なことはありません。
当然のことですが、デジタルマーケティングの意味/MAによってできることを知っている人や組織が主導して検討し、ツールの導入を進めていくと成功が近くなります。しかし、日本の企業にはその人材が少なく、社内で探してみても1人もいない場合もあります。これについては、ある意味、しょうがない部分もあります。今までマーケティングを主とした組織を持っていない企業が多く、いざデジタルマーケティングを進めていこうとすると経験が浅く、目的や戦略を十分に練ることができないのです。
MAを機能させるには組織間の連携も重要
さらに、デジタルマーケティングの難易度が高い要因として、マーケティング部門だけで完結する話ではないということがあります。例えば、MAツールで作ったリードを営業組織に渡し、そこから受注後はサポート部門に引き継ぐ……というように、組織を横断して情報を共有する必要があります。同時に、他部門で使っているシステムとのデータ連携も考えなければいけません。営業であればCRM、SFAとつなぐことが必要です。基幹システムの場合もあります。逆に言うと、MAは、マーケティング部門が単独で導入しても、十分な効果を上げることができません。
つまりMAの導入には、ITの知識とマーケティングの知識、さらにマーケティング以外の業務の知識が必要だということです。多くの企業ではそれらの責任を持つ部署が分断されており、これを社内のリソースだけで行おうとすると、部門を超えた責任を持つ人/組織を任命する必要があり、相当難易度は高くなります。また、自社でそういう人を育てる、採用するというのも難しい、もしくは時間がかかってしまいます。
問題を解決するカギは、組織を横断した業務システムフローまで描くこと
これらの問題を解決するために重要なのが、マーケティングプロセスの設計を自社の組織、業務プロセス、各部門で利用するシステムに落とし込んでマッピングしてみることです。いわゆる戦略、業務プロセスに沿った業務システムフローを描くということです。そうすることで、各プロセスでどの部署が関わって、何をすべきなのかが明確になります。
もし、マッピングした中でどこかの部署が十分に成果を出せていないことが分かれば、ドリルダウンして原因を探る必要があります。組織の問題なのか、受け渡すデータが悪いのか、それとも技術的な問題なのかなど、細かくチェックしていくのです。
仮に組織の問題なのであれば、トップダウンで改善を図ることが正解かもしれませんし、部門ごとのKPIの見直しが必要な場合もあります。企業ごと、組織ごとに問題は異なり、対策は、マーケティング、IT、業務、それぞれの視点から最適なものを採用する必要があります。
このように、MAの成功は、導入後に業務の中で起きる様々な課題を克服していった先にあります。立ち上げ時期から運用が軌道に乗り、自走できるようになるというのが理想ですが、それを自社のリソースだけでできるのか?という課題が残ってしまう企業が多いかと思います。
外部の専門家に力を借りると割り切るのもあり
そこで、MAの導入時に検討すべきことに対し、外部のリソースを活用するという方法があります。いわゆるコンサルティングサービスの利用です。自社でリソースを準備するには時間がかかる、難しいといった場合に有効です。ただし、ここではどのようなサービスを受ければ良いのかを見極めていただく必要があります。
一般的なマーケティングコンサルティングは、対象となる企業が目標とする成果と現状のギャップを洗い出して、そのギャップを埋めるための戦略を示します。多くの場合、そこでコンサルティングは終わりです。
しかし、そこから各デジタルツールに落とし込むためには、各ツールに合った設計が重要になります。そのためには、戦略を各ツールのシステム設計に翻訳ができる能力を持った人が必要です。
さらに、MAはあくまで、企業が売上を向上させる手段となります。同じ施策を淡々と実行するだけではだめで、結果を見ながら何度も改善していかなければいけません。1つの方策では、十分な成果を出すことは難しいため、何を計測すべきか?の計測計画まで立案し、その計画に沿ってPDCAを回して高度化を進めていくことが必要です。
MAのメリットの一つとして、施策の結果が視覚的にはっきり分かることにあります。しかし、その結果をどう評価して、次の施策にどう生かすかは、ノウハウが求められます。例えば、1つのメールキャンペーンが成果を上げたとします。その施策を同じように繰り返せばさらに成果が出るのか、あるいは、これ以上の成果は見込めないと見るべきか。MAを始めたばかりの企業には判断のしようがありません。マーケティングの「高度化」に向けて、何が最適な打ち手かを決めていくことが重要です。
アドビでは、MAを企業に導入した場合の成果をどのように導き出すかについて、独自のフレームワークを持っています。そして、このフレームワークに基づいて、企業を支援するコンサルティングサービスを提供しています。
先ほど問題点として指摘した、MAに関わる部門をまたいだデータ連携の設計や、運用に関する部分といった、戦略〜設計〜実装〜運用に至るまで、ツールベンダーならではのサービスとなっています。
MAブームが一巡して、相当数の企業に導入が進みました。しかし、PDCAをぐいぐい回しながら成功している企業は、残念ながらごく一部にとどまっています。
他の多くの企業では、MAで施策の結果を見られるようになったものの、次に何をしたら良いのか悩んでいる状態だと思います。そんなときは、今回お話ししたように、一度外部の専門家によるアドバイスを受けることをおすすめします。MAツールは正しく使えば、必ず成果につながる。その成果への道筋を我々はパートナーとして皆様と一緒に歩みたいと考えています。
次回のvol.3では、vol.1 で提起した課題をツールで解決できることについてお話しできればと思います。