DX道場 ~Web解析概要編~ ③俯瞰分析

アドビのカスタマーサクセスチームは、Adobe AnalyticsやAdobe Targetをはじめとした、Adobe Experience Cloud 各種製品を使い始めた方向けのコースを中心とした無償オンラインセミナー『DX道場』を定期的に開催しております。このシリーズでは、DX道場の内容を各テーマに沿ってご紹介します。今回は、Web解析における分析手法の一つ『俯瞰分析』についてお届けします。

俯瞰分析とは

「俯瞰分析」とは、基本的な指標を確認したうえで 仮説を立てるための分析手法 です。いきなり詳細な部分を分析するのではなく、流入から回遊、コンバージョンに至るまでのユーザーの一連の行動を「俯瞰」して分析することで、まずはどこに課題があるのか仮説を立てます。そしてそこから深堀り分析をして検証を行い、さらに新たな仮説を立て、それをまた深堀り分析していくというのが分析の流れとなります。そういった意味でも、最初に仮説を立てるために行う「俯瞰分析」は非常に重要なステップとなります。

俯瞰分析には、それぞれ異なる観点から行う5つの分析があります。

①訪問者分析

②流入分析

③入口分析

④回遊分析

⑤コンバージョン分析

ここからは、この5つの分析について詳しくご紹介します。

①訪問者分析

『訪問者分析』では、Webサイトに訪れている ユーザーの属性 を分析します。

分析項目の一例

(ディメンション)

・地域

・モバイルデバイスタイプ

(セグメント)

・初回訪問/再来訪

・会員/非会員(※)

・会員ランク別(※)

※会員情報はお客様サイトごとのカスタム項目になります

上図は、あるイベントサイトの『ページビュー数』『訪問者数』『申込完了数(コンバージョン数)』という三つの指標を『モバイルデバイスタイプ』別に切り分けたレポートになります。この例では、携帯電話からの訪問者(レポート2行目)に着目してみましょう。まず『訪問者数』に関しては、全体の約半数(45.4%)を占めていることがわかります。しかしその一方で『ページビュー数』をみてみると全体の三割以下となっており、訪問者数が多いにも関わらず伸び悩んでいることがわかります。あくまで一例ですが、ここから「携帯電話だと見づらいUIになってしまっているのではないか」という仮説を立て、UIの改善につなげていくこともできるかと思います。

この例の様に、訪問者分析では「どのデバイスでアクセスしてきたのか」であったり、「何回目のアクセスなのか」といった観点でユーザーを分けて比較し、その結果からサイト改善につながる仮説を立てていきます。

②流入分析

『流入分析』では、サイトに訪問してきたユーザーの 参照元・流入元 を分析します。

分析項目の一例

(ディメンション)

・リファラー

・マーケティングチャネル

・トラッキングコード

上図は先ほどの訪問者分析の例と同様の3つの指標を、『マーケティングチャネル』別に切り分けたレポートになります。この例の場合、Social Media(Facebook)からの訪問者(レポート4行目)に着目してみましょう。『訪問者数』に関しては「マーケティングチャネル”なし”」に次いで全体でも2番目に多いことが見て取れます。しかしその一方で『コンバージョン数』は極端に少なく(全体のわずか1.6%)、Facebook経由での流入自体は多いものの、それがコンバージョンにつながっていないということがわかります。ここから、「Facebook経由での流入者に何かしら問題があるのではないか」という仮説を立て、流入者の詳細を深堀って分析していきます。

この例の様に、流入分析では「マーケティングチャネル」や「リファラー」といったディメンションを使って分析を行うことによって、流入元によって訪問者数やコンバージョン数等にどのような差があるのかを確認し、そこから仮説を立てていきます。

③入口分析

『入口分析』では、Webサイトに訪問してきたユーザーの ランディングページ を分析します。

分析項目の一例

(ディメンション)

・入口ページ

・入口サイトセクション

上図は、これまでと同様3つの指標を『入口ページ』別に切り分けたレポートになります。今回は広告Aのランディングページと広告Bのランディングページ(レポート3、4行目)に着目してみましょう。まず『訪問者数』に関しては広告Aの方が多いことがわかります。しかし残りの二つの指標を見てみると、実数自体はいずれも広告Aの方が多いですが、訪問者数との相対比で考えるといずれも広告Bの方が格段に優秀であることが見て取れます。ここから「広告Bのランディングページ(もしくは広告Bの訪問者)には、コンバージョンや回遊につながりやすい何か特徴があるのではないか」という仮説を立て、それを更に深堀って分析していきます。

この例の様に入口分析では、各指標をランディングページ別に分析することによって優秀なランディングページや課題のあるランディングページを発見し、その詳細の深堀りにつなげていきます。

④回遊分析

『回遊分析』では、Webサイトに訪問したユーザーがどのページを訪問しているかを分析します。

分析項目の一例

(ディメンション)

・ページ

・サイトセクション

上図は、『訪問者数』『訪問者別滞在時間』『コンバージョン率(Participation)』(※パーティシペーション指標:詳しくはこちら)という3つの指標を、セッションページ別に切り分けた分析レポートになります(こちらの例で利用している『セッション属性:タイトル』は、このイベントサイトの各登壇者のセッションをタイトル別で分析するために設定されたカスタムディメンションです)。このレポートを見て例えば、レポート3行目のセッションページが最もコンバージョンへの貢献度が高い(55.3%)、つまりはそのセッションページを閲覧してコンバージョンに至ったユーザーが最も多いということがわかります。

そしてこちらは、Adobe Analyticsの視覚化機能を使って、先ほどのレポートをバブルチャートに視覚化したものです(グラフの縦軸=訪問者数、横軸=訪問者別滞在時間、バブルの大きさ=コンバージョン率/Participation)。この様に通常のレポートをバブルチャートに変換することで、各指標の相関性がよりわかりやすくなります。

例えば緑色のバブルで表されたセッションページに着目してみると、「バブルの大きさは比較的大きい(=コンバージョンへの貢献度が高い)」「グラフの左下に位置する(=訪問者数・滞在時間ともに少ない)」といったことがわかるかと思います。すなわち、コンバージョンへの貢献度は高いが、あまり見られていないセッションページであると言えます。このことから、「このページをもっと見られるようにすれば、(元々コンバージョンへの貢献度は高いので)コンバージョン率が大きく改善されるのではないか」という仮説を立て、閲覧数を増やすための改善施策等につなげていきます。

この例の様に回遊分析では、ユーザーによく見られているページはどのページなのかを分析し、またそれがコンバージョンとどう関係しているのかを見ていくことで、「そのページの何を改善すべきなのか」に関する仮説を立てていきます。

⑤コンバージョン分析

『コンバージョン分析』では、Webサイトに訪問したユーザーのうち コンバージョンに至ったユーザーの割合 を分析します

分析項目の一例(ECサイトの場合)

(イベント指標、セグメントなど)

・すべての訪問者

・商品詳細ページ閲覧者数

・カート投入者数

・購入者数

上図は、あるイベントサイトのすべての訪問者のうち、各登壇者のセッション詳細ページ(show session detail)へ到達した訪問者数、イベント申し込み確認ページ(Confirm Registration)へ到達した訪問者数、申し込み完了者数(Success Registration)の割合を示したレポートになります。こちらはAdobe Analyticsの視覚化機能の一つ「フォールアウト」を使用し作成したもので、各チェックポイント間の到達率・離脱率を視覚的に確認することができます。またこのレポートでは、『PCからの訪問』と『SP(スマートフォン)からの訪問』という二つのセグメントを適用させ、セグメントごとの違いも比較して読み取ることができるようになっています。

このレポートを見て、例えば二つ目のチェックポイント「セッション詳細ページ(show session detail)」までの到達率に着目してみましょう。するといずれのセグメントも離脱率が70%以上あることがわかり、このことから「サイトにランディングしてからセッション詳細ページにたどり着くまでの間に、何かしら問題があるのではないか」という仮説が立てられるかと思います。

さらにセグメントごとの違いに着目してみると、いずれのチェックポイント間での離脱率を見ても、『SPからの訪問』セグメントの数値は顕著に高くなっていることがわかります。あくまで一例ですが、このことから「SPでWebサイトを見たときに、見づらいUIになってしまっているのではないか」という仮説を立てることもできます。

まとめ ~俯瞰分析~

この記事では、Web解析における代表的な分析手法である『俯瞰分析』についてご紹介しました。

Web解析において、いきなり細かい部分を見ていくのではなく、ユーザーの一連の行動を俯瞰して分析し、どこに課題があるか仮説を立てることが重要です。最初に仮説を立てることで、課題に対する深堀りと改善のための施策を立案することが出来ます。

次回の記事では、アドビが提供するWeb解析ツール「Adobe Analytics」の特徴について解説いたします。

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