セグメンテーションとパーソナライズを軸に、より顧客に身近な「ANA」を目指す

全日本空輸株式会社

設立

2012年

所在地:東京

13,928名(2018年3月31日現在)

300%

予約率向上

checkbox icon

課題

・チケット販売だけではなく、購入した後の空港や機内での時間のサポートに至るまで、デジタルチャネルの戦略的な活用が求められた

・グローバル展開に伴いWebサイトのページ数やコンテンツ数が膨大になり、その更新作業の負担が大きくなっていた

graph icon

成果

・顧客行動に基づくセグメンテーションを通じて、きめ細かいパーソナライズを実現。より「One-to-One」に近いコミュニケーションが可能になった

・ページではなく、コンテンツを軸に管理、Webページを制作できるAdobe Experience Managerによって、膨大なページ数のWebサイトのコンテンツを、少ない負担で更新できるようになった


「常に変化し続けるWebサイトが実現しています。もはや『リニューアル』という言葉を使うのはやめることにしました」

 

マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 マネージャー

石川 圭太氏


さらに高まるデジタルチャネルの重要性

「お客様満足と価値創造」によって世界のリーディングエアライングループになることを目指す全日本空輸株式会社(ANA)。イギリスに拠点を置く航空サービスリサーチ会社であるSKYTRAX社の「ワールド・エアライン・スター・レーティング」では、日本のエアラインとして唯一6年連続で世界最高評価「5スター」を獲得しています。国際的な高い評価は、長きにわたって挑戦と成長のDNAを受け継いできた同社の揺るぎない姿勢の証しといえるでしょう。

 

お客様の利便性向上につながると考えて、早い時期からインターネットの活用に積極的に取り組んできたことも、こうした成長に向けた挑戦の一環です。インターネットの商用利用がまだ黎明期だった1995年にWebサイトを開設し、その2年後にはオンラインでのチケット販売を開始しました。現在は、国内線予約の9割程度をWebが占めるようになっているなど、デジタルチャネルの重要性はさらに高まっており、戦略的な活用が不可欠な取り組みとなっています。

チケット販売だけでなくトータルに顧客をサポートする

 

具体的に同社は、デジタルチャネルを単なる航空券を販売する場としてではなく、チケットの購入前から購入後に空港や機内で過ごす時間のサポートに至るまで、フライトにまつわるトータルなサービスを提供する場にしたいと考えています。

 

例えば、移動中も顧客は手元にスマートフォンを持っています。このことからも、デジタルチャネルは、従来の「予約受付」から、「コミュニケーションを図り、サービスを提供するための場」に変わるべきことが分かります。

 

「もともと、当社は人的なサービスについては他社に負けない自信がありますが、デジタルチャネルの戦略的な活用によって、これまで以上に魅力的な顧客体験を提供できると考えています」と同社の石川圭太氏は語ります。

 

そのために同社が取り組んでいるのがデジタルマーケティングの強化です。

 

まず体制面では、従来の組織体制を改め、宣伝部とWeb販売部をマーケットコミュニケーション部のもとに統合。さらにWeb販売チームをデジタルマーケティングチームへと改称し、ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアのトリプルメディアを、統合的に運用できる体制を確立しました。

 

同時にシステム環境の面では、かねて顧客行動の分析のために導入していた「Adobe Analytics」に加えて、複数のアドビのソリューションを導入。行動データや属性データをもとに顧客をセグメント分けして管理する「Adobe Audience Manager」、セグメント情報を活用してWebサイトのバナー表示のパーソナライズやA/Bテストを行える「Adobe Target」、メールDM配信を効率化する「Adobe Campaign」、消費者が投稿したSNS投稿を活用するための「Adobe Experience Manager Livefyre」、そして、効率的なコンテンツ管理とWebページ制作環境を実現する「Adobe Experience Manager」を統合的に活用しています。

 

「お客様とのコミュニケーションで意識しているのが『4R』です。これは『適切な人に(Right Person)』『適切な情報を(Right Content)』『適切なタイミングで(Right Timing)』『適切なチャネルを通じて(Right Channel)』提供することです」と同社の永山 裕氏は説明します。そのためのパーソナライズや、コンテンツ管理、そして各メディアにおける最適な情報提供を行っていくためにアドビのソリューションを活用し、同社のデジタルマーケティングの基盤を構築しています(図)。

ANAのデジタルマーケティング基盤:パーソナライズやコンテンツ管理、各メディアにおける最適な情報提供を行うために適材適所にアドビのソリューションを活用している。


アドビのソリューションの全体ビジョンが自社の理想像と合致

アドビのソリューションを採用した理由について、石川氏は「アナリティクス、テスト、パーソナライゼーション、ソーシャルなど、私たちがやりたいことすべてに対応したソリューションがそろっており、シームレスに連携可能。 Adobe Analyticsを土台としたAdobe Experience Cloudのビジョンは、私たちが理想として描いているデジタルマーケティングの姿と合致していました」と説明します。

 

加えて、ソリューションだけでなく研修などのフォロー体制やサポートがしっかりしていることも、アドビの魅力だと言います。「グローバルで航空業界での実績があるためデジタルマーケティングを成功させるための、様々な知見を提供してもらいました」(石川氏)。

「One-to-One」に近いコミュニケーションを実現

Adobe Analyticsによって顧客の行動分析を行い、その分析結果を活かしながらAdobe Audience Managerによって顧客をセグメンテーション。セグメントに応じて最適な情報を、最適なタイミングで顧客に提供する。これまでもチャネルごとの最適化は行ってきた同社ですが、Adobe Audience Managerの導入によって、4Rを意識した「個人」に最適化したコミュニケーションを実現できる環境が整いました。

 

Adobe Audience Managerの導入当初は60〜70程度のセグメントからスタートしましたが、現在は、さらにきめ細かなセグメントに分かれており「One-to-One」に限りなく近いコミュニケーションを目指せる段階にきているといいます。

 

「セグメンテーションを行う際には、性別や年齢、住んでいる地域、所得、職業、学歴、家族構成といったデモグラフィック属性も活用しますが、お客様の実際の行動をより重視しています。お客様が求める情報は、必ずしもデモグラフィック属性で決まるわけではなく、行動にこそ直近のニーズが反映されていると考えられるからです」と永山氏は言います。

 

このような方針に基づいて、様々な施策を実施し、すでに大きな成果を生み出しています。

 

 

パーソナライズしたプッシュメールで予約率を大幅に向上

 

同社では以前から、空席照会を行ったもののチケット購入に至らなかった顧客に対し、購買を促すメール配信を行ってきました。しかし、以前はメール内容が画一的な上、空席照会実施から配信までに1週間を要してしまうという問題を抱えていました。

 

また以前は「空席照会をしたが予約をしていない訪問者」という条件でしかメールを配信できず、区間や期間、運賃に応じたきめ細かなフォローは行えていなかったのです。

 

一方、現在はAdobe Campaignに加えて、Adobe Analyticsで取得しているより詳細なデータを活用し、照会した区間や期間などに応じた内容のメールを配信。お客様ごとのニーズに合わせた配信が行えるようになっただけでなく、タイミングも空席照会を実施した24時間以内に配信した後、メールの未開封者にはさらにフォローアップのメール配信もしています。これにより、メールの開封率が以前に比べて1.5倍向上。場合によっては開封率50%に達することもあるといいます。開封率の向上に比例して予約率も300%アップしました。

 

 

トップページのバナー出し分けでアップセルへと誘導

 

顧客セグメンテーションのデータは、Webサイトのトップページでも活用されています。トップページに表示するバナーをパーソナライズし、顧客ごとに出し分けているのです。例えば、「プレミアムエコノミーの説明ページの閲覧履歴のある顧客には積極的にアップセルを狙いにいく」といった施策を行っています。

 

予約ページで選択した旅程情報やサイト内の行動履歴をもとに、アップセル提案を行うべきかどうか、さらにはアップグレードオファーを行う場合の運賃といった顧客に最適なオファーをAdobe Targetで行う仕組みです。これにより、アップセルレコメンドのコントロールを迅速かつ確実に行うことが可能になりました。

また、常に施策の最適化を実施し続ける同社は、プロモーションを行う際は全体の施策設計の中にAdobe TargetによるA/Bテストを組み込み、メッセージや情報デザイン、パーソナライズの効果などを比較、分析して、どのアプローチが効果的だったのかを定量的に評価しています。「A/Bテストは月に30本以上実施しており、パーソナライズ施策の重要な柱になっています」と永山氏は語ります。

 

 

SNS投稿を積極活用して顧客との距離を縮める

 

Adobe Experience Manager Livefyreによって、顧客がSNSに投稿した情報を集約し、自社サイトで共有。顧客のリアルな声や反応をアクティブな情報発信に活かすという試みも進んでいます。

 

具体的には、同社の公式SNSアカウントをWebサイト上で紹介すると同時に、公式SNS上で顧客が行ったリツイートやシェア、「いいね」などの反応を、そのページに掲載しています。他にも、ブランディングの一環として運用されている「空から見た景色の記録」のページにも顧客のSNS投稿を掲載したり、旅先で見つけた思い出のブルーをInstagramに投稿したりしてもらい、同社のコンテンツとして活用できる仕組みとなっています。「ANA旅のブルーバトン」といったキャンペーンでもこの試みを実施しました。

 

これらは、身近なブランドとしての同社の認知を拡大するのが狙いです。実際、公式アカウントへのフォロー数が増えつつあるといいます。

 

 

Webサイトの部品化でコンテンツ更新を効率化

 

Adobe Experience Managerは、Webサイトのコンテンツ更新の効率化に大きく貢献しています。

 

同社が顧客とのコミュニケーションで意識している4Rの実践に基づくコンテンツ配信を行うには、状況に応じて変化した情報をすべてのチャネルに反映する必要があります。しかし、そのための更新作業は大きな負担を伴います。

 

「同社のWebサイトは日本語だけではなく、48カ国に対応する12言語で情報を提供しており、総ページ数は約27万に上ります」と石川氏。更新頻度も高く、エンターテインメントプログラムは毎月、機内食のメニューは3カ月に1度は更新されており、悪天候によって運航が遅延した場合にも最新のお知らせを掲載する必要があります。また、キャンペーン情報を展開したときには、キャンペーンの期限に合わせて一斉に掲載を停止させなければなりません。

 

以前利用していたCMS(コンテンツ管理システム)は、ページ単位でコンテンツを運用する仕組みで、静的なコンテンツの運用には適していましたが、このようなパーソナライズしたコンテンツを動的に制作するには限界がありました。

 

一方、Adobe Experience Managerを導入後は、コンテンツの変更を行う際に、共通のコンポーネントを更新するだけで複数のチャネルへも一括で反映できるようになっています。その際、コーディングの必要もありません。

 

さらに、以前は人手で逐一確認していた「期間限定のキャンペーンなどのコンテンツが、期限を過ぎても掲載されてしまっていないか」といったアセット管理もAdobe Experience Managerで簡単に管理できるようになりました。

 

このように、大量のコンテンツを簡単に更新・管理できるようになった結果、制作時間が大幅に短縮。現在は、制作の費用対効果を30%改善し、現在と同じ人的リソースでより多くのコンテンツを迅速に生み出していくことを目標に掲げています。これにより、作業ではなく検討に費やす時間を増やし、新しいアイデアを考え、それを具現化していくという、より戦略的な業務に多くのリソースを割けるようになると期待しています。

 

「これまでもWebサイトは定期的にリニューアルしてきましたが、Adobe Experience Managerによって、継続的なデザイン変更や内容刷新が可能になりました。常に改善するWebサイトが実現したので、『リニューアル』という言葉を使うことがなくなりました」と石川氏は話します。

 

作成した共通コンポーネントはすでに60種類ほど。アドビのコンサルタントのアドバイスも奏功して、Adobe Experience Managerの導入/展開は、当初の予定よりも速いスピードで進みました。今後はWebサイトのコンテンツとしてだけではなく、Adobe Campaignで配信するHTMLメールでも、共通コンポーネントを活用していく計画です。

 

「同社のデジタルマーケティングで最終的に目指すのは、本当の意味での『One-to-One』を実現することです」と石川氏。グローバルエアラインとして、多言語でそれを実践し、全世界でブランド力を強化していく考えです。「アドビのソリューションは、そのための強力な武器。これからもより高度に使いこなしていきたいと思っています」と石川氏は強調しました。

石川 圭太氏

マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 マネージャー

石川 圭太氏

永山 裕氏

マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 アシスタントマネージャー

永山 裕氏

関連トピックス