不動産業界の契約管理業務では、基本的にすべて紙をベースとして行われてきており、未だ「アナログ」と言わざるを得ないのが実状だ。そのような中、業務効率という観点でこの課題に挑んでいるのが、不動産情報を通じてシステム・サービスを提供しているアットホーム株式会社だ。
今回、神奈川県内2万戸の賃貸物件を管理する株式会社ジェイエーアメニティーハウスへAdobe Signを基盤とした「スマート契約」を提案することとなった。
導入の経緯:契約更新の電子化・簡略化のためAdobe Acrobat Signを基盤にしたサービスを開発
アットホーム株式会社(以下アットホーム)は、紙での契約管理をはじめアナログな管理業務がいまだ多く根付いている同業界の実情を鑑み、早くから電子化へ向けて取り組んできた。同社が不動産会社に提供している業務支援サービスのひとつである「スマート契約」は、Adobe Document Cloudの電子サインソリューションAdobe Signを活用して開発したサービスである。アットホーム基幹サービス開発部 部長の原 雅史氏は、次のように説明する。
「当社はこれまで長く不動産業界をサポートしてきています。その中で、たびたび耳にするのが “紙をベースにした業務を効率化していきたい” というご要望でした。少子高齢化による働き手不足により、不動産業界でもペーパーレスのニーズは今後さらに高まることが予想されます。その解決策の一つが契約業務の電子化にあると考え、当社では早くから準備を進めてきました。Adobe Signによる電子サインは法的に有効なものとして認められており、また強固なセキュリティが備わっていることも含め、安心してお客様へご提供できます。そういった点を踏まえ、どのような契約であれば現時点の宅建業法を順守した形で電子化が可能かを調査したところ、賃貸物件の更新に関する契約書類は電子化しても問題ないということがわかり、導入が実現しました」
選択のポイント:契約業務を電子化し、紙ベースの業務の効率化を図りたい
今回「スマート契約」を導入した株式会社ジェイエーアメニティーハウス(以下ジェイエーアメニティーハウス)は、神奈川県内のマンション・アパート管理を担う不動産関連企業だ。管理戸数は、県内に本社を置く企業の中でナンバーワンの実績を誇っている。2011年には、入居者管理を担う賃貸専門子会社として株式会社アメニティーハウジングを設立し、入居者斡旋・部屋探しをサポートしている。
賃貸物件の場合でも、不動産会社間の内覧申込から、エンドユーザーの入居申込、審査、重要事項の説明、入居契約に至るプロセスはすべて紙文書をベースに行われている。FAXや郵送を前提にした書類のやり取り、賃貸物件の場合でも、不動産会社間の内覧申込から、エンドユーザーの入居申込、審査、重要事項の説明、入居契約に至るプロセスはすべて紙文書をベースに行われている。FAXや郵送を前提にした書類のやり取りや台帳保管の手間は、業務効率化を図る上で同社でも大きな課題になっていた。
賃貸管理部 部長の古谷田晃生氏はこう説明する。「業務効率化を推進する上で、従来の紙をベースにした契約業務の見直しは避けて通ることができない課題であると考えていました。2018年より具体的な電子化ソリューションの検討を開始し、いくつか比較検討したうえで電子サインサービスの『スマート契約』を選定したのです」
入居者のメールアドレス取得から取り組みをスタート
ジェイエーアメニティーハウスは、賃貸物件の更新手続きから「スマート契約」の運用を開始することを決定。その際にまず課題となったのが、電子契約に必要な入居者のメールアドレス取得だった。そこで、間もなく契約更新を迎える入居者に対して、メールアドレス登録用のWebサイトに遷移できるQRコードを印字したハガキを送付。その結果、書面で更新を行いたいという方以外、ほぼ100%の割合で取得することができた。
メールアドレスを登録した入居者は、パソコンもしくはモバイルデバイスで受信した更新通知メールを開き、配置されたリンクをタップする。すると、ブラウザー内に書類が表示されるので、内容を確認して署名フィールドに文字入力または手書きでサインし、「クリックして署名」をタップするだけで電子サインが完了する仕組みだ。
「Adobe Signの管理画面では、契約書類のステータスをリアルタイムに確認できるので、これまでのように紙の書類を保管したり探し出したりする必要がありません。この電子サインの仕組みは、不動産業界における契約書類の電子化に非常にマッチしています」と、アットホーム基幹サービス企画室 グループ長補佐 不動産業務支援の小野智也氏は説明する。