ペーパーストックレスで
紙の量を 85% 削減
課題
・モバイル活用
・ペーパーレス化
成果
数時間かかっていた会議資料の準備を数分に短縮
紙の会議資料をPDF化し、Acrobatで見やすく整理
ペーパーストックレスで紙の量を85%削減
キャビネットの台数を2,100台から599台に削減し、スペースを有効活用
Faderated ID管理により社内認証基盤と連携
シングルサインオン対応でセキュリティ強化を実現
サブスクリプションによる容易なアップデート
常に最新版が利用できる環境となりユーザーの利便性が向上
株式会社 デルフィスは、トヨタ自動車100%出資のハウスエージェンシーとして、トヨタグループをはじめとする企業に向けて広告の企画・制作やイベント、セールスプロモーションな
どを手掛けている。同社では、7つの "C"(Creative、Crossover、Communicate、Collaborate、Customer Delight、Connect、Compliance)をビジョンにかかげ、働き方の改革とそれに見合うオフィスづくりに2014年から取り組んできた。最大の目標であったモバイル活用とペーパーレス化において、AcrobatとPDFがどのような効果をもたらしたのか。同社コーポレート戦略局のお二人に話を伺った。
「全員が同じ環境で、同じ働き方をすることが真の変革につながる。Acrobat も全社で導入しなければ意味がありません」
コーポレート戦略局 エグゼクティブITディレクター 植田 晃 氏
場所に縛られた仕事環境からの脱却
今や国を挙げての取り組みとなった、働き方改革。そうした時代に先駆けて、デルフィスは2012年にいち早く働き方改革を断行した先進的企業の1つである。改革を進めるにあたって同社が最初に着眼したのが、モバイル活用とペーパーレス化だった。同社コーポレート戦略局のエグゼクティブITディレクターの植田 晃 氏は当時を次のように振り返る。
「それまで当社の社員が使えるデバイスは、自席にデスクトップPCと固定電話があり、席を離れるとフィーチャーフォンしかないという状況でした。そのため、大半の仕事は自席で行うしかありません。外出先で書類の確認をしたくても、フィーチャーフォンではメールの添付ファイルを見ることができないため、確認のためだけに帰社しなければならないということもしばしばありました」
この問題を解決するために、社員全員にタブレット端末を配布し、いつでもどこにいても添付ファイルを確認できるようにした。しかし、作成したファイルをそのまま送るとタブレット端末側でファイルを開けなかったり、内容がきちんと表示されなかったりという問題も発生していた。そのため、作成した書類は全てPDFに変換してから送るよう義務付けている。
「広告原稿を確認するときなどは、フォントや色味の再現性が非常に重要になってきます。PDFであれば、どのデバイスでもオリジナルとほぼ変わらないクオリティで再現されます。Acrobatで変換したPDFならISO完全準拠ということもあり、絶対の信頼を置いています」と同社コーポレート戦略局 総務室のチームリーダー本間 英治 氏はPDFの信頼性を評価する。
資料のペーパーレス化がもたらした社内会議改革
モバイル活用と並行して取り組んでいたペーパーレス化。中でも会議のペーパーレス化は最重要課題であった。タブレット端末が導入される以前は、会議資料は当然ながら紙で配布されていた。会議前には各所から集められた資料を参加者の人数分だけ印刷し、1つ1つ手作業で製本しなければならない。製本が終わった後に資料の差し替えが発生することも頻繁にあり、資料の準備だけでもかなりの時間を費やしていた。そこで、会議資料をPDFで配布し、タブレット端末に表示させることで会議のペーパーレス化を図ることが検討された。問題は、各所から集められたPDFをどのような状態で配布するかだった。
「各所からバラバラに送られてくるPDFの資料をそのまま配布するわけにはいきません。紙のように順番通りに製本するにはどうしたらよいか。それには、Acrobatを使うしかありません。複数のPDFを1つに結合して、ページの順番も並べ替えられる。差し替えがあっても、簡単に削除と挿入ができる。誤字を見つけてもその場で修正できる。こうした機能のおかげで、数時間かかっていた資料の準備が、数分に短縮できました」(植田氏)
PDFとタブレット端末、この組み合わせの効果をさらに拡大させるツールとして、同社では2015年にAdobe Acrobat DCエンタープライズ版を導入した。紙を使わないペーパーレスから、紙を残さないペーパーストックレスへ同社の場合、雑誌広告やポスターなど最終成果物が紙に印刷されるものも多く、確認作業などはどうしても紙で行わなければならない。そのため、全てをペーパレス化するのは難しいと判断。そこで、ペーパーレスとは少し目線を変えて実施したのが、ペーパーストックレスだ。
「ペーパーストックレスというのは、『絶対に紙を使ってはいけません』ではなく、『紙を使いたい人は使ってください、ただし最終的にはシュレッダーにかけて処分しないと置き場所がありませんよ』というものです。事前にPDFとタブレット端末を使って紙を減らす方向に動いていたこともあり、社員には大きな抵抗もなく受
け入れてもらえました。そうなると、自然と紙を出さなくなるんですね。2015年に現在のオフィスに移転したのですが、以前のオフィスに2,100台ほどあったキャビネットが、今では599台に減りました。紙の量でいくと85%削減しています。これは我々も想像していなかった数字です」
新オフィス移転を機に、これまで社員が使用していたデスクトップPC、固定電話、フィーチャーフォン、タブレット端末の4つのデバイスを廃止し、モバイルPC(Surface Pro)とスマートフォンの2つに集約。固定席を持たずに部署単位で自由に席が選べるグループアドレス制を採用した。また、これまでキャビネットが占めていたスペースを削減できたことから、休憩や打ち合わせ、小会議や面談などに活用できる多彩なコミュニケーションスペースも生まれた。こうした取り組みもあって、東京本社の新オフィスは2016年に日経ニューオフィス賞を受賞。先進的オフィスのモデルケースとして、今でも多くの見学者が訪れているという。
コーポレート戦略局 経営企画室 エグゼクティブIT ディレクター 植田 晃 氏
コーポレート戦略局 総務室 チームリーダー 本間 英治 氏
セキュリティを強化しながらソフトウェア管理を効率化
同社が改革を進めていくなかで重要視していたポイントがもう1つある。それが、セキュリティだ。仕事の関係上、一般公開前の車種情報など非常に機密性の高い情報を扱うため、情報セキュリティ対策は必須である。同社はこれまでAcrobatの全ライセンスをシリアルで管理していたが、2018年にFederated ID管理によるサブスクリプション型ライセンスに切り替えた。その理由について、本間氏は次のように語る。
「我々は2014年からマイクロソフトのEnterprise Mobility Suite(EMS)を導入し、ID、デバイス、データなどの管理および監視を強化してきました。その後、Acrobatのライセンスもこの認証基盤に統合して一元管理できることを知りました。シングルサインオンでAcrobatも使えるのはユーザーにとっても利便性が高く、何より当社の厳しいセキュリティポリシーに準じた認証レベルを担保できたというのが導入の決め手でした」
サブスクリプション型のAcrobatエンタープライズ版に移行したメリットは、セキュリティ以外にソフトウェア管理の部分でも効果が出ていると本間氏はいう。
「当社では、社員がソフトウェアを使用する場合は申請書を上げて、それが承認されるとソフトウェア配信サーバーからダウンロードする仕組みになっています。ただ、バージョンアップやアップデートがあるごとに我々がそのサーバーにアップしなければなりません。これが意外と手間のかかる作業だったのですが、サブスクリプション版は我々が放っておいても常に最新版が使える状態になっていますので、それだけでも楽になりました。それと、更新の時期になると今いくつライセンスを持っていて、誰にどれくらい使われているかを手作業で集計していたのですが、今はダッシュボードを見れば簡単に確認できますので、集計という作業も特にしなくなりましたね」
全社導入だからこそ実現できた働き方改革
「場所」や「紙」といった仕事の効率を妨げる問題を払拭し、先見の明をもって独自の改革を進めてきたデルフィス。植田氏にその成功の秘訣を聞いてみた。
「デバイスにしても、ソフトウェアにしても、一部の社員しか使っていないのでは、全社的に効率の上がる働き方にはなりません。全員が同じ環境で、同じやり方で情報を共有できてこそ、真の変革につながると思っています」まだまだやることは山ほどあると、植田氏はいう。モバイル活用やペーパーストックレスをさらに進展させるべく、次はどんな施策を打って出るのか。今後もデルフィスの働き方改革から目が離せない。
※掲載された情報は2019 年10 月現在のものです。