

格段に向上
制作における試行錯誤のスピード
導入製品:
課題
- 生成された画像の学習元が明確で、安全性・透明性が担保されている必要があった
- ありきたりなイメージが少なく、構図のコントロールがしやすい生成AIを求めていた
- 単なる社員紹介サイトではなく、より革新的なアプローチを模索していた
成果
- Photoshop、Illustratorなどで即座に編集でき、画像加工の工程を短縮
- 構成参照などの機能により制作における試行錯誤が加速
「企業の風土改革にAIを使うこと自体が新しい試みでした。業界としても新しいアプローチだったのではないでしょうか」
アートディレクター 石田 沙綾子氏
クラシエ株式会社の風土改革プロジェクト「CRAZY KRACIE」において、Adobe Firefly を活用した取り組みが実を結んだ。商用利用可能で安全性の高い生成AI ツールを駆使し、社員の経歴やCRAZY になるためのヒントを反映したオリジナル画像を生成。単なる技術導入を超え、社員参加型のワークショップを通じて組織文化の変革にまで踏み込んだ本プロジェクトは、生成AIの新たな可能性を示す事例として注目を集めている。
生成AI 活用の最前線でAdobe Firefly に早くから注目
デジタル広告の分野で先駆的に生成AI を活用している株式会社電通デジタル(以下、電通デジタル)。同社のアートディレクターである石田沙綾子氏は、クラシエ株式会社(以下、クラシエ)が掲げるビジョン「CRAZY KRACIE」の浸透・定着をサポートしている。このビジョンは、スローガン「夢中になれる明日」を生活者に届けるために、挑戦することが企業風土として定着することを目指して、2017 年に掲げられた大胆なビジョンだ。CRAZY KRACIE を実践し、それぞれの職場でビジョン推進のリーダーとして活躍している社員「CRAZY KRACIE アンバサダー」が誕生し、この新しい文化を体現する彼らを社内外に印象づけるため、 2024 年春頃に図鑑形式のWeb サイト「CRAZY KRACIEアンバサダー図鑑」が企画された。
「単なる社員紹介サイトではなく、より革新的なアプローチを模索していたので、当時急速に発展し始めていた生成AI の活用を提案しました」(石田氏)
本企画の工夫について、石田氏は次のように振り返る。
「当初は、生成AI で顔をイラストに変換する手法などを検討していたのですが、同じ画風に統一しては、際立たせたい社員の個性が失われていることに気づきました。そこで発想を転換し、社員の顔写真はそのままに、背景を生成AI で表現することで個性を表出させるというコンセプトを考案しました」
電通デジタルは、画像の学習元が明確なAdobe Firefly に早くから注目し、2023 年9 月のリリース直後から積極的に導入を進めている。石田氏がクリエイティブマネージャーである飯島美喜氏に相談したところ、「安全性を重視するクライアントワークでは、学習元がはっきりしているAdobe Firefly が適切ではないか」との判断だった。
Adobe Firefly の安全性と透明性が決め手、商用利用可能な生成AI を採用
Adobe Firefly を選択した最大の理由は、その安全性と透明性にあった。飯島氏は、「Firefly が出る前は他の生成AI も検討しましたが、どれも学習元を明らかにしていませんでした。Firefly は、Adobe Stock の画像や著作権が失効したパブリックドメインのコンテンツなどを使用しており、商用利用できることが明確でした」と語る。
また、使いやすさも大きなポイントだ。飯島氏は、「他の生成AI と比べて、ありきたりなイメージが少なく、意図した構図のものがしっかり出てくるので、とても使いやすい。クリエイターとしては、運まかせの生成 ではなく、コントロールできることが重要です」と評価している。
制作プロセスでは、まず各アンバサダーの「クレイジータイプ」(例:仲間想いクレイジー、進撃クレイジーなど)を決定し、そのタイプに合わせてAdobe Firefly で背景画像を生成した。その際には、選びやすいように少しずつ差を出した画像を生成し、クラシエと相談しながら最適なものを選んでいった。さらに、 Photoshop を使って顔と背景を自然に馴染ませる作業も行った。
このプロジェクトの特徴は、単なるWeb サイト制作を超えて、社員自身が創造の主体となったことだ。石田氏は「単にWeb サイトを納品するだけでなく、社員の方にも生成AI に触れてもらうことで、社員の参加意識を高めてもらうことを意識しました」と語る。
両氏は、アンバサダーたち自身がAdobe Firefly を使って背景を生成するワークショップを企画し、それぞれが自分のクレイジータイプに合った背景画像を生成。最終的なWeb サイトは、アンバサダーたちが生成した画像を組み合わせて完成した。「生成AI に触れる体験自体が、新しい文化をつくる一歩になったのではないかと感じています」と石田氏は振り返る。
生成AI 全面活用した成功例となり、他プロジェクトへの波及にも期待
2024 年7 月にリリースされた『CRAZY KRACIE アンバサダー図鑑』は、社外だけでなく、クラシエ内でも大きな反響があった。クラシエでは、キャンプ場でのミーティングやフィンランドへのホームステイ体験など、従来の枠にとらわれないさまざまな風土改革施策を展開してきた。そうした数々のCRAZY KRACIE プロジェクトの中でも、この『アンバサダー図鑑』は一目置かれた存在となっている。
「CRAZY KRACIE全体の中でも指折りの大成功プロジェクトだと言われています。他のプロジェクトでも生成AI や動画生成などを提案していますが、炎上やクリエイターへの配慮などを理由に、ほとんどの場合止まってしまいます。そんな中で、ここまで全面的に生成AI を活用できたのは珍しいケースだと思います」(石田氏)
このプロジェクトの成功は、単に新しい技術を導入したというだけでなく、その活用方法によるところも大きい。石田氏は、「風土改革にAI を使うこと自体が新しい試みでした。業界としても新しいアプローチだったのではないでしょうか」と分析する。
さらに、このプロジェクトを通じて、生成AI の活用に関する社内の知見も大きく向上した。「アドビさんに何回か勉強会を開いてもらい、Adobe Fireflyの使い方のアドバイスをいただきました。電通グループの他の会社の方もお呼びして、電通デジタル主催でAdobe Firefly の勉強会も行いました」(飯島氏)

石田 沙綾子氏

飯島 美喜氏

Adobe Firefly がもたらす新たなクリエイティブの可能性
飯島氏は、クライアントからの動画コンテンツに関する要望の高まりに触れ、「Adobe Firefly の安全性を活かした動画制作ができたらいいですね。クリエイティブの可能性がさらに広がるはずです」と期待を寄せる。
また、「当時はなかった構成参照機能が今はAdobe Firefly に搭載されており、生成のコントロールが直感的 になっています」と語る。この機能は、既存の画像のレイアウトや構図を参考にして新しい画像を生成できるもので、テキストでの複雑な指示なしに思い通りの画像を作り出すことができる。「アンバサダー図鑑制作時にはまだなかった機能ですが、もしあれば、同じような構図で異なるタイプの背景を生成する作業が、よりスムーズに進んだはずです。どんどん使いやすくなっているので、今後も期待しています」とも語っている。
今後、生成AI 技術はさらに進化し、より多くの企業で活用されていくことが予想される。その中で、電通デジタルの取り組みは、生成AI を単なる効率化ツールとしてではなく、企業の風土改革や社員の意識変革を促進するツールとして活用した、先駆的な事例と言えるだろう。
CRAZY KRACIEアンバサダー図鑑 https://www.kracie.co.jp/muchu/crazy_zukan/
※掲載された情報は、2024 年10 月現在のものです。
関連するトピックス
Content as a Service v3 - 9cb1f14c-bad3-3176-8511-5c956e62b09d - Tuesday, January 28, 2025 at 17:36