CMFデザインのデジタル化を加速させるAdobe Substance 3D

富士通株式会社

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創業

1935年

所在地:神奈川県川崎市中原区上小田中

https://global.fujitsu/ja-jp

格段に向上

先行マテリアル開発のスピード

導入製品:

課題

  • 物理サンプルの作成コストがかかるため、サンプルに進めるアイデアの数を制限せざるを得なかった
  • 特殊な表面処理や印刷をするCMFサンプルである程、作成に時間がかかっていた
  • コロナ禍で展示会や会社に行けない時は、リサーチやサンプルの確認が困難だった

成果

  • 物理サンプル制作におけるアイデアの数の制限から解放
  • Substance 3Dで起こしたアイデアは全てデータベース化
  • コストを気にせず新たなデザインを模索でき、素早く完成形イメージを可視化

「アイデアを捨てることなく、全てサンプル化できる。 これだけでもAdobe Substance 3Dを導入する価値はあります」

富士通株式会社 デザインセンター エクスペリエンスデザイン部 益山 宜治 氏

プロダクトデザインの重要な要素となるCMFデザインに早くから取り組んできた富士通株式会社 デザインセンターは、物理マテリアルサンプル制作におけるコスト面での制限、またコロナ禍で停滞する業務を改善するために、Adobe Substance 3D Collectionを導入。CMFデザインのデジタル化を実現し、同部門のDX推進に貢献している。

物理サンプル制作のコストがCMFデザインのネックに

昨2020年にIT企業からDX企業へと大きく舵を切り、自らの変革を進めてきた富士通株式会社。同社ではデザインを「企業価値向上のための重要な経営資源」として捉え、企業のあらゆる活動に対してデザイン思考を実践する「デザイン経営」を推進。その体制を強化するために、それまで富士通プロダクトのデザインを担ってきた富士通デザイン株式会社を、富士通デザインセンターとして富士通本体に合流させた。
デザインセンターでは、同社が提供する多様なサービスやプロダクトのデザイン開発を行うほか、DX提案には欠かせない、前例のない課題に対しても有効な手法となるデザイン思考の実践や、全社員にそれを浸透させる役割を担っている。

同社のプロダクトは、外観の形だけでなく、その奥にある感性に響くようなデザインに定評があり、これまでも国内外の数多くのデザイン賞を受賞してきた。そうしたデザインを支える重要な要素として取り入れてきたのが、CMFデザインだ。CMFは、プロダクトの表面を構成する「Color:色、Material:素材、Finish:仕上げ」の3要素を意味する。これらを体系的に理解し、デザインするのがCMFデザイナーだ。

同社デザインセンターでCMFデザインを手掛けるエクスペリエンスデザイン(EXD)部の益山 宜治氏は、富士通のCMFデザインに対する考え方を次のように話す。

「そのプロダクトが持っている機能性とかストーリーとか、伝えたいメッセージをお客様にダイレクトに伝わるようにするのがCMFだと思っています。形とか機能がコモディティ化してきた中で、じゃあどのように他社と差をつけるか、店頭に並んでいるなかで富士通の製品だと一目で分かるようにするにはどうしたらいいか。そういったことを考えていくと、表面処理というものがすごく重要度を増してきたと思います」

通常、CMFデザインは「リサーチ、アイデアメイキング、サンプル、フィッティング」の順で作業が進められる。しかし、アイデアを手描きのスケッチなどで起こし、そこから物理的なサンプルを作るという流れは、サンプルに進めるアイデアの数が制限されたり、サンプル制作に時間がかかったりという課題があったと、益山氏は話す。

「実際の物理サンプルに落とすまでに、多数のアイデアが捨てられていました。例えば、CMFサンプル作成プロジェクトに対して140〜150案くらいのアイデアを作っても、最終的にサンプルとして残るのは40〜50。なぜなら、1つのサンプルを作るのに高いものだと数十万もするわけです。特殊な表面処理や印刷をする場合は、いくつもの専門業者を行き来したりして時間もかかる。なのでそう気軽に作れるものではないのです。もしかすると捨てられたアイデアの中には、実際にサンプルにしてみたら素晴らしかった、というのもたくさんあったと思います」

コロナ禍によりCMFデザインのデジタル化を検討

こうした課題を抱えるなか、2020年にコロナ禍に突入し、同社の働き方にも大きな影響を及ぼした。
「リサーチのために展示会などへ行けなくなり、会社には誰も来ない、サンプルのタイルを見ることもなくなった。じゃあモックアップ作りはどうしようとなった時、デジタル上で完結できるものは何かと考え始めました。そこで目にとまったのが、Substance 3Dでした。同じデザインセンターの、VRやARなどに関わるチームから勧められ、これなら我々のマテリアル制作にも向いているなと判断しました。ちょうど富士通がDXを柱として動き出した時期だったので、上層にも理解いただき、タイミング的にも良かったなと思います」(益山氏)

こうして2020年に、EXD部門はAdobe Substance 3D Collection(Designer,、Painter、Sampler、Stager)を導入。その使用感について、EXD部チーフデザイナーで日本流行色協会(JAFCA)の専門委員も務める深谷 正子氏は次のように話す。

「最初にDesignerでマテリアルを作成して、最後にStagerでシーンを組み直すということを主にやっています。あと、Painterでテクスチャを調整したり、Samplerで物理サンプルをデジタル化して活用したり、一通りは使っています。以前はモックアップが上がってくるまで本当に上手くできているのかわからなかったのですが、Substance 3Dは操作している目の前で完成形が見えてくるので、それがすごく楽しいですね」と深谷氏は話す。

また益山氏は、「Designerを一番よく使います。我々は通常の使い方とちょっと違っていて、アイデアスケッチの時のスケッチブックのような使い方をしています。そうした場合、ノードベースだと色々なものを組み合わせて新しい表現をどんどん試せる、しかも戻りたいところに簡単に戻れるので、試行錯誤しながらアイデアを具現化していく作業にはすごく向いていると思います」と話す。

デジタルマテリアルの実現でアイデアの数の制限から解放

Adobe Substance 3Dの導入により、物理サンプル制作におけるアイデアの数の制限といった予てからの課題を克服できたと、益山氏はいう。

「Substance 3Dで起こしたアイデアはデータとして残るので、たとえ物理サンプルに落とさなかったものでもデータベース化ができる。しかもある程度完成が見えるレベルのものが作れる。そうなると、アイデア全てがサンプル化されているといっても過言ではありません。これだけでも、導入にかけたコスト以上のメリットはあるかと思っています」

また深谷氏は、サンプルのアンケート調査においても、Substance 3Dの導入効果が得られたという。

「以前は会場で物理サンプルを実際に見たり触ったりしてもらっていたのですが、コロナ禍によりWebでの調査に切り替えました。最初はただ静止画を載せていたのですが、翌年からSubstance 3Dで作成したマテリアルにライトを当てたり、回転させたりといった変化をつけながら動画でお見せするようにしました。その結果、Web上での滞在時間が大幅に延び、好き嫌いの回答だけでなく、『ここが光っていて綺麗』『自分が持った時のイメージが想像できた』というようなダイレクトなコメントをいただけるようになりました。見せ方次第で空気感や凹凸感、触感までも伝えられるのだなと改めて感じました」

CMFデザインの共通言語としてSubstance 3Dの活用を拡大

「Adobe Substance 3Dを使えば、実際のマテリアルを開発しなくてもデジタル上で再現できるので、先行マテリアル開発のスピードが格段に向上します。現にデジタルマテリアルを使ってサステナブルをテーマにしたマテリアルの受容性調査を行いました。また、既存サンプルやリアル資産をデジタルマテリアル化してアーカイブするといった取り組みも行っています。

今後、CMFに関わる人たちがSubstance 3Dを共通言語として使うようになれば、デジタルマテリアルの共有や活用がもっとやりやすくなるでしょうね。他業種の人たちとも同じ言語を使ってマテリアル開発ができたりすれば、今までにないもっと面白いものが出てくるのではないかと思っています」(益山氏)

富士通株式会社 デザインセンター
エクスペリエンスデザイン部
デザイナー

益山 宜治 氏

富士通株式会社 デザインセンター
エクスペリエンスデザイン部
デザイナー

深谷 正子 氏

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