浜松ホトニクス株式会社は、従来利用していたCMSが更改時期を迎えたのを機に、CMSを含む新しいwebサイト基盤へと一新。新しいCMSにアドビの「Adobe Experience Manager」を採用した同社は、AWS構築/運用サービス等を活用しながらプロジェクトを進め、2022年2月に運用を開始した。
グローバルの情報発信強化を目指し、新しいwebサイト基盤への刷新を決断
浜松ホトニクス株式会社は、光の基礎研究と各種関連製品を製造する電子機器メーカーだ。光電子増倍管やフォトダイオードをはじめとする光検出器、レーザーやLEDをはじめとする光源、光検出器をキーコンポーネントとしたカメラや画像解析装置・光計測装置といった多種多様な光関連製品を開発/生産。医療分野、産業分野、学術研究分野など世界中のメーカーや研究者に向けて出荷している。
売上比率の75%近くを北米、欧州、アジアなどの海外が占める同社では、従来から海外市場向けに数千を超える製品情報を提供するwebサイトの運営に力を入れている。2010年代からはwebサイトのコンテンツ作成、編集、公開を一括管理するコンテンツ管理システム(CMS)を導入し、情報発信の業務効率化に取り組んできた。しかし、CMSの導入から時間が経つにつれ、様々な課題を抱えるようになったという。
「当社では海外市場の売上比率が年々増加傾向にあり、特に海外のお客様への迅速な製品情報の提供が求められています。ところが、当社が従来使用していたCMSは、翻訳システムと連動した形での多言語webサイトが実現できず、各リージョンの言語に合わせたwebサイトをそれぞれ公開する以外の方法がありませんでした。また、従来のCMSは管理画面の表示や操作がスムーズではなく、ページ公開までの処理時間の長さや煩雑さに起因する作業効率の悪さがwebサイト運営における大きな課題となっていました」(駒井氏)
そこで同社では、従来のCMSが更改時期を迎えたのを機に、グローバルの情報発信強化を実現する新しいwebサイト基盤に刷新することを決断。同一プラットフォームで翻訳システムと連動した多言語webサイトが運営でき、コンテンツ作成、編集、公開のリードタイムを短縮できる使いやすいCMSを導入することにしたという。
CMSを含むwebサイト基盤を一新すべく機能/操作性を徹底比較
同社がCMSを含む新しいwebサイト基盤構築の検討を開始したのは、2020年4月のことだった。最初に導入候補となるCMSを4製品に絞り込み、それぞれの製品メーカーに対して提案依頼書(RFP)を展開した。
「要望として挙げたのは、情報発信のスピードアップとwebサイト内の情報拡充を図るために、複雑なCMSアセット構造を解消してシンプルに運用したいということでした。もう一つ、webサイトのPDCAサイクルを円滑に回していけるように、運用後も必要なタイミングでクイックに改修できる運用管理体制を構築したいという要望も出しました」(駒井氏)
その後、同社は製品メーカーから寄せられた回答をもとに、CMS製品の機能や操作性などを入念に比較検討。その結果、CMSにアドビの「Adobe Experience Manager」を採用することに決めた。
要求仕様を網羅するAdobe Experience Managerを採用
同社がAdobe Experience Managerを選択した理由について、横田氏は次のように説明する。
「Adobe Experience Managerは当社の要求仕様に対し、ほとんどの機能が標準的に満たされており、web解析ツール『Adobe Analytics』や、パーソナライズツール『Adobe Target』のような周辺ツールも充実していたことが最も大きな理由です。Adobe Experience Managerのデモを通じて、コンテンツの制作経験がない各事業部の制作担当者でも直感的に扱える優れたユーザーインターフェイス、操作性を備えていることが実感できたのも選定ポイントになりました」(横田氏)
Adobe Experience Managerによるグローバルwebサイトの制作環境とAWSによる公開環境を構築
新しいwebサイト基盤構築プロジェクトが始動したのは、2020年9月のことだった。そこから要件定義、設計、開発、構築を約1年かけて実施。アドビによりマネージドサービス化されたAdobe ExperienceManager基盤上に、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がグローバル向けwebサイトの制作環境およびAmazon Web Services(AWS)の機能を利用した公開環境(CDN / WAF)を構築/提供し、2022年2月に日本語、および英語サイトの本番運用を開始した。
プロジェクトでは外部システムとの連携でエラーが起きたり、追加で仕様検討が必要になったりすることもあったが、CTCが検証チームを組織し迅速に対処したこと、また外部パートナーとも積極的に連携したことから、ほぼ遅延なくプロジェクトを進めることができたという。
本番稼働から間もないものの、すでに様々な効果を実感しているという。
「CMSの操作性向上により習得時間が大幅に短縮でき、各事業部のwebサイト制作担当者を増やすことができています。従来のCMSは各事業部2 ~ 3人のみが操作方法を理解している状況でしたが、現在は各事業部とも担当者を倍増できている状況です。海外現地法人からも『使いやすくなった』『アクセススピードが格段に向上して管理画面の操作が快適になった』という声が届いています。また、今回初めてCMSを利用するという作業者も多数いましたが、直感的で覚えやすいため、習得にハードルを感じていないようです」(内藤氏)
「高い操作性と直感的で覚えやすいUIにより、コンテンツ制作など運用工数も大きく低減しました。正確な計測はしていませんが、半分程度になっていると感じています。これにより、コンテンツのタイムリーな更新、コンテンツ増加によるマーケティング施策の増加につなげることを期待でき、非常に重要な成果だと考えています」(清水氏)
中国語サイトなど多言語対応を推進。さらなる高度なwebサイト運用も予定
同社では引き続きweb サイト基盤構築を進めており、現在は中国市場向けに中国語(簡体字)サイトの構築を進めている。さらにそのあとで、英語サイトと翻訳システムを連動させ、西欧諸国や南米各国に対応した多言語対応を順次図っていく方針だという。
「さらに今後は、Adobe Target の活用による丁寧な顧客との接点づくり、分析ツール『Adobe Analytics』を使ったweb サイト分析、アセット管理ツール『Adobe Digital Asset Management(DAM)』を活用したマーケティング素材のグローバル共有なども進めていきたいと考えています」(堀内氏)