課題
編集作業における手書き文字の読みにくさや修正指示漏れなど、アナログな手順に起因する問題をなくしたい
成果
・共有レビュー機能による意見集約の効率化
・マルチデバイスで閲覧、外出先でも作業が可能に
・電子契約機能で契約業務を効率化、ペーパーレスにも貢献
・セキュリティ、長期閲覧性を担保
「制作プロセスにおいてコミュニケーションの障壁が取り除かれることで、スムーズな制作進行が実現しています」
グラフィックデザイナー 長井 智史氏
株式会社ハッシュはBtoB 広告に強みを持つ制作会社。紙、映像、Web など多彩な制作分野で、アドビをはじめとした多くのIT ベンダーやメーカーの広報からマーケティングまで広くサポートしている。1991 年設立以来、IT 化の波に先駆けて歩み、近年は分冊百科の企画・制作も手がける。プロの制作ディレクターと映像、Web、デザインのプロフェッショナルが集結し、業界内で高い信頼を築いている。
原稿の編集作業に長年Adobe Acrobat を活用
株式会社ハッシュ( 以下、ハッシュ) は、広告や出版物の制作会社としてアドビのデザインツールとは長い付き合いがある。近年はディレクター陣もAdobe Acrobat がパッケージに入っているCreative Cloud AllApps のアカウントを持っている。BtoB 広告制作部門を統括する森谷 祐介氏は、以下のように述べる。「以前はデザイナーだけがアドビのデザインツールを使っていましたが、昨今の制作案件は映像やWeb などのデジタルコンテンツを含め、あらゆる媒体に対応できることが求められます。企画や編集の担当者も、どのようなデザインツールで何ができるのかといった最新の知識や操作スキルは必須になっています」一方で、制作の基本であり重要なのは、修正や意見を取りまとめる編集スキルだ。社内チェックやクライアントへの提出、フィードバックの受け渡しなど制作物のやり取りを行い、原稿を基にしてブラッシュアップを進める編集工程は今も昔も変わらないが、以前は原稿に手書きで指摘を取りまとめていた。
「これまでの編集作業では、手書き文字の読みにくさや修正指示漏れ、また修正指示をテキストデータとしてコピーアンドペーストできないなど、細かな点ですがアナログな手順に起因する問題がありました。こうした課題を解決するために、ハッシュでは無料で使えるAdobe Acrobat Reader を利用するようになりました。注釈機能を使うことで、電子的な形で指示や指摘を迅速かつ効果的に集約することが可能だからです」(森谷氏)
電子契約などの無料版にはない多彩な機能に注目
PDFの閲覧・出力以外にも注釈機能を使った修正指示など、編集に欠かせない機能はAdobe Acrobat Readerにも備わっている。しかし、ハッシュでは数年前に有償版であるAdobe Acrobat Proへ切り替える転機があった。
「PDFのやり取りが膨大な数になるため最新のバージョンがどれか正確にわかるようにする必要があり、長期閲覧性もビジネス上で重要な課題でした。クライアントから数年前の制作物について少しだけ修正してほしいという依頼もあり、PDFが数年後でも文字化けやフォント崩れなどなく閲覧できることや、クラウドストレージを利用しどこからでもPDFにアクセスしたいというニーズが社内から出てきました」(森谷氏)
制作に関わる機能以外にも、セキュリティ面や電子契約時におけるメリットも感じたという森谷氏。制作物に別ソフトでパスワードを付けるよりも、Acrobat上でPDFファイル自体にパスワードをかけた方が工数はかからず、Adobe Acrobat Proに備わる電子契約機能を使ってクライアントや外注先との契約書類等のやり取りを電子化できれば、ペーパーレスや業務効率化にもつながるという考えだ。
PDFの共同編集・チェック機能を活用して制作業務を大幅に効率化
Adobe Acrobat Pro版に切り替えたハッシュでは、さまざまな機能を効果的に活用している。中でも取材のため移動している間、モバイル環境で編集を行う際に重宝されているという。主にBtoB広告の編集を担当する小滝 潤氏は、現場での利用シーンについてこう語る。
「Adobe Acrobat Proが利用できるようになってから、マルチデバイスで編集業務を行えるようになりました。例えば、PDFをリンク共有機能を使って関係者と共有することがよくありますが、ブラウザで確認してコメントも書き込んでもらえます。手書き入力もできるので、私はタブレット端末のペンで赤字を入れています。EdgeまたはChromeのAdobe Acrobat拡張機能でPDFを直接編集できるのも便利ですね」
編集業務以外にも、書類の整理や電子保管の際に活用する機会も多い。
「WordやPowerPointなどのドキュメントファイルをAdobe Acrobat Pro上で結合してページを整理したり、モバイルアプリのAdobe Scanを使って、取材先で受け取った名刺や紙資料などをその場で読み取ってOCR処理し、データを保管しています。取り込んだデータはクラウドストレージ上で検索および編集まで可能で、共有がしやすく助かっています」(小滝氏)
デザイン部門を統括する長井 智史氏もAdobe Acrobat Proの機能についてこう語る。
「雑誌やパンフレットなどページ数の多い媒体はファイルサイズが大きくなり、そのままでは関係者との共有がしにくい面があります。その点、Adobe Acrobat Pro版に備わる最適化機能はPDFのデータ容量を簡単に軽くできるので便利です。また、差分比較機能は、前回の原稿PDFと修正した原稿PDFファイルを自動で比較でき、変更点が一目瞭然です。画像の配置も含めた比較により、見落としがちな校正ミスが防げます」
ほかにも印刷入稿前にはプリフライトチェック機能を使い、印刷用PDFデータのエラー箇所を事前に確認することで、印刷入稿後に印刷会社からデータの不備を指摘される回数が減少。複数のデジタルなチェック機能を使うようになり、クライアントの満足度も高まっていると長井氏は実感している。
制作現場以外のビジネス面においても、Adobe Acrobat Proの評価は高い。
「以前は、クライアントや外部の協力者との契約書類等の手続きが煩雑でした。PDFに変換したドキュメントを電子契約サービスにアップロードして取引先との電子契約を行い、最後に捺印後のPDFを文書管理ソフトにアップロードする必要がありましたが、Adobe Acrobat Proの電子契約機能によって今はこれらのプロセスが簡素化され、ペーパーレス化や印紙税といったコスト削減も実現できています」(森谷氏)
新たな機能の活用も検討し、よりスムーズな制作進行を目指す
長井氏は、Adobe Acrobat Proが定着した制作業務全体をこう評価する。
「制作プロセスを俯瞰すると、明らかに納品までの工数や期間が短縮できています。例えば、だれかが赤字コメントや注釈を入れると、リアルタイムに通知が届き、既読が分かります。コメントに対して回答や質問を入れ、チャットのように意志疎通がとれます。引き続き、制作プロセスにおいてコミュニケーションの障壁を取り除くことで、よりスムーズな制作進行を実現していきたいです」
最後に、森谷氏は「いずれ電子契約機能を契約書の手続き以外でも活用できればと考えています。例えばwebフォーム作成機能を使って、外部のクリエーターが応募するためのフォームとしても活用できそうです」と、話を締めくくった。
※掲載された情報は、取材当時(2023年10月)のものです。