戦略的なクラウド活用でオープンイノベーションを加速

株式会社 日立製作所

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創業

1920年

所在地:東京
http://www.hitachi.co.jp

厳しいセ キュリティ基準をクリア

セキュリティを担保したクラウド利用

導入製品:

課題

・個別購入によるライセンス管理の煩雑さ

・厳しいセキュリティ基準

・統合的な認証基盤

成果

クラウドサービスのメリットを活用
Creative CloudおよびDocument Cloudのクラウドサービスで業務効率を改善

グループ認証基盤との連携
シングルサインオン対応のFederated ID によるユーザー認証が利用可能。厳しいセキュリティ基準をクリア

クリエイティブ制作の質と効率が向上
Creative Cloudライブラリで、素材の共有が簡単に。さらにAdobe Fontsの利用でデザインの表現力がアップ

ドキュメント管理の効率化
大量の文書をPDF に変換してプロジェクトごとに一元管理。検索性とセキュリティを向上

社会イノベーション事業をグローバルに展開し、様々な社会課題の解決に取り組む株式会社日立製作所および日立グループ各社では、グループが一丸となって、新たな価値創出を可能とする「Lumada」を活用した取り組みにまい進している。

日立グループの事業を要所で支えているAdobe Creative Cloud やAdobe Acrobat の利用環境を、最新のテクノロジーでセキュアに利用するアップグレードに取り組んだ。その経緯と効果について日立製作所およびグループ各社の関係者に話を伺った。

「グループ全体でライセンスの管理運用を一元化し、セキュリティを担保しながら手軽にクラウドサービスを利用できるソリューションが必要でした」

IT ビジネスサービス本部 統合IT プラットフォーム本部 本部長 兼 IT 統括本部 本部主管 里山 元章 氏

個別購入によるライセンス管理の煩雑さ

日立グループ内ではAcrobat、Photoshop、Illustratorなどが数千本単位で利用されている。それまで各社が個別にライセンスを購入、管理していたため、グループ全体での利用状況を把握するのは困難だった。日立グループ各社に向けたITソリューションの開発と提供を行なっている、日立製作所ITビジネスサービス本部の里山元章氏は次のように話す。

「誰がどのバージョンを使っているか、適切な利用ができているか、とても把握しきれない状況でした。弊社は統制が厳しく、不正利用などあってはなりません。また、ユーザーが意識しなくても、ソフトウェアの保守が切れているというケースもあります。そのため頻繁に棚卸しというものをやって、1つ1つ細かくチェックしていくわけですが、そこにかかる労力やコストは大変なものでした」

業務効率の向上にはクラウド活用は必須

日立グループでは、多様なクラウドサービスが普及する中でクラウドのメリットを積極的に活用すべく、インターネット接続によるウイルス感染や不正アクセスのリスクを考慮しながら、クラウドサービスの利用施策の準備を進めていた。

「Acrobatにしても、PhotoshopやIllustratorにしても、クラウドサービスへの関心はあらゆるレベルで高まっていました。今の時代、業務の効率を上げていくためには、クラウドの利用は欠かせません。働き方改革の観点から言うと、テレワークやモバイルワークなどは当たり前。そのためにも、グループ全体において適切なユーザーが適切なITリソースにアクセスするための、統合的な認証基盤を用意する必要がありました」(里山氏)

グループ共通認証基盤と連携するエンタープライズ版を導入

2017年10月、同社は里山氏の指揮のもと、日立グループ共通の統合認証基盤を稼働させた。ちょうど同時期、アドビのライセンス契約の更新を迎えるにあたり、かねてからの管理運用とセキュリティの問題を解決すべく、新たなライセンス形態の導入が検討された。

日立製作所からの要請を受け、導入のサポートにあたったのが株式会社日立システムズだ。日立システムズは、これまでも日立グループ内でのアドビ製品の販売、管理運用、保守を担ってきた。

今回の導入サポートの中心的役割を果たした、同社ビジネスクラウドサービス事業グループの吉末まさる氏は次のように話す。

「まず、グループ内でばらばらだったライセンスの購入ルートと管理を一元化すること。それから、セキュリティを担保しながらユーザーが手軽にクラウドサービスを利用できるようにすること。これらの条件を満たしたのが、アドビのエンタープライズ版で利用できるシングルサインオン対応Federated IDによるライセンス認証でした。特に、エンタープライス版がグループ共通認証基盤と連携できたことが重要なポイントとなりました。日立グループの厳しいセキュリティ基準をクリアできたのも、この連携のおかげでしょう」

ID運用によりライセンス管理が容易に

2017年11月、日立グループ全体にCreative CloudおよびAcrobatエンタープライズ版が導入された。グループ共通認証基盤が導入されてから、わずか1ヶ月。この認証基盤と連携するソリューションとしては初めてとなる。現在、グループ全体のライセンス管理はエンタープライズ版のAdmin Console(管理画面)で一元的に行われている。ユーザーとライセンスの紐付けもこの画面で行われ、誰がどのライセンスを使用しているかをすべて把握できる。

「一元管理の最大のメリットは、ライセンス違反が起きないということですね。使える製品やサービスも管理者側でコントロールできるというのも、ガバナンスとして有効だと思います」(吉末氏)

株式会社 日立製作所 里山 元章 氏

IT ビジネスサービス本部 統合IT プラットフォーム本部 本部長 兼 IT 統括本部 本部主管  里山 元章 氏

南川 潤子 氏

ビジネスクラウドサービス事業グループ ビジネスクラウドサービス営業統括本部 第五営業本部 第三営業部 部長  吉末 まさる 氏

ID 運用によりライセンス管理が容易に

2017年11月、日立グループ全体にCreative CloudおよびAcrobatエンタープライズ版が導入された。グループ共通認証基盤が導入されてから、わずか1 ヶ月。この認証基盤と連携するソリューションとしては初めてとなる。現在、グループ全体のライセンス管理はエンタープライズ版のAdmin Console(管理画面)で一元的に行われている。ユーザーとライセンスの紐付けもこの画面で行われ、誰がどのライセンスを使用しているかをすべて把握できる。

「一元管理の最大のメリットは、ライセンス違反が起きないということですね。使える製品やサービスも管理者側でコントロールできるというのも、ガバナンスとして有効だと思います」(吉末氏)

クリエイティブ制作の質と効率が向上

では実際に製品を使用しているユーザー側に対して、エンタープライズ版はどのようなメリットをもたらしているのだろうか。株式会社 日立ドキュメントソリューションズは、日立グループのスペシャリスト集団として、印刷物、Web制作、イベント企画、文書管理などを手掛けており、長年にわたってPhotoshopやIllustratorなどのクリエイティブツールを使用してきた。同社コミュニケーション事業部で主にポスターやパンフレットなどの印刷物の制作に携わる井澤秀幸氏は、Creative Cloudエンタープライズ版の導入について次のように話す。

「クラウド機能、特にCreative Cloudライブラリが使えるようになったのが大きいです。同じ仕事を複数人でやる場合、以前は共通で使用する素材をサーバーに上げて共有していたのですが、追加や変更があるたびにサーバーに取りに行かなければならず、余分な時間をとられていました。ライブラリなら、オブジェクトをIllustratorやPhotoshopのパネルに入れて登録するだけで、全員が自分のパネルからそのオブジェクトを取り出して使用できる。変更があっても更新を自動でやってくれるので、かなりの時間短縮になっています」

また井澤氏は、デザインの表現の幅を広げるという点で、Creative CloudのフォントサービスであるAdobe Fonts(旧Typekit)を高く評価する。

「フォントはたくさんあればあるほど良いのですが、それなりにコストもかかりますし、安価でも出所のわからないようなものは使用を禁止されています。なので、Adobe Fontsは非常に重宝しています」

また、管理業務を担当する松下恵氏は、ライセンスやバージョンの管理の面で大きなメリットを得たという。

「印刷物の場合、アプリのバージョンに気を使わなければなりません。共同で作業するときは、全員が同じバージョンで作業しないと、レイアウトが崩れたり、色が変わったりといった事故が起こる可能性があります。印刷側との共通性も考慮しなければなりません。そのため、以前は新しいバージョンを入れたいけど入れられない、といったジレンマがありました。今のCreative Cloudは旧バージョンを含めて複数のバージョンを入れておくことができるので、案件ごとに全員がバージョンを統一して作業することができます。何より、1つのライセンスですべてのバージョンが管理できてしまうという点は、管理者にとっては大変なメリットだと思います」

和文/欧文を含めた、商用利用可能な15,000以上ものフォントを無制限に使用できるクラウドサービスAdobe Fonts。
Illustratorなどのフォントメニューから直接フォントを検索、同期させて、すぐにデザインで使用できる。

大量の文書の管理運用をペーパーレスで効率化

日立製作所 インダストリアルプロダクツビジネスユニットは、日立製作所の中/大型モーター、無停電電源装置・インバーターなどのパワーエレクトロニクス製品、圧縮機、ポンプなど、中/大型の産業機器事業を推進し、重要な社会インフラを支えるビジネスユニットだ。その中の機械システム事業部では、主に水、空気、ガスをコントロールする圧縮機、ポンプ、送風機などの産業機械の研究、設計・開発、製作を行っている。図面から作業指示書、品質管理文書まで日々大量の文書がやり取りされており、近年ではそのほとんどが電子化されているという。その電子化を推進するうえで重要な役割を果たしているのがAcrobatだ。

同事業部のIT部門で主任技師を務める宮地賢一氏は、20年以上も前からAcrobatを使用してきた。バージョンを重ねるごとに著しい進化を遂げるAcrobatについてこう述べている。

「使い始めの頃と比べて、Acrobatもだいぶ便利に使えますね。動画や3DもPDFにして見られるというのは驚きです。AcrobatはPDFを作るだけのツールと思っている人も多いので、もっともっと活用してもらいたいですね。今は新しいバージョンが出ればすぐにダウンロードして使える環境になっておりますので、効率の上がる新しい使い方を積極的に取り入れていきたいです」

同事業部の設計部門では、1つのプロジェクトで発生する文書の数は、500から1,000以上にものぼるという。近年、文書の電子化が進んだとはいえ、過去に作成された図面が紙でしか残っていなかったり、契約書や議事録など印鑑を必要とする文書は依然として紙が使用されている。設計部門で設計に携わる稲垣規一氏は、大量のファイルと紙文書の扱いについて次のように話す。

「紙は検索がかけられませんので、保管庫にある大量の資料の中から、目的の書類を探すというのは大変な作業です。そこで現在、こうした紙の書類をAcrobatを使って電子化していこうという動きが出ています。OCR処理で検索がかけられるようになりますし、資料の再利用も簡単になります。また、既存図面は多くがTIFF形式なので、ファイル名から見当をつけて探すしかありませんでしたが、これもPDFに変換してしまえば、Acrobatの全文検索機能でファイルを1つ1つ開くことなく簡単に見つけ出せるようになります。これは今後ぜひ活用していきたい機能です」

Acrobatのスキャン補正機能では、スキャナーなどから読み込んだ画像のテキストを認識し、検索可能なテキストデータに変換する。
さらに、スキャンの時に生じた文書の傾きやゆがみも自動で補正する。(画像はイメージ)

また設計図面などきわめて機密性の高い文書は、セキュリティに関して最善の注意が払われる。外部とファイルをやり取りする際は、Acrobatのセキュリティ機能が役に立っているという。

「PDFは編集ができるというのも長所なのですが、セキュリティを考慮しなければ改ざんにつながるというリスクもあります。Acrobatでは、PDFの編集やコピー、印刷などを制限するセキュリティ機能がありますので、とても重宝しています」(稲垣氏)

同事業部の製造部門で製造管理に携わる石崎博氏は、日頃Acrobatをモバイルでも活用しており、特にOffice365との連携機能を高く評価している。

「製造部門で扱う文書はExcelやWordで作られることが多く、私の場合はよく外出中に文書をチェックするので、モバイル端末でもきちんと表示されないと困るのです。Officeファイルはモバイルだと書式などがよく崩れてしまうので、PDFに変換してから表示したり、コメントを付けたりしています。最近ではSharePointから直接PDFに書き出したり、束ねたりできるようになっているので、利便性はますます向上していると思います。今後は、Acrobatを使って電子化を推進し、契約業務や承認業務のスピード向上を図りたい。社内ルールがあるので難しい部分もありますが、せっかくグループ全体がクラウドに移行しているので、これを機に積極的に取り組んでいくべきですね」

積極的なクラウド利用でイノベーションを促進

「従来と同じ方法を繰り返すだけでは、イノベーションは生まれません。クラウドの利用には常にセキュリティ上のリスクがつきまとうのも事実ですが、利用を制限することで重要な機会を逸することのほうがよほどのリスクだと考えます。今回のエンタープライズ版の導入は、我々が取り組む業務改革のほんのスタートに過ぎません。」(里山氏)

日立グループが手掛ける事業は多岐にわたるが、それらはすべて「社会が直面する課題にイノベーションで応える」というミッションにもとづいている。時代とともに変化する課題に迅速に対応し、お客様や社会に新たな価値を提供し続けるために ‒‒ クラウド利用のリスクをメリットととらえ、新たな改革に取り組む日立グループの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

※掲載された情報は、2018 年現在のものです。

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