
動的なドキュメント配信の簡素化
HOMAG社では、Adobe FrameMakerでのDITAオーサリングをSAP ERPワークフローと統合して、インダストリー4.0の技術文書を提供しています。

50万
Microsoft Wordのソースファイル
対応するDITAトピックに変換され、自動化によってバージョン管理が改善
目的
オーサリング機能を拡張しながら、実績のあるコンテンツパブリッシングプロセスを維持する
世界中に展開するための新たな技術文書インフラストラクチャを構築する
ドキュメントの33言語への翻訳を簡素化し最適化する
XML、HTML5、動画、グラフィックなど、複数のコンテンツタイプのバージョニングと管理を自動化する
成果
新機能を追加しながら、既存の技術文書のパブリッシングプロセスを 維持
内外の関係者がアクセスできる、新たなグローバルテクニカルコミュニケーションインフラストラクチャを 確立
33言語への翻訳のターンアラウンドタイムが、自動化により50%短縮
Microsoft Wordの50万件のソースファイル が対応するDITAトピックに変換され、自動化によってバージョン管理が改善
これからの工場
HOMAG Group AGのソリューションが、ユーザーのいる部屋で(部屋そのものも含め)何かを構築するのに役立つ可能性は十分にあります。家庭用およびオフィス用家具、キッチン、寄木細工やラミネートの床、窓、ドア、階段、さらには完全なプレハブ式木造建築物を製造する企業のほぼ3分の1が、HOMAG社の機械と制御用ソフトウェアを利用しています。
HOMAG社は、小規模なワークショップ用の単体の鋸や、ドリル、くり抜き機に始まり、工場全体をネットワーク化された生産ラインで埋め尽くすような統合モジュラーシステムに至るまで、様々な木工ソリューションを設計および製造しています。同社は100か国以上33言語の顧客をサポートしています。
HOMAG社は、未来の工場建設の先駆者でもあります。インダストリー4.0または第4次産業革命と呼ばれることもあるこのような工場の進化は、モノのインターネット(IoT)を介した動的な情報交換に依存して、コンピューターと機械と人間をつなぎます。
「当社では、適切に使用しないと危険な場合もある複雑な木工機械を製造しています。オペレーター、サービス技術者およびプラント管理者は、作業効率と安全性の両面が考慮された完全な技術文書を必要としています」と、HOMAG Groupの技術文書責任者、Andreas Wolf氏は言います。「コンテンツを機械へ直接パブリッシュすることに関しては、HOMAGは長きにわたり業界の最先端を行く企業です。現在はそれを次のレベルへと引き上げているところです」
「HOMAGでは、DITAオーサリングにAdobe FrameMakerを選びました。SAP ERPとシームレスに連携するようカスタマイズできるからです。当社では、FrameMakerを20年近く検討してきましたが、これまではMicrosoft Wordから完全に移行する機会がありませんでした」
Andreas Wolf氏 HOMAG Group、技術文書責任者
** パブリッシングプロセスを維持する**
HOMAG社は、エンタープライズリソースプランニング(ERP)システムに保存されているパーツリストにソースコンテンツを直接マッピングすることにより、技術文書を自動的にパブリッシュする方法を開発しました。約150人の関係者(機械設計者、エンジニア、開発者、建設業者を含む)から成るチームが、Microsoft Wordでドキュメントを作成し、手動のファイル命名システムを使用してドキュメントを整理し、PDFファイルに変換しました。
ERPシステムで顧客向けに木工機械が構成されるとすぐに、ERPデータにリンクされたドキュメントシステムにより、対応するPDFコンテンツが自動的にコンパイルされました。コンパイルが完了すると、操作手順、サービスマニュアル、トレーニング教材など、20種類以上のドキュメントがデジタルで利用できるようになりました。
HOMAG社は、Wordと自社のレガシーERPシステムを利用して、1996年にドキュメントの自動化を開始しました。残念ながら、ソースドキュメントの管理とバージョン管理は困難なものになりました。2016年までに、50万件以上のMicrosoft Wordのソースファイルが、合計で14あるHOMAG社の各製造施設の独立したシステムに保存されました。
2016年、HOMAG社は、設計ソフトウェアやシミュレーションツールなどのバックエンドシステムの情報にビジネスデータを統合するために、新しいSAP ERPシステムへのアップグレードを決定しました。技術文書チームは、このSAPへの切り替えを、非効率的なワークフローを排除しつつERPベースのパブリッシング方法を維持する良い機会だと捉えました。
改善の機会
「ドキュメントを自動生成する優れたソリューションはありましたが、ドキュメントの作成と翻訳は面倒で時間がかかりました」と、Wolf氏は言います。「当社はできるだけ多くの手動プロセスを排除したかったのです」
例えば翻訳は、ほぼ完全に手動での作業でした。HOMAG社は、Wordファイルを外部の翻訳会社に電子メールで送信していました。翻訳されたWordファイルが電子メールで返送されてきたら、手動でそれに番号を付け、PDFに変換し、ドキュメントシステムにアップロードする必要がありました。
HOMAG社はERPシステムのアップグレードを予定していたため、技術文書チームはXMLのオーサリングと編集のために、Microsoft WordからAdobe FrameMakerへのアップグレードの機会を利用しました。FrameMakerでDarwin Information Typing Architecture(DITA)オープンXML標準を使用することにより、HOMAG社は、トピックベースのコンテンツ作成を自動化および標準化し、サードパーティとデータを交換し、XML、HTML5、動画、グラフィックなどの多様なコンテンツを簡単に管理することができます。
「HOMAGでは、DITAオーサリングにAdobe FrameMakerを選びました。SAP ERPとシームレスに連携するようカスタマイズできるからです」と、Wolf氏は言います。「当社では、FrameMakerを20年近く検討してきましたが、これまではMicrosoft Wordから完全に移行する機会がありませんでした」
HOMAG社は、c-rex.net DTS変換エンジンを用いて、WordのレガシードキュメントのFrameMakerへの移行を自動化しています。Adobe FrameMakerとSAP ERPの接続については、c-rex.netのコンサルタントもサポートに加わっています。
「Adobe FrameMakerは、コンテンツプロバイダーをHOMAG社の技術文書プロセスに統合するのに役立ちます」と、c-rex.net GmbHのCEO、Markus Wiedenmaier氏は言います。「FrameMakerを用いるとDITA/XML関数をバックグラウンドに配置できるため、作成者は、それがトレーニングを受けたライター、開発者、またはコンストラクターであっても、コンテンツに集中できます」
コンポーネント指向ドキュメント
各HOMAG製機械の構造(構築方法と使用コンポーネント)は、SAP ERPで完全にマッピングされます。このソリューションに組み込まれたドキュメント管理システム(DMS)によって、ドキュメントのバージョニング、ステータス管理および配布が自動化されます。また、リアルタイムアクセスを通じてグローバルなコラボレーションが実現します。
DMSのコンテンツ階層は通常のDITAコンテンツ管理システムとは異なるため、HOMAG社はAdobe FrameMakerとの接続についてサポートが必要でした。c-rex.netのコンサルタントは、いわゆる「コンポーネント志向ドキュメンテーション」のカスタマイズを進めました。
DITAはトピック(特定可能な目的を持つ主題に関する独立したスタンドアロンコンテンツ)を使用してドキュメントを作成しますが、SAP DMSはそれとはほぼ反対のものに依存しています。ここでは、機械全体を最上位コンポーネントとし、その下にその構成パーツが続くコンポーネント階層を使用します。ERPシステム内の各機械は顧客の注文に関連付けられ、すべてのドキュメントがこれにマッピングされ、管理されます。
「SAPのDMSは、単一のDITAトピックのような小さなコンテンツを管理するようには設計されていません」とWiedenmaier氏は言います。「比較的大きなドキュメントセットが必要です。当社の場合は、機械の特定のコンポーネントまたはユニットになります。このパッケージをマクロトピックと呼んでいます」
各マクロトピックは、c-rex.netによって作成された特別なファイルバンドルであるHOMAG DITA eXchange Package(HDXP)に保存されます。各HDXPには、DITAマップ、DITAトピック、SAPメタデータ(タイトルやコンポーネント情報など)、画像、動画、他のHDXPファイルへの参照などのアセットが含まれています。
「Adobe FrameMakerは、コンテンツプロバイダーをHOMAG社の技術文書プロセスに統合するのに役立ちます。FrameMakerを用いるとDITA/XML関数をバックグラウンドに配置できるため、作成者は、それがトレーニングを受けたライター、開発者、またはコンストラクターであっても、コンテンツに集中できます」
Markus Wiedenmaier氏 c-rex.net GmbH、CEO
簡単な編集、自動パブリッシング、より高速な翻訳
作成者は、ERPシステムからHDXPファイルをチェックアウトすることにより、DITAコンテンツを編集します。チェックアウト時に、DITAマップがAdobe FrameMaker
で自動的に開きます。
「SAPにソフト接続されたFrameMakerプラグインがあるため、SAPコードに影響するようなAPI統合はありません」と、Wiedenmaier氏は言います。「作成者は、FrameMakerを使って従来の方法でDITAファイルを編集し、HDXPファイルをSAPにチェックインするだけです」
チェックイン時に、c-rex.netが開発したFrameMakerプラグインを介して、Adobe FrameMakerおよびコンピューター支援翻訳(CAT)用のXLIFFファイルによりPDFファイルが自動的に生成され、XML機械制御データが更新されます。次に、HDXPファイルが再構成され、パブリッシュが可能な状態になります。複数の言語に翻訳する場合は、HOMAG社がSAPに直接アクセスすることを許可したサードパーティの翻訳会社に対し、SAPが自動的に注文を送信します。
「CATエージェンシーは、XLIFFファイルをチェックアウトしてコンテンツを翻訳し、そのファイルをSAPにチェックアウトすることができます」と、Wiedenmaier氏は言います。「返却されたファイルは自動的にFrameMakerへチェックアウトされ、各種のドキュメントに必要となるあらゆる出力に対してパブリッシュされ、次いでSAPへチェックインされます。Adobe FrameMakerを用いた自動化により、翻訳時間が50%短縮しました」
新規の注文がERPシステムに入力されると、SAP CADDI構成ソフトウェアが、注文に関連するすべてのドキュメントと制御ファイルを収集します。このソフトウェアはPDFファイルを自動的に結合し、目次を作成し、メタデータパッケージを生成します。次に、ファイルがHOMAG製機械(または大規模な工場受注の機械)へ直接エクスポートされ、アーカイブ用にERPシステムにパブリッシュされます。
ドキュメントの強化
機械に送られたドキュメントは、HOMAG社のインダストリー4.0ビジョンの一部としてのメンテナンスのアクティビティを制御することができます。HDXPファイルが再構成されると、Adobe FrameMakerのDITAトピックメタデータからXMLファイルが生成されます。次に、機械の制御システムにより、ランタイムなどの機械データに照らしてXMLデータが評価されます。機械の状態がメンテナンス期限を示唆している場合は、制御システムによって自動的にトリガーされたオペレーターアラートが画面に表示され、メンテナンスガイドや修理マニュアルなどの関連技術文書へのリンクが示されます。
HOMAG社は現在、情報配信用の新たなiiRDS標準をIoT全体で使用して、Adobe FrameMakerで作成したDITAコンテンツをメタデータと統合することにより、ドキュメントの能力をさらに拡大しようとしています。
「メタデータの標準化によって、機械のデータとドキュメントを接続してインテリジェントなプラント管理を実現する機会が得られます。例えば、トラブルシューティングやメンテナンスの優先順位付けのために、機械のイベントとドキュメントを自動でリンクし、モバイルデバイスでアクセスできるようにしたいのです」と、Wolf氏は言います。「Adobe FrameMakerは、動的な技術コンテンツ配信と当社のソリューションとの統合を拡大し、お客様により多くの価値を提供するための、重要なツールであると、HOMAG社は考えています」