クラウド型CMS「Adobe Experience Manager Managed Services」で「au.com」を起点とする持続的なCX改善を推進
KDDI株式会社


月400~500件
サイト更新
課題
- サービス、ドメインごとにwebサイトが点在し顧客の導線が分断。契約や利用状況も散在し、把握が難しい状況だった
- サービスごとのブランドの見せ方やサービス設定がバラバラで統一感が出せていなかった
- 更新内容や回数が多いため、人的工数の外部委託への依存度も高く、業務/コスト効率が低減していた
成果
- 業務効率/生産性が向上し、月400~500件の更新、月1回の新機能リリース、月間8000万PV前後を実現
- 高トラフィックイベントでの安定したコンテンツ配信手法の確立
- 継続的な業務最適化により内製化40%を実現。事業環境の変化に即したスピード感ある更新作業と業務コスト低減を達成
「『Adobe Experience Manager』をベースに、顧客一人ひとりに対してリアルタイムで個別化された体験を提供する『Hyper-Personalization』実現に向けた取り組みを加速化してまいります」
ブランド・コミュニケーション本部 UXデザイン部 エキスパート
神戸 崇人氏
社内に点在するチャネルの情報をいかにシームレスに連携し、顧客体験(CX)の向上につなげるか――。その大きな課題認識のもと、大手通信事業者のKDDI株式会社では、2017年、中核ブランド「au」の顧客接点となる、総合ポータルサイト「au.com」を立ち上げた。「au.com」を拠点に、日々、変化するビジネス環境や顧客ニーズに対応し、CX改善をいかに実現しているのか。サイトの立ち上げから、運用・開発管理を担当した2人に聞いた。
サービスやドメインごとにサイトが乱立。統一した「au」ブランド体験の提供が課題に
スマートフォン/携帯電話から金融/保険、セキュリティ、エンタメ、ショッピング、決済など、日本を代表する大手通信事業者の1社であるKDDIが「au」ブランドのもと、展開するサービスは実に広範囲に及ぶ。
掲げるブランドメッセージは「おもしろいほうの未来へ。」。その指針に沿った顧客体験(CX)の向上、変革を担うのが同社ブランド・コミュニケーション本部だ。現在、UXデザイン部 エキスパートの神戸崇人氏は、2015年に同社に入社し、オウンドメディアサイト管理の中核メンバーの1人として、一貫した顧客とのコミュニケーションの見直し、その実現に向けたシステムアーキテクチャの再構築、実行体制の整備といったプロダクトマネジメント全般を担当。
当時の「au」ブランドが抱えていた最大の課題認識として、「サービス、ドメインごとにwebサイトが点在し、担当部署ごとにコンテンツの運用管理を行っているため、導線が分断され、お客様が迷ってしまう。情報統制も取れていない状況でした」と神戸氏は振り返る。
特にauを冠とする「au ✕✕」といったサービスや商品が多く生まれていた時期で、ブランドの見せ方やサービス設定もバラバラ。顧客接点とそれに紐づくデータが個別管理されているため連携が難しく、加えて業務/コスト効率の問題も浮上していたという。
ブランド・コミュニケーション本部 UXデザイン部 エキスパート
神戸 崇人氏
機能性/拡張性の高さから「Adobe Experience Manager Managed Services」を採択し、「au.com」を始動
こうした課題解決に向けて、一大プロジェクトが発足。その中のミッションの1つが、乱立していたwebサイトを一元化する総合ポータルサイト「au.com」の開発、運営だった。
前職で企画立案からライティング、コーディング、効果検証など、マーケティング業務全般に従事していた神戸氏は、入社早々、社内外と連携したサイト全体の開発管理を担うこととなる。
前述したように、au.comは通信だけでなく、auブランドが提供する多種多様なサービス情報を提供するポータルサイトとして位置付けられるため、更新件数もPVもかなりの規模になることが予想された。膨大かつ多岐に渡るコンテンツの管理基盤として何を採択するか。検討の末、神戸氏らが白羽の矢を立てたのが、「Adobe Experience Manager Managed Services」だった。
日本国内ではオンプレでの導入が主流だった当時、クラウド型のCMS基盤へのシフト、さらに「Adobe Experience Manager Managed Services」の採択を決めた理由として、神戸氏は大きく2つのポイントを挙げる。
まず、クラウド型に移行したポイントの1つ目が、「システム管理工数の最小化」だ。CX向上には、継続的な改善活動が必要であり、機能開発をアジャイルに実施するにはクラウド環境が優位だ。当時、既に同社ではアジャイル開発部隊も存続しており、クラウドを積極的に使っていこうという気運が高まっていたことも後押し材料になったという。
その上で、2つ目のポイントとして「Adobe Experience Manager Managed Services」の採用には、「膨大な更新にも耐えうる高いサービスレベルと、お客様体験の継続的な変化を念頭に置いた拡張性の高さが決め手となりました」と神戸氏は話す。
さらに、膨大な更新作業を進めるには、人的工数の最小限、成果の最大化も外せないミッションだ。「事業環境の変化に迅速に対応し、ブランドの統一感を実現していく上でも、外部委託の依存度を低減し、内製化を上げていくには、『Adobe Experience Manager Managed Services』のようなハイエンドなソリューションを核とした、運用変革をしやすい仕組み化が必須と考えていました」(神戸氏)。
こうして16年より正式契約。アジャイル開発手法を取り入れながら、開発チームによるサイトの立ち上げ、コンテンツやアプリケーションの開発/改善を実践。試行錯誤を重ねながら、ビジネス要求とUX/UI改善の両立をはかり、CX向上に向けた運用を推進している。
スクラム開発手法の採用で業務効率、生産性が向上。作業の内製化も40%に
Adobe Experience Manager Managed Servicesをベースとした、「au.com」始動から約8年。得られた成果の1つが、当初から目指していた業務効率と生産性の向上だ。「現在、更新件数は月400~500件、ページ数では1000~2000程度。そのうち、月1回の新機能リリース、機能のアップデート20件など行い、PVは月間8000万PV前後を実現しています」(神戸氏)。
アジャイル開発では、小規模のスクラムチームで開発に取り組む「スクラム開発」を取り入れている。スクラム開発とは、「スプリント」と呼ばれる一定期間単位で開発計画と実装をくり返しながらプロダクトの品質を高めていく手法だ。
19年より、本格的に「au.com」の開発チームにジョインし、プロダクトオーナーを務めるUXデザイン部の三井詩織氏によると、同社では2週間ごとのスプリントモデルを組み、「2週間でスプリント開発し、月に1回、機能のリリースを実施しています」と言う。
UXデザイン部 プロダクトオーナー
三井 詩織氏
現状、3つのスクラムチーム、メンバー10数人で回しているが、スクラム開発における作業速度や作業量の指標となるベロシティも高基準で安定的に推移。サイト立ち上げ時は、想定外の事態に追われることもあったというが、作業スピードや作業量のバラつきも減り、生産性や効率アップが実現している。
また、2週間という短期のサイクルで回すことで、「問題点の早期検出、改善という成果にもつなげられている」と神戸氏。これも、得られた大きな成果だ。
その他の取り組みとして、専門的な知識を持つエンジニア以外のメンバーでも更新作業を実践できるような仕組み化を進めたことで、当初課題だった内製化も進んでいる。現在、内製化を40%まで引き上げ、「さらなる向上を目指し、運用効率化を進めています」(三井氏)。
具体的なプロジェクト成果の1つとしては、「FAQのリニューアル」の実施だ。FAQのデータ管理を共通化し、au.com 以外のサイトでも活用できるように調整したことでオペレーションを一元化。これにより、年間数万件以上の入電削減効果を実現している。
ユーザー会の積極的関与でナレッジを共有。「Japan Adobe Advocates」にも選出
神戸氏は、Adobe Experience Cloudの製品エキスパートとして、チャレンジングな課題解決に取り組んだことなどが評価され、Adobe Experience Managerの「2024 Japan Adobe Advocates」にも選出。また、神戸氏、三井氏共に、「Adobe Experience Managerユーザー会」の運営にも積極的に携わっており、企業の枠を超えたマーケティング改善の好循環に貢献している。
「当社として培ったナレッジを共有できればと思っていたところで、今回Advocatesに選出され、ユーザー企業同士の横連携の機会が増えたことはとてもうれしく感じています」(神戸氏)
さらに、ユーザー会以外でも、アドビが擁するグローバルな最新事例を参考にできるのもポイントであり、「製品コンサルタントの方々も知見が豊富で、分からないことを気軽に尋ねられるのもありがたいですね」と三井氏は指摘する。
今後の展望として、神戸氏は「正解や最終ゴールはなく、いかに変化に適切に対応していくかが肝要です」とした上で、Adobe Experience Managerをベースに、今後はアドビのクラウドやAI製品も試しながら「顧客一人ひとりに対してリアルタイムで個別化された体験を提供する『Hyper-Personalization』を実現するべく、社内のインナーブランディングのサイクルと、顧客体験のサイクルの最適化をはかっていきたいですね」と未来図を描く。
同社のように数多くのブランド、サービスを擁する企業にとって、統一したブランドメッセージを発信し、CX向上につなげていくことは、関与するメンバー、ステークホルダーの多さからも決してたやすいものではない。
その観点から見て、マーケターやプロジェクトマネジャーとして全体を見つつ、エンジニアとも渡り合える知見を持つ神戸氏を始め、多元的な視点を持つ2人の中核メンバーの存在が、難しいプロジェクト推進の大きな力になっているのは間違いない。
Webサイトが単なる情報提供チャネルではなく、顧客接点として重要性を増す中、自社サイトほかオウンドメディアのあり方を見直す参考としてみてはいかがだろうか。
※掲載された情報は、取材当時(2025年1月)のものです。
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