



設立
1990年
**所在地:**東京都
**従業員数:**350名
東京・パリ・北京・上海の中核拠点に加え、コロナ禍を受け、より小規模なサテライトオフィス展開を推進。地域で暮らし、その空気感を吸収することで、より地域に根差した建築設計の実現を目指している。
導入製品:
Adobe Substance 3D(Designer, Painter)
導入メリット
カスタマイズ性の高さ
CGパースの品質向上
ダウンロードサービス以外のマテリアル表現が可能になった
よりリアリティのあるCGパース制作が可能になった
課題
作品に込める設計者の意図を、プレゼン資料内でリアリティを持って表現したい
成果
よりリアリティのあるCGパースが、ステークホルダーの意思決定に貢献
多彩なマテリアル感をCGで実現
「建築素材への隈事務所のアプローチとSubstance 3Dの相性は上々です」
CGチーム 松長 知宏氏弘氏
国際的な活躍を続ける建築家、隈 研吾氏の隈研吾建築都市設計事務所は、CGパースにAdobe Substance 3Dを活用。隈事務所の特色でもある木材をはじめとする各種素材の表面質感の表現、そしてステークホルダーのよりスムーズな意思決定に大きな役割を果たそうとしている。
建築に留まらず、幅広い領域で創造に取り組む
多作で知られる建築家、隈 研吾氏。その創造の拠点が、隈研吾建築都市設計事務所(以下、隈事務所)だ。中核となるオフィスは東京、パリ、北京、上海に展開され、所員数は350名を越える。アトリエ系事務所としては異例とも言える規模を擁するその理由は、同時進行的に手掛けるプロジェクトの多さに加え、隈氏の興味・関心の幅の広さも関係している。CGチームの松長 知宏氏はこう説明する。
「所員の約8割はいわゆるアーキテクトですが、CGチームと呼ばれる私たちのチームはCGパースを手掛けるだけでなく、建築サインの専門家やファブリック、インテリア、ランドスケープなど多様なデザイナーを擁し、建築デザイン以外にも積極的に取り組んでいます」
その興味・関心は、メタバースをはじめとするデジタルの領域まで及ぶ。その一例が通信制高校のVR校舎の設計だ。生徒たちは隈氏がデザインした仮想校舎にVRデバイスで没入し、オンライン授業に参加しているという。
国内外の建築設計コンペに積極的に参加する同事務所にとって、プレゼン資料のクオリティ向上は大きな課題の一つだ。CGチームの一員として建築パース作成を担当する金子 史弥氏がCGによる表現力向上を模索する中で出会ったのが、Adobe Substance 3Dだった。
「はじめて触れたのは、CG業界でSubstance 3Dが注目されはじめた5、6年前のことです。最初は建築パースで活用するのは難しいかなという印象もありましたが、実際に使ってみるとSubstance 3Dでなければできない表現が意外に多いことに気づき本格的な利用を開始しました」
設計部長 松長 知宏氏
プレゼン資料の品質向上にSubstance 3Dを採用
建築業界のCGパースのテクスチャ素材は、ダウンロードサービスを利用して入手することが一般的だ。金子氏も事務所が法人契約するダウンロードサイトを利用してきたが、入手できるテクスチャ素材は広く普及する建築材に限られる。
「一般的な建築材の使い方であれば、既存のマテリアル素材でクオリティは確保できます。しかしこれまでにない建築材の使い方や、テクスチャの微妙な違いをCGで表現しようとした場合、既存のダウンロードサービスでは大きな制約があります。そのような場合にSubstance 3Dを活用しています」(金子氏)
分かりやすい例がCGパースにおける木の表現だ。隈氏の仕事は木材への注目で知られるが、そのこだわりを表現する上でもSubstance 3Dは大きな役割を果たしている。一例が、青井阿蘇神社(熊本県人吉市)の2020年豪雨被害の復興プロジェクトの茅葺をイメージした屋根の表現だ。金子氏が手掛けたCGパースは、建築の価値を伝え、クラウドファンディングを成功に導く上で重要な役割を果たしている。
隈事務所ならではの素材感の表現に貢献
同事務所は、Substance 3D Designerと、Substance 3D Painterの2つを運用している。金子氏の場合、使い慣れた3Dモデリングソフトで作成したデータにSubstance 3D Painterでマテリアルを付加し、3DCGに取り込むというのが基本的な使い方になるという。
「操作自体は特に難しいと感じたことはありません。すでにCGの仕事をしている方であればすぐに覚えられると思います」(金子氏)
オリジナル家具のCG動画制作にも活用
Substance 3Dの利用は、建築パースだけではない。ルービックキューブ40周年を記念したイベントで隈氏がデザインした家具のCG動画制作でもSubstance 3Dが活用された。
「ハンガリー大使館から、ルービックキューブをモチーフにした家具の制作依頼を、展覧会のわずか2カ月前に受けました。実物の出展が不可能ではないかという中、3DCG動画を制作することにしたのですが、そこで大きな役割を果たしたのがSubstance 3Dでした。ご存じの通り、ルービックキューブは立方体の色を揃える立体パズルですが、隈のコンセプトは色の違いを木材の質感の違いで表現する点にありました。その微妙な違いを表現する上でSubstance 3Dは大きな役割を果たしています」(松長氏)
ステークホルダーの情報共有にも貢献
建築パースはプロジェクトの進捗状況に応じて制作されることが一般的だ。Substance 3Dは、多くの場合が計画が進み、実施設計に移行する直前になってから活用するのだという。
「建築は出来上がるまで実物を見ることは出来ません。意思決定のプロセスにおいてこういう素材をこう使いたいという設計者の意図が、リアリティを持って表現できることがSubstance 3Dの最大の魅力だと思います。隈事務所の仕事では、木材に限らず、素材のテクスチャ感が常に大きな意味を持ちます。そういう意味で、私たちのアプローチともとても相性がよいツールだと感じています」(松長氏)
Kengo Kuma & Associates
組織の成長に向け、CGスタッフ全員にライセンスを配付
現在、プレゼンテーション資料作成の際にチーム全体でInDesignなどCreative Cloudツールを活用しているが、合わせてCGパース制作に関わる全スタッフにSubstance 3Dライセンスを配付する予定だ。その狙いを松長氏はこう説明する。
「より高いクオリティを目指し、こだわりを持ってCG制作に取り組む上で、Substance 3Dはとても魅力的なツールです。日々の業務に追われる状況では、どうしても手慣れたツールに頼りがちですが、新しいツールに取り組む機会を提供することで個人はもちろん、組織としての成長にもつながると考えています」
隈事務所では、建築素材に限らず、ファブリックなど、多様な素材のマテリアル表現の基盤としての活用にも注目している。
「素材メーカーの見本のように、CGマテリアル素材のライブラリが欲しいと以前から考えていました。多様な質感にも対応するSubstance 3Dは、その基盤としても活用できるのではないかと期待しています。今後もCreative Coudのデザインツールの新たな表現技術やAdobe Stockサービスなどを柔軟に取り込み、より伝わりやすい魅力的な建築提案に取り組んでいきます」(松長氏)
※掲載された情報は、2022年3月現在のものです。