スポーツシューズの開発工程をバーチャル化。3Dデータをマーケティングにも活用

ミズノ株式会社

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ミズノ株式会社

設立

1906年

**所在地:**大阪市
従業員数: (連結)3,855名(2021年3月31日現在)

「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」を経営理念に、スポーツの価値を活用した商品やサービスの開発に取り組むミズノ株式会社。1906年に創業し、野球ボールなどの販売から始まった同社の歴史は、まさに日本のスポーツ振興の歴史だ。

導入製品:

Adobe Substance 3D Collection エンタープライズ版

導入メリット

実物サンプル作成数の削減

デジタルデータ活用促進

3Dによるイメージ共有

デザイン品質の向上

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課題

汎用性とクオリティが高い3Dデータでバーチャルサンプルを作りたい

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成果

・質の高いバーチャルサンプルの制作

・実物サンプル試作数を削減、環境負荷を低減

・試作工場とデザイナーが3Dイメージを共有、修正を少なく

・デザインインスピレーションを得られる

「汎用性が高く、高品質なバーチャルサンプルはマーケティング領域でも大きな意味を持ちます」

ミズノ株式会社 グローバルフットウエアプロダクト本部デザイン課 テクニカルデザイナー

中村 敬氏

シューズ開発の最前線では、数多くの実物サンプルを何度も試作し、商品検討を繰り返して商品決定を行う事が一般的だ。その試作工程のバーチャル化に取り組むミズノ株式会社は、Adobe Substance 3Dの活用を通じてバーチャルサンプルのクオリティ向上と、データの汎用性を高め、販促ツールへの活用も進めるなど、試作工程での活用にとどまらないバーチャルサンプルの活用を実現している。

バーチャルサンプル移行で実物サンプルの作成数削減と、リードタイムを短縮

スポーツの世界で磨かれてきたミズノのシューズは、今日、国内外のトップアスリートだけでなく、ライフスタイル・ビジネスシューズに至る幅広い領域で人々に愛されている。近年は、ある機能素材にフォーカスし、その機能的特長を全面に押し出したようなデザインのスポーツシューズに注目が集まっている。

「商品開発の過程で、シューズデザイナーは企画の内容に沿って顧客ターゲットの嗜好を加味しながら、シューズの持つ機能的な特長に対して、意匠付け、材料選定、カラー配色などのデザインを行います。他のデザインと違うところは、シューズというものがアパレルと工業製品の要素を併せ持った商品であり、使用素材の範囲の広さや、アパレル的なトレンドの影響を強く受けるところかと思います。また、機能性が特に重視されるシューズであれば、そのシューズの機能的な特長を強く外観に反映させる必要があります」(中村氏)

同社のシューズデザインは、毎年の春夏・秋冬シーズンの展示会を見据えて1年.1年半も前から時間を掛けて行われている。全世界に展開する同社の場合、アジア・欧州・北米など地域ごとのカラーの好みに対応する関係上、各シーズンの新商品のカラーバリエーションは多く、何百という数に及ぶという。

こうした中、デザインチームは3年ほど前からサンプル(試作品)のバーチャル移行に取り組んできた。

「シューズ開発は商品化への過程で何度も実物サンプルの試作を繰り返しますが、試作にかかる時間と労力の削減は大きな課題でした。また、試作時の廃棄材や、環境への負荷といったアパレル業界が抱える課題に対しての貢献、シューズデザイナーの新しいインスピレーションのため3DCGによるバーチャルサンプルに着目したのです。そうしてバーチャルサンプルの運用とデザインでの3D技術活用を始めたのですが、次第に販促ツールとしての活用への需要も大きくなりました。しかし3DCGツールで細かいディテールまで作りこんだデータはモデリングに時間がかかるのに加え、どうしてもハイポリゴンになってしまうことから、3Dデータの汎用性が低くなってしまうという問題がありました。3Dデータの汎用性を高めるためにはモデリングをできるだけ簡素化し、テクスチャーワークでのディテールの反映が重要と感じました」(中村氏)

こうして、同社は高品質な3Dデータの制作から利活用までを可能にするAdobe Substance 3Dに注目した。

汎用性とクオリティが高い3Dデータを実現

「高品質なテクスチャーの作成ができるツールとして思い浮かんだものがSubstance 3Dです。Substance 3Dはゲーム業界などの活用紹介動画を見て事前に知っていました。3Dモデル上に手描きで色を塗るようにマテリアルを塗り、凹凸を表現できるSubstance 3D Painterは、バーチャルサンプルのクオリティ向上のためだけでなく、新しいデザインを考える際のツールとしての親和性も非常に高いと思いました」(中村氏)

バーチャルサンプルの品質向上を実現

Adobe Substance 3Dの導入効果としてまず挙げられるのが、バーチャルサンプルの品質向上である。バーチャルサンプル制作を担う岡田氏はこう説明する。

「シューズのアッパーのような柔らかい材料に発生する、ステッチをした時の材料のつぶれ、クッション材などの皺をSubstance 3D Painter上でSubstance 3D samplerで作成したメッシュや人工皮革等のマテリアルの上にディテール情報を描きこみ、最終のテクスチャーを仕上げています。モデリングだけで形状を表現していた以前に比べると、精度の高いバーチャルサンプルが作成できていると思います。シューズのテクスチャー作成にかかわる基本的なSubstance Painterの操作は、1カ月もかからず習得できました」

実際の生地見本をスキャンし、Substance 3D Samplerで3Dマテリアルへ簡単に変換が可能。現在同社のバーチャルサンプルはほぼすべてSubstance 3Dを使用してテクスチャー作成が行われている。

実物サンプル作成数削減に貢献

バーチャルサンプルの品質向上により、実物サンプルの作成数を確実に削減できたことも効果の一つだ。

「実物サンプルは商品のデザイン検討だけでなく、アスリートへの着用感や機能性の評価用等多岐に及びます。すべての実物サンプルの置き換えはできませんが、これまで作成していた実物サンプルのどの部分までバーチャルサンプルに置き換えられるかは今も検討中です。少なくともカラーバリエーションに関してはすべてを作成しなくてもバーチャルサンプルで対応できるという社内での意識は確実に定着しつつあります」(中村氏)

試作工場とデザイナーが3Dでイメージ共有

さらに3D移行によるサンプル制作指示書の品質向上も注目したい。ランニングシューズのデザインを担当する津野田氏はこう説明する。

「これまではシューズを試作する際に、2Dの指示書を作成して試作工場に形状を伝えていましたが、こちらでの意図と工場の作成した試作では形状のイメージにずれが生じることも多く、修正を何度も繰り返していました。しかし、デザイン指示の段階から3Dのモデルで工場にアウトプットすることで形状のイメージのずれがなくなり、修正の手戻りは確実に減っています。また、Substance 3D Designerのマテリアル生成プロセスを活用することでデザイナーのイメージの範疇を超えるアルゴリズミックな造形も可能になり、デザインインスピレーションを得るうえでも大きな役割を果たしています」

中村 敬氏

グローバルフットウエアプロダクト本部 デザイン課 テクニカルデザイナー

中村 敬氏

岡田 育子氏

グローバルフットウエアプロダクト本部デザイン課 フットウエアデザイナー

岡田 育子氏

津野田 あゆり氏

グローバルフットウエアプロダクト本部デザイン課 フットウエアデザイナー

津野田 あゆり氏

マーケティングへの3Dデータ活用を促進

Adobe Substance 3Dが実現した汎用性とクオリティが高い3Dデータは、すでに商品検討プロセスの効率化や、デジタルカタログの360°ビューに応用するなどさまざまな領域で活用されている。

「バーチャルサンプルはVRやAR技術を使った、新しい消費者とのタッチポイントづくりにも大きな可能性があると考えています。今後は当社のスポーツ用具部門、アパレル部門へも技術の水平展開を進め、より消費者の方々に興味をもって触れていただけるようなコンテンツを生み出して行ければと思っています。私はプロダクトデザイナーとして、Substance 3Dがデザインツールとしてゼロから何かを創作する人にとって表現の幅を広げる面白いクリエイティブツールになると思いますね」(中村氏)

また、バーチャルサンプルにとどまらず、Adobe Substance 3Dの活用を進めていくことで資源のムダをなくし、同社が掲げる「2050年 カーボンニュートラル実現」も目指す。

※掲載された情報は、2022年2月現在のものです。

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