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「女子総合大学」として進化発展を続けデジタルツールを教務・校務に最大活用

武庫川女子大学

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創業

1939年

所在地:兵庫県

https://www.mukogawa-u.ac.jp

導入製品:

課題

「女子総合大学」としての新たなポジションの創出に向けて教育DXを推進し、デジタルツールを活用した大学管理業務の効率化と学生の学習環境の充実を図る

成果

・個別に行っていたライセンス契約を全学での包括契約にし、管理の煩雑さを解決

・学生オプションの導入により、学生は自身のPCでツール活用が可能に

・Azure Active Directoryとの連携でアカウント配付を効率化

・学部学科によらずデジタルツールを活用できる学習環境を実現

「教育DXを推進し、大学業務の効率化を実現する上で、包括ライセンス契約は意義ある選択です」

東條 弘氏

事務局 総合情報システム部 部長情報教育研究センター次長 兼務 工学博士

DXを推進し、「女子総合大学」というポジション確立に取り組む

2024 年に創立85 周年を迎える武庫川学院が、100 周年に向けたプロジェクト「MUKOJO ACTION」を始動したのは2018 年のことだ。「女子総合大学」という新たなポジションの創出に向け、「教育システムの抜本的改革」「研究ブランド力の育成」「社会貢献・社会活躍の推進」「DX の推進」「開かれたキャンパスの確立」に向けた取り組みを推進している。

事務局 総合情報システム部 部長 情報教育研究センター 次長 兼務 工学博士の東條 弘氏は、同学の取り組みをこう説明する。

「附属中学校・高等学校、附属幼稚園、附属保育園まで含め、武庫川学院全体が100 周年という節目に向けて大きく変わろうとする中、特に重要な役割を担うことが期待されるのがICT や教育DX に関する取り組みです。2021 年度の後期には、大学全体で「データリテラシー・AI の基礎」プログラムを導入し、これからの時代に必要な力を全学生が身に付けるカリキュラムを取り入れました。私が所属する総合情報システム部は、MUKOJO Vision 実現のため2020 年に創設され、学院全体の業務と教育のDX 推進を支援する役割を担っています」

事務局 総合情報システム部 部長情報教育研究センター次長 兼務 工学博士
東條 弘 氏

包括ライセンス契約で管理を一元化し、利便性を向上

総合情報システム部のサポート対象は学院全体に及び、教職員だけでも約1,000人、学生・生徒数は1万人を超える。全ユーザーにICT環境を確実に提供する上で課題となったのは、ライセンス管理の煩雑さだった。

「本学では以前から教育と業務の双方でアドビ製品を利用していますが、ライセンス契約は学部や部署別、またPC教室やスタジオを新設するたびに、様々なSIerを経由して行っていました。そのため、ライセンス管理が煩雑化し、このままでは管理業務の破綻は避けられない状況になっていました」(東條氏)

その解決に向けて東條氏が注目したのが、包括ライセンス契約だった。管理の省力化に加え、学生の学校配付アカウントとライセンスを紐づけることで、学生のPCでのアドビ製品の利用が可能になることもメリットの一つだった。

「大学の承認を得る上では当然、費用対効果が重要なポイントになります。これまで複数のSIerを通して行ってきたライセンス契約と費用を再度洗い出し、アドビさんに相談したところ、包括ライセンス契約にすれば以前とほぼ同様のコストで運用できることがわかりました。それにより、一気に移行に弾みがつきました」(東條氏)

現在、同学は学内PCには共有デバイスライセンスを導入し、全学で常に最新バージョンのツールを利用して課題や業務に取り組める環境が整っている。特にICT活用が進む学部の学生には、学生オプションを割り当て、学生個人のPCで自宅でも学内同様に課題に取り組める環境を実現している。

建築学部 建築学科 准教授
天畠 秀秋 氏

建築学部 建築学科 准教授
猪股 圭佑 氏

課題に取り組む時間や場所の制約を学生オプションが解決

包括ライセンス契約は、教育と管理業務の双方で大きな効果を生み出している。学部生の8割以上が大学院に進学し、大手設計事務所や大手建設会社設計部門への就職者数で国公立のトップ校と肩を並べる建築学部では、手描きによる製図やスケッチを重視しながらも、アドビ製品の教育への活用を積極的に推進している。その狙いを建築学部 建築学科 准教授の天畠 秀秋氏はこう説明する。

「プレゼンテーションにおいてはデジタルツールは欠かせません。本学部では、1年次はPhotoshopによる模型写真の歪みの補正、明度や解像度の調整、Illustratorによる模型写真のレイアウト作成と印刷といった基本の操作を学びます。2年次以降は設計演習が本格化するので、課題をこなす中で必要な際にデジタルツールを活用しながら習熟していきます。4年次の卒業設計ではIllustratorによるA1図面の制作が出来るようになり、さらに大学院修士1年次には、採用試験で必要になるポートフォリオ(作品集)をIllustratorで制作する学生も多数います。AfterEffectsなども使って動画の中に自分が設計した建物の3Dモデルを合成するといった場面も出てきます」

包括ライセンス契約の効果として天畠氏が特に高く評価するのは、学生オプションの配付により、学生が時間や場所の制約を受けずに作業を続けられるようになった点だ。

「建築を学ぶ上では、集中的に課題に取り組む時間が非常に重要です。しかしながら、安全面への配慮から夜9時45分にはキャンパスから退出しなければならず、以前は作業の中断を余儀なくされていました。自宅でも同等のPC環境で作業を行えるようになったことは、学習効果と成果の面で大きな意義があります」(天畠氏)

建築学部では、他にも多様なアドビ製品を利用している。建築史が専門の建築学部 建築学科 准教授の猪股 圭佑氏はこう説明する。

「私自身は論文執筆をInDesignで行っています。Power PointやWordと比較して、文章と写真を適切にレイアウトできることがその理由です。また上甲子園キャンパスにある本学部の校舎で国の登録有形文化財にも指定される『甲子園会館』を題材として、2022年に兵庫県立美術館で開催した展示会の案内リーフレットやポスターは学生がIllustratorで作成したものです」

アドビ製品を課題の制作ツールとして使う学生の評価も上々だ。

「大学の授業で学んだことを改めて整理し復習する時や、課題の続きに取り組む際などに、自宅PCにインストールしたアドビ製品を活用しています。最近、Illustratorによる影の入れ方を学びましたが、設計者がイメージする暮らし方を分かりやすく伝える上でも有効な表現ですね」(建築学部 建築学科 3年 牛田 響子さん)

「地形と建物の関係や建物の利用状況を図式化して表現するダイアグラムの作成に、PhotoshopやIllustratorを利用しています。自宅でもアドビ製品が使えるため、場所を問わず集中して課題に取り組めるようになりました。将来的にはアドビの動画ツールも使いこなせるようになり、様々な表現手法を身に付けたいと思います」(建築学部 建築学科 3年 西田 奈生さん)

建築学部 建築学科 3 年

牛田 響子さん(左) 西田 奈生さん(右)

国の登録有形文化財に登録された甲子園会館(旧甲子園ホテル)の中にある建築学科1 年生のスタジオ。1 人1 台専用の製図机とパソコンを配備している

建築学科3 年生の課題「歴史的都市に建つ宿泊施設」の発表風景。ダイアグラム、模型写真、CG パースの制作時にアドビの製品を活用している

文学作品のアダプテーションにPremiere ProやAfter Effectsを活用

文学部 日本語日本文学科の工藤ゼミでは、文学作品を現代的かつ創造的に再解釈して映像作品を完成させる演習にアドビ製品を活用。担当する専任講師の工藤 彰氏はゼミの狙いをこう説明する。

「文学研究とメディア表現を往還するアダプテーションを通して、文学作品の精緻な読解や、今日にも通じる主題や問題の探究を行うこと、またメディア変換の過程から映像表現の特性の理解を深め、必要な撮影や編集のスキルを習得することが演習の目的です。当ゼミでは、文学作品を阪神界隈の女子大生の物語として再解釈し、グループで映像を制作、発表しています。この作業を通じて、学生たちは原作に自分のフィルターを通しながら、作品へのコミットを深められていると感じています」

4 ~ 6 人のグループで行われる3 年次の共同制作の脚本は、各人が脚本を無記名で発表し、参加したい作品に投票することで選ばれる。撮影はスマートフォンで行い、編集作業はPremiere Pro やAfter Effects などを活用している。工藤ゼミに参加する学生は、3 年次にPremiere Pro やAfter Effects の操作を学ぶ別の講義を必修で受けるため、一通りの操作方法はそこで習得したうえで、ゼミの制作に取り組める。

「簡単な動画編集ならスマホアプリでもできないことはありませんが、テンプレートに沿った編集しかできないという機能の制約があり、表現の幅が狭くなります。しかし、Premiere Pro のエフェクトによる多彩な表現手法や、After Effects のモーション・グラフィックを用いることで、オープニングやエンディングなどに多様な表現が無限に広がり、自分のアイデアの通りにクオリティの高い作品を作れるのがアドビ製品の強みです」(工藤氏)

アドビ製品の独学のしやすさという側面も、映像作品のクオリティ向上に影響を与えている。

「アドビ製品はユーザー数や情報が他の編集ツールと比べて圧倒的に多いので、学生が分からないことや知りたいことを自分でネット上で調べられるという点でも、使用するメリットは大きいと思います。そのためか、操作方法に関して学生から質問されることは少ないですね。3 年次は、大学での学習以外に就職活動などを各自進めるため、ある程度時間の制約がある中で映像作品を完成させなければいけませんが、その限られた制作期間の中でも、学生たちは自ら学習してクオリティの高い作品を作り上げています。ゼミでの制作を通して、学生のクリエイティブ能力は確実に向上していると思いますね」(工藤氏)

卒業後の進路は多様だが、どのような業界でも、就職面接の際に特色のあるゼミ活動が話題になるという。仲間と共同で作業を進める力や、発想力が実社会でも役立っている。

文学部 日本語日本文学科 専任講師
工藤 彰 氏

主人公の背後に立つ幽霊のカット(工藤ゼミ作品「ムジカの約束」より)
工藤ゼミ作品公開先:KUDO SEMINAR

ペーパーレス、コンテンツ内製化など校務の業務改善にもつながる

職員の業務でも、ペーパレスやコンテンツ内製化など、業務改善にアドビ製品の活用が進んでいる。

「以前は、部長や課長級の職員約40 人が参加する定例会議はすべて紙ベースで行われ、提案や報告の都度、40 部以上の書類を印刷する必要がありました。全職員がAcrobat Pro を利用できるようになったことで資料を共有しやすくなり、今ではデジタルベースの会議が定着しました。今回の導入は、ペーパーレス化の促進だけに留まらず、文書の結合がスムーズに行える機能などによる業務の効率化や、パスワードによる暗号化など、セキュリティ面の意識向上にもつながっています」(東條氏)

また、大学の広報活動の一環として、Premiere Pro やInDesign によるコンテンツ作成の内製化も注目したいポイントだ。同学は講堂に映像機器を整備し、コロナ禍中の入学式や卒業式などのイベントのライブ配信を実施してきたが、イベント後の映像編集にPremiere Proを活用している。

「コロナ禍で会場に入れなかった父母等の方が視聴できるよう卒業式の様子を映像配信したところ、現地よりも配信の方が全体の様子がよく見えて良かったと好評でした。内製化をきっかけに、外部委託のコストカットだけでなく、総合情報システム部のスキルアップという目的も果たせています」(東條氏)

アドビ製品を活用し、事務スタッフの人材開発にも取り組む

教育の質的向上と大学事務の効率化の両面で、アドビ製品への期待は大きい。

「設計図面やスケッチに着彩する用途でFresco に注目しています。スケッチや図面を制作する経験を重要視する建築学部において、デジタルなのにアナログ感のある表現ができるFresco は、アイデアスケッチやプレゼンテーションなどで大いに活用できそうだと見込んでいます」(天畠氏)

「今後、アダプテーション作品の制作過程で、学生同士によるAdobe Creative Cloudを通した共同編集を実現していきたいです。デジタル時代のコミュニケーション能力の醸成にも大きな役割を果たすと考えています」(工藤氏)

「各種マニュアルの作成も内製化して、InDesign を活用したいと考えています。最初は難しそうに思っても、慣れてしまえばプロも利用するデジタルツールの活用はそれほど難しいことではありません。内製化は職員の人材開発にもつながると考えています」(東條氏)

全学生と教職員がアドビ製品をどこでも自由に使用できる環境を整えた武庫川女子大学は、クリエイティブな活動を今後さらに発展させ、「MUKOJO ACTION」の実現に向けた取り組みを推し進めていく方針だ。

※掲載された情報は、2023 年6月現在のものです。

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