アナログとデジタルを掛け合わせ、学生に寄り添った新卒採用マーケティングを実現
株式会社NTTデータ
課題
採用活動におけるコミュニケーションとリレーション強化
成果
一人ひとりの興味・関心に合ったコミュニケーションを実現
2018年5月に創立30周年を迎え、NTTグループの中でソフトウェア開発を中心とした事業を行なっているNTTデータ。
「将来にわたるビジネス革新を、技術の活用により、ともに実現するパートナーになる」という思いが込められた、新たなグループビジョン「Trusted Global Innovator」のもと、この10年にわたって推し進めてきたグローバル化により、売上高2兆円のうち海外売上高比率が約50%を占めるという、日本を代表するグローバル企業へと成長しています。
そんな同社では新卒採用活動においてAdobe Marketo Engageを活用し、マーケティングの概念を採用活動に適用した新たな取り組みにチャレンジされています。
今回はAdobe Marketo Engageを活用した採用マーケティングに取り組む意義や活用法などについて、株式会社NTTデータ 人事本部 人事統括部 採用担当 部長 髭 直樹氏にお話を伺いました。
多様化する採用活動を制するためにはマーケティングが必要だ
経団連が今年9月に採用時期を定めた就活ルールを2021年春の入社組から廃止する方針を打ち出したほか、労働人口の減少や働き方の多様化など、採用を取り巻く環境が激変している昨今。人事獲得競争が激化するなかで、"従来のように一律の情報提供を行っているだけで良いものだろうか"と疑問を持った髭氏は、候補者の学生一人ひとりとのコミュニケーションやリレーションづくりを強化したいと考えるようになったと言います。
「文系の学生には『文系でもいけるよ』『未経験でも大丈夫だよ』というのは正しいアプローチの仕方ですが、なかには理系でプログラミングの経験があったり、ある程度の知識を持っている学生もいたりするわけで、彼らに対しても文系の学生に対するのと同じようなメッセージを発信していては、『自分が活躍できる場所ではないのかな』と受け止められかねません。
そもそもNTTデータはBtoBのビジネスをしていますが、そのなかで採用は唯一のBtoCの仕事。BtoCのビジネスを成立させるためには、マーケティングが必要だなと考えたんです」(髭氏)
一方で、毎年、新卒で400名超を採用しており、新卒の人気ランキングでも上位につけているNTTデータ。一般的なBtoB企業に比べ、すでに認知度は高いと言えます。しかし、ITビジネスのサービス化が進むなか、情報システムを勉強したからといって、必ずしもIT業界を志望する時代ではなくなっていることに、課題を感じていたのだそう。
「事業ポートフォリオもグローバル化が進み、多様なバックボーンを持った人材を獲得する必要性が高まっていることもあり、これまでのように"自社のタイミングで情報を発信し、学生が取りに来てくれるのを待つ"という受け身の姿勢ではなく、こちらから能動的な情報発信をすることで、学生の視野を広げられるようなアプローチを積極的に行い、『攻めの採用』に転じたいと思っていました。
"採用=マーケティング"と言うと、なんだか偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、要は学生一人ひとりとのコミュニケーションやリレーションづくりを強化したいということだったんです」(髭氏)
属性×就活熱で学生を多面的に捉えたアプローチを
学生の就活期間は長く、誰もが同じタイミングでスタートするわけではありません。今後、就活ルールが変われば、ますますその傾向は強まるはずです。
この時流の変化をいち早くとらえた髭氏は、候補者が志向する働き方や職種などを理解し、オンライン・オフラインを組み合わせながら、一人ひとりの興味・関心に合ったコミュニケーションを実現する「採用マーケティング」に向けて、Adobe Marketo Engageを導入。
まず行ったのは、文系or理系・男or女・首都圏or地方or留学生といった属性情報に加え、自由応募or推薦orインターンなどの流入経路を掛け合わせたセグメントによって、認知度やリーチの状況に合わせたヒートマップを作成することでした。
次に、"就活熱=就活のスタート時期に応じて学生が保有している情報量"によって、以下の5つのタイプに分けたと言います。
タイプ1:インターンから継続組
タイプ2:年明け前後から興味組
タイプ3:3月から始めた組
タイプ4:4月と5月に始めた組
タイプ5:他業界内々定組
「同じ時期で切り取ったとしても、スタートした時期や彼らの心理状態によって、企業に対して求めている情報のレベル感がまったく違います。それぞれのタイプに合わせたストーリーを組み立てておくことで、もっと学生に寄り添った情報提供ができるのではないかと考えました」(髭氏)
現在、取り組みを進めているのは、"インターンに来た学生の興味・関心を高く維持できるよう、3月の広報解禁日までのタッチポイントをいかにつくっていくか"、そして"インターンに来られなかった学生の興味・関心を下げることなく、エントリーにつなげるか"という2つの軸で、事業やプロジェクトの説明・働いている人の紹介・会社の制度の案内といった流れでストーリーをつくることです。
「もちろんこれまでも採用に関する情報発信はしていましたが、"誰にどのくらいリーチできているか"とか、"彼らのアクションにどのくらいつながったのか"といったことは、ほとんどわかりませんでした。しかし、Adobe Marketo Engageを使うことで、開封率やクリック率などから、"どのタイプにはどんな内容が響いたか"などを視覚的に把握できるようになったことが、まずは大きな第一歩だと思っています」(髭氏)
デジタルを強化するからこそアナログも大事にする
今年の夏にインターンシップを刷新し、4日間をかけてリアルなNTTデータの仕事を体験してもらったところ、実際に講師として入った髭氏は大きな手応えを感じ、学生からも90%を超える満足の声があったと言います。
しかし、そんな彼らにAdobe Marketo Engageからメールを送ったところ、予想に反して、開封してもクリックしない人が多かったのだそう。
「これまでの人事は、学生のアンケート結果が良かったら、そこで満足して終わっていたと思うのですが、学生の興味・関心を維持するのは、こんなにも難しいのかと痛感させられました。
『インターンの満足度が高かったら、うちにエントリーしてくれる』と、なんとなく思っていましたが、Adobe Marketo Engageで可視化してみること、我々の認識と実際の学生の興味・関心の間にあるギャップを捉えることができたのは、とても大きな気付きになりました。
このように、仮説を実行して、結果から気付きを得ることで、そこに対して次の一手を打っていくというサイクルを回すことが大切なのだと思います」(髭氏)
Adobe Marketo Engageに見いだす意義は、コミュニケーション・リレーション・ナーチャリングの3つだと語る髭氏。そのために具体的に何をすればいいかということについては、ボランティアの内定者や若手社員も巻き込みながら、よりリアルなセグメンテーションやコンテンツの作成につなげていきたいのだと言います。
「採用という形で学生個人と接点を持つことは、入口に過ぎません。ホームページ・Webセミナー・Twitterといったデジタルの接点を持てている人を、インターン・説明会・OB訪問といったアナログな接点に結びつける、あるいは逆にオフラインで接点を持てている人との関係性を、オンラインで発展させるといったように、デジタルとアナログ、オンラインとオフラインを有機的に結合させることで、採用活動を通じた育成に、今後も力を入れていきたいです」(髭氏)