電子サインの導入で、ビジネススピードの向上とコンプライアンス強化を実現

 

パーソルホールディングス株式会社

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創業

2008

Employees: 50,774
東京
www.persol-group.co.jp

数日かかっていた注文書、請書、契約書などの処理を数時間までに短縮

導入製品:

課題

紙を使ったアナログプロセスによる契約業務の非効率性

文書管理不備に関するリスク

人的負担、管理コストの増大

多様な働き方への対応

成果

業務の効率化によるビジネススピードの向上

印紙税によるコストとリスクを削減

プロセスの可視化、および記録文書の管理レベル向上によるコンプライアンス強化

ペーパーレス化のさらなる推進

パーソルグループの経営支援やグループ一体経営の推進を行うパーソルホールディング株式会社。同社では、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、様々なデジタル変革に取り組んでいる。その施策の一つとして、同社およびグループ会社5社(パーソルキャリア株式会社ミイダス事業およびBRS事業、パーソルファシリティマネジメント株式会社、パーソルテクノロジースタッフ株式会社、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社、パーソルテンプスタッフ株式会社)の合計6社、7事業を先行会社として、アドビの電子サインソリューションである「Adobe Sign」を導入。現在、海外子会社への展開も計画している。従来紙で行われていた取引先との契約や発注業務および、そのワークフロー履歴管理を電子化し、業務効率の向上とコンプライアンスの強化を実現した。Adobe Sign導入までの道のりと、文書業務の電子化によって得られた成果について、同社取締役(常勤監査等委員)の小澤 稔弘氏およびグループIT本部 BITA部 部長の馬場 優子 氏に話を伺った。

 

アナログからの脱却

 

パーソルグループでは事業全体を通して、見積書や発注書、契約書といった膨大な数の文書がやり取りされている。その多くが紙を使って部門別に処理されており、業務効率やコスト、コンプライアンスなどの面で様々な課題を残していた。中でも契約業務は、印刷、製本、押印、送付など細かいオペレーションが多く、時間と手間がかかるうえ、管理上のリスクも発生しやすいと、小澤氏は指摘する。

「最近ではオープンイノベーションの取り組みとして、様々な会社様と提携し、新しいビジネスを展開する機会が非常に増えています。その際に、機密保持契約(NDA)を結ぶのですが、これを紙の書類でやり取りしていると何週間もかかり、なかなか前に進めることができません。契約書によっては印紙税などのコストもかかりますし、正しい印紙が貼られていない場合は追徴課税される恐れもあります。また、書類の管理も煩雑になりがちで、契約締結に関する正式な記録文書が双方で保管されていないということも起こり得ます」

ビジネスにおけるIT活用が進む中で、依然として大量の紙を処理するアナログ業務に時間を費やしていることに問題意識を持ち、グループ全体で積極的に文書業務を電子化する方針を固めた。

 

電子サイン導入で目指す姿

 

文書業務の電子化を推めるうえで、一番の障壁となるのが、グループ会社外との署名を必要とする契約書のやり取りだ。一般的に署名には紙と印鑑が用いられるため、電子化が難しいとされている。この印鑑に置き換わるものとして、同社では電子サインの導入が検討された。

電子サイン導入にあたり、同社は3つのステップを踏んだ。まず、あらかじめ導入後に目指す姿の設定、次に適用業務の選定、最後に効果の試算だ。目指す姿の設定では、業務効率の向上とコスト削減の他に、コンプライアンスリスクの低減、記録文書に関する管理レベルの向上、そしてペーパーレス化による多様な働き方の実現などが挙げられた。

「昨今、『働き方改革』が叫ばれている中で、なんとか紙のプロセスをなくしたいと。これがないと多様な働き方の大前提となるインフラが実現できません。紙があるから会社に行かなければならない、ではなく、全てがデジタルで完結するビジネスプロセスを展開することが、多様な働き方に対応することだと思います」(小澤氏)

 

電子サイン適用領域の選定と、法律の壁

 

導入ステップの中で、最も苦労したのが適用業務の選定であった。守秘義務契約、注文書、請求書、個別業務委託契約、雇用契約書、取締役会議議事録などへの適用を検討したが、すべてを対象にはできなかったという。

「業務に関連する多種多様な法令があり、文書の取り扱いについて整理して理解するだけでも大変な労力を伴いました。例えば、雇用契約では労働条件通知は書面での通知が必要とされ、単にAdobe Signに書面を載せるだけでは電子化は実現できないことがわかりました。また、最も大きな効果が期待される派遣契約書についても、法令の解釈で曖昧な部分が多く、すぐには踏み込めませんでした」(馬場氏)

このように、法令上の様々な要素を鑑み、最終的には業務委託契約をはじめとする社外取引に関する契約業務の電子化から徐々に始めていく形となった。取引に関する契約については電子帳簿保存法が関連しているが、すでに多くの企業が取り組んでいる実績があったことから、比較的安心して始めることができた。


「やはり信頼性の部分が一番大きかったですね。今後は海外に事業を拡張していく我々にとって、グローバルで通用するサービスであるというのも重要なポイントでした」

取締役(常勤監査等委員) 小澤 稔弘氏


 

 

印紙代だけでも年間6000万円の節約効果が期待

 

同社が行なった効果の試算では、電子サインを導入した場合、グループ全体で年間約6,000万円分の印紙税を削減できることになる。該当する注文書はグループ全体で年間6万件、またグループの主幹業務である派遣事業においては年間約45万件以上の個別派遣契約書が処理されている。これらすべてを電子化することで、かなり大規模な効果が見込める。

 

3つのトライアルから得た電子サイン導入の成果

 

同社は2017年9月に、アドビの電子サインソリューションであるAdobe Signの導入を決定した。採用の理由について、小澤氏は次のように話す。

「やはり信頼性の部分が一番大きかったですね。電子文書のデファクトスタンダードであるPDFの開発元ということもあり安心感があります。今後は海外に事業を拡張していく我々にとって、グローバルで通用するサービスであるというのも重要なポイントでした」

Adobe Sign導入後、グループ全体への展開を目指し、トライアルプロジェクトをパーソルホールディングス株式会社およびグループ企業で行なった。

パーソルホールディングス株式会社でのトライアルでは、契約書や帳票など多様な文書を扱い、かつ様々な部署が関連する業務フローにおいて、どの程度のスピードアップやコスト削減が期待できるかを検証している。

2017年7月に新設されたパーソルファシリティマネジメント株式会社では、適用可能なプロセスは全て電子サイン前提での標準プロセスに変更し、具体的な課題の抽出やベストプラクティスの方向性を見出している。新設されて間もないということもあり、導入は非常にスムーズに行われ、成果もすぐに表れた。

「今まで数日かかっていた注文書、請書、契約書などの処理が1日もかからず数時間までに短縮できました。また、プロセスがシンプルになったことで業務が非常に簡単になり、発注もすぐに完了し、納品が早まったなどの意見が聞かれるようになりました」(馬場氏)

パーソルキャリア株式会社は、転職希望者向けのダイレクトリクルーティングサービス「ミイダス」を運営しており、その契約業務にAdobe Signを使い、サービスの完全自動化を目指している。

「ミイダスは、サービスの申し込み完了後、候補者検索、面接オファー、面接スケジュールの確定までをすべて自動で行うシステムになっています。しかしSalesforceを利用した契約管理システムでは、最後の契約書の取り交わし部分は紙で行い、人力で処理していたため、ステータス管理上の課題がありました。そこで、APIを通じてAdobe SignとSalesforceとを連携させ、フロントとバックのシステムを完全自動化することで、従来7分かかっていた契約書の作成時間が10秒に短縮でき、また1件あたり15分かかっていた契約書管理コストがほぼゼロになりました」(馬場氏)

これら3社はすでに本稼動に入っており、また、派遣・BPOのパーソルテンプスタッフ株式会社やパーソルプロセス&テクノロジー株式会社も本格的な利用開始に向けて現在準備を進める一方で、海外子会社への展開も計画している。


「APIを通じてAdobe SignとSalesforceとを連携させ、フロントとバックのシステムを完全自動化することで、従来7分かかっていた契約書の作成時間が10秒に短縮でき、また1件あたり15分かかっていた契約書管理コストがほぼゼロになりました」

グループIT本部 BITA部 部長 馬場 優子


 

 

その先のデジタル変革に向けて

 

電子サインの導入により、グループが目指すデジタル変換を大きく前進させた同社。ただ、まだまだ乗り越えなくてはならない壁は多くあると、馬場氏は言う。

「実際に電子サインを導入してみて、課題も色々と見えてきました。関連法令が非常に多く複雑なことや、電子サインシステムを導入するだけでは業務移行が完了できないこと。また、取引先や社内理解の醸成が非常に重要であることを痛感しました。一方で、そうした苦労を上回る成果も出ています。業務効率の向上やコスト削減以外にも、プロセスの可視化や重要な合意事項を容易に法的価値のある記録として残せる点などは、想定外のメリットでした。良い面も悪い面も、やってみてわかったこと、それが大きな価値になったと思います」

最後に、電子サインの今後のあり方について、小澤氏は次のように提言する。

「電子サインは簡単で便利ではありますが、取引上の契約には必ず相手がいます。せっかく電子サインを導入しても、相手がノーと言えば成立しません。特に日本の企業は既存のプロセスを変えたがらない傾向にあります。そこを1つ1つ説得していくのは、かなりの時間と労力が要ります。それならば、電子サインのコンソーシアムを設立し、その中で電子サインを承認する者同士がスムーズに取引を始められるような仕組みを作るべきです。それをデファクト化することで、電子サインの普及も一気に進み、社会全体の生産向上につながると思います」

 

 

※掲載された情報は2018年2月時点のものです。

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