

課題
コロナ禍により社内外両面で対人コミュニケーションに様々な制約が生じた。
成果
・配信リードタイムの削減
・表現力の向上
・制作コストの削減
・より自由な表現の実現
「Premiere Proはカット編集やノイズ除去が簡単にできるので、セミナー動画のアーカイブ公開がスピーディになりました」
柳田 匡世 氏
営業本部 営業企画部 法人マーケティング推進室
人材紹介サービスや転職・就職支援を手掛けるパーソルホールディングス株式会社は、コロナ禍を受け、動画制作・配信の内製化に向けたプロジェクトを開始。6時間にわたるオンラインリアル配信のテロップ制作までも含め、完全な内製化を実現した。また静止画や文字による表現に限界を感じていた8名のプロジェクトメンバーによる新たな表現手法は、社内でも大きな注目を集めている。
コロナ禍を背景に動画内製化に注力
パーソルホールディングス株式会社は、人材派遣や転職など、求職者と企業を結び付ける人材サービスを主軸とするグループ企業だ。1973年の創業以来、サービスラインアップの拡充と働く個人の生涯に寄り添い続ける取り組みを続け、性別や年齢、国境を越え、あらゆる人々が「はたらいて、笑おう。」を実感できることを目指し事業を展開している。
オフラインコミュニケーションを軸に働き手と企業の双方への働きかけを行ってきた同社にとって、コロナ禍による対人コミュニケーションへのさまざまな制約は、これまでの取り組みの見直しを余儀なくされることにつながった。経営戦略本部グループ経営企画部部長の工藤大助氏は「コロナ禍で先が見えない中、今当社に何ができるかを考えたとき真っ先に思い浮かんだのが動画への挑戦でした。以前から静止画やテキストベースの表現には、エモーショナルな面での制約が多いと感じていたことが大きな理由です」と当時を振り返る。
そこで、工藤氏は動画制作・編集、配信の内製化に向けたプロジェクトを発足。映像制作コンサルティング会社の協力を得て、利用機会が減少した会議室を配信用のスタジオに改装すると共に動画編集ツールとしてPremiere Proを導入し、ハード・ソフト両面での環境整備を進めた。
スピーディなコンテンツ配信と内製化のためPremiere Proを導入
プロジェクトメンバーは、コンサルティング会社が提供する動画制作講座への参加者を募ることで対応した。手を挙げた有志は8名。その背景には、業務において各人が直面していた課題があった。法人向け広報業務を担当する柳田匡世氏は「コロナ禍でセミナーやイベントのオンライン化が進む中、その品質を高めてコンテンツとして残したいと考えていました。セミナー動画配信は以前から取り組んできましたが、制作会社に依頼すると公開するまでに1カ月ほどかかります。多くの人が最新の情報を求める中、よりスピーディにコンテンツ配信を行うため、自身で動画制作のスキルを身に付けたかったのです」と語る。
社内のインナーコミュニケーションを担う岡村知也氏はそれとは異なる課題を抱えていたという。「イントラ内のコミュニケーションは文章化が一般的ですが、その過程でこぼれおちる情報が少なくありません。例えば、社長メッセージを文章化すると、細かな言動や場の雰囲気が伝わらないものになりがちです。以前から動画に注目していましたが、その一方でインナーコミュニケーションには常に一つのジレンマがあります。それはチャレンジが可能な領域である一方、業績への貢献が直接的に評価できないため、予算確保が難しいという点です。内製化によりコストをかけずにチャレンジできることは、こうしたジレンマを解決する手段になると考えました」(岡村氏)
配信後のアーカイブ公開を短期間で実現
動画内製化の取り組みを開始した後、同社が配信したセミナー動画はすでに20 本以上に及ぶ。
「セミナー動画については、配信後冒頭や終了後の無駄な部分や具体的な事例をカットして終了後即座にアーカイブ公開しています。PremiereProはレーザーツールによるカット編集やノイズ除去が簡単に、そして精度良くできるので、アーカイブ公開までのスピードが大幅に向上しました」(柳田氏)
また岡村氏は「社長の年頭あいさつを3 分程度にまとめた動画を作成しました。Premiere Proにはトランジション効果が豊富に用意されているので、動画編集初心者の私でも本格的な動画が作成できます。社内からの反響も大きく動画編集について教えてほしいという声が多く挙がりました。初めは制作に苦労しましたが、一度作ってしまうとすぐに覚えられます」とPremiere Proの活用について語る。
さらに動画内製化は、外国人材紹介サービスにおいても効果を発揮している。その一例が、外国人材と企業との架け橋に動画を活用する金恩玉氏の取り組みだ。「コロナ禍で国際間の行き来が制約される中、課題の一つとして浮上したのが、国内での就職を希望する外国人材と企業が直接会えないことでした。担当部署はその対策として、外国人材に自己アピール動画を撮って送ってもらっていたのですが、最大限に活用できていないのが実情でした。そこで、その動画を紹介ツールとして活用するアイデアを思いつきました。例えば日本語検定の級数と実際の能力は必ずしも一致しませんが、動画であれば能力をより感覚的に把握してもらうことが可能です。また、人柄を理解してもらう面でも動画による人材紹介は大きな成果を挙げています」
金氏は「ダウンロードできるStock素材の種類が多くて大変活用しています。例えばStock素材のモーショングラフィックテンプレートを活用して外国人材の国柄に合わせた効果や表現にも挑戦しています。また、送られてくる動画は撮り方もフォーマットもさまざまですが、Premiere Proは素材として取り込む際に画角を簡単に調整できるので助かっています」と語る。
編集スキルを水平展開し、会社全体として動画内製化に取り組む
コロナ禍を機に動画編集の内製化をスタートした同社の成長は驚くほど早い。2020年11月に6時間にわたりライブ配信されたオンラインイベントでは、撮影、インサート動画やテロップの制作、スイッチング、動画配信の全プロセスを8名のメンバーが担当するなど、内製化は大きな成果を挙げている。
「最初からプロレベルの作品を作るのは難しいですが、できることからステップを踏んでいけば、楽しみながら成長していけるはずです」と工藤氏は語る。
動画内製化が社外へのアプローチや社内コミュニケーションの活性化に大きな成果を挙げているということもあり、各部署から動画制作の依頼が増え続けているという。次のステップとして想定しているのが、メンバーが核になり、蓄積したノウハウを展開するプロセスだ。
「WebやSNSの進化に対応して変化し続けてきた企業広報の歴史を考えると、動画は新たな表現として主流になる手法です。そのため、今後はプロジェクトメンバーがスキル共有のハブとしての役割を担い、会社全体としてノウハウを蓄積し、さらに動画内製化を加速させていきたいです」(工藤氏)
※掲載された情報は、2021年2月現在のものです。
経営戦略本部 グループ経営企画部 部長 工藤 大助 氏
グループ営業本部 グループ営業企画部 柳田 匡世 氏
経営戦略本部 グループ経営企画部 経営企画室 岡村 知也 氏
経営戦略本部 グループ経営企画部 広報室 金 恩玉 氏