未来に向けたデジタル基盤の再構築
Red Hatは、データのサイロ化を解消し、スマートでパーソナライズされたイベントエクスペリエンスを実現しています。
85%
Red Hat Summitのメール内リンクのクリック率の増加
目標
Red Hat Summit参加者向けメールとwebパーソナライゼーションの改善
データ主導型インサイトの活用で、登録戦略とエンゲージメント戦略の最適化
参加者の主要なタッチポイント全体で接続されたシームレスなエクスペリエンスの提供
成果
Red Hat Summitのメール内リンクのクリック率が85%向上
Red Hat Summitの早期登録者数が3倍に増加
登録の 34% が、オンサイトパーソナライゼーションによるもの
強固な基盤で顧客体験を向上
頑丈な家を建てるための第一歩は、強固な基礎を築くことです。基礎がしっかりしていなければ、壁や床にゆがみが生じ、最終的には家屋全体が倒壊してしまいます。これは、デジタルエクスペリエンスについても同じです。基礎となるアーキテクチャがしっかりしていなければ、すべてが不安定な状態になります。IBMの子会社であるRed Hatにとって、強固な基盤の構築は、単にシステムの稼動を継続することではなく、イノベーションの原動力となる拡張性と信頼性の高いデジタルエコシステムを構築することを意味します。
これが最も顕著に表れているのは、80か国以上から6,000人を超える参加者が集まり、エンタープライズテクノロジーの未来を探求する同社の主要なイベント、Red Hat Summitです。このイベントを支えているのは、高い精度と一貫性と強固な基盤を必要とする、複雑なデジタルエコシステムです。ここで重要な役割を担うのが、Hannah Macking氏とMarcia Coman氏です。Red Hatのデジタルアーキテクチャ担当ディレクターとシニアインフラストラクチャアーキテクトを務める両氏は、登録の促進だけに注力しているわけではありません。両氏の目標は、イベントの開催前、開催中、開催後にいたるまで、すべての参加者に対して直感的でシームレスな顧客体験を提供することです。
「家の中に入って基礎をほめる人はいません」とComan氏は述べています。「しかし、基礎がしっかりしていなければ、柱や壁など、すべてが危険な状態になります。私の仕事は、基礎の補強を通じてチームを支援することです。強固な基盤があれば、魅力的なエクスペリエンスを構築してお客様にアピールし、長期的な関係を築くことができます」
しかし、Coman氏のチームは何年もの間、データのサイロ化という問題に苦労していました。登録プロセスはあるシステムで処理し、webサイトでのやり取りは別のシステムで処理し、メールキャンペーンはまた別のシステムで処理する、という方法で業務を行っていたため、お客様に対するメッセージに一貫性がなく、ビジネスチャンスを逃していました。こうした課題を解決しようと考えたComan氏とMacking氏は、デジタルアーキテクチャチームと協力してインサイトを統一し、イベント参加者とのコミュニケーション方法の変革に着手しました。そして、Adobe Customer Journey AnalyticsとAdobe Real-Time Customer Data Platformを基盤とするデータ主導型の新しい戦略を策定しました。これにより、各参加者のジャーニーの全体像を把握し、大規模なパーソナライゼーションを実施できるようになりました。
「Real-Time Customer Data PlatformとCustomer Journey Analyticsを組み合わせることで、参加者の全体像を把握できるようになりました。参加者がどのような方法で登録しているか、どのセッションに参加しているか、参加者の興味と実際の行動が一致しているかを把握できるようになったのです。断片的なデータをつなぎ合わせるだけでは、ここまで深く理解できません。このインサイトを得たおかげで、参加者のエクスペリエンスをより有意義な方法でパーソナライズすることができました。」
Marcia Coman氏
Red Hat、シニアインフラストラクチャアーキテクト
アドビ製品でギャップを埋める
Red Hat Summitの参加者に有意義なジャーニーを提供したいと考えたデジタルアーキテクチャチームは、現行システムの課題の特定を開始しました。「以前はCookieを使用してユニークビジターを追跡していたため、職場のパソコンで参加登録を行い、その後に自宅のパソコンでイベントサイトにアクセスすると、『Summitに登録してください』というバナーが表示されたのです。」とComan氏は述べています。「この場合、『もう登録したのに』と感じてしまいます。」
参加者がこれにいら立ちを感じたことにより、全体的なエンゲージメントとコンバージョン率が低下し、結果としてビジネスチャンスを逃すことにつながりました。参加者が何に興味を持っているかを正確に把握できなかったため、常に適切なフォローアップを行うのが難しい状態でした。また、Red Hatの製品を検討している潜在顧客に対して、適切なタイミングで適切なメッセージを発信できなかったため、Summitへの関心を長期的なビジネスチャンスにつなげることが難しくなっていました。
担当チームは、効果的なエクスペリエンスを構築するには、参加者のデータを一元化する必要があると考えていました。そこで、Customer Journey AnalyticsとReal-Time Customer Data Platformを導入することにしました。両製品が、同社の変革の基盤になりました。
Real-Time Customer Data Platformを使用して、複数のデバイスとチャネルにわたって参加者のデータを統合することにより、データ間のギャップを埋めたのです。今では、職場のパソコンで参加登録を行い、その後で携帯電話からSummitのwebサイトにアクセスしても、すぐにその情報が認識されるようになりました。すでに登録済みのユーザーに対して参加登録を促すメッセージが表示されることがないため、スムーズなエクスペリエンスになりました。その結果は、すぐに測定可能な形で明らかになりました。Summitの登録を開始してから24時間以内に、前年の3倍もの登録数を記録したのです。
また、Customer Journey Analyticsにより、Summitの開催前、開催中、開催後にわたって、参加者の行動を詳細に把握できるようになりました。「Real-Time Customer Data PlatformとCustomer Journey Analyticsを組み合わせることで、参加者の全体像を把握できるようになりました」とMacking氏は説明しています。「参加者がどのような方法で登録しているか、どのセッションに参加しているか、参加者の興味と実際の行動が一致しているかを把握できるようになったのです。断片的なデータをつなぎ合わせるだけでは、ここまで深く理解できません。このインサイトを得たおかげで、参加者のエクスペリエンスをより有意義な方法でパーソナライズすることができました。」
この結果、現状を打破するインサイトが得られました。オンサイトパーソナライゼーションと、ターゲットを絞った招待メールの両方を受け取った参加者は、どちらか一方しか受け取らなかった参加者に比べて、参加登録を行う可能性が8倍も高い結果になりました。デジタルアーキテクチャチームはこのデータ主導型アプローチにより、カスタマイズされたエンゲージメントを活用して参加者とのつながりを強化し、コンバージョン率を向上させました。
パーソナライゼーションの効果
強固なデータ基盤を構築したRed Hatは、あらゆるタッチポイントですべてのSummit参加者に魅力的なエクスペリエンスを提供することに注力しました。
そのためにAdobe Targetを使用して、登録開始時やセッションカタログの公開時など、イベントの重要なマイルストーンで動的なオンサイトパーソナライゼーションキャンペーンを実施しました。Customer Journey Analyticsから取得した行動データとリアルタイムのインサイトを活用し、各参加者の興味に直接訴求するパーソナライズされたコンテンツを作成しました。
デジタルアーキテクチャチームの取り組みは、これだけではありませんでした。メールとweb間のシームレスなエクスペリエンスを実現するため、Adobe Marketo EngageとReal-Time Customer Data Platformを統合して、複数のチャネルにわたってパーソナライゼーションを統合しました。
「私たちが必要としていた最後のピースは、Marketo Engageでした」とMacking氏は述べています。「Real-Time Customer Data Platformでマクロオーディエンスを作成し、それをMarketo Engageでさらに絞り込み、すべてのタッチポイントを接続できるようになりました。これは、以前にはできなかったことです。これにより、複数のチャネルで参加者とやり取りする方法が大きく変わりました。」パーソナライズされたデータ主導型のメッセージングを導入したことにより、メールの開封率は47%増加し、メール内のリンクのクリック率は85%増加しました。これらの数値から、接続された関連度の高いエクスペリエンスによってエンゲージメントが向上したことが分かります。
「私たちが必要としていた最後のピースは、Marketo Engageでした。Real-Time Customer Data Platformでマクロオーディエンスを作成し、それをMarketo Engageでさらに絞り込み、すべてのタッチポイントを接続できるようになりました。これは、以前にはできなかったことです。これにより、複数のチャネルで参加者とやり取りする方法が大きく変わりました。」
Hannah Macking氏
Red Hat、デジタルアーキテクチャ担当ディレクター
チームワークで成功を拡大する
Red Hatは、この変革を一夜にして単独で実現したわけではありません。「データは扱いが難しいものです。」とComan氏は説明しています。「新しい技術を導入するのは簡単なことではありません。しかし、私たちが前進できたのは、互いに協力したからです。」
このコラボレーションにより、Coman氏のチームだけではなく、組織全体におけるパーソナライゼーションへのアプローチが大きく変わりました。Red Hatは、マーケティング部門、IT部門、エンジニアリング部門間のサイロを解消することにより、統一された顧客エンゲージメント戦略を策定しました。
「アドビのツールを導入すると、協力して業務を行うことになります。」とComan氏は述べています。「Customer Journey AnalyticsやReal-Time Customer Data Platformを個別に導入しても、それだけで成果が上がるわけではありません。データを有意義な形で活用するには、チーム間で連携する必要があります。」
Red Hatは、オーディエンスの適切なセグメント化、参加者の行動に関するリアルタイムのインサイト、正確なターゲティングにより、参加者のジャーニーのすべての段階でエンゲージメントを向上させました。パーソナライズされたデータ主導型エクスペリエンスにより、参加者はイベントの開催中にRed Hatとやり取りするだけでなく、イベント終了後も長期間にわたってコミュニケーションを取るようになりました。
今後の展望
基礎がしっかりしていない家は、家屋全体が倒壊するという構造的な問題を抱えていますが、Red Hatは強固な基盤を構築しているため、同社のデジタルアーキテクチャには構造的な問題がありません。同社は現在、次の目標に照準を合わせています。
それは、Marketo Engageを通じて自動化とパーソナライゼーションを強化し、インサイトを活用して顧客との関係を深め、あらゆる段階でエンゲージメントを強化することです。技術革新で成功を収める企業にとって、これは始まりにすぎません。
「失敗を恐れていては、イノベーションに必要なリスクを取ることはできません。」とMacking氏は述べています。「私たちはリスクを取り、それに見合う成果を上げました。」