機械学習プラットフォーム連携でリードスコアリングの精度向上

Sansan株式会社

Sansan株式会社

創業

2007年

本社:東京

www.sansan.com

リードのアポ獲得率20%以上を達成

導入製品:

Adobe Marketo Engage

活用用途:

リードナーチャリング、メールマーケティング、DataRobotとの連携

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課題

スコアリングの精度向上

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成果

リードのアポ獲得率20%以上を達成

世界初の法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を提供するSansan株式会社。「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、名刺情報管理はもちろん、あらゆる顧客データの統合、リッチ化を実現するテクノロジー「顧客データHub」を提供するなど、顧客の生産性向上や営業力強化に向けた事業を幅広く展開している。

 

2007年の創業以来、順調に事業を拡大し、現在、「Sansan」の利用企業は約6000社、国内シェアは80%超。高い支持率を達成してきた背景には、テクノロジー企業として、Adobe Marketo Engageをはじめ先端的マーケティングテクノロジーを駆使し、同社自ら生産性向上、マーケティング施策の最適化に取り組んできたことが挙げられる。

 

起点となったAdobe Marketo Engageを導入した経緯や施策、事業拡大とともに発生した新たな課題に対し、いかに対策を講じ成果を上げているのか。Sansan事業部 マーケティング部の新名 庸生氏に聞いた。

リードやデータの増加・多様化でスコアリング改善が課題に

同社がMA(マーケティングオートメーション)導入の検討を始めたのは、2015年のこと。 国内外での拠点拡大の局面で、新規リード獲得を進めていく上でのリードナーチャリングに課題を感じていたことが契機となった。

 

条件は、「機能性(Salesforceとの連携)」「インサイドセールス部門を保有するBtoBマーケティングの事例が国内外であるか」「信頼感と安心感」の大きく3つ。数社のMAを比較検討し、Adobe Marketo Engageに白羽の矢を立てる。

 

導入作業に際しては、SFAのリード内に多数の重複が生じていたデータベースの一新からスタート。20以上のセグメントに分け、エクスポートしたデータを再インポートするといった作業により、メールマーケティングの精度向上に向けた環境を整備する。

 

その結果、導入後、3カ月ほどでメルマガの配信可能件数が2倍に増加。新規獲得リード件数は3倍を達成した。1つの施策にかかる工数が削減されたことで、PDCAを高速で回しながら多数の施策を打てるようになった。

 

従来、主観で行っていたホットリードの選定も、Adobe Marketo Engageのスコアリング機能を使うことにより優先順位を付け、受注件数1.5倍以上、受注率10%以上を達成するに至る。

 

だが、業績拡大の一方で新たな課題が浮上する。

 

その課題解決を担ったのが新名氏だった。新名氏は、京都大学大学院で計算機科学を専攻し、Google、ワイジェイFXにてマーケティング領域のオペレーション、データ分析に携わった後、そのキャリアを買われ2017年に同社に入社した。

 

「Adobe Marketo Engage導入初期は、リード流入経路や媒体も限られていたため、マンパワーでリードの属性やアクションに応じてスコアを設定し、その合計値で架電対象の判断を行うスタイルで運用していました」と新名氏。

 

だが、近年はリード数が増加し、流入経路も複雑化。ナーチャリング施策も増加し、スコアリング対象にするべきデータの種類も多様化していく。それに応じてルールのアップデートや、どの項目がどの程度、受注に作用するかなどの見直しが必要となるが、「もはや人力で作業することが不可能な状態に陥っていました」と新名氏は明かす。

ユーザー会で新たな取り組みの"インサイト"を得る

新規獲得の"生命線"とも言えるスコアリングの精度向上をいかに実現するか。「高度な分析が必要なのはもちろん、変化のスピードに付いていくには分析から実装までを短期で行い、リアルタイムにスコアリングを出していくこともポイントでした」(新名氏)。

 

そこで新名氏が目を付けたのが機械学習プラットフォームの「DataRobot」である。DataRobotとは、データサイエンス手法が組み込まれたプラットフォームで、プログラミングの知識や手間なしに、機械学習を活用した高精度の予測モデルを自動で作成できるのが特徴だ。

 

以前、デモを見て興味を持っていた新名氏が連携を検討し始めたとき、その決め手となる出会いがあったという。

 

「Adobe Marketo Engageのユーザー会に参加した際、電通デジタルさんのAdobe Marketo EngageとDataRobotとの連携に関するライトニングトークを聞く機会があったんです。その話でインサイトを得たことが、行動に移す決め手となりました」(新名氏)

 

まさに同社がミッションとする「出会いからイノベーションを生み出す」を地で行くストーリーだが、実際の連携には様々なハードルが立ちはだかることとなる。

既存リードが自社サイトを訪問した瞬間を狙う予測モデルを構築

1つ目が、スコアリング対象の設計だ。当初は、新規流入リード全体を対象にDataRobotでアポ獲得率の予測モデルの作成を行ったが、「その結果、高い予測値が付くのは自然流入やリスティング広告経由など、以前からアポ獲得率が高いとわかっているものでした」(新名氏)。

 

良いとわかっているリードを、"良い"と判断するだけでは意味がない。アポ獲得率が高いのに見逃されているフェーズがどこにあるかを検討し、DataRobotの予測を適用していく作業が急務となる。

 

2つ目が、架電対象リード数のコントロールだ。すべての新規流入リードを対象とすると、展示会やイベント開催時には、突発的に新規リードが増える。さらに展示会やイベントの現場で、営業の判断により架電ステージに上げたリードと混在し、優先順位が付けにくいという問題も生じるようになった。

 

「インサイドセールスのリソースも考慮しながら、いかにリード数の上限を調整するかが課題となりました」と新名氏は話す。

 

3つ目が、インサイドセールスの理解だ。「DataRobotが高い予測値を付けたから電話せよ」と言われても、それだけではインサイドセールスとしては納得感がない。「どのような項目を使って、どのように予測しているか。その理由を提示し、機械学習への理解を浸透させていく必要がありました」(新名氏)。

 

細かい点ではバグが出たり、文書の文字化けが出たりと試行錯誤を重ね、スコアリング対象の設計の課題は、「最もDataRobotのスコアリングが効くのは、既存リードが自発的に自社サイトを訪問した瞬間だという結論に達し、その過去リードに対してのみ予測スコアを更新するようにしました」と新名氏は言う。

 

従来から、自社サイト訪問リードへの架電は実践していたものの、すべてに対応するには数も多い。そこをDataRobotが過去データから分析し、アポ獲得率が高いリードを予測するモデルがフィットしたというわけだ。同時に架電対象リード数の調整も実現し、2つ目の課題も解決する。

 

営業やインサイドセールスの理解については、精度の高いスコアリングと既存リードの有効活用という共通課題を掲げ、時間をかけて理解を求めていく。

 

「その裏付けとして、DataRobotの機能を活用し、どの項目が予測に効いているかの理由も、Adobe Marketo Engageを通じてSFAで表示し、スコアに対する納得感を得る仕組みも構築しました」(新名氏)

 

また、すべてに架電するのではなく、余裕があるインサイドセールスが対応するなど、人間が判断する部分と、DataRobotがサポートする部分のすみ分けを行ったことも円滑な運用につながる。

リードのアポ獲得率20%以上を達成する

こうして1年弱ほどかけ、改良・改善を加えていくことで、Adobe Marketo Engage × DataRobotおよびSFA、同社の「顧客データHub」連携の最適化を実現した。

 

成果としてサンプリング数が1.92倍、架電リードのアポ獲得精度1.12倍、トータルで2.1倍のアポ獲得を実現する。「リードのアポ獲得率についても、アポ獲得率が高いとされている流入経路と同水準の割合、20%以上を達成しました」(新名氏)。受注までに至る案件も複数誕生。受注総額は、DataRobotライセンス費用を上回っており、費用対効果の課題もクリアしている。

 

「Adobe Marketo EngageとDataRobot、弊社で販売する『顧客データHub』との連携で具体的な成果を出していることから、『顧客データHub』の営業をしやすくなったという声も営業担当から上がるようになりました」(新名氏)

特定の業界・企業に対するABMへの活用も推進

活用範囲も、リードスコアリング以外の他分野に広がりを見せている。

 

「ナーチャリングメール経由で自社サイトに訪問したリードのうち、アポ獲得率が高いリードをDataRobotのスコアリングによって判断し、架電するという施策も実施しています」と話す新名氏。

 

フィールドの営業に向け、特定の業界・企業に対するABM(アカウントベースドマーケティング)の取り組みも進めている。「『顧客データHub』で集約されたデータをもとに、DataRobotの分析・予測により受注確度が高い業界・企業を特定し施策を絞るやり方で、精度の改善を進めているところです」(新名氏)。

 

順調に新規ユーザーを拡大してきた同社だが、新名氏は「今後は既存のお客様に向けてのアップセル、クロスセルの分析も重要なテーマになってきます」と指摘。将来を見据え、さらなる成長に向けての取り組みにも余念がない。

 

世界初の名刺管理クラウドサービスを展開するテクノロジー企業として、今回も自ら先端的なテクノロジーを駆使し、世界初の大きなチャレンジを実現した同社。「今後も世界に向け、Sansanとして、また日本のマーケティング業界の一員としても、新たなバリュー創出に取り組んでいきたいです」と新名氏。

 

次はどんな化学反応を経て、新たなイノベーションが生まれるのか。その行方に注目したい。

 

取材日:2019年8月29

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