デジタル環境で育ったクリエイターが初の劇場長編アニメに挑戦

 

株式会社スタジオコロリド

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会社概要

所在地:東京都世田谷区赤堤2-32-25
創業:2011年8月22日
従業員数:40名
事業内容アニメーション企画開発制作配給など
webサイト:https://colorido.co.jp/

課題

デジタル基盤上での長編アニメーション制作

映像制作工程における監督・スタッフ間のコミュニケ―ションの円滑化

成果

指示の具体化

Photoshopのレイヤーでスタッフへの指示を明確化し、作業効率と品質を向上

Adobe Senseiが支える品質

HDからデジタルシネマサイズへ対応。品質を損なうことなく解像度を調整

新しい表現の実現

Photoshopのブラシでこれまでにない映像を生む

こだわりの追求

編集の内製化で、納得がいくまで作業できる環境を実現

少年の一夏の経験と成長を鮮やかな色彩と共に描いたアニメーション映画「ペンギン・ハイウェイ」は、自主制作時代からフルデジタルのアニメ制作で注目されてきた石田 祐康氏の劇場長編初監督作品でもある。より多くのスタッフが関わり、おのずと「紙」と「デジタル」の共存が求められるこれまでにない経験の中で、かねてから石田氏が手足のように使いこなしてきたアドビ製品は大きな役割を果たしている。


「一人のクリエイターが作品を隅々までコントロールできる。それがデジタル化の魅力です」

 

「ペンギン・ハイウェイ」監督 石田 祐康氏


デジタルの基盤上で新たな長編アニメ制作の方法論を探る

 

アニメ業界は、撮影や編集のデジタル化が進む一方、作画工程は紙と鉛筆を使うクリエイターが今も大部分を占めている。そのため、短編作品やCMとは比較にならない数のスタッフが関わる劇場長編の制作は、「紙」と「デジタル」の共存を前提に進められた。石田氏を中心としたスタジオコロリド制作陣が、これまでとは異なる新たな挑戦を模索する中で、使い慣れたデジタルツールは大きな役割を果たしている。

コミュニケーションにPhotoshopのレイヤーを活用

 

アニメーションは作画、背景美術、CGなどの素材を合成し、一つの映像に仕上げていく。「撮影」と呼ばれるこの工程において、After Effectsはそのデファクトスタンダードなツールとしてアニメづくりの現場に普及している。素材をイメージ通りの映像に仕上げるため、撮影担当への指示にPhotoshopのレイヤーが活用された。

その狙いを石田氏はこう説明する。「撮影指示は口頭で行うことが一般的ですが、言葉ではなかなか伝わりにくい部分もあり、無用なリテイクを繰り返してしまうこともあります。そこで、Photoshopにキャプチャーを取り込み、レイヤーに指示を書き込むことで具体的なイメージを伝えるようにしました。After Effectsは調整レイヤーまで含めPhotoshopのレイヤー構造をそのまま取り込むことができるので、撮影担当は指示レイヤーを参照し、こちらの意図を汲み取りながら作業が進められるのです」

株式会社スタジオコロリド
株式会社スタジオコロリド

ブラシツールでアニメにはなかった質感を表現

 

作品内では、本編とタッチを変えたい印象的なシーンにPhotoshopが効果的に使われている。作画を担当した栗崎健太朗氏は言う。「物語でも重要な役割を果たす、主人公が見る夢のシーンがあります。その映像は、まずアニメーションを作成し、その一枚一枚にPhotoshopのブラシで彩色していく方法で作られています。実際に映画をご覧になっていただければ分かると思いますが、あれはデジタルならではの表現だと思いますね」海外の有名スタジオでも取り入れられている手法だが、Photoshopならではの他社にない、細かなブラシ設定ができることがポイントになっている。

After Effects で動きをつけることで、新たな表現を生む

 

石田氏はPhotoshopとAfter Effectsを連携させることで、デジタルならではの効率化を図りながらアナログ感のある映像を作る手法にも活用している。主人公のアオヤマ君と謎のカギを握るお姉さんの二人に木漏れ日が降り注ぐシーンがその一例だ。そこではPhotoshopで木漏れ日が当たる位置を指定するマスクを作成し、マスクを少しずつ動かすことで木漏れ日が動いていく様子が表現されている。

また、アニメーションならではのAfter Effectsの活用にも注目したい。「アオヤマ君の友達がカクカクとした動きでぎこちなく振り向くというシーンがあるのですが、本来、アニメはこうした細かい動きを表現することは苦手です。そこで、まずスムーズな動きを作画した上で、After Effectsランダムに位置をずらして撮影するという、ちょっと珍しい方法を取り入れています」(石田氏)

作画とAfter Effects の使い分けで作業の効率化を図る

 

「ペンギン・ハイウェイ」には、そのほかにも雲が掃けると共に広がる光の動きなど、After Effects よる動きの表現が数多く採用されているが、そこには作業の最適化という観点もある。「こうした動きを作画で表現するとなると、択数も増え作業者の負担も増えます。After Effects表現できることと作画でしかできないことを分けて、作品のクオリティを少しでも上げていきたいと考えました」(石田氏)

最終段階で、石田監督自身が細かな修正を加えられることも、デジタル化された撮影工程のメリットの一つ。

「ラッシュを見て“ちょっと物足りないな”と感じることも多いんですよ。制作工程の後半になると時間との戦いですから、自分でAfter Effects使ってコマを減らしたり、中間絵を抜いてみたりして、納得できる動きなるよう微妙調整を行ったりもしました」(石田氏)

アドビのAI、Adobe Senseiも「ペンギン・ハイウェイ」で大きな役割を果たしている。「アニメーションで4K に対応するのは、マシンパフォーマンスやデータ容量などでも現実的ではないと自分は考えています。アニメは通常フルHD 以下のサイズで作りますが、After Effects に搭載されている『ディテールを保持(アップスケール) 』エフェクト使用することで、シャープ輪郭保たれたままデジタルシネマのサイズに引き延ばすことができるため、編集の負荷がなくなりました。また、この機能は元々Photoshopに搭載されている再サンプリングのオプションと連携しているので、宣伝用の静止画を書き出す際に、品質を損なうことなく解像度を調整することができ、印刷に充分対応できることが分かったことも今回の収穫の一つです」あまり知られていないので、アニメ関係者はぜひ使ってみて欲しいと石田氏は語る。

(左から)栗崎 健太朗氏、石田 祐康氏、増田 惇人氏

Premiere Proによる編集内製化で納得できる作品を追求

 

最終工程の編集を社外の編集スタジオに外注することも多い。こうした中「ペンギン・ハイウェイ」では、Premiere Pro による編集作業の内製化が行われた。編集を担当した増田 惇人氏はその狙いをこう説明する。

「外注では制約も多く、細かな修正を納得がいくまで行うのはかなり難しくなります。しかし、社内で編集を行えれば、時間を気にすることなく、随時気になる点を修正していくことが可能になります」

作品の隅々まで、一人のクリエイターの感性が反映できる。それが石田氏が考えるデジタル化の効果だ。「自分はもともと、After EffectsPremiere Pro使い、自主制作短編作品個人つくってきた人間です。正直に言うと、劇場長編はこれまでと同じやり方は難しいと感じていました。しかし、環境を整備してやり方を工夫すれば、これまでのやり方の利点もうまく引き継げる。それが証明できたことは、今回の大きな成果の一つです」と石田氏は言葉をまとめた。

 

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