



創業: 1996年
従業員数: 311名(2021年7月1日現在)
1996年に設立。SaaS/PaaSを中心とした独自のクラウドセキュリティサービスを開発・提供。170以上の主要クラウドサービスへのセキュアなアクセスとシングルサインオンを実現するSaaS認証基盤「HENNGEOne」、導入企業1,600社、ユーザー数は190万人を超え(2020年9月時点)、この分野でのトップクラスのシェアを誇る
課題
永続版Acrobatのインストール/アンインストールやサポート切れのチェック、新しいバージョンへの移行作業に手間がかかっていた。
成果
・ライセンス管理の負担軽減
・自動バージョンアップにより、脆弱性対応を強化
・シングルサインオン連携によりOfficeや他のアドビ製品も一元管理
・Acrobatの高い操作性で利用者からの問い合わせはほぼゼロ
「ライセンスを一元管理できるAdmin Consoleが一番のメリット。以前のデバイスによる管理に比べて、管理が格段に楽になりました」
経営企画部 ICT 企画ユニット 主席研究員 菊地 隆司 氏
東京海上ディーアール株式会社は、東京海上日動火災保険をはじめとする東京海上グループの一員として、現代の企業が抱える様々なリスクに対応した高度なコンサルティングを提供するエキスパート集団だ。同社では、Acrobat永続版ライセンスのサポート終了を機に、Acrobat DCエンタープライズ版(サブスクリプション)を導入。シングルサインオン(SSO)連携により、課題であったライセンス管理の負担を軽減し、業務のクラウド化を大きく前進させた。
コンサルティング成果物のレポートをPDFで提供
同社では、自然災害、事業継続、交通リスク、製品・サービス、サイバー・情報セキュリティ、経営・マネジメントといった様々な分野に精通したコンサルタントが在籍しており、企業のニーズに応じた高度なリスクコンサルティングを行なっている。その成果物として、リスクの調査と分析、シミュレーション、対応策の提案、効果測定などの内容をまとめたレポートを作成し、PDFに変換したうえで顧客へ提供している。PDFが用いられる理由は、環境を問わずに内容を正確に表示できる閲覧性、改ざんなどの編集が行えないセキュリティ性などを考慮したものだ。
ライセンス管理と脆弱性対応が大きな負担に
同社では以前より、PDFの運用にAcrobatが使用されてきた。レポートをPDFに変換するだけでなく、複数のアプリケーションで作成された資料を1つのファイルにマージ(結合)したり、ページ順を入れ替えたり、あるいは編集ができないようにセキュリティをかけたりといった加工を行っている。
コンサルタントは業務上、様々なアプリケーションを使用することから、同社では特に使用制限をかけず、申請すれば必要なアプリケーションを各セクションで個別に購入し、インストールすることができる。しかし、Acrobatに関しては利用者が多く、管理が煩雑化してしまうという懸念があり、購入手続きからライセンス管理までをICT部門がまとめて行うようになった。
同社で使用しているAcrobatは、それまでライセンスがデバイスに紐づいた永続版であったため、管理面においていくつかの課題があったという。同社のICT部門でシステムの年間計画からルール策定、開発、導入、運用、管理、ユーザーヘルプまでを一括して担当する菊地 隆司氏は次のように話す。
「PCが古くなったり、故障したりして買い替えをする場合、その都度インストール/アンインストールする必要がありました。またライセンス違反が起きないよう、どのライセンスがどのデバイスに紐づいているかを資産管理システムを使って常にチェックしていましたが、非常に手間のかかるものでした」
リスクコンサルティングという業務の特性上、自社における情報セキュリティリスクにも細心の注意を払っている。特にAcrobatはインターネットのPDFを直接閲覧できるソフトウェアのため、脆弱性対応は必須。サポート切れのチェックや、新しいバージョンへの移行作業にも手間がかかっていたという。
シングルサインオン(SSO)連携が導入の決定打に
2020年に同社が使用するAcrobatの一部がサポート終了になることから、新しいバージョンへの移行が進められた。当初はそれまでと同様に永続版ライセンスの購入を予定していたが、アドビの営業担当者からサブスクリプションへの移行を提案された。購入手続きやインストールの手間が軽減され、自動バージョンアップによりサポート切れの心配がなくなるなど、サブスクリプションには多くのメリットがあるものの、移行に踏みきれない大きな懸念点があったと菊地氏は話す。
「サブスクリプションにした場合、ネックになるのがID管理でした。150人以上の利用者が個別にIDを持つとなると、例えば、利用者がパスワードを忘れてしまったり、アカウントの設定ミスがあったりした場合、その都度対応しなければならないわけで、かえって我々の負担が増えるのではないかという懸念がありました」
サブスクリプション移行の最大の決め手となったのが、Acrobat DCエンタープライズ版のSSOへの対応だった。同社では2015年にSSO機能を搭載したサービス HENNGE Access Controlを導入し、SSO環境下でMicrosoft Officeアプリケーションの運用を行っていた。
「アドビのクラウドサービスがSAMLに対応し、SSO連携が可能であることを知って、懸念はすぐに解消されました。SAMLによる構築は思った以上にハードルが低く、設定や検証などは1日あれば十分なほどです。HENNGE様からアドビのクラウドサービス用にカスタマイズされたわかりやすいマニュアルが提供されていたので、それを見たときにこれはいけると思いました」
こうして2021年3月、Acrobat DCエンタープライズ版サブスクリプションライセンスの導入が決定した。導入から運用開始までは極めてスムーズだったと菊地氏はいう。
「SSO連携の部分は、HENNGE様のマニュアルを見ながら1時間程度で構築できました。細かい部分で不具合はあったものの、そこはアドビ様のサポートが的確かつ迅速に対応してくれたおかけですぐに解決できました」
ライセンス管理の負担を大幅軽減
Acrobat DC エンタープライズ版の導入効果として、菊地氏は一番にAdmin Consoleをあげた。
「150ものライセンスを一元管理できるので、今まで使ってきた資産管理ソフトと比べると、格段楽になりました。『ライセンスを付ける/外す』がユーザーに対してなので、端末がなくてもこのAdmin Console内でコントロールできます。人事異動や退職時には、ライセンスを外すだけでよいのです。これが今までのデバイスの場合だと、利用者がアンインストールする必要があり、また、それを我々が確認しなければならないのです。これが結構大変でした」
ライセンス管理方法が変更になったにも関わらず、利用者に混乱は発生せず、サポートなしで利用者自身がサブスクリプションライセンスに切り替えることができたという。
「Acrobatの良い点は、利用者に使い方をサポートする必要がないということです。Acrobatを使ったことのない人でも、Acrobat Readerなら使ったことはあります。基本の操作性はReaderと一緒なので、そこの部分は教える必要がなく、それ以上はユーザーが感覚でわかるくらいの高い操作性だと思っています。別のPDF製品も用意はしてあるのですが、利用者からはAcrobatのほうが断然使いやすいという声をよく聞きます」
金融・保険業界で高まるクラウド化のニーズ
今回の導入により、同社におけるクラウド化推進の手応えをつかんだと菊地氏はいう。
「クラウド化を進めるにあたって、SAMLを使ったSSO連携は重要な鍵だといえます。今回のサブスクリプション導入を足掛かりに、次の施策を考えていきたいと思います」
業務のデジタル化やクラウド化が比較的遅いといわれてきた金融・保険業界だが、昨今の状況をHENNGE株式会社の安孫子 貴幸氏に聞いてみた。
「2018年に金融機関を対象としたFISC安全対応基準(第9版)が公開されて以来、弊社サービスを導入される企業様は年々増加しています。特に最近では、電子署名関連のニーズが非常に高まっています。菊地様もおっしゃっているように、SAMLによるSSO連携はさほど難しいものではありません。新規導入時はもちろんですが、今回の東京海上ディーアール様のように導入後の連携も容易です。メガバンクや大手保険会社だけでなく、その子会社や関連会社、中堅企業なども、今後ますますクラウド化が進んでいくと思われます」
※掲載された情報は2021年6月現在のものです。
経営企画部 ICT 企画ユニット 主席研究員
菊地 隆司 氏
HENNGE 株式会社 Customer Marketing Division
安孫子 貴幸 氏