Wi-Fiルーターレンタル事業の急成長を支えるパーソナライズを軸としたビジョンの戦略

株式会社ビジョン

創業

1995年

所在地:東京
従業員数:国内555名、海外77名
www.vision-net.co.jp

ユーザー事例:ビジョン

A/Bテストでコンテンツを最適化。コンバージョン率が約15%向上

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課題

Webサイトを訪問する顧客の行動を十分に把握できず、最適なページへの誘導が難しかった・申し込みの途中で離脱した顧客などに再コンタクトしたいが、適切な方法がなかった

仮説を立てて、新しいメール配信シナリオを実装するプロセスを短期化したい

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成果

アクセスごとに特性を把握した上で、適切なページへの誘導が可能になった・顧客の契約ステータスに応じてパーソナライズされたメールの自動配信を実現

ワークフローの整備などで仮説からメール配信シナリオを実装するまでの期間を4分の1に短縮

Wi-Fiルーターレンタルサービスの提供開始、成長に伴いマーケティングの方法に変化

電話回線やOA機器の販売を中核事業として創業したビジョン。当時は、企業向けの情報通信サービス事業が主力でしたが、その後、一般消費者向けの市場にも参入し、2012年に海外渡航者を対象とするWi-Fiルーターレンタル事業「グローバルWiFi」をスタートさせました。2015年には、訪日外国人が日本国内で利用するWi-Fiルーターを貸し出す「NINJAWiFi」も開始。これらのWi-Fiルーターレンタル事業は、アクティブな旅行者を支えるサービスとして急成長しています。 

 

「韓国や台湾などに拠点を置いて、現地市場向けにもWi-Fiルーターレンタル事業を展開しています。現在、Wi-Fiルーターレンタル事業は、当社の売り上げの半分以上を担うほどにまで成長しています」とビジョンの本田雄一郎氏は話します。 

 

それまでのB2Bが中心の事業から、B2Cの比重が急速に高まるにつれて、同社のマーケティングにも大きな変化が求められました。 

 

「B2BとB2Cでは、お客様の獲得プロセスが全く異なります。B2Bにおける販促は、対面での営業が中心となりますが、B2Cではお客様と対面する機会はほぼありません。ほとんどのお客様は、弊社のWebサイト上だけで契約を完了させるからです。この変化に対応したデジタルマーケティングの実践が急務となっていました」と本田氏は言います。

 

しかし、一言でデジタルマーケティングの実践といっても、容易ではありません。例えば、同社のWebサイトに新規に流入してくる経路は大きく2つ。キーワード検索やリスティング広告などから直接流入してくる場合と、同社と代理店契約を結んだ販売パートナーである旅行会社のサイトなどを経由して流入してくる場合です。

 

流入までの経緯が異なれば、「すぐに使うためのWi-Fiルーターレンタルサービスを探している」、あるいは「すぐに予定はないが、気になっている」「どんなサービスなのか調べている」など、顧客像も当然異なります。

 

効果的なデジタルマーケティングを行うには、このような違いを把握して、マーケティングに生かすことが求められます。

 

「実際に対面することができないインターネットだからこそ、いかにパーソナライズして、お客様ごとに最適な対応をするかが重要なのですが、以前はノウハウがなく、すべての流入を同じように扱っていました。全アクセスをトップページに誘導したり、あるいは契約フォームに誘導してみたりという状態です」と本田氏は話します。

自由度が高く基幹システムとの連携も柔軟に対応

顧客の行動や特性に応じて、適切なページに導き、いかにコンバージョン率を向上させるか。そのために、ビジョンはアドビのソリューションを利用しています。

 

具体的には、まず顧客の行動を把握するために「Adobe Analytics」を利用。その上で、流入経路など、顧客の行動にマッチした誘導先はどのページなのかをA/Bテストで明らかにしたり、その結果に応じて適切な誘導先にランディングさせたりするために「Adobe Target」を利用しています。

 

加えて、メール配信を組み合わせたマーケティングオートメーションを実行するために導入しているのが「Adobe Campaign」です。契約フォームで、途中まで入力したのに、契約にいたらなかった顧客にフォローのメールを出したり、すでにサービスを利用したことがあり、近く海外に行く予定があると分かっている顧客に対してメールを出したりして契約を促しているのです。 

 

アドビソリューションの選定理由は、アドビの持つ実績の豊富さに加えて、自由度の高さが大きなポイントだったといいます。

 

「弊社の基幹システムである販売管理システムは、自社で開発しています。代理店様との契約内容などに特殊な要件があり、パッケージ製品では対応が難しかったためです。インターネットが主戦場となったマーケティング活動において、この基幹システムとマーケティング関連システムとの連携は不可欠。アドビ製品なら、独自開発したシステムとの間にも、連携に必要なインターフェイスを柔軟に構築することができました」とビジョンの地藤祐史氏は語ります。 

 

また、機能面では、特に Adobe Campaignを利用すれば、メール配信の対象者をきめ細かく設定できることを評価しました。 

 

「メール配信で、最も避けなければならないのは、迷惑メールと判断されてブロックされてしまうことです。ブロックされてしまったら、二度とそのお客様とはコンタクトが取れない可能性があるからです。そのためには、関係のない、不必要なメールを送らないことが重要。Adobe Campaignなら、『ビジネス利用×渡航先国(エリア)×回数(◯回以上利用した人)を除く』といった具合に、多彩な条件を活用して、送信するセグメントをきめ細かく設定できます。このような複雑な要求に容易に対応できるのが、 Adobe Campaignでした」(本田氏)

 

図:メール自動配信の仕組み

顧客の過去の契約情報をベースに、サービス申し込み前、申し込み後、利用後の分類で、顧客に最適なメールを自動配信。コンバージョンやアップセル、クロスセルを狙う

誘導の最適化、自動メール配信などでコンバージョン率を向上

アドビソリューションを活用した継続的な取り組みを続け、ビジョンはすでに高い成果を上げています。

 

顧客に応じた適切なページへの誘導

 

まず、 AdobeAnalyticsで顧客の行動を分析して、最適なページに誘導することで、コンバージョン率を向上しています。 

 

誘導先には、トップページ、サービスの概要を紹介するランディングページ、契約フォーム、そして、代理店契約の内容に応じて用意されている旅行会社ブランドを冠したオリジナルページがあります。

 

「A社のサービスだと思っていたのに、突然、違う会社のWebにアクセスしてしまうことを不安に思う顧客もいるからです。特に大手旅行会社様などは、ブランド力もありますから、独自のページを用意しています」(本田氏)。

 

Adobe Analyticsを通じて、顧客の属性や流入経路、成約確度などを把握し、仮説、分析、検証を繰り返した結果、4つのページの中から、かなり高い精度で最適なページに誘導したり、あるいは、最適なコンテンツを提示したりできるようになっています。

 

「通常、代理店様のWebなどを通じてアクセスしてきたお客様には、サービスの概要を記載したランディングページに誘導します。一方、最近は比較サイトから流入するお客様が増えています。こうしたお客様は、弊社のサービスに目星を付けてきているわけですから、細かい説明は不要。そのまま申し込みフォームに誘導しています」と地藤氏は説明します。

 

また、料金説明に対しては、新しい発見もありました。

 

例えば、初めて同社のWebを訪問している場合、グローバルWiFiへの理解度は低いと考えられます。そのため、当初は「まずサービス概要を説明し、後で料金について表示する」というプロセスが適していると考え、誘導先をランディングページにしていました。ところが、実態は異なるものでした。

 

初めての訪問か再訪かを問わず、サービス概要を知る前に、まず料金を調べるユーザーが多いと分かったのです。そこで、すべてのユーザーに対して早いタイミングで料金を示すようにしています。 

 

このような取り組みを継続して、コンバージョン率が高まった結果、代理店に対して、より積極的に提案を行えるようになるなど、営業力の強化にもつながりました。

 

顧客に対する正しい理解が進む

 

ユーザーの行動を基にコンテンツを最適化して、コンバージョン率の向上につなげたケースもあります。 Wi-Fiルーターのレンタルサービスでは、紛失などの場合に弁済金が発生します。これをカバーするためのオプションとして、同社は補償プランを提供しています。 

 

「Adobe Analyticsの分析を通じて、補償プランの情報を見たお客様は、コンバージョン率が高いという仮説が浮上しました。おそらく、不安の解消が契約に大いに関係しているのですね。そこで、補償プランをメインコンテンツに加えたページを作り、Adobe Targetを使ってA/Bテストを実施。結果、仮説の正しさが証明され、ランディングページでは、補償プランをコンテンツの1つとして大きく取り上げています」と地藤氏。これにより、コンバージョン率が約15%向上しました。

 

106パターンのメールを自動配信

 

顧客に対して、最適な内容のメールを、最適なタイミングで送付する──。一度、サービスを利用してもらった顧客は、メールアドレスが登録されています。Adobe Campaignを用いたメールの自動配信では、こうした顧客を対象に、サービス申し込み前と申し込み後、サービス利用後の3つ分類で、106パターンの中から、その顧客に合った最適なメールを配信しています。 

 

まず申し込み前のメールで重要なターゲットとなるのが、契約フォームに入力する途中で離脱してしまっている顧客のフォローです。 

 

「Wi-Fiルーターレンタルサービスの選定の決め手となる最も大きな要因が価格とタイミングです。ですから、離脱したユーザーに対しては、シークレットオファーを訴求するメールを送ってコンバージョンを引き戻します」と本田氏。離脱した後、タッチの差で顧客がライバルのサービスを契約してしまったということを避けるため、離脱後あまり時間を置かずにメールを送っています。このメールのCVRは配信対比で16.7%、サイト訪問回数対比で50.2%と非常に高い数字となっています。

 

次に、申し込み後のメールで狙うのはアップセルです。

 

Wi-Fiルーターレンタルサービスとともに、旅行をサポートするプラスアルファのサービスを提案するのです。例えば、旅行向けの音声翻訳デバイス「ili(イリー)」のレンタル、旅行先でのレストラン予約サービスなどです。

 

また、申し込み後のメールでは、顧客がより便利にサービスを利用できる方法なども紹介しています。「サービスの成長に伴い、最近は空港の受付カウンターが混雑するようになりました。そこで、空港カウンターの混雑対策も申し込み後のメールで実施。具体的には、カウンターの近くにロッカーを設置し、対面での手続きなしに機器を受け取ることができるスマートピックアップというサービスの紹介を、メール内で案内しています」(本田氏)。 

 

サービス利用後には「おかえりなさいメール」を送付。その際、アンケート調査を実施して次回渡航予定などを聞きます。 

 

「サービスを利用した直後ということもあり、かなりのお客様がメールを読み、アンケートにも答えてくれます」(本田氏)とのこと。次回の渡航予定に関する質問にピンポイントで予定を教えてくれる顧客も多く、そうした顧客には、適切なタイミングで次回利用の提案を行います。 

 

こうした一連のメールの自動配信を実現する上では、アドビのコンサルタントの支援が大いに役立ったといいます。「特にシナリオの実装における技術的なアドバイスは効果的でした。弊社専用のマニュアルも作ってもらい、以前と比べると、使いこなしのレベルが非常に高まっています。シナリオの追加実装だけであれば、1時間くらいあれば可能です」と地藤氏はアドビのサポートについて話します。

 

仮説から実装までのサイクルを高速化

 

メール配信では、日々、改善を繰り返して、新しい顧客ターゲット、および、新しい内容のメールを追加したりしています。このような要望は、代理店と日々接する営業担当者から寄せられるケースも多く、いかに迅速に新しい配信パターンを実装できるかが非常に重要になります。

 

「そこで、AdobeCampaignを導入して1年経ったころに、メール送信に関する新たな施策の追加を承認するためのワークフローを構築しました。紙での承認プロセスよりもはるかに早く新しいシナリオを実装できるようになりました」(地藤氏) 

 

実際、実装までにかかる期間を約4分の1に短縮できたといいます。また、以前は、実装直前のシナリオに対して、社内から反対意見が出ることもありましたが、ワークフローで承認プロセスをオープンかつ明確にしたおかげで、そうしたトラブルもなくなりました。

 

体制強化でITとマーケティングを融合

 

アドビソリューションを活用したデジタルマーケティングを支えているのが、ITとマーケティングが一体となった、同社の体制です。 

 

先に述べたように、同社は、基幹システムである販売管理システムを、Adobe AnalyticsやAdobe Campaignと連携させています。販売管理システムの持つ契約情報をメール配信に役立てるためです。

 

一般にこうした環境を実現するのは、容易ではありません。マーケティング部門にとってITは攻めの道具ですが、IT部門は保守的に考える側面が強く、それぞれにミッション、考え方の違いが障壁になることが多いのです。 

 

一方、ビジョンでは、キャンペーン設定などマーケティングツールを扱う担当者と、IT部門から移籍してきたメンバーが同じチームを構成しています。 

 

「これにより、両方の部門の文化的、スキル的なギャップを埋めることができ、システム間、部門間の連携が行いやすくなったのです」と本田氏は強調します。

 

今後も、ビジョンは、改善を繰り返し、デジタルマーケティング活動の精度を高めていきます。次のテーマとして据えているのが「マルチチャネル」と「リアルタイム」、そしてさらなる「パーソナライズ」です。

 

「現在、配信チャネルはメールだけですが、LINEによるプッシュ通知も検討していきたいと思っています。また、リアルタイム性も高めたいですね。例えば、離脱ユーザーに対するフォローが『早い方がよい』と考えるのは簡単ですが、お仕事をされているかどうか、離脱したのが何時かなどによって、最適解は変わるはずです。ユーザーを細かくセグメント分けして、分単位でタイミングを探り、最適解に近づきたいですね。そして、お客様一人ひとりを正確にとらえた上で、これまで以上のパーソナライズを実践していきたいと考えています」と本田氏は言います。 

 

急成長するWi-Fiルーターレンタルサービスを支えるデジタルマーケティングの高度化を目指し、同社は、さらに挑戦を続けていく構えです。


本田雄一郎氏

WEBマーケティング事業部統轄

本田 雄一郎氏

地藤 祐史氏

WEBマーケティング事業部 Senior Analyst

地藤 祐史氏

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