カスタマージャーニーオーケストレーション:Customer journey orchestration
カスタマージャーニーオーケストレーションとは、顧客の関心を継続的に引き付けるため、顧客体験をリアルタイムで調整することです。
ポイント
カスタマージャーニーオーケストレーションでは、リアルタイムの個々のやり取りに取り組むのに対し、カスタマージャーニー管理では、顧客セグメントに目を向けます。
カスタマージャーニーオーケストレーションエンジンは配信システムと連携しており、データソースを活用して、効果的に顧客に働きかけるための次のアクションを導き出します。
マーケティングチームはカスタマージャーニーオーケストレーションを利用することで、顧客行動の全体像を明らかにし、それぞれのニーズに合った情報を提供することができます。
カスタマージャーニーオーケストレーションを最大限に活用するためには、小規模な取り組みから始め、それらを慎重にテストし、効果を上げているかどうかを確認する必要があります。---
カスタマージャーニーオーケストレーションの様々な疑問に、Alex Dal Cantoが回答します。Alexは、2013年にアドビに買収されたNeolaneの戦略的提携グループの一員でした。アドビでは、Adobe Campaignのプロダクトマーケティングマネージャーとして、新しいリリースの市場投入や新機能のプロモーション、モバイル戦略の策定を担当しています。Adobe Experience Platformに追加されたJourney Orchestration機能の市場投入を、リリースの1年前から率いてきました。
もくじ
- カスタマージャーニーオーケストレーションとカスタマージャーニー管理の違いは何ですか?
- ジャーニーマップとは何ですか?
- カスタマージャーニーオーケストレーションには、どのようなツールが必要ですか?
- カスタマージャーニーオーケストレーションは、大規模なビジネス戦略にどのように活かせますか?
- カスタマージャーニーオーケストレーションに効果的に投資して利益を得るためには、どうすればよいですか?
- よくある課題にはどのようなものがありますか?
カスタマージャーニーオーケストレーションとカスタマージャーニー管理の違いは何ですか?
顧客がブランドのwebサイトを閲覧したり、モバイルアプリを利用したり、実店舗を訪れたりしたタイミングは、顧客に働きかける方法を決定するための判断基準となります。カスタマージャーニーオーケストレーションでは、その情報を活用して、提供する顧客体験が適切なものとなるようにします。エンゲージメントするべきその瞬間を判断基準にしてそれぞれの顧客とやり取りするため、セグメントについて考えることはありません。これに対し、カスタマージャーニー管理は、必ずしもリアルタイムまたは単一のやり取りであるとは限りません。顧客グループや特定セグメントのオーディエンスメンバーがどのように行動するかに目を向けます。
ジャーニーマップとは何ですか?
ジャーニーマップは、カスタマージャーニーの目標を達成しようとする人にとって重要な出発点となります。一般的には、顧客とブランドの関わり合いを、あらゆる顧客接点や様々な顧客行動を考慮して、明確なマップにします。より高レベルな取り組みでは、認知からコンバージョン、アドボカシーに至るまでを、セールスサイクルやセールスファネルの段階に焦点を当てマップにすることもあります。ジャーニーマップと言った場合、オーケストレーションや実際に発生しているエンゲージメントを反映しない、マップそのものを指します。企業は、ジャーニーマップを利用して、顧客について詳細に把握し、さらなる取り組みを計画します。
カスタマージャーニーオーケストレーションには、どのようなツールが必要ですか?
まず必要なのは、カスタマージャーニーオーケストレーションの「エンジン」です。通常このエンジンは、電子メール配信システムなどの配信ソリューションと連携する、独立したシステムです。それ自体が実際に電子メールやメッセージを送ることはありませんが、企業が既に利用している配信用エンドシステムと連携させることができます。このエンジンでは、企業が使用するあらゆるデータソースを意思決定に活かすことができます。例えば、Journey Orchestrationと呼ぶ、アドビのカスタマージャーニーオーケストレーションエンジンでは、Adobe Experience Platformをデータソースとして活用します。
その他のカスタマージャーニーオーケストレーションエンジンには、Thunderhead、Kitewheel、Pointillist、SalesforceのInteraction Studioなどがあります。こうしたプラットフォームがそれぞれ掲げている最終目標はおおむね同じですが、企業の特定のニーズに役立つ異なる機能を備えています。製品によっては、高レベルなカスタマージャーニーオーケストレーションに重点を置いています。例えばThunderheadやInteraction Studioは、一般的な認知から検討、コンバージョン、アドボカシー、レビューに至るまでの各段階を含むフロー全体に焦点を当て、全体を俯瞰することのできるマップを作成します。アドビなどのそれ以外のソリューションでは、それをさらに発展させ、より詳細なエンゲージメントに踏み込んでいます。これらのエンジンを使用すれば、イベントが発生すると、対象の顧客やコンタクトに関するあらゆる情報をもとに、電子メールやSMSメッセージでどのように働きかけるべきかが決定されます。データベース内のレコードが更新され、実際に顧客体験を調整することもあります。
これらのプラットフォームの要点は、すべてオープン性を念頭に置いて構築されているので、企業のエコシステムやテクノロジースタックと非常に効果的に連携および適合させられることにあります。製品選択に関して言えば、エンジンそれぞれの機能に若干の違いがあるのは事実ですが、主な相違点は各エンジンの価格、規模、補完製品にあります。
カスタマージャーニーオーケストレーションは、大規模なビジネス戦略にどのように活かせますか?
カスタマージャーニーオーケストレーションは、顧客体験全体を中心に据えています。カスタマージャーニーオーケストレーションには、マーケティングでの効果的なユースケースがありますが、このユースケースをサービス志向のユースケースや運用志向のユースケースと組み合わせると、さらに強力になります。非常に効果的なので、多数の企業がマーケティング、製品、サービス担当者から成る顧客体験チームを編成し始めています。そうしたチームは、あらゆる業務の中心に顧客を置くことを主眼としています。追加のコンテクストを組み込むことで、顧客エンゲージメントを促進できます。
例えば、ある顧客がコンピューターを購入したとします。何らかの理由でそのコンピューターが適切に機能しないので、顧客はサービスチケットを登録しました。通常、マーケティングチームは、その顧客がコンピューターを購入したばかりであることを把握しているので、その顧客とのエンゲージメントを続行します。ヒントやテクニックなどの情報や、そのコンピューターに適したその他の製品を提示するでしょう。これが有効なユースケースであることは確かです。しかし、多くの組織では内部で分断が生じているものです。マーケティングチームが、その顧客がサービスチケットを登録したことや、通常の新規顧客よりも満足度が低くなっていることを把握していないと、フォローアップの情報は歓迎されず、顧客に不快感を与えてしまう可能性があります。
このような場合でも、カスタマージャーニーオーケストレーションはオープン性が高く、あらゆるチャネルに対応できるので、これを導入していればマーケティングチームはサービスチケットが登録されていることを把握できます。違うメッセージで顧客に働きかけたり、問題が解決されるまで連絡を控えたりできます。オーディオジャックに不具合があるタイミングでヘッドフォンを宣伝するよりも、このようにした方が顧客体験全体のまとまりや有効性が若干高くなります。
別の観点では、アプリなどのデジタルベースのビジネスを運営している場合は、顧客がアプリを使用している最中に働きかけ、さらに使用頻度が高まるように促すことができます。例えば、ある機能をはじめてクリックした顧客にその使用方法を説明したり、アプリの一部分しかクリックしていない顧客に、まだ使用したことがないと思われる特定の機能を宣伝したりします。最終的には、顧客がアプリケーションを一定量使用したことから、一定のレベルの成熟度に達したと判断し、この顧客はアプリケーションの有料版サービスを利用する見込みが高いと結論付けることができます。これらのユースケースは、多数の電子メールやプッシュ通知を送信する計画を立てる従来の手法とは異なりますが、効果的であることに変わりはありません。カスタマージャーニーオーケストレーションを利用すれば、マーケティングのユースケースをより包括的な視点に結び付けることができます。
カスタマージャーニーオーケストレーションに効果的に投資して利益を得るためには、どうすればよいですか?
最も重要なのはテストです。まずは小規模なテストから始めましょう。テストするためのカスタマージャーニーをひとつ選び、その仕組みを確認し、定期的に監視します。顧客の流れが停滞している段階を調査し、作成したカスタマージャーニーを顧客が完了しているか確認します。そのうえで、必要に応じて修正を加えます。最初から細かい部分も含めて、それぞれの顧客体験全体をすべて可視化しようすると、すぐに課題に直面します。何をすればよいかわからなくなります。カスタマージャーニーオーケストレーションエンジンのようなツールがあれば、データから得た知識をもとに、さらに多くの情報が得られます。この情報によって目標達成に向けた取り組みを強化できます。また、こうした情報をもとに発展させていくことができます。
よくある課題にはどのようなものがありますか?
すべてをこなそうすると、行き詰まってしまうものです。関連する課題としては、各チームの賛同を得られていないことも挙げられます。企業によっては、マーケティングとサービスのユースケースを結び付ける場合などに、様々なチームが関与するカスタマージャーニーに対応するための適切な組織構造やKPIがないことがあります。
厳密に言うと、カスタマージャーニーオーケストレーションエンジンは、顧客体験を提供するわけではありません。実際に電子メールやプッシュ通知を送信するわけではなく、その点に関しては、企業が使用している他の電子メールサービスプロバイダー(ESP)やモバイルマーケティングオートメーションソリューションを利用します。希望する体験を構築し、提供するための適切なソリューションの組み合わせを用意することで、顧客体験の提供に関する課題は解決します。つまり、カスタマージャーニーオーケストレーションエンジンを接続しているシステムが必要なスループットに対応できないと、行き詰まってしまうということです。