顧客セグメンテーションとは?マーケティングに活かせる分類、評価、活用方法
効果的なマーケティングは、オーディエンスを把握することから始まります。その優れた方法の一つが、顧客セグメンテーションです。
特性や傾向などにもとづいて顧客を分類することで、顧客のニーズを詳細に把握し、それに応じてマーケティング活動を調整できます。
この記事では、顧客セグメンテーションの概要や実施するメリットとともに、顧客セグメントの分類、評価、活用方法を解説します。
目次
- 顧客セグメンテーションとは?
- 顧客セグメンテーションを実施するメリット
- 顧客セグメンテーションの分類軸
- 顧客セグメントの具体例
- 顧客セグメンテーションを評価する「4R」
- 顧客セグメンテーションを活用する「STP分析」
- 顧客セグメンテーションの管理にはアドビのツールを活用
- 顧客セグメンテーションで効果的なマーケティングを
顧客セグメンテーションとは?
マーケティング分野における「セグメンテーション」は、何らかの基準で「分類すること」を意味します。
なかでも顧客セグメンテーションとは、特性や傾向などにもとづき顧客をグループ分けすることです。顧客セグメンテーションによってできた顧客グループは、「セグメント」と呼ばれる場合があります。
顧客の価値観や購買行動が多様化するなか、すべての顧客を同一視するマーケティング手法は限界を迎えているといえるでしょう。
そのため、顧客セグメンテーションによってターゲットを絞り、個々の顧客に最適な方法でアプローチする必要があります。
なお、マーケティングの「ペルソナ」は、顧客セグメントを擬人化したものです。自社の製品やサービスの顧客像を具現化するペルソナの構築には、顧客セグメンテーションが欠かせません。
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顧客セグメンテーションと市場セグメンテーションの違い
顧客セグメンテーションと似ている言葉に、「市場セグメンテーション(マーケットセグメンテーション)」があります。
市場セグメンテーションとは、顧客の特性や傾向などにもとづいて市場を細分化して絞り込むことをいいます。製品やサービスをどのような市場で売り込んでいくべきか、判断するために用いる手法です。
市場そのものについて考える市場セグメンテーションと、よりパーソナルな部分に焦点を当てる顧客セグメンテーションでは、ニュアンスが異なります。
顧客セグメンテーションを実施するメリット
ここでは、顧客セグメンテーションを実施する具体的なメリットを紹介します。
顧客体験の最適化
顧客セグメンテーションを実施することで、顧客のニーズや期待に合ったサービスを提供しやすくなります。優れた顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)により、顧客ロイヤルティの向上も可能です。
「Adobe Trust Report 2022年版」では、顧客の58%が、企業がパーソナライズされた有意義な体験を提供しない場合、製品やサービスを購入しないことが明らかになっています。
このことから、顧客セグメンテーションによるメッセージやコンテンツのパーソナライゼーションが、いかに重要であるかがわかるでしょう。
利益の最大化
企業は、顧客セグメンテーションを活用し、最も効果が出ると考えられるセグメントに対してリソースを集中させることができます。
さらに、セグメントごとに高精度のアプローチを行うことにより施策の成功率も高まり、利益の最大化につながると考えられます。
商品開発の効率化
顧客セグメンテーションによって応えるべきニーズが明確になり、製品やサービスの開発も効率化します。
各セグメントに適した製品やサービスを提供することで、顧客の信頼を獲得し、市場での競争力も強化されるでしょう。
顧客セグメンテーションの分類軸
顧客セグメンテーションの分類軸には、厳格な決まりはありません。ただし、一般的に用いられる分類軸には、次の4つがあります。
デモグラフィック(人口動態変数)
デモグラフィックは、人口統計学的属性を切り口にした分類方法です。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
【BtoBの項目例】
- 業種
- 業態
- 従業員数
- 設立年数
- 担当者の部署
- 担当者の役職
【BtoCの項目例】
- 年代、年齢
- 性別
- 家族構成
- 学歴
- 職業
- 年収
- ライフステージ
ライフステージは、例えば「就職(新社会人)」「結婚」「出産」といった、人生の節目を指します。
ジオグラフィック(地理的変数)
ジオグラフィックは、BtoBなら企業や事務所の所在地、BtoCなら居住地や勤務地といった、顧客の地理的特性を切り口にした分類方法です。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
【項目例】
- 国
- 地域
- 人口密度
- 気温
- 湿度
- 降雨量
- 文化、習慣
特にBtoCにおいては、家電製品や食料品など、地理的特性が売上に影響する製品である場合に、ジオグラフィックの分類軸が活用されています。
また、世界市場で販売する製品やサービスの場合は、国や文化などによる分類が欠かせません。
サイコグラフィック(心理的変数)
サイコグラフィックは、顧客の心理的要素を切り口にした分類方法です。インタビューやアンケートなどの分析を通して、精度を高めます。
具体的な項目の例は、以下のとおりです。
【項目例】
- 性格
- 価値観
- ライフスタイル
- 趣味嗜好
- 悩み
ビヘイビアル(行動変数)
ビヘイビアルは、顧客の購買行動のパターンを切り口にした分類方法です。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
【項目例】
- 購入目的
- 購入場所
- 購入日時
- 購入製品
- 購入回数
- 購入頻度
- 閲覧サイト
- サイト滞在時間
- 資料ダウンロードの有無
顧客セグメントの具体例
ここでは、前章の内容を参考に、顧客セグメントの具体例を紹介します。
BtoBの例
BtoBでは、以下のような顧客セグメントの例が考えられます。
- IT系企業のDX推進部門
- 中小企業
- 東京都に所在
- 柔軟な働き方を認める社風
- 類似製品の導入歴あり
- 担当者(選定者)と決裁者が異なる
BtoBの場合は、製品使用者、製品選定者、製品購入の決裁者などが異なり、意思決定プロセスが複雑になるケースも珍しくありません。
誰にアプローチするのかによって提供するコンテンツが変わるので、しっかりとセグメンテーションを行う必要があります。
BtoCの例
BtoCでは、以下のような顧客セグメントの例が考えられます。
- 20代女性
- 既婚者で子どもはいない
- 世帯年収700~800万円台
- 大阪府在住/勤務
- 旅行が趣味
- 購入頻度は高い
- 価格よりもデザインを重視
顧客セグメンテーションは、ペルソナデザインとは異なります。あくまでも「ニーズを切り分けること」を念頭に、細かく分けすぎないようにするのがポイントです。
顧客セグメンテーションを評価する「4R」
完成した顧客セグメントが適切であるかを評価する方法に、「4Rの原則」があります。「4R」とは、次の4つの条件のことです。
Rank(優先度)
「Rank」は、各セグメントに優先順位を付けられるかという評価ポイントです。
顧客セグメンテーションができても、優先順位を付けられないとターゲティングができません。
Realistic(有効性)
「Realistic」では、十分な売上や利益を見込める市場規模のセグメントかをチェックします。
投資に見合う利益を獲得できる見込みが少ないセグメントは、ターゲットから外れることになります。
Reach(到達可能性)
「Reach」は、製品やサービス、広告を届けやすいセグメントかという評価ポイントです。
コンタクトをとる手段が乏しいセグメントは、ターゲットとして設定するのは現実的ではないでしょう。
Response(測定可能性)
「Response」は、施策の効果を測定できるセグメントかという評価ポイントです。
次につなげるためには、施策の効果測定が欠かせません。
顧客セグメンテーションを活用する「STP分析」
顧客セグメンテーションと併せて理解しておきたいものに、「STP分析」があります。ここでは、STP分析の概要とやり方を解説します。
STP分析とは
STP分析とは、以下の3つの要素からなるマーケティングのフレームワークのことです。
- セグメンテーション(Segmentation):顧客の分類
- ターゲティング(Targeting):対象となる顧客の設定
- ポジショニング(Positioning):市場における自社の立ち位置の明確化
上記の名称からわかるとおり、セグメンテーションが要素の一つを担っています。
各要素は密接に関連しているので、必ずしもセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順で進めていくのではなく、実務上は各工程を行き来することになるでしょう。
STP分析の「ターゲティング」のやり方
ターゲティングでは、4Rなどにより評価したセグメントをもとに、実際に狙うべき市場を定めます。狙うべき市場とは、目標達成が可能かつ競争優位性を保てる市場です。
具体的には、以下のような手法があります。
- 集中型マーケティング:特定のセグメントのみに絞り、シェアの獲得を目指す
- 差別型マーケティング:複数のセグメントに、それぞれのニーズに合う製品やサービスを提供する
差別型マーケティングは、集中型マーケティングよりも幅広い市場をカバーしたい場合に用いられる手法です。
なお、セグメントを一切考慮しない場合は、上記のほか「無差別型マーケティング」と呼ばれる手法もあります。
STP分析の「ポジショニング」のやり方
ポジショニングでは、ターゲットとして定めた市場内での自社の立ち位置を決定します。市場内の競合他社とどのように差別化し、顧客に高い価値を提供するかの戦略を練りましょう。
差別化ポイントの例は、以下のとおりです。
- 性能の高さ
- 品質の安定性
- 多機能型/機能特化型
- 価格(初期費用や運用費用)の安さ
- デザイン性
- 環境への優しさ
- 導入に必要な期間の短さ
- 導入サポートの有無
- 従業員の知識やスキルレベル
ポイントになる要素を軸にした図(ポジショニングマップ)を作成すると、目指す立ち位置がわかりやすくなります。
顧客セグメンテーションの管理にはアドビのツールを活用
顧客セグメンテーションを実施する準備ができたら、過去のマーケティング施策への反応、購買履歴、レビュー、アンケート調査など、顧客に関するデータを収集しましょう。
それらのデータをもとに有意義な顧客セグメントを構築することで、顧客一人ひとりの体験を最適化できます。
顧客セグメンテーションをより的確に管理するためには、データ管理ツールの「Adobe Audience Manager」の活用がおすすめです。
Adobe Audience Managerでは、あらゆる情報源からデータを収集、統合し、顧客の全体像を把握できます。さらに、属性ベースのオーディエンス、類似モデリングなどの機能により、顧客セグメントの構築や管理に役立ちます。
Adobe Audience Managerについてさらに詳しくは、アドビまでお気軽にお問い合わせください。
顧客セグメンテーションで効果的なマーケティングを
顧客の価値観や購買行動が多様化するなかで、特性や傾向などにもとづいて顧客を分類する顧客セグメンテーションの重要性は高まっています。
顧客セグメンテーションにより、顧客体験を最適化できれば、顧客ロイヤルティの向上や売上の増加を目指せるでしょう。
ただし、適切な顧客セグメントを構築するためには、正確なデータを幅広く収集し、適切な分析による顧客の分類が必要です。
データ管理ツールのAdobe Audience Managerを、顧客セグメンテーションやその先のマーケティング施策に活用してはいかがでしょうか。
(公開日:2023/4/21)