ビジネスのための9つのカンバンボード例

Woman learns about Kanban examples on her laptop

カンバンは、製造ラインを進歩させる合理的な方法として、自動車産業で始まりました。そこから、あらゆるタイプのビジネスや部門に受け入れられるアジャイルフレームワークへと進化しました。現在では、カンバンプロジェクト管理専用のソフトウェア開発カテゴリーまであり、2028年までのCAGR(年平均成長率)は18.4%、推定価値は2億3,470万ドルになると予測されています。

カンバンフレームワークがこれほど人気がある理由のひとつは、さまざまな部門やプロジェクトのタイプに対応できる柔軟性と適応性です。ソフトウェア開発、製品管理、マーケティングなど、あらゆる種類の専門家が、カンバンを導入しやすい組織構造や、タスク管理のための視覚的アプローチを実用化する方法を考案してきました。

しかし、その自由度や柔軟性には課題も伴います。チーム独自のニーズに沿ったカンバンボードを作成するのには、困難が伴うかもしれません。カンバンには画一的な解決策はないので、いくつかの事例を調べたり、ブレーンストーミングでアイデアを出し合ったりすることが役立ちます。

肩書きが「プロジェクトマネージャー」であろうと、業務の一環としてプロジェクトマネージャーを非公式に務めていようと、さまざまなチームのタイプに応じたさまざまな例を調べることは、プロジェクトのタイプやチームの編成に関係なく、優れたカンバンボードを設計するのに役立ちます。カンバンボードとは何か、またチームのタイプ別の具体的な使用例について詳しく見ていきましょう。

カンバンボードとは?

カンバンボードとは、プロジェクトマネージャーが利用するアジャイルフレームワークのツールです。プロジェクトのタスクをカードとして視覚的に表し、進行中のタスクが先に進むにつれて、列やレーンを移動させて作業の進捗ステージを示します。カンバンボードは、リーダーがタスク管理の透明性を高めることを支援すると同時に、さまざまなアイテムがさまざまな開発ステージを進む際に、効率性とリソース管理を最大化できるように設計されています。

担当者やチームリーダーは、プロジェクト内のあらゆる不確定要素をより詳細に把握することで、次のことが可能になります。

カンバンボードについて詳しくは、こちらの記事 をご覧ください。

カンバンボード例を活用するためのアドバイス

次のセクションの例からもわかるように、カンバンボードを導入するには、プロジェクトやチームの必要性に応じて簡素化したり複雑化することができます。ここでは、カンバンボードの導入を始める前に、プロジェクト管理プロセスを合理化し、チームメンバーの負担を増やさないための基本原則をいくつか確認しておきます。

基本的なカンバンボード例

カンバンの中心となる作業は、プロジェクトのさまざまなタスクを、あるステージから次のステージに移動させることです。そのため、プロジェクトのさまざまなステージやステータスを示す複数の列が、左から右に並ぶデザインが基本になります。

個々のタスク(作業項目)は、タスクの詳細と履歴が記載されたカードで表されます。これには、仕様書から背景説明、チームのメモまで、何でも含めることができます。プロジェクトマネージャーは、ベストプラクティスとして、チームで利用可能なリソースに応じて、ひとつのステータスの列のカードの数を、WIP(ワークインプログレス)制限と呼ばれる一定数に制限すべきです。これは、チームメンバーが担当するタスクが多くなりすぎたり、バックログに追加することになるのを防ぐのに役立ちます。

カードがさまざまなステージを進むにつれて、左から右へ、完了(最終納品)に向かって移動します。最後のステージはワークフローの終わりを表し、そこで製品が最終的に仕上げられ、タスクの仕様どおりに納品されます。

最も基本的なカンバンボードは、これらの原則に従いつつ、以下の重要なステージが組み込まれています。

the basic stages of a Kanban board

この基本構成は、カンバンを始める大半のチームが利用できますが、自分たちのワークフローに従って、この構成を変更することもできます。たとえば、レビュー後にタスクを「進行中」に戻す代わりに、「修正」のような段階を追加して、初回のタスクとフィードバック後のタスクを分けることができます。

IT運用チーム向けのカンバンボード例

大半のITチームは、プロジェクト管理において、絶えず押し寄せてくるリクエストと常に変化する優先順位の課題に直面しています。そのため、特定のプロジェクトにどのようなリソースが割り当てられているのか、あるいは与えられた時間枠の中でタスクがどのように進行しているのかを正確に把握することが難しくなります。

そこで、IT運用マネージャーは、いくつかのカンバン要素をカスタマイズすることができます。各列またはステータスがチームのワークフローを反映するよう変更することに加えて、スイムレーンという機能を利用することもできます。スイムレーンとは、異なる作業カテゴリーを区切る、カンバンボード上の横方向の行のことです。たとえば、IT運用チームでは、「進行中」の列に、ネットワークタスク、セキュリティタスク、ソフトウェアアップグレードタスクなど、作業の種類ごとに複数のスイムレーンを設定することができます。これは、運用マネージャーがWIPの制限を監視しながら、適切なリソースを割り当てるのに役立ちます。

大規模な組織では、成果物やスキルセットの種類ごとに特化したチームやグループを表すためにスイムレーンを使用することもできます。これにより、チームリーダーやマネージャーは、作業負荷がメンバーに均等に配分されていることを確認し、与えられた時間枠で達成できる以上の成果物にチームが取り組むのを防ぐことができます。

ソフトウェア開発チーム向けのカンバンボード例

An example of a software development kanban board

ソフトウェア開発チームは、アジャイルフレームワークの導入から恩恵を受けることが多いものです。ほかの方法論を利用しているチームでも、カンバンボードでワークフローを視覚化することには利点があります。通常、開発プロセスでは、カンバンボードの4つの標準的なステージ以上のステージが必要になります。プロジェクトマネージャーは、まず、カンバンボードの列が、プロジェクトの多数の進行ステップを反映していることを確認することから始める必要があります。バックログ、グルーミング、開発中、テスト、検証、レビュー、リグレッション、実装、納品などのステージが必要です。

スイムレーンは、開発者チームのさまざまな優先順位を表すためにも利用することができます。たとえば、スクラムチームの中には、ポイントやTシャツサイズの見積もり使って、タスクの労力を見積もるところもあります。そして、タスクをこの労力レベルにもとづいてスイムレーンに分けます。スイムレーンのもうひとつの利用方法は、タスクを優先度レベルに分け、緊急アイテムに適切なリソースを割り当て、そうではないタスクよりも優先することです。

カンバンボードを利用することは、マネージャー、プロダクトオーナー、スクラムマスターが、あるスプリント、または反復サイクルにおいて、一人の開発者が処理できる以上のものを割り当てないようにするのにも役立ちます。ここでも、WIP制限は、スプリントで割り当てられたあらゆるものが、納期どおりに完了することを保証するために不可欠になります。

エンジニアリングや製品開発チーム向けのカンバンボード例

カンバンは製造業をルーツとしているため、物理的な生産環境でも機能するのは当然のことです。製品開発では、多数のチームが関与することが多く、成果物と時間枠に関するコミュニケーションが不可欠です。カンバンボードは、複雑なプロセスを、わかりやすいシンプルなステータスに分解することができます。

最も一般的なのものは、カンバンボードの各列を生産ライフサイクルのそれぞれのステージに合わせることです。多くの場合、いくつかの生産前ステータスを含めます。これらはドロップレーンや未割り当て列と呼ばれることもあり、ここではインバウンドリクエストを確認したり、問題を監視したりします。プロジェクトマネージャーは、カンバンボードを読みやすくするために、より大きなカテゴリで列をグループ化することもできます。たとえば、「タスクキュー」というヘッダーを作成し、その下に「バックログ」と「To Do」の列を配置します。

カンバンボードは、プロジェクトや製品の進捗状況を経営者や関係者に知らせるためにも広く利用されています。まずタスクを大まかにグループ化し、さまざまなスイムレーンを通ってボードの下方に移動するにつれて、段階的に詳細化するように整理することができます。たとえば、一番上のスイムレーンには、進行中のすべてのプロジェクトの全体的なタイムラインを配置し、その下に特定のプロジェクトに割り当てられたカードのスイムレーンを配置することができます。

デザインチームやクリエイティブチーム向けのカンバンボード例

An example of a creative team Kanban board

クリエイティブチームでは、製品の発売からイベントのプロモーションまで、さまざまなキャンペーン施策やプロジェクトが同時進行することがよくあります。プロジェクトマネージャーは、割り当てられたプロジェクトの特定の時点での内容を理解していないと、リソース管理に苦労することになります。たとえば、今日作業したものが6カ月後に必要になるかもしれません。

クリエイティブなワークフローも、ブレインストーミングや開発の段階では、より長引く傾向があります。プロジェクトマネージャーは、単一の「進行中」ステージの代わりに、「進行中」ヘッダーを作成し、「アイデア出し」や「コンセプトの洗練」などの複数の列をここにまとめ、チームでの検討や関係者の承認のためにレビューを組み込むことができます。こうしたステージはどれも、コピーライティング、グラフィックデザイン、編集、最終納品、実装などの実作業を反映した、実際の「開発中」ステージの前に実施されます。

クリエイティブチームのカンバンボードは、効率化を促すものであるべきです。たとえば、現実のワークフローやステップを反映させながらも、複数の別々のレビュー列ではなく、ひとつのレビュー列を使うべきです。スイムレーンは、サンドボックスや実験的なもの、「あればよい」的なものを、重要なプロジェクトから切り離すのに最適な方法です。また、施策の成果物を、それぞれのタスクカードに関連付けて分割することで、どのタスクがどの成果物につながっているのかを明確にすることもできます。

カスタマーサポートチーム向けのカンバンボード例

サポートの問い合わせにチケットシステムを利用していない小規模なカスタマーサポートチームにとって、カンバンボードはタスクのステータスを把握するのに適したソリューションです。ステータスは、見出しの下にグループ化することができ、「リクエスト済み」、「作業中」、「エスカレーション済み」などの個々のステータスを追跡しながら、いくつの問題がレビュー中なのか、それとも顧客からの回答が必要なのかを明確に把握することができます。

アイテムは、サポート担当者と顧客の間で行われたアクションによって、ステータス列の間を行ったり来たりします。「顧客待ち」の列には、対応済みだが、まだ完了することができないアイテムを配置することもできます。また、あらゆるやり取りがカードに記載されているため、チームメンバーが、必要なサポートのレベルに応じてアイテムをピックアップしたり、割り当てを変更したりする際にも役立ちます。

スイムレーンを利用すれば、サービスレベル合意書(SLA)のステータス、完了までの時間、重要度などにもとづいてカードをグループ化することでさらに細かく分けることができます。また、問題を解決するために開発や営業などのほかの部門の協力が必要な場合、サポート層や問題のエスカレーションなどを反映するために利用することもできます。

マーケティングチーム向けのカンバンボード例

クリエイティブチームと同様に、マーケティング部門も施策を構築することが多く、プロジェクトを軌道に乗せるために複雑な組織的ワークフローを必要としています。カンバンボードは、施策の詳細だけでなく、アセットをいつ公開できるか、いつどこで公開するか、いつ削除するかなどのステータスを視覚的に表すことができます。

マーケティングマネージャーは、ローンチ前後のタスクに応じて列をグループ化することで、カンバンボードの構成的特性を大いに活用することができます。たとえば、「デザイン中」というステータスのヘッダーには、「初期モックアップ」、「関係者レビュー」、「リビジョン」などを含めることができます。スイムレーンは、施策の類似したアイテムをまとめたり、SEO、デザイン、コピーライティングなどのタイプのタスクをグループ化して、タイプ別のリソース割り当てを見やすくするなど、さまざまな方法で利用できます。また、プロジェクトが完了した後は、アクティブな施策のステータスを利用して、現在の市場の状況を把握することもできます。

マーケティングのカンバンボードを構成するもうひとつの方法は、全体的なマーケティングファネルと組織のカスタマージャーニーを反映することです。この複雑なカンバンボードでは、トップ、ミドル、ボトムの各ファネルの活動を反映するステージをグループ化し、活動や施策のタイプにもとづいてプログラムをさらにセグメント化するためのスイムレーンを配置します。

営業チーム向けのカンバンボード例

カスタマージャーニーといえば、営業チームもカンバンボードを活用できます。セールスリーダーは、コミッションや財務目標を追跡するためにより複雑なシステムを利用する場合がありますが、トップダウンでパイプラインがどのようになっているかを明確に把握する必要があります。これにより、カスタマージャーニーや案件の進捗に関して、チームが営業目標に対してどのような成果を上げているかをより明確に把握することができます。また、マネジャーはこの方法を用いて、営業担当者のパフォーマンスを可視化し、コーチングの対象領域に注目することができます。

a generic Kanban board example

カンバンボードでは、セールスファネルのステージを利用して、機会とタスクを整理することができます。

小規模なチームでは、これらの幅広いセールスファネルの各ステージにおいて、電話、メール、資料の送付など、見込み客をさらにエンゲージするための営業チームのさまざまな行動を反映するステータスを利用すると便利です。スイムレーンは、注意を払う必要があるかパイプラインから削除する必要のある、進行の遅い案件や停滞している案件に注意を喚起するための優れたオプションです。

人事部向けのカンバンボード例

小規模な人事(HR)チームは、カンバンボードを利用して、候補者パイプラインを追跡することから大きな価値を得ることができます。採用担当者や人事部のマネージャーは、応募者の分類や面接プロセスでのさまざまなステップを表すステージや列を利用することで、どの応募者にさらに注意を払う必要があるかをすばやく視覚化することができます。スイムレーンは、異なる採用段階をたどる可能性のある応募者を、部門や年功レベルによって区別するのに役立ちます。

また、応募者が、候補者から新入社員へと段階的に移行するため、採用前から採用後への移行をよりシームレスにすることができます。面接やオンボーディングのようなタスクは、人事部の別々の職域で担当することがよくありますが、カンバンボードを利用することで、候補者の進捗に沿ってあらゆるステージがカバーされていることを確認することができます。

列のステータスは、面接日の連絡、履歴書提出の待機、合格通知の送付など、人事部が担当している次のアクションを追跡するためにも利用できます。列のタスクカードは、候補者が入社初日までに必要なオンボーディングのステップを受け、必要な書類を提出したかどうかを追跡するために使用することもできます。

カンバンボードを使い始める

カンバンボードは、チームにおけるタスクの進捗状況や分量を可視化し、全員が説明責任を果たし、プロジェクトを軌道に乗せるために全員が何をすべきかを明確にするのに最適な方法です。

ふたつとして同じカンバンボードはありませんが、ほとんどのカンバンボードは、あらゆるタスクが通過しなければならないステップやステージを、段階的にワークフローで示すという点では共通しています。目標は、各タスクカードを時間通りに、自社の目標を達成するための要件に沿って、最終的な完了ステータスに移行させることです。カンバンボードは、プロジェクトの状況を瞬時に視覚的に示すことができ、対処すべき障害やリソース配分の問題を特定することができます。

カンバンボードを構成し、ワークフローを最適化し、チームがカンバンボードを利用してプロジェクトを進めるためのステップをいくつかご紹介します。

The steps for building a Kanban board

  1. 大部分のタスクが承認されるまでに通過するさまざまなステップやステージを評価し、ステータス列の設定に利用します
  2. チーム、施策、ジョブなどのカテゴリごとにタスクをグループ化できるかどうかを検討し、ボードをさらに細分化するためにスイムレーンを作成します
  3. 単一のステータスや担当者に負担がかかりすぎて生産が停止することがないように、WIP制限を設定します
  4. 新しいカンバンボードを展開する際に、何が機能し、何が機能しないかについて、チームメンバーがフィードバックできる環境を構築します
  5. プロジェクトの成果物を明確化し、チームが場所を問わず作業できるようなデジタルツールの使用を検討します。こうしたツールは、上層部向けの報告を合理化することにも活用できます

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