MA(マーケティングオートメーション)とは?基礎知識や事例を紹介
マーケティングオートメーションとは、収益向上と業務の省力化を目的として、マーケティング活動を自動化、効率化するための方法論、技術です。英語のmarketing automationの接頭語を取り、しばしば「MA」と呼称されます。この記事でも「マーケティングオートメーション」を「MA」と表現します。
MAを導入するメリットは、見込顧客一人ひとりの興味関心に合わせたコミュニケーションが可能となり、良好な関係を築くことも可能になる、ということです。
一方で、MAの導入効果を得るには、さまざまなポイントを押さえておく必要があります。MAに初めてふれる方も概要がつかめるよう、MAの基礎知識や活用のポイント、成功事例などをわかりやすくご紹介します。
- MAとは何ですか?
- MAツールとは
- MAツールの主な機能
- MAが求められる背景
- MAを導入するメリット
- MAツールとCRMツールやSFAツールの違い
- MAが効果を発揮するビジネス
- MAと相性が良いマーケティング施策
- MAツールをスムーズに導入し、活用する方法
- MAを活用した収益プロセス
- MAを活用した成功事例
- MAを活用して、マーケティング活動の効率化を
MAとは何ですか?
MAとは、マーケティング活動を自動化、効率化し、見込顧客を育成する仕組みです。MAという概念が普及するにつれて、MAという言葉の解釈もさまざまに広がりました。アドビではMAを、マーケティング活動のうち煩雑な作業や複雑な業務を自動化、効率化するための方法論や技術、と捉えています。
MAとは何か、どのような技術かを詳しく見る前に、まず、マーケティングとは何か、簡単に振り返ってみましょう。マーケティングの定義もさまざまですが、ここでは、「顧客のニーズを満たし、その成果として利益を上げること」と既定します。
広義のマーケティングには、たとえば次のような、幅広いビジネス活動が含まれます。
- 市場理解(顧客ニーズの把握)と価値創造(商品やサービスの開発)
- 顧客ニーズの創出
- 顧客価値の最大化
このように、マーケティング活動とは非常に幅広く、非常に複雑です。そのうち、定型的な仕事の部分を自動化することができれば、それ以外の非定型な仕事、イノベーション、戦略的意思決定、クリエイティブな業務に、人は専念することができます。MAとは、こうした自動化を担う仕組み、と言えます。
商品やサービスの開発は、人によるイノベーションとクリエイティビティに極めて大きく依存します。続く顧客ニーズの把握、顧客ニーズの創出、顧客価値の最大化も、戦略や施策戦術を練る非定型業務と、定型業務で成り立つと見立てることができます。これをすべて人手でこなすよりも、定型業務をMAで分担すれば、マーケティング活動全体を効率化することができます。
MAツールとは
次に、MAの具体像をご紹介しましょう。マーケティング活動のうち、自動化、効率化、省力化できる部分を担うようあらかじめ設計された、一連のマーケティングテクノロジー(マーテク、MarTech)を指して、「MAアプリケーション」や「MAツール」と呼ぶことがあります。
MAとは方法論、技術であり、MAツールとは、それを具現化するテクノロジー、と整理するとわかりやすいでしょう。ここではMAの要件を満たすテクノロジーを指して「MAツール」と呼びます。
では、MAツールが得意とする領域は何でしょうか。それは主に次の通りです:
- 潜在顧客へのリーチと獲得(見込顧客化)
- 見込顧客のニーズ把握と育成(顕在顧客化)
- 顕在顧客のとの商談(既存顧客化)
- 既存顧客の維持、活性化
既存顧客に新規ビジネスを展開する場合など、商品やサービスの開発段階にもMAの活躍の機会はあるかもしれませんが、一般的にはマーケティングリサーチが用いられることでしょう。
MAでどのような施策を狙ったら良いのか、まずは大まかに捉えたい場合は、こちらのインフォグラフィックがお役に立ちます。
ここからは、MAツールが得意とする領域について順に見ていきましょう。
潜在顧客へのリーチと獲得
顧客と企業の接触は、商品やサービスを認知してもらうことから始まります。そして、関心を持った潜在顧客の同意を得て、コンタクト情報を獲得することで、継続的なコミュニケーションをおこないます。
現代は、さまざまな情報源にあふれています。これは、B2C取引の消費者相手の場合だけでなく、B2B取引のバイヤー相手の場合も同様です。顧客にとっての時間は有限な一方、情報を届けるチャネルは、メディアサイトや動画サイト、自社サイト、SNS、アプリ、メール、店頭、IoTなど膨大です。そのため、潜在顧客に対して企業がリーチし、自社を認知してもらうには、きめ細かな対応が必要です。
インターネット登場以前は、マスメディアを使った大量かつ一方向コミュニケーションが主流でした。現代は、「一人ひとり」の興味、嗜好、行動が異なるため、一人ひとりとの双方向コミュニケーションが不可欠となっています。つまり、「1 to 1コミュニケーション」(One to One = ワントゥワン)が求められます。MAは、1 to 1コミュニケーションの実現に最適です。
見込顧客のニーズ把握と育成
関心を持ち、コンタクト情報を開示してくれた見込顧客との初期的な関係ができたら、次は、よりニーズを高める方向へと、顧客を育成します。見込顧客の潜在的なニーズを顕在化させる過程を、顧客ニーズの育成と呼びます。会員登録してくれた、資料請求してくれた人は、何らかの関心を持つ見込顧客として認識し、見込リストに加えることになります。
顧客ニーズの高まりは、顧客が自発的に行動することで起こることもありますが、企業側からの情報提供や提案によって起こるかもしれません。企業側からの働きかけによって顧客ニーズを育成するには、メール、SNS、電話などのチャネルを用いて、商品情報、セミナーの招待、特別な提案の告知などのコンテンツを伝え、その反応を把握する、といった地道な業務が必要となります。この働きかけと反応の把握から、見込顧客のニーズを徐々に把握していくことができます。
このとき、もし見込顧客が10人だとしたら、手作業でも対応できそうです。しかしそれが数百、数千と増えていくと、作業もリニアに増えていき、いずれ破綻してしまうでしょう。
この問題は、テクノロジーによって解決できます。判っている範囲の顧客ニーズや過去の顧客コミュニケーション履歴などをもとに、適切なコンテンツを配信し、その反応を把握する、という業務を、MAは自動化することができます。見込顧客の数が増えたとしても、人手はかなりません。これにより、見込顧客が求めている情報を適切なタイミングで提供し、商品に対するニーズを育成することで、効率的に商談へと進めることができます。
顕在顧客のとの商談
見込顧客のニーズが高まると、いよいよ購買の段階へ進む可能性が高まります。
企業のビジネスモデルによって、購買の瞬間もどのような形態を取るかは様々ですが、見込顧客の判断に営業が介在する場合、見込顧客とのコミュニケーションを、スムーズに営業担当へと引き継がなければなりません。見込顧客はこれまでどのような情報を収集してきたか、検討度合いはどれくらいかは、それまでのコミュニケーションの過程で把握することができます。その情報とともに、タイミング良く営業に引き継ぐことができれば、購買の確度も高まるはずです。また、まだ時期尚早であったとしても、顧客のペースでしっかりと検討してもらうために、いったん営業対応を停止し、情報提供に戻るのも有効かもしれません。このように、顧客ニーズを育成する段階と商談の段階をスムーズに切り替えることができれば、顧客にとっても無駄なコミュニケーションを防げるだけでなく、企業にとっても余計な手間を減らせることになります。そこでMAは、営業への情報引き継ぎ、育成と商談の切り替えといった業務を自動化する役割を担います。
マーケティング活動全体の効率化に欠かせない分析
潜在顧客へリーチし、どのような人がどれだけ関心を持ってくれたか、見込顧客は何に関心を寄せ、どのような行動を取ったのか、ニーズの高まりが顕在化したのはどの顧客で、営業との商談まで至ったのはどれくらいか。こうしたマーケティング活動の状況は、数値で表すことができます。たとえば、広告から自社サイトへの遷移数、会員登録数、メールの開封や未開封、自社サイトへの来訪などは、データとして収集できます。こうしたデータを一人ひとりの顧客と関連付けて見ることができれば、施策の効果や投資価値を定量的に分析し、継続や改善の意思決定を下し、PDCAサイクルを高速でまわすことができます。
あらゆる部門の活動、施策、チャネル、そして一人ひとりの顧客のデータを収集、分析するのは、人手では不可能です。しかし定量的、客観的に分析し、可視化することができなければ、マーケティング活動全体、ビジネスの収益プロセス全体がブラックボックスになってしまい、実効性のある改善に取り組むのも困難でしょう。こうした問題も、MAが解決できます。
MAについて詳しく知りたい方は、「マーケティングオートメーション入門ガイド」をダウンロードしてご活用ください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
MAツールの主な機能
MAを具現化するテクノロジー、すなわちMAツールは、国内外のさまざまな企業から提供されています。MAツールの基本的な機能を知ることで、MAの役割や実務への活用法をさらに具体的に理解していきましょう。
MAの代表的なツールのひとつであるAdobe Marketo Engageの特長や提供機能については、以下の資料でもご紹介しています。
リード管理機能
リード管理機能とは、自社サイト、ランディングページ、メール、セミナーなど、さまざまな接点で得た見込顧客(リード)の情報を一元管理できる機能です。管理すべき情報は、B2Bなら、所属企業の企業名、業種、所在地、従業員数、売上などのファーモグラフィック情報、氏名、所属部署、役職、メールアドレスといった名刺情報を含む、性別、年齢などのデモグラフィック情報、関心領域、優先基準などのサイコグラフィック情報などがあります。B2Cなら、趣味、好みなどもサイコグラフィック情報となります。こうした情報を自由にフィールドとして用意し、顧客属性として管理できます。
見込顧客の情報が、名刺交換や個人情報の取得によって実名と結びつくことを「実名化」といいます。また、実名化していない見込顧客を、匿名の見込顧客と呼びます。
管理できる見込顧客は、実名化されたものに限りません。初めて自社サイトを訪問した匿名の見込顧客には、Cookieを発行することで、今後の再訪問時にも継続してトラッキングすることができます。こうした匿名の見込顧客の行動履歴は、後でフォーム申請や名刺交換によって実名と紐づけられる場合もあります。これにより、初めて名刺交換をした見込顧客が、実は以前から自社のサービスに興味を持っていたことがわかるなど、関心の高さや興味の方向性を知ることに役立ちます。
スコアリング機能
スコアリング機能とは、個々の見込顧客の行動に対して重み付けされた点数(スコア)を付与し、案件化の確度を判別する機能です。スコアリング機能を用いることで、興味関心の高さを数値として定量化、可視化することができます。
例えば、自社サイトを訪れたら+2点、資料請求で+10点、メールの開封で+3点、未開封で-3点といったスコアを設定します。そして、累積の点数が所定のしきい値ごとに段階を設定します。すると、特定の見込顧客の案件化確度を「Cold」「Warm」「Hot」のように、興味関心の段階として把握することができます。成約に至る可能性が高まった見込顧客を営業に送客し、商談に持ち込む、といったことに活用します。
キャンペーン管理機能
キャンペーン管理機能とは、条件にあてはまった見込顧客に対し、自動的にマーケティング施策が実施されるように設定する機能です。
例えば「スコア50以上の見込顧客が、自社サイトの価格ページを閲覧したらポップアップでクーポンを提示する」のように、属性情報と行動情報を掛け合わせた条件設定と細かなアクションを指定することができます。
メールマーケティング機能
メールマーケティング機能とは、メール配信によって見込顧客に適切な働きかける施策を管理する機能です。施策には、顧客ニーズの喚起、ニーズの育成、商品やサービスのファン育成など、個別の目標があります。そのため、施策毎に、見込顧客の属性情報や行動情報をもとにして施策対象者を特定してメール配信リストを作成し、イベントへの集客、商品情報のお知らせといった、施策に沿ったコンテンツをメールで配信します。
見込顧客の状況に応じてメールのコンテンツ、配信タイミング、配信頻度を設定します。また、キャンペーン管理機能で紹介したように、見込顧客の行動に応じて配信する、トリガーメールという手法もあります。
また、メールの到達率や開封率、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、配信頻度の検討に欠かせない配信停止率(配信ごとの配信停止依頼を受ける割合)を把握できるほか、A/Bテストにより、コンテンツの効果を比較検証することができます。これらの機能により、メールマーケティングの精度を効率的に高めることが可能です。
メールマーケティングによって顧客との関係を構築する具体的な手法については、併せて以下の資料をご覧ください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003329-ma-basic-email-marketing
社内アラート機能
社内アラート機能とは、見込顧客がメール開封や自社サイトの閲覧などを行動を取ったときに、営業担当にアラートを配信する機能です。メールはもちろん、SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールにアラートを配信できるMAもあります。
属性情報や行動を設定して、条件に合った見込顧客をピックアップすることができます。例えば、「競合サービスを年間契約している見込顧客が、まもなく更新月を迎えるタイミングで自社サイトを閲覧している」といった情報をリアルタイムで取得し、アプローチのチャンスを逃さず営業担当に伝えることが可能です。
ランディングページやフォームの作成支援機能
ランディングページやフォームの作成支援機能とは、その名のとおりランディングページやフォームを作成する機能です。
MAを運用する際には、リードの行動を可視化し、シナリオやマーケティング施策のPDCAをスピーディーに回すことが重要になります。そのため、簡単なランディングページやフォームの作成や修正であれば、エンジニアやwebサイト制作会社に依頼するより、マーケターが対応するほうがスピード面でもコスト面でも有利です。そのため、MAには手軽にランディングページやフォームを作成することができる機能が備わっています。
自社サイトのパーソナライズ機能
自社サイトのパーソナライズ機能とは、webサイトで表示させるコンテンツや広告を、ユーザーの興味や関心に合わせて出し分ける機能です。
メールやwebサイトのコンテンツ、web広告など、複数のチャネルで一貫したコミュニケーションを行うことで、検討の促進やエンゲージメントの向上などが期待できます。
MAによって細かい機能は異なりますが、匿名顧客にもパーソナライズされた情報を配信できるものや、機械学習で見込顧客のニーズを把握できるものもあります。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-personalization-at-scale-report
CRM/SFA統合機能
CRM/SFA統合機能とは、CRMツールやSFAツールとMAツールを統合する機能です。
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客関係管理などと訳されます。顧客情報を一元的に管理し、必要に応じて適切に活用することで、利益の向上を目指す手法です。SFA(Sales Force Automation)は営業支援システムと訳され、営業が商談を開始してから受注に至るまでの進捗状況を可視化し、その活動の管理を行う手法を指します。
カスタマーサポート部門はCRMツールを使っている、営業部門はSFAツールを使っているという場合でも、MAツールと統合することで、各部門が同じデータを共有することができます。データを共有することで、オンラインでの行動情報にもとづいた適切な顧客対応が可能になります。また、マーケティング施策の貢献度が測定できるので、マーケティング投資の増額交渉にも役立ちます。
連携できるツールはMAによって異なりますので、MAと併用したいツールが決まっている場合は、連携可能なMAを選ぶ必要があります。
CRMとMAの連携のメリットについての詳細は以下の記事にてご紹介しています。
API連携機能
API連携機能とは、MAツールと他社アプリケーションを、APIによって連携させる機能です。
API(Application Programming Interface)とは、アプリケーションと別のアプリケーションを連携させる、ソフトウェア上の仕組みを指します。APIが公開されているMAツールであれば、他社アプリケーションと連携させることができるため、機能の追加や、アプリケーション間での情報共有が可能になります。
例えば、外部のDMP(Data Management Platform)などからデータをインポートすれば、分析、施策の設計に活用することができます。また、MAツールで設定したコミュニケーションシナリオを、チャットボット、SMS、郵送DMといった外部ツールを使って実施することも可能です。
レポーティング機能
レポーティング機能とは、マーケティング施策を実施した結果を視覚的にまとめる機能です。
レポーティング機能は、マーケティング施策のPDCAサイクルを回す上で欠かすことができません。高機能のMAツールなら、詳細なレポーティング機能を搭載しており、ニーズに合わせて細かく項目をカスタマイズすることができます。
<作成できるレポートの例>
- メールの開封率、クリック率
- ランディングページのコンバージョン率
- マーケティング施策ごとの獲得リード数の比較
- 顧客ステージの遷移状況
- 商談への貢献分析
これらのレポートを活用することで、さまざまな角度から改善点を見つけ、施策の精度向上に貢献します。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003265-essentials-buyer-journey
MAが求められる背景
MAの役割やMAツールの代表的な機能を知っただけでも、マーケターや営業担当の方はMAの重要性を強く感じていただけたのではないでしょうか。さらに近年では、社会環境の変化やテクノロジーの進歩から、MAによるマーケティング活動の重要性はさらに高まり、事業成長になくてはならないツールへと変わりつつあります。
MAの概念やテクノロジーは、マーケティング先進国の欧米で誕生し、日本には「MA元年」といわれた2014年頃から普及がはじまりました。日本にMAを紹介したのは、当時のマルケト日本法人(2019年にアドビが統合)です。その後も日本でのMAの認知や導入事例は増え、現在のように普及しました。
MAが求められる背景を、さらに詳しく見ていきましょう。
顧客接点の拡大によりマーケティングが変化している
以前まで、企業が提供する製品やサービスのチャネルは限られていました。消費者が電化製品を買おうと思えば、テレビCMや雑誌などのマスメディアを通じて製品やービスを認知し、家電量販店の店頭で販売員やカタログから詳細情報を得る。B2Bにおいても、営業担当者のテレアポや訪問営業が双方にとって重要なチャネルであり、企業は限られたチャネルの中でマーケティングや営業活動を行っていました。
しかし、1990年代後半からのインターネットの普及、そして2010年代以降のスマートフォンやSNSの普及により、顧客接点は大きく拡大しました。IoTやスマートデバイス、VR/AR、メタバースなど、新興の顧客接点も次々と登場します。その結果、情報は氾濫し、人々は興味関心のない情報を積極的にシャットアウトしてしまいます。
そのため、企業は製品やサービスの情報を見込顧客に確実に届けるために、適切なコンテンツを、的確なターゲットに、タイミングよく、適切なチャネルを選択して届けることが求められるようになりました。
顧客が求める情報と体験が変化している
一方、人々の情報収集の在り方も変化しました。さまざまなwebサイト、レビューサイト、動画配信サービス、SNSの口コミなど、人々は多様なチャネルを通じて製品やサービスの調査、検索、比較をすることができます。店頭(B2C)や営業担当との商談(B2B)が、商品紹介を一から受ける場ではなく、競合商品との細かな比較や価格の話し合いの場になることもあるでしょう。
さらに人々は、購買意思決定において価格よりも顧客体験を重視します。自分のために選別された、自分にとって意義のある情報を、適切なタイミングで受け取り、製品やサービスを利用したいと考えているのです。
そのためには、顧客とのコミュニケーションをパーソナライズした1 to 1コミュニケーションを実施し、良質な顧客体験を提供することで、顧客からの信頼を得る必要があります。
新たなテクノロジーで人々のニーズに応える必要がある
きめ細やかな1 to 1コミュニケーションを、10人、20人ならともかく、膨大な見込顧客に対して実践することは、人手では不可能です。幅広いチャネルを自由に行き来するターゲットの行動を捉え、情報を欲している接点でタイミングよく最適なコンテンツを提供するには、AIをはじめとする最先端のテクノロジーを駆使する必要があります。
2011年段階で150程度だったマーケティングテクノロジーは、2022年時点では10,000弱も提供されています。その中でも、マーケティングの土台となるシナリオを構築し進化させるMAの分野は、そのほかのあらゆるマーケティングテクノロジーと連携するコントロールタワーとして重要です。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003273-ma-marketing-ai
MAを導入するメリット
MAを採用し、MAツールを導入するメリットは、何でしょうか。今までの説明をもとに、より具体的なメリットに焦点をあててご説明します。
顧客との関係構築によりブランド価値が向上する
まず、顧客との関係構築による、ブランド価値の向上が挙げられます。
マスメディアが情報の中心だった時代には、CMが売上アップやブランディングにおいて重要でしたが、現代では、マス向け情報だけでなく、チャネルを自由自在に使いこなして、自分にとって重要な情報を選別しています。
そこで重要なのは、パーソナライズされた情報の発信です。MAツールを導入すれば、パーソナライズされた情報発信が可能になります。人手では対応不可能な規模の見込顧客に対して1 to 1コミュニケーションを実践し、ニーズをいち早く察知して情報提供やフォローができるのが、MAの強みです。
「自分だけに提供される」「今の自分に最適な」情報を提供し、高いエンゲージメントを醸成することで、企業や製品やサービスの、ブランド価値の向上に貢献します。
マーケティングプロセスの可視化により収益が向上する
マーケティング活動が可視化され、収益向上が期待できます。その理由を順次ご説明します。
優先度の高い見込顧客の判別により営業生産性が高まる
営業生産性を高めるためには、すべての見込顧客に手厚く対応するのではなく、購入意欲が高まっている見込顧客に集中し、受注率を向上させる必要があります。MAツールを導入し、マーケティング活動が可視化されると、購入意向に応じて見込顧客の優先度を判断することが可能です。
新規獲得に依存しない収益プロセスが構築できる
リードジェネレーション(見込顧客の新規獲得)において、すぐに案件化できる可能性を持つ見込顧客はおよそ10%であり、65%はすぐ検討する必要性を感じていません。リードナーチャリング(見込顧客の育成)なしでは、いずれ購買や受注の可能性がある見込顧客との関係性を維持できず、取りこぼすことになりかねません。
MAツールではリードナーチャリングだけでなく、失注した見込顧客のリサイクル、さらにはCRM/SFAツールとの連携によって既存顧客に対するアップセルやクロスセルに向けたマーケティング施策を行い、新規獲得に頼らない売上アップを実現することができます。
マーケティング業務が効率化できる
チャネルが多様化、複雑化したデジタル時代の顧客一人ひとりの意識と行動を、人手で把握することは非常に困難です。今、マーケターに必要なことは、MAツールをはじめとするマーケティングテクノロジーの導入によってルーティンワークを効率化し、得られた時間でより生産的で価値のあるマーケティング活動に取り組むことにほかなりません。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003353-why-should-use-abm
マーケティング施策の効果が証明できる
マーケティング施策の効果の証明も、間接的に収益向上に貢献します。
人々のチャネルの多様化は、マーケターにとって自分たちの貢献度を会社に証明することも困難にしています。顧客と自社の製品やサービスとの接点やタイミング、購買局面などが複雑化したことで、第三者から見てマーケティング施策の効果が判断しづらいのです。そのわかりづらさが営業部門からマーケティング部門への不信につながるなど、組織への悪影響も及ぼしかねません。
MAツールを導入すると、個々の見込顧客の行動履歴が視覚化され、スコアリングされた購入意欲の上昇や、受注率アップとマーケティング施策との関連性も、分析とレポーティングによって証明されます。また、施策の効果が見えることで、予算の最適配分にもつながります。
他部門との連携が強化できる
マーケティング部門と他部門との連携強化も、MAツールを導入する大きなメリットのひとつです。
逆にMAツールをマーケティング部門だけの活用で完結していては、そのメリットも見込顧客の獲得と送客にとどまってしまいます。営業によって成約した既存顧客にも継続的にアプローチし、優良顧客の母数を増やし、個々の顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めていくためには、営業部門をはじめ、他部門との連携が欠かせません。
マーケティングが送客する見込顧客の質が向上する
マーケティングが営業に送客する見込顧客の質は、両部門の関係性にも影響を与えます。
例えば、マーケティング部門は「マーケティングコストをかけて獲得した見込顧客を渡しても、営業の対応が弱い」と感じているのに、営業部門は「マーケティングが確度の高い見込顧客を送ってこない」と考えていることはないでしょうか。
MAツールを導入すれば、スコアとステージによって受注確度の高さが可視化され、根拠にもとづいた送客ができます。確度の高い見込顧客を送客することで、マーケティング部門への信頼を高めることが可能となります。
CRM/SFA統合機能により部門間の連携がスムーズになる
マーケティング部門と営業部門が互いに連携を図るには、システム上の連携も重要です。マーケティングが使用するMAツールと、営業で使用するCRM/SFAツールを連携させることで、顧客情報が紐づけられると、営業は担当顧客の情報を成約前にさかのぼって閲覧することができ、マーケターも成約後の顧客情報を継続して把握することができます。
また、「この顧客に対し、誰が何をしているか」といった対応履歴を共有することができるので、部門間の連携がとりやすくなります。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003341-why-marketing-automation
MAツールとCRMツールやSFAツールの違い
MAツールは、マーケティング施策を自動化、省力化することで、効率的に見込顧客の獲得から育成までを行い、営業担当が見込顧客を既存顧客化するうえで非常に効果的です。そのため、主にマーケティング部門で活用されています。
一方、隣接する業務領域を受け持つツールとして、顧客管理に特化したCRMツールや営業支援を目的としたSFAツールなどが存在します。MAとこれらのツールの違いについて理解しておきましょう。
CRMツールとMAツールの違い
CRMツールは、顧客情報を管理し、自社の従業員やサービスとの接点を記録するアプリケーションです。主に、下記の情報が記録されます。
<CRMツールが主に記録する情報>
- 顧客の属性情報(名前、住所、電話番号、メールアドレス等)
- 顧客との接触情報(購買した製品やサービスの情報、会員登録情報)
- 自社の担当者の対応履歴や収集した情報(営業の訪問履歴、コールセンターの対応履歴等)
こうした顧客に関する情報が担当者ごとにバラバラに管理されていると、活用の幅が限られてしまいます。そこで、CRMツールで顧客情報を一元管理し、必要な部署や従業員に共有することで、顧客満足度やLTVの向上、効率的なオペレーションの実現などに役立てます。
MAツールも顧客情報を管理するため、CRMツールと重複する部分がありますが、異なる特性を持っています。CRMツールは顧客の属性データを蓄積し、管理することに特化している一方で、MAツールは人的な活動をサポートし、効率化することに特長があります。また、既存顧客だけでなく、潜在顧客、見込顧客もすべて管理できる、というのが大きな特長です。またMAツールは、顧客の行動情報を収集し、自動化された施策の実施や社内アラートの配信などを行うことで、営業の前段階から後段階まで幅広く活用されます。
SFAツールとMAツールの違い
SFAは営業活動の支援を目的とした概念およびシステムで、CRMの一部として扱うこともあります。主に、下記のような機能を持っています。
<SFAツールの主な機能>
- 顧客情報管理(企業名、部門名、役職等)
- 営業活動管理(活動記録、To Do、スケジュール、ファイル共有)
- データ管理(レポート機能、ダッシュボード機能による売上、商談、活動の可視化)
各営業担当の顧客に対する営業活動や進捗状況、商談の内容、売上情報などを記録し、顧客とのミスコミュニケーションを防ぐほか、上司やメンバーと共有することで業務分担や支援、顧客へのアプローチ漏れを防止、といったことができます。また、SFAにトップセールスの営業活動を学習させることで、次にとるべき最適なアクションを提示するなど、ほかの営業担当のサポートにも活用可能です。
MAとの関係性でいえば、MAによるマーケティング活動を通じて購入意欲を高めた見込顧客に対し、営業担当がアプローチをかける段階でSFAに営業活動を記録し、案件化をサポートしていく役割分担となります。
MAが効果を発揮するビジネス
MAが効果を発揮するビジネスは、顧客の購入検討期間が長い商材や、顧客が時間をかけて商品やサービスについて調べる必要がある商材、といった定説がありました。
単価が低く、購入検討期間が短い商品やサービスでは、MAの利点である顧客ニーズを育成する必然性が、相対的に低いことが多いため、のようです。そこで、B2Bビジネス全般と、B2Cビジネスの中でも不動産のような高額商材、教育サービスや化粧品など継続利用が想定される商材、スポーツなどファンづくりが重要なサービスが、MAに向きやすい、と解釈されがちです。
しかし、最近では低単価な商材のB2Cでも、MAの活用が進んでいます。ただ、メールの一斉大量配信で構わない場合などには、低単価B2Cビジネスに特化した機能限定型MAツールもありますので、自社のビジネスモデルに合う最適なツールを選ぶことが重要です。
MAと相性が良いマーケティング施策
MAと相性が良いマーケティング施策として、コンテンツマーケティングが挙げられます。
コンテンツマーケティングとは、見込顧客が関心を持つであろうコンテンツを制作し、コンテンツを通じて顧客との関係を構築しながら、商品やサービスに目を向けてもらうためのマーケティング戦略です。
続いては、コンテンツマーケティングの特長や、MAと相性が良い理由について説明します。
コンテンツマーケティングのメリット
コンテンツを活用したマーケティング手法には、大きく分けて3つのメリットがあります。
より多くの見込顧客にアプローチすることができる
製品やサービスを直接訴求するコンテンツでは、既にその製品やサービスに関心を持っている段階でなければ、情報を受け入れてもらえません。そのため、コンテンツマーケティングでは、見込顧客の関心に寄り添った情報を提供することがしばしば行われます。そうすることで、まだ自社製品に関心がない潜在層も含めて、より幅広い顧客にリーチすることができます。
匿名ではなく、実名化された見込顧客を獲得しやすい
個人情報の入力を条件に情報提供する仕組みと組み合わせてコンテンツを提供することで、匿名の見込顧客を、直接アプローチ可能な実名化された見込顧客に変えることができます。取得した個人情報をもとにメールマーケティングを展開するなど、マーケティング活動の幅を広げることが可能です。そのためには、ダウンロードコンテンツやウェビナーなど、個人情報を入力してでも見たいと思ってもらえるコンテンツを用意しましょう。
購買プロセスに合わせた情報提供ができる
コンテンツマーケティングは、リードジェネレーションだけでなく、見込顧客の購入意欲を高めるリードナーチャリングにも効果を発揮します。見込顧客の関心の度合いや、比較検討の進捗状況に合わせたコンテンツをそれぞれ用意しておき、タイムリーに提供することができれば、見込顧客の購買プロセスを前に進めることができます。
コンテンツマーケティングの実践法については、以下の資料でご紹介しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-dg2ecm
MAツールの導入でコンテンツマーケティングが進化する
MAツールを導入することで、コンテンツマーケティングを、さらに効率化することができます。その理由は下記の3点です。
理由1: コンテンツの効果検証や改善がスムーズになる
展開するコンテンツの量やチャネルが増えるほど、効果の確認は煩雑になります。MAツールを導入すると、どのコンテンツがどのような効果を上げているのか、容易に確認することができます。効果検証がスムーズになることで、改善策の企画や実行の速度も向上します。
理由2: コンテンツの効果を高めるフォームやランディングページが簡単に作れる
コンテンツをより多くの顧客に認知させるには、魅力的なランディングページの制作が効果的です。MAツールには、ランディングページをマーケターが簡単に制作できる機能が用意されています。効果検証によって打ち出し方をスピーディーに改善し、洗練させていくことができます。
また、MAツールにはフォームの作成機能も用意されています。ダウンロードコンテンツの取得やセミナー申し込みの際の入力フォームは、欲張って多くの情報を得ようとしたことが離脱の原因になることもあります。そのため、MAツールによる効果検証と併せて、MAツールからフォームの設定を変えられることは、大きなメリットとなるでしょう。
理由3: 購買プロセスに合わせた情報提供ができる
コンテンツマーケティングのメリットとして、購買プロセスに合わせた情報提供ができることを先に説明しました。コンテンツを最適な見込顧客にタイムリーに提供するためには、MAツールの活用が効果的です。
見込顧客ごとの属性、行動、興味関心の度合いを把握することで、最適なコンテンツをメール、web広告、営業担当からの電話など、最適な方法で提供できます。
コンテンツマーケティングについては、下記の記事でより詳しく説明しています。
MAツールをスムーズに導入し、活用する方法
MAツールは、ただ導入するだけで、社内の業務システムや収益プロセスの課題、従業員の意識まで自動で変えてくれるわけではありません。MAツールを自社の収益プロセスにフィットさせ、その真価を発揮するには、組織全体を巻き込んだ変革のプロセスが必要になります。
部門の垣根を超えて話し合う場を設ける
MAツールをスムーズに導入し、活用するためには、部門の垣根を超えて話し合う場を設けることが必要です。
収益プロセスの川上であるマーケティング部門、インサイドセールス、営業、そして川下のカスタマーサービスやカスタマーサポートなどから、改善したい点を出し合い、目的を共有しましょう。
営業とマーケティングの連携のポイントについては以下の資料でも解説しています。
収益プロセスにおけるボトルネックと理想を共有する
まず、足元の課題について話し合いましょう。B2Bであれば「見込顧客の育成が弱く、営業もフォローしてくれない」「営業部門の生産性が低い」、B2Cであれば「初回購入者の大半が2回目の購入に至っていない」「会員数が頭打ち」など、収益プロセスにおける課題(ボトルネック)を洗い出します。
課題が明確に顕在化していない場合は、「どのような見込顧客が成約に結びつきやすいか」「どのような顧客はLTVが高いのか」といった情報を川上から川下まで共有し、それぞれの部門で理想的な顧客の創造のために行うべきことを考えると課題が見えてきます。
そして、それらの課題を下記のモデルにあてはめ、売上目標から逆算して定量的、定性的に捉えていきます。
自社の収益プロセスを整理、分解する
自社の収益プロセスを整理し、「認知→興味→情報収集→比較検討」など、自社に合ったフレームでステージに分解し、一連の流れを把握しましょう。そこから、MAツールの導入によって起こる変化を踏まえて、収益プロセスを再構築します。
例えば、従来型のテレアポによる新規獲得営業を行っていた営業部門では、その業務自体がなくなるかもしれません。そうした変化を踏まえたプロセスの検討が必要です。
MAツールの導入によって実現しうるマーケティング施策を想定し、ボトルネックを解決するためにできることを部署の垣根を超えて話し合います。最後に、その実現に最適なMAツールを検討していくのです。
MAツールの導入を前提とした収益プロセスを作成する
さまざまなビジネス上の課題の中から、MAツールを活用したマーケティング活動によって解決できる課題を選別し、そのプランを収益プロセスに落とし込みます。営業部門など他部門と共同で話し合い、「どのタイミングで、どのようなコミュニケーションをとるべきか」「部門間でどのような連携をとれるか」を検討しましょう。MAツール導入後の収益プロセスを踏まえ、その実現に最適なMAツールを検討していきます。
なお、MAツールを導入すると、一連の収益プロセスは大きく変容し、個々の従業員の業務にも変化が生じます。業務の変化は、決してマーケティング部門に限ったことではありません。そのため、MAツール導入前の段階で、関連する部門や経営層も含めてともに議論を重ね、MAツールの導入によって目指すべきゴールをしっかりと共有することが、後々の不調和を防ぐ上で重要です。
MA提供企業のサポートやコンサルティングサービスを活用する
MAツールの導入には、収益プロセスの変化が伴うことから、MA提供企業では、ツールの初期セットアップなどのカスタマーサポートにとどまらず、その前段階でのコンサルティングも提供しています。
例えば、アドビが提供するMAツール「Adobe Marketo Engage」では、担当のコンサルタントがこれまでの他社事例から得られたベストプラクティスをもとに、MAツールやプロセスの導入を支援します。また、MAツール導入後のマーケティング戦略立案支援や、CRMをはじめとする外部システム連携の構築支援など、幅広いサポートも可能です。
他社のマーケターとつながり、情報交換を行う
MAツールによっては、ユーザーを対象とした懇親会やオンラインコミュニティーなどを提供している場合もあります。他社のマーケターと情報交換を行うことで、自社が抱える問題が解決する場合もあるかもしれません。また、さまざまなマーケターから刺激を受けることで、モチベーションアップも期待できます。機会があれば、積極的に参加してみましょう。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003375-fine-art-b2b-marketing
MAを活用した収益プロセス
MAの概要を理解したところで、MAを活用した収益プロセスの全体像を解説します。施策の流れに沿ってご説明しますので、MAを活用した実務がイメージしやすくなるはずです。
1. MAの実践に必要なデータ
最初に、MAの実践に必要なデータを確認しておきましょう。
MAの実践に必要なデータは、顧客データと行動トランザクションデータに分けられます。MAツールを活用したマーケティング活動は、これらのデータを取得することから始まります。
顧客データ
顧客データとは、見込顧客の氏名、社名、役職、電話番号、メールアドレスなどのデータを指します。
行動トランザクションデータ
行動トランザクションデータとは、見込顧客のwebサイトの閲覧履歴、イベントの参加履歴、キャンペーンへの反応履歴のほか、会員登録や名刺交換などの最初の接点、購入履歴、来店履歴など、顧客の行動に関するデータを指します。
2. リードジェネレーション(見込顧客の獲得)
リードジェネレーションとは、見込顧客を獲得する取り組みのことです。
従来型の新規獲得営業で行われてきた、飛び込み営業やテレアポなどの営業手段は、現代では通用しづらくなっています。わざわざ対面時間を取って営業担当から説明を受けずとも、その製品やサービスに関する情報はインターネットにあふれており、必要であれば自分で調べることができるからです。そうした中で生まれた、旧来の営業戦略とは異なる新たな新規営業の取り組みが、リードジェネレーションです。
自社サイトやランディングページに誘導した匿名の来訪者に対し、魅力的なコンテンツやイベントで個人情報を提供してもらい、見込顧客として獲得します。
主なマーケティング手法としては、下記の5つが挙げられます。
デジタル広告
デジタル広告には、純広告、検索連動型広告、SNS広告、ディスプレイ広告など、さまざまな種類があります。いずれの広告もリードジェネレーションにおいて、自社サイトやランディングページに誘導する最初のきっかけとなりえます。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングをリード情報の獲得に活用する場合、個人情報の提供を条件に、コンテンツを開示する、という手法がとられます。コンテンツを制作するコストはかかりますが、自社の製品やサービスに関心の高い見込顧客を実名化して獲得しやすいだけでなく、その後も質の高いコンテンツを提供し続けることで、エンゲージメントを効果的に高めることが可能です。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-dg2ecm
イベント開催
イベント開催は、製品やサービスの情報を広く多くの見込顧客へと発信でき、認知のきっかけになります。また、リアルでの対面なら、名刺交換で顧客情報を得るだけでなく、会話を通じて関係性を築くことも可能です。オンラインで開催するウェビナーでは、参加申し込みの際にリード情報を獲得することができるだけでなく、視聴状況、関連資料の閲覧状況なども把握できるため、きめ細かなフォローアップができます。イベントには、外部の展示会や自社カンファレンス(内覧会)、セミナーなどがあります。
ソーシャルメディアマーケティング
SNSを情報の発信や収集に活用するマーケティング活動を、ソーシャルメディアマーケティングと呼びます。FacebookやInstagram、Twitterなどで自社アカウントを開設し、企業のブランド向上や商品の認知度や好感度を高めるための情報発信の場として活用します。
SNSは、情報収集の場にもなる、マーケターにとって重要なチャネルです。口コミなどの定性的なデータと、「いいね」数やリツイート数などの定量的なデータの両方を取得することができます。
ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングとは、他者を介さずに直接ターゲットとコミュニケーションを図る手法です。代表的なものは、電話やメール、DMです。また、自社サイトのチャット機能なども含まれます。
MAツールでは、見込顧客の属性や行動で条件設定を行い、最適なメールを配信することができます。セミナー参加者への定期的なメール配信や、ヘルプのページを閲覧した既存顧客に様子を伺うトリガーメールを配信することも可能です。
また、電話はMAとは相容れないように思えますが、アポイント獲得を目的としたテレアポではなく、メールアドレスや課題感などのヒアリングを目的とすれば、リードジェネレーションとして効果的な手段となりえます。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003340-ma-basic-lead-acquisition
3. リードナーチャリング(見込顧客の育成)
リードナーチャリングとは、見込顧客の育成を目的とした取り組みを指します。獲得した見込顧客のうち、その時点ですぐに製品やサービスを購入検討する可能性のある熱の高い見込顧客(ホットリード)の割合は、全体のおよそ10%といわれています。
また、25%は競合企業や求職者によるリサーチのため、興味は持っているが検討には至らない見込顧客(コールドリード)は、全体のおよそ65%となります。この65%のコールドリードに対し、中長期的な情報提供によって関係を維持し、関心を高め、購入の可能性が高いホットリードに育成していくことを、リードナーチャリングといいます。
リードナーチャリングを行うためには、取得した個人情報を活用したメールマーケティングや、顧客属性に適したコンテンツの配信といった施策が有効です。MAツールは、最適なタイミングで最適なチャネルを用いたマーケティング活動を支援します。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003372-dg-lead-nurturing
4. リードクオリフィケーション、リードスコアリング(見込顧客の選別)
リードクオリフィケーションとは、見込顧客の選別という意味です。まず、見込顧客の購入意欲や関心の度合いをスコアリングし、ステージで分類します。そして、一定の受注確度のあるスコアとステージに達した見込顧客に対し、営業担当者からアプローチするかどうかを選別するのがリードクオリフィケーションです。リードスコアリングと呼ばれる場合もあります。
5. リードのリサイクル
リサイクルとは、受注に至らなかった見込顧客に対し、改めて興味関心を引き出すマーケティング活動を指します。MAツールを活用した収益プロセスにおいても、最終的な受注率が100%になることはありません。新規獲得したリードのうち、すぐに商談に至る顧客は全体の10%程度しかないといわれています。
また、25%のリードは、パートナー企業や学生、競合であるなど、将来的にも購買に至らない層です。つまり、残りの65%のリードは、「将来的に購買の可能性はあるが、今すぐではない」顧客ということです。
例えばB2Bでは、担当者レベルでは高い購入意欲を持っていたものの、商談を進めた結果、社内稟議が通らずに失注してしまう場合もあります。担当者は、次年度の再稟議を検討していたとしても、そのアクションは営業担当者がこまめにコミュニケーションをとらなければわかりません。
MAツールでは、受注に至らなかった見込顧客に対しても、継続的にエンゲージメントし、行動を把握することで、再び自社サイトの閲覧頻度が高まっている、といった兆候をつかむことができます。また、そのほかの理由で失注してしまった見込顧客にも継続的な情報提供を行い、関係性や興味関心を維持することが可能です。
MAを活用した成功事例
最後に、MAを活用した成功事例をご紹介します。アドビが提供するAdobe Marketo Engageを導入した企業に、成果や成功のポイントを教えていただきました。
B2BビジネスにMAを活用した成功事例
まずは、B2BビジネスにMAを活用した成功事例をご紹介します。B2Bビジネスは、以前からMAが活用されている得意分野で、多くの成功事例が存在します。
コクヨ株式会社:セミナー集客数3倍を実現
ステーショナリーやオフィス用品のリーディングカンパニーであるコクヨ株式会社では、B2Bのオフィス家具やオフィスデザインなどを手掛けるファニチャー関連事業において、営業効率の改善を図るために、Adobe Marketo Engageを導入。
ブラックボックスとなっていた見込顧客の購入検討フェーズを可視化し、先手の営業体制を構築したことで、資料請求率/新規顧客数/案件化数のすべてで10%アップを実現しました。セミナーの集客数は、3倍に伸びています。
B2CビジネスにMAを活用した成功事例
次に、B2CビジネスにMAを活用した成功事例をご紹介します。「MA=B2Bビジネス」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、MAはB2Cビジネスでも大きな効果を発揮します。
株式会社パソナ:転職成功数が昨年対比170%に
人材紹介サービスを展開する株式会社パソナでは、売り手市場によって求職者の新規獲得が困難になる状況を打破するため、求職者へのリテンション強化を目的に、Adobe Marketo Engageを導入。
すぐには転職活動を行う予定のない求職者に対する長期のフォローをAdobe Marketo Engageで自動化し、意識の変化に応じたアプローチを行いました。その結果、登録から1ヵ月以上経過した求職者との面談設定率が、前年対比150%を達成。面談から3ヵ月以上経過したケースの転職成功数は、昨年対比170%を実現しました。
株式会社ビープラウド:新規有料化会員120%を達成
ITシステム開発事業、プログラミング教育事業を展開する株式会社ビープラウドでは、プログラム言語のオンライン学習サービスの認知度アップを図るため、Adobe Marketo Engageを導入。
専任の営業職がおらず、見込顧客獲得の仕掛けが皆無だった状況から、Adobe Marketo Engageによって見込顧客獲得と育成のマーケティング体制を構築し、新規有料化会員120%を達成しました。
MAを活用して、マーケティング活動の効率化を
顧客とのコミュニケーションチャネルが多様化、複雑化した今、見込顧客の獲得や育成のためには、One to Oneコミュニケーションが欠かせません。そのためには、これまでブラックボックスとなっていた見込顧客の行動を視覚化し、興味関心の度合いを見極めることで、最適なマーケティング施策を展開する必要があります。
それを実現する方法論がMAであり、それを具現化したMAツールです。MAツールを導入すれば、エンゲージメントによって見込顧客のニーズ創出を図るだけでなく、マーケティング活動を自動化、省力化、効率化し、マーケターに施策を改善する余力を生み出します。より洗練されたマーケティング活動を展開することで、企業や製品やサービスの認知を向上させ、営業部門の受注率を高め、収益を向上させることが可能となります。
しかしMAツールは、導入すればすぐに効果が出ると断言できるものではありません。MAツールが真価を発揮するためには、部門の壁を超え、経営層を含む組織全体で最適な収益プロセスを見つけ、解決すべき課題を見定め、共通のゴールを目指す必要があります。また、業種やビジネスモデル、解決すべき課題に合わせて、最適なMAツールを選択することが重要です。
数あるMAツールの中でも、アドビが提供するMA製品「Adobe Marketo Engage」は、B2B、B2Cや企業規模を問わず、あらゆる規模や業種の企業で幅広く採用され、数多くのマーケターの信頼を得ています。
MAツールによってマーケターの業務を自動化、省力化し、顧客との関係構築と売上向上を支援する方法についてもっと深く知りたい方は、ぜひ下記の入門ガイドをご覧ください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
次のステップ
MA分野のリーダーであるAdobe Marketo Engageについてより詳しく知りたい場合は、アドビにお問い合わせください。