マーケティングアトリビューションガイド
マーケティングアトリビューションとは、コンバージョンや売上に対する貢献度をマーケティングの顧客接点に割り当て、最も効果的に機能している顧客接点とチャネルを特定し、それに応じてリソースを配分することです。
このガイドの内容:
- マーケティングアトリビューションとは?
- マーケティングアトリビューションが重要な理由
- マーケティングアトリビューションモデル
- マーケティングアトリビューションモデルの選択
- マーケティングアトリビューション戦略
- マーケティングアトリビューションモデルの確認頻度
- マーケティングアトリビューションモデルの運用難易度
- マーケティングアトリビューションの課題
- マーケティングアトリビューションを始めるには
マーケティングアトリビューションとは?
マーケティングアトリビューションとは、どのインタラクションが顧客の購入に影響を与えたかを判断するプロセスのことです。これにより、顧客が製品にたどり着いた経路がわかります。
マーケターは、マーケティングアトリビューションの情報によって、最もコンバージョンを促進するキャンペーンやチャネルを特定できます。製品をどうやって知ったか質問され、それに回答したことがある人は、マーケティングアトリビューションに参加し、協力したことがあります。
マーケティング部門は、よりコンバージョンの高い顧客にリーチするためのキャンペーンのターゲティングや、追加購入を目的とした既存顧客のターゲティングなどを、マーケティングアトリビューションを利用して行うことができます。
マーケティングアトリビューションは、最初のリードの認定からコンバージョンに至るまで、セールスファネルのあらゆる段階において、マーケティング部門とセールス部門のデータを整合させるのに役立ちます。
マーケティングアトリビューションが重要な理由
マーケティングアトリビューションは、マーケティング部門に様々な利点をもたらします。
- 将来のパーソナライゼーションの機会: それぞれのコンバージョンの背後にある要因を把握することで、マーケティング活動や営業行動の将来的な効果が高まるようにパーソナライズできます。
- ROIの向上: マーケティング活動の投資回収率(ROI)を最大化するには、どのチャネルが最も高いコンバージョン率を実現しているのか把握することが重要です。マーケティングアトリビューションはその情報を明らかにします。
- 製品の改善: 顧客が企業のブランドと製品にどのようにアプローチしているかを把握することで、顧客が求めている機能や価値についての情報を得ることができます。このインサイトがあれば、顧客のニーズに沿うように製品を改善することができます。
- マーケティング価値の正当化: マーケティングアトリビューションは、マーケティング予算について、関係者の承認を得て正当化するのに役立ちます。例えば、CEOから、購買のほとんどがオンラインで行われているのになぜ看板広告に10万ドルも費やすのかと尋ねられたら、看板広告が効果的であることを、マーケティングアトリビューションのデータで証明することができます。
マーケティングアトリビューションモデル
マーケティングアトリビューションには、主に次の2つのモデルがあります。
- シングルソースモデル:シンプルなモデルであり、コンバージョンに最も影響力のあるバイヤーズジャーニーの顧客接点をひとつだけ特定することに重点を置いています。シングルソースモデルでは、貢献度をただひとつのチャネルまたは顧客接点に割り当てられることを前提としています。
- マルチソースモデル:より複雑なモデルであり、複数の顧客接点の相対的な影響力を測定します。
アトリビューションモデルの効果は、モデルがビジネスニーズに適合している場合に最も高くなります。例えば、ファネル上部でのマーケティングコンバージョンのような単一の顧客接点を追跡するのであれば、シングルソースのアトリビューションモデルが適しています。
これら2つのモデルには様々なバリエーションがあり、それぞれに固有のメリット、デメリット、最適なユースケースが存在します。
シングルソースマーケティングアトリビューションモデル
以下に示す各種のシングルソースアトリビューションモデルでは、バイヤーズジャーニーにおける特定のマーケティング接点に貢献度を割り当てます。
ファーストタッチモデル
ファーストタッチモデルでは、顧客は最初のマーケティングアセットの影響でコンバージョンに至ったと考えます。そして、他チャネルでのインタラクションがあるかどうかに関係なく、この顧客接点にすべての貢献度を割り当てます。
- メリット:ファーストタッチモデルでは、新規顧客の注意を引いたマーケティング手法が明らかになるため、ファネル上部の購入者を把握したい場合に最適です。
- デメリット:ファーストタッチモデルでは、初回接点後の顧客インタラクションを考慮できないため、マーケターが他のチャネルを検討する際にバイアスがかかる可能性があります。例えば、このモデルですべての貢献度を特定のチャネルに割り当てても、そのチャネルではセールスコンバージョンには至らず、webサイトへの訪問にしかつながらない場合があります。
ラストタッチモデル
ラストタッチモデルでは、顧客が購入直前に経験したインタラクションだけが影響しているとみなし、それ以前のインタラクションは考慮しません。このモデルでは、顧客は最後のマーケティングアセットの影響でコンバージョンに至ったと考え、それまでのメッセージングにかかわらず、この最終接点にすべての貢献度を割り当てます。このモデルは、ラストクリックアトリビューションとも呼ばれます。
- メリット:ラストタッチモデルは、顧客が他チャネルに触れている場合でも、その行動のきっかけになった接点を知りたい場合に役立ちます。
- デメリット:ラストタッチモデルでは、最終接触前の顧客インタラクションを考慮しないため、最終的な結果に対するこうしたチャネルの影響を知ることができません。
マルチソースマーケティングアトリビューションモデル
マルチタッチアトリビューションモデルのねらいは、購入者を対象とした顧客接点やチャネルのそれぞれに適切な価値を割り当てることです。こうしたモデルは、単一の接点ではなくカスタマージャーニー上のすべての接点に価値を割り当てるため、精度が高いと考えられています。
アトリビューションモデルが抱える課題のひとつとして、各チャネルの貢献度を正確に把握できない場合があることが挙げられます。口コミやブランドエクイティなどのオフラインソースは、その影響度を計算できないからです。
こうした課題を踏まえたうえで、マルチタッチアトリビューションモデルでは、様々な方法で各要素を統合します。
線形マーケティングアトリビューション
線形アトリビューションは、購買の促進に重要なあらゆる顧客接点を特定し、それぞれに同量の重みを割り当てることを目的とした、シンプルなマルチソースアトリビューションモデルです。しかし、いくつかのインタラクションがほかのものよりも重要であったとしても、それを明らかにすることはできません。
ポジションベースマーケティングアトリビューション
このモデルでは、コンバージョンの貢献度の40%を最初の顧客接点に割り当て、さらに40%をコンバージョン直前の顧客接点に割り当てます。残りの20%はほかの顧客接点に割り振られます。ただし、ファーストタッチとコンバージョン前のタッチが最も重要であることが前提となります。
W字型マーケティングアトリビューション
W字型アトリビューションモデルでは、ファーストタッチ、リード創出タッチ、機会創出タッチに、それぞれ貢献度30%を割り当てます。一般的に、これらの顧客接点が顧客に対して最も影響力を持つからです。ただし、このモデルでは、販売機会の創出後に生じた顧客接点にほとんど重きを置きません。
減衰(タイムディケイ)マーケティングアトリビューション
このモデルは、コンバージョンに最も近い場所で発生した顧客接点に最大の貢献度を割り当てます。このモデルは計算が簡単で、接点が多数ある場合にも対応できます。ただし、欠点もあります。リードジェネレーションやその他のファネル上部のマーケティング活動が過小評価される可能性があることです。
マーケティングアトリビューションモデルの選択
上記で説明したマーケティングアトリビューションモデルは、手法ではなく、ガイドラインだと考えてください。ニーズに合わせて、独自のカスタムアルゴリズムを使用して変更できます。
自社に最適なモデルは、コンバージョンまでに通常何回の顧客接点があるか、そして各顧客接点がセールスファネルにどのように分布しているかによって決まります。
顧客がコンバージョンするまでに数回しか関与しないのであれば、シンプルなシングルソースモデルが有効かもしれません。ファネルの後半のマーケティング活動に最も多く投資するのであれば、ファネルの後半で発生する複数の顧客接点を測定できるモデルを選びましょう。
推奨されるマーケティングアトリビューションモデル
アドビは、できるだけ多くの種類のアトリビューションモデルを提供することを第一に考えています。一種類のモデルを押し付けるのではなく、マーケティング戦略に最適なアトリビューションの種類を選択していただきたいからです。必要なあらゆる情報を提供するマーケティングアトリビューションモデルはありません。選ぶべきモデルは、自社のユースケースとユーザーのニーズによって決まります。
例えば、デジタルアナリストとチャネルマーケターが、マーケティングについて特定のタイプの質問に答えることを求められているとしましょう。この場合のユースケースは、アトリビューションを利用して、そうした課題に対応するためのデータを収集することです。業務部門のユースケースでは、アトリビューションでメディア支出を最適化する方法を決定します。B2B企業のユースケースでは、セールスサイクルが長いため、アカウントベースのアトリビューションが適しています。
アトリビューションモデルを選ぶ際に考慮すべき変数
マーケティングアトリビューションモデルを選択する際に重要なことは次の通りです。
- 販売サイクル
- オフラインチャネルとオンラインチャネルのどちらが優勢か
- 使用しているソフトウェア
それぞれのバイヤージャーニーには独自性があるので、使用するモデルを決める際には自社の典型的な販売サイクルが重要性を持ちます。特定の業界では、典型的な顧客接点の数がほかの業界の最大2倍になることがあります。そのため、自身の業界がこれに当てはまるのであれば、シングルタッチアトリビューションモデルは実用的ではないかもしれません。
販売サイクルが90日以上続く場合、ファーストタッチアトリビューションモデルではファネルの上部のキャンペーンを全くピックアップできない可能性があります。
複数の顧客接点が同程度に重要な企業では、各顧客接点に均等に重み付けする線形アトリビューションモデルが最適かもしれません。顧客接点によって予算がかなり異なる場合(会議を主催する場合など)には、意思決定の重要性を把握できるモデルがよいでしょう。これは多くの場合、W字型アトリビューションモデルになります。
オフラインとオンラインのインタラクションがどの程度あるかによっても違いが出てきます。オフラインでのプレゼンスが高い企業は、トラッキングのギャップがある場合(例:キャンペーンコードで店頭での購入とテレビCMをリンクさせるケース)、回避策が必要もしれません。
ソフトウェアも影響します。例えば、Google Analyticsを時間減衰モデルに使用するとします。この場合の半減期は7日間であるため、コンバージョンの7日前に発生した顧客接点の貢献度は、コンバージョン当日のインタラクションの半分になります。したがって、ニーズに対応できない可能性があります。
マーケティングアトリビューション戦略
マーケティングアトリビューションの開発にあたっては、よくある間違いを避けるために、ベストプラクティスに従うことが重要です。
ひとつの有用な戦略は、どの営業活動やマーケティング活動が、どの収益創出イベントにつながったかを決定するプロセスを自動化および体系化できるマーケティングツールを利用することです。
マーケティングツールは、マーケティングチャネルを売上に結びつける際の当て推量を排除します。また、マーケティングツールを活用することで、マーケティングアトリビューション活動の拡張性が高まり、実施しているキャンペーンの数に関係なく、最も関連性の高い顧客接点を把握できるようになります。
マーケティングアトリビューションデータの測定とレポーティングの設定に時間をかけます。次のようなマーケティングチャネルが売上の創出にリンクされていることを確認します。
- オンライン広告
- オンラインセミナー
- カンファレンス
また、単一のカスタマージャーニーにおけるオンラインとオフラインの両方のマーケティングチャネルの影響を把握できるような、オムニチャネルマーケティングアトリビューション戦略を開発する必要もあります。
通常、顧客は、オンライン広告を閲覧する一方で、展示会で営業担当者と話すなど、オンラインとオフラインの両方の場面で関与していることを考えると、オンラインだけ、あるいはオフラインだけの顧客接点を追跡しても、効果的なマーケティングアトリビューションにはなりません。
さらに、新規リードだけでなく、すでにセールスファネルにいるリードについても、顧客接点の影響を追跡するようにしてください。SQLはまだマーケティング活動の影響を受けることが多く、ファネルの後半で発生する顧客接点はコンバージョンにとって重要です。
マーケティングアトリビューションモデルの確認頻度
経験から言うと、最低でも四半期ごとにアトリビューションモデルを確認して適切な調整を行うことをお勧めします。定期的にメンテナンスを行うことで、新しいタイプのマーケティングの選択肢や、マーケティング戦略の変更を考慮に入れることができます。
マーケティングアトリビューションモデルの運用難易度
マーケティングアトリビューションモデルの運用は、マーケターであれば難しくありません。データの処理には若干の知識が必要となりますが、マーケティングアトリビューションモデルの大部分は、マーケターが予算の配分方法を理解するために設計されています。業界では、アトリビューションをより使いやすいものする取り組みが進んでいます。アドビはで、アトリビューションを使いやすく、学びやすいものにするための大きな一歩を既に踏み出しています。
マーケティングアトリビューションの課題
マーケティングアトリビューションの大きな課題は、簡単に操作できてしまうことです。予算を減らしたくないと考える人たちが、自分たちの業務を実際よりも影響があるように見せる目的で、アトリビューションモデルを実行することが可能です。
このような事態に対処するためには、アトリビューションモデルに対して一定のガバナンスを設定して、チームや部門間の争いを避け、費用を無駄にしないようにすることが重要です。ガバナンスを特定のチームに割り当て、自社が採用するアトリビューションモデルの種類や焦点を当てる部分を決定しておくべきです。
マーケティングアトリビューションを始めるには
マーケティングアトリビューションは、マーケティング活動が報われるために不可欠です。マーケティングアトリビューション分析を自動化するソフトウェアツールは、プロセスを信頼性の高い効率的なものにするために不可欠です。
Adobe Analyticsは、マーケティングキャンペーンの成果を向上するための優れたビジネスインテリジェンスツールです。Adobe Analyticsでは、AI(人工知能)、マシンラーニング(機械学習)、予測分析を活用して、カスタマージャーニーのあらゆるデジタル接点からのデータを組み合わせて分析することができます。
シングルタッチとマルチタッチの両方のマーケティングチャネルのデータ収集プロセスが合理化されており、使いやすいドラッグ&ドロップのインターフェイスで次のことを行うことができます。
- マーケティングアトリビューションレポートの構築
- テンプレートにもとづいた複数の異なるマーケティングチャンネルの定義
- 売上とマーケティング活動をリンクさせる自動化されたインサイトの取得
製品デモまたは動画で、Adobe Analyticsがマーケティングアトリビューションにどのように役立つかをご覧ください。