注文管理システム(OMS)とは?概要と導入方法を解説
多くの企業は、注文を把握するための適切な管理システムを選定するのに苦慮しています。注文管理システム(OMS)を導入すれば、注文管理とフルフィルメントを自動化し、適切なデータをもとに、コマースに関する喫緊の課題をすばやく解決できます。
最適なOMSの選定と導入は困難に思えるかもしれませんが、ビジネスの持続的な成功に不可欠です。この記事では、OMSの概要、利点、導入方法を包括的に解説します。
主な内容:
OMSとは?
OMSとは、小売企業やディストリビューターが、コスト効率の高い方法で注文の管理、販売、フルフィルメントをおこなえるよう支援するソフトウェアです。オンラインとオフラインのあらゆるセールスチャネルをまたいで、注文を一元管理できます。
スプレッドシートを利用した非効率で時代遅れのプロセスとは異なり、OMSは、注文管理のあらゆる段階を多角的に対応し、販売から在庫、フルフィルメントに至るまで包括的に管理できます。
通常、OMSには次のような機能が搭載されています。
- 顧客データベース: あらゆるチャネルで顧客一人ひとりの連絡先情報と注文履歴を収集します
- セールスチャネル: 実店舗だけでなく、Amazon、Walmart、eBayなどのオンラインプラットフォームでの販売もサポートします
- サプライヤー: 複数のサプライヤーから商品を調達する場合、それらのサプライヤーのフルフィルメントプロセスを一元管理できます
- 会計: 注文データを会計ソリューションと統合し、財務報告と税務処理を簡素化します
OMSの最終的な目的は、注文プロセスをエンドツーエンドで合理化することです。正確かつ迅速な注文プロセスを提供できるかどうかが、顧客満足度を左右します。そのため、OMSのようなオムニチャネルツールを導入することが、これまで以上に重要になっています。
OMSの仕組み
OMSを導入するために、注文の処理方法を変更する必要はありません。優れたOMSは、既存の注文管理プロセスに組み込むことができます。通常、OMSは6つの手順に従ってビジネスを合理化します。
1.在庫状況の把握
過剰仕入れや在庫切れは、顧客体験に悪影響を与えます。OMSなら、常に適切な在庫量を維持し、正確な納期回答(ATP)を実現できます。これにより、倉庫、実店舗、サードパーティのサプライヤーをまたいで、適切な在庫を確保できます。
OMSを活用すれば、自社に最適なATPを計算し、在庫をより効率的に管理しながら生産能力を最適化できます。
2.注文の処理
OMSを導入すれば、受注から決済処理、注文確認メールの配信に至るまで、数百件もの注文を自動的に処理し、時間を節約できます。
これは簡単に思えるかもしれませんが、複数のコマースプラットフォームや実店舗で販売している場合、注文処理はより複雑になります。OMSなら、チャネルをまたいであらゆる顧客情報を集約し、いつでもどこでも必要なときに顧客データにアクセスできます。
3.注文フルフィルメントの自動化
顧客がOMSを通じて注文すると、商品のピッキング、梱包、出荷といった、一連の注文処理プロセスが自動的に開始されます。
購入から配送に至るまで、単一基盤で注文状況を一貫して追跡できます。注文を最寄りの倉庫に割り当て、配送スケジュールとコストを削減することもできます。倉庫から商品を出荷すると、OMSは追跡番号を記載した出荷メールを顧客に自動送信します。
4.チャネルごとに在庫状況を追跡
多くの企業は、複数のチャネルを通じて商品を販売しています。OMSなら、各チャネルの在庫量を最適化し、さまざまなプラットフォームで商品を容易に販売できます。
この段階では、OMSを通じてビジネスに関するデータを収集し、他社の分析をおこないます。例えば、場所やチャネルごとに売れ筋商品を特定し、需要の変動をより詳細に把握できます。
多くのOMSは、在庫状況を予測し、在庫切れを防ぐための対策を提案できます。これは、主導によるデータ分析では不可能です。また、OMSを活用すれば、あらゆるチャネルの在庫情報を自動的に更新し、適切な在庫量をタイミングよく補充できます。
5.リバースロジスティクスへの対応
リバースロジスティクスとは、返品や返金など、消費者から生産者へと向かう物流のことを指します。多くの企業は返品を避けたいと考えていますが、オンラインショッピング体験の一部として、返品する顧客は増加しています。2021年のデジタルコマースにおける返品率は16.6%で、2020年から6%増加しました。
最適なOMSを導入すれば、返品や返金を自動化し、大規模なリバースロジスティクスを容易に管理できます。まず、顧客に速やかに返金し、最も低コストで効率的な返品方法を自動的に選出します。続いて、返品ラベルと追跡番号を生成し、それらの情報を顧客に自動送信します。
OMSを活用すれば、顧客はオンラインで購入した商品を実店舗で返品したり、逆に実店舗で購入した商品を、宅配便の集荷で返品したりすることができます。これにより、従来の注文フルフィルメント手法では不可能だった、真のオムニチャネル体験を実現できます。
6.会計データの管理と共有
OMSは、顧客体験の透明性を向上し、バックエンド管理を効率化できます。例えば、OMSとQuickBooksなどの会計ソリューションを統合し、注文データを自動的に共有できます。
これにより、データを何度も入力する必要がなくなり、作業時間と会計エラーを削減できます。また、請求書、注文書、買掛帳、売掛帳を自動的に作成できます。複雑な在庫データと販売データを一元管理することで、売上と利益率をより詳細に把握できるようになります。
OMSの利点
顧客は、利用するチャネルにかかわらず、シームレスなショッピング体験を期待しています。優れた注文管理は、こうしたオムニチャネル環境の価値を最大限に引き出すのに役立ちます。複数のチャネルを利用する顧客は、ひとつのチャネルを利用する顧客に比べて、購入額が3倍高いため、あらゆるチャネルの注文体験を合理化すると、大きな成長につながる可能性があります。
- ここでは、OMSの主な利点をいくつか紹介します。
- 大規模な在庫調達: OMSは、実店舗や倉庫から顧客に商品を配送するための、最も効率的かつ低コストな方法を特定できます。また、顧客がどこで商品を購入できるのかをリアルタイムで把握できるようにします。例えば、The Home Depotなどの大手コマース企業では、実店舗とオンラインストアの在庫状況、入荷時期、価格などの情報を提供しています
- 在庫状況の把握: 複数のプラットフォームで商品を販売している場合、チャネル全体で在庫状況を把握することは容易ではありません。OMSを利用すれば、単一の基盤から分析データ、KPI、レポートに容易にアクセスできます
- チャネル全体で注文フルフィルメントを迅速化: 手作業によるフルフィルメントは時間がかかり、エラーが発生する可能性が高くなります。OMSなら、フルフィルメントプロセスを自動化し、真のオムニチャネル体験を実現できます
- 注文の正確な追跡: 不正確な注文処理は、顧客体験に悪影響を及ぼし、コストの増大につながります。OMSを利用すれば、セールスチャネル全体で注文と在庫を照合し、常に適切な商品と数量を出荷できます
- カスタマーサービスの効率化: 顧客は、ソーシャルメディア、コマース、実店舗を問わず、常に優れたカスタマーサービスが提供されることを期待しています。OMSを利用すれば、カスタマーサービスを一元管理できるため、顧客の期待に応え、一貫したサポートを提供できます。出荷メールの送信、顧客とサポート担当者のやり取り、返品手続きを、単一の基盤で管理できます
- 会計プロセスの迅速化: 決済、請求書の作成、財務データの伝送を自動化することで、より正確な会計情報を容易に入手できるようになります。OMSを利用すれば、あらゆる注文の決済プロセスを追跡し、適切なタイミングで全額支払われているかどうかを確認できます。また、財務データを会計ソリューションと自動的に共有してエラーを低減し、売上に関する詳細なインサイトを獲得できます
- セルフサービスの強化: OMSを利用すれば、顧客自身で管理できる範囲を拡大できます。顧客は、カスタマーサービスに問い合わせることなく注文、注文状況の確認、在庫情報の検索を実行できます。これにより、顧客はショッピング体験をより詳細に管理できるようになります。さらに、カスタマーサービス担当者は、より複雑な問題への対応に専念できるようになります
OMSの種類
OMSは、基本的な機能は共通しているものの、ビジネスニーズに応じてさまざまな種類があります。一般的に、スタンドアロン/エンタープライズ、オンプレミス/クラウドに分類されます。
スタンドアロンOMSとエンタープライズOMSの比較
最適なOMSを選定する際は、まず、スタンドアロン版とエンタープライズ版のどちらを導入するのかを決定する必要があります。
スタンドアロンOMSは、カスタマーサービス、セールス、会計などの社内システムと連携せず、単一のツールとして機能します。OMSの導入目的が注文管理のみで、請求処理、マーケティング、カスタマーサービスと連携しない場合に最適です。また、高度な機能を備えたエンタープライズソリューションを必要としない、中小規模の企業に推奨されます。
一方、エンタープライズOMSは、会計、マーケティング、サプライチェーン、セールス、カスタマーサービスなど、さまざまな社内システムと統合できます。注文管理を含む社内プロセスを包括的に自動化したい場合に適しています。例えば、請求書の作成、電子メールの配信、カスタマーサービスのチケット発行を自動化できます。また、エンタープライズOMSでは、膨大なビジネスデータを詳細に分析し、そのインサイトをもとにレポートを作成することもできます。
オンプレミスOMSとクラウドOMSの比較
スタンドアロンとエンタープライズのどちらを導入するのかを決定したら、オンプレミスとクラウドのどちらが最適なのかを判断する必要があります。
オンプレミスOMSでは、システムとそのデータセンターをオンサイトで管理できます。これには多くのリソースが必要ですが、十分な人材とハードウェアの予算を確保できる場合は、より詳細な管理が可能になります。オンプレミスOMSは、より多くのリソースを有する大規模な企業や、厳格なセキュリティ要件とコンプライアンス要件に対応する必要がある企業に最適です。
一方、クラウドOMSは低コストで管理が容易なため、導入する企業が増えています。クラウドOMSは、クラウド上で運用するため、インターネットに接続すれば、どこからでもアクセスできます。通常、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)サブスクリプションの従量課金制です。サードパーティベンダーがクラウドOMSを管理するため、時間とコストを削減できます。
OMSの選定方法
ビジネスのニーズや目標は、企業ごとに異なります。自社のニーズに最適なOMSを選定することが重要です。ここでは、OMSの選定手順を解説します。
- ビジネス要件の評価: まず、社内で最も支援が必要な領域を把握しましょう。最初にニーズを評価することで、OMSを通じて主要な課題を確実に解決できます。例えば、注文フルフィルメントを強化したい場合は、スタンドアロンOMSが最適である可能性が高いです。一方、新しいセールスチャネルの開拓や、顧客とのコミュニケーションの維持に苦慮している場合は、カスタマーサービス機能を備えた、クラウドベースのエンタープライズOMSを採用すべきでしょう
- 目標の設定: 目標を設定することで、OMSの導入が成功したかどうかを判断できます。SMARTの法則に従うことで、配送コストの削減、利益率の向上、ショッピング体験の迅速化など、具体的で実現可能な目標を設定できます
- 提案依頼書(RFP)の作成: RFPを作成し、自社の予算、必須機能、導入スケジュールなどをベンダーに伝えます
- ベンダーの選定: RFPに返答してくれたベンダーの中から、自社に最適なものを選定します。ベンダーの提案が、自社の要件をすべて網羅しているかどうかを確認しましょう。ベンダーを選定したら、スムーズな導入を実現するために、システムとデータを統合する方法を検討します
OMSのまとめ
デジタルコマースは、かつてないほど複雑化しています。OMSを導入すれば、オムニチャネルのセールス環境を最大限に活用できます。まずは、最適なOMSを選定しましょう。
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