検索エンジンマーケティング
検索エンジンマーケティング(SEM (Search engine marketing) = 検索エンジンマーケティング)とは、検索結果ページの上部に表示される有料広告を活用して、顧客の行動とエンゲージメントを促進することです。
ポイント
現在、検索エンジンマーケティングは通常、有料広告のみを指し、検索エンジン最適化は無料の検索エンジンマーケティング施策を指します。
検索エンジンマーケティングが重要なのは、検索エンジンで製品を検索するほとんどの顧客は購入する準備が整っているからです。
検索エンジンマーケティングでは、ロイヤルティの高い顧客をターゲットにしたり、ブランド認知度を高めたりできます。
検索エンジンマーケティングは、カスタマージャーニーにおけるラストタッチにはなりませんが、顧客をコンバージョンに導くうえで不可欠な要素です。
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検索エンジンマーケティングに関する様々な疑問に、Austin Meiselが回答します。Austinは、アドビの企業トレーニングチームに所属し、Adobe Advertising Cloudを使用している顧客の検索連動型広告、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)、クリエイティブな取り組みに関するトレーニングを提供しています。アドビにおける6年間のキャリアを通して、顧客が検索連動型広告キャンペーンを管理するのを支援し、Adobe Advertising Cloudを利用してROIを改善するのを支援してきました。
もくじ
- 検索エンジンマーケティングと検索エンジン最適化の違いは何ですか?
- 企業はSEMとSEOを併用していますか?
- 検索エンジンマーケティングキャンペーンを開始するプロセスは、どのようなものですか?
- 検索エンジンごとに戦略を変える必要はありますか?
- AI(人工知能)と自動化によって、SEMはどのように進歩しましたか?
- SEMは、企業のマーケティング戦略全体の中でどの程度重要ですか?
- SEMの効果を高めるにはどうすればよいですか?
- ターゲットに設定するのは個々の顧客ですか?それとも顧客セグメントですか?
- SEMでは、企業はどのような課題に直面しますか?
- 今後、SEMはどうなっていくのでしょうか?
検索エンジンマーケティングと検索エンジン最適化の違いは何ですか?
従来、検索エンジンマーケティング(SEM)は、有料広告とオーガニック検索結果の両方を含め、検索エンジンの結果ページをターゲットに実施されるあらゆるマーケティングのことを指していました。ここ数年で、SEMは特にクリック課金型広告のことを指すようになり、オーガニック検索を利用したマーケティングは検索エンジン最適化(SEO)と呼ばれるようになりました。
SEMとSEOでは、手法は異なるものの、質の高いwebトラフィックをサイトに誘導するという目標は同じです。SEMでは、特定の検索語句をターゲットに設定し、迅速かつ効果的に広告費を支払って広告を配信できます。これにより、最も有望度の高いユーザーに的確なタイミングで広告を配信します。SEOは、関連性の高い検索語句をwebページ内に含めて品質スコアを徐々に上げ、オーガニック検索結果での存在感を高めます。
SEOは、予算が少なく、費用対効果の高い方法が求められる場合に最適です。難点は、即座に成果が現れるわけではないので、比較的長い時間が必要ということです。webサイトをチェックして調整を加え、待つ必要があります。
一方、SEMはすぐに顧客にリーチできます。広告費を支払うことで、検索エンジンの特定の結果ページにサイトを表示できます。例えば、髪留めリボンを販売しているwebサイトの場合は、広告費を支払うことで、「髪留め」や「ヘアクリップ」といった語句の検索結果ページに広告を表示できます。
企業はSEMとSEOを併用していますか?
古いタイプの企業では、どちらか一方だけを使用している場合もあります。しかし今日の市場では、併用しても害はなく、互いにメリットがあるという認識が広がっています。効果的にSEOをおこなっている場合は、手の届かない範囲をSEMでカバーすることができます。
SEMでは、別のキーワードを試し、新しい顧客が検索している可能性がある別の領域を見つけ出すことができます。そうした領域を見つけ、新規顧客をコンバージョンに導くことができたら、そうした情報をSEOにも活かして、引き続きSEOを拡大させることができます。
検索エンジンマーケティングキャンペーンを開始するプロセスは、どのようなものですか?
検索エンジンマーケティングキャンペーンを開始する前に最も重要なポイントは、なぜ広告を掲載するのか、顧客に働きかけることでどのような目標を達成したいのかを明確にすることです。顧客を行動に導くことや、ブランド認知度を高めることなどが目標として考えられます。
検索エンジンマーケティングキャンペーンについて考察する際の主なポイントはふたつです。ひとつ目は場所です。検索エンジンマーケティングでは、広告を配信できる範囲に限りがあります。広告を掲載できる場所は、Google、Bing、Yahooのみです。
ふたつ目のポイントは、クリック1回あたりにどの程度の料金を支払えるかです。パフォーマンスを見て、どの程度マーケティング予算を割くのかを決める必要があります。
検索エンジンマーケティングキャンペーンの戦略として最も一般的なのは、ブランドロイヤルティが高い顧客をターゲットに設定する戦略と、ブランド認知度を高める戦略のふたつです。前者では、既に何らかの反応を示し、新たな製品やサービスについての情報を求めていると考えられる顧客に広告を配信します。後者では、広く検索しているものの、特定の企業やブランドはまだ決めていない顧客に広告を配信します。
例えば、Nikeの検索エンジンマーケティングキャンペーンでは、具体的な検索語句と一般的な検索語句の両方を広告のターゲットに設定しました。「Nikeのシューズ」などの具体的な語句の検索結果ページに表示する広告は、ブランドに対するロイヤルティが高い顧客をターゲットにしています。一方、「運動靴」などの語句の検索結果ページに表示する広告は、Nikeの製品を知らない顧客をターゲットにしています。
検索エンジンごとに戦略を変える必要はありますか?
各検索エンジンにはいくつかの違いがあります。Googleには、規模が最も大きくトラフィックが最も多いという傾向があります。Bingはそれほどトラフィックが多くなく、若干費用が抑えめです。各検索エンジンの質にも若干の差異があります。
広告の種類に関しては、どの検索エンジンでも似通っていますが、配信される広告のビジュアルや画像と、テキスト広告の表示方法にわずかな違いがあります。企業は、広告に修正を加えるかどうかを判断する際に、これらの違いを考慮に入れる場合もあります。
AI(人工知能)と自動化によって、SEMはどのように進歩しましたか?
現在では、広告の入札単価が自動調節される最適化プラットフォームを使用する企業が増加しています。こうした企業は、基本的に過去のデータを参考にして入札単価を決定します。アドビのアルゴリズムでは、データにもとづいて、オーディエンスをより効率的にターゲティングする方法と広告費を最適化する方法を判断し、コンバージョンの可能性の高い顧客に広告を配信します。
現在でも、独自の手法で検索エンジンマーケティングキャンペーンを管理している企業もありますが、そのためには多くの手作業が必要になります。一部の企業では、1,000個から1万個のキーワードをターゲットに有料広告を配信する企業もあります。手作業では、それらのキーワードのパフォーマンスを確認し、調整するために、非常に多くの時間を費やします。
最適化の観点から見ると、自動プラットフォームを利用すれば、入札単価の調整に関する判断をAIやマシンラーニング(機械学習)に任せることができます。こうしたプラットフォームの中には、1時間ごとに1万個のキーワードを個別に分析し、どのように連携しているのかを確認し、大幅な調整をおこなうものもあります。
SEMは、企業のマーケティング戦略全体の中でどの程度重要ですか?
現在のデジタル時代では、ほとんどの場合、顧客はオンライン検索を介して企業の情報を確認します。また、ある製品を検索している顧客のほとんどは、それを購入する準備が整っています。顧客が何かを購入する可能性が高い瞬間を狙ってリーチできるので、効果的なSEM戦略とSEO戦略を策定することが非常に重要です。
優れた戦略を実行することができれば、適切で効果的なコンテンツをすばやく提供し、質の高いトラフィックをサイトに誘導できます。また、実店舗や外回りの営業では獲得できない顧客にリーチすることもできます。
SEMの効果を高めるにはどうすればよいですか?
企業ができることは主に3つです。ひとつ目は、リーチするターゲットオーディエンスについて、より詳細に理解することです。ふたつ目は、追跡作業を精査することです。どの程度詳細な顧客情報を取得しているか、顧客のクリック以外の行動も把握しているかなどを確認します。
3つ目は、そうしたすべての行動を基準に最適化をおこない、予算を効率的に配分することです。予算を割く対象を、サイトを訪問したことがある顧客へのリターゲティングにするのか、離脱する前にオンラインの買い物かごにアイテムを追加した顧客へのリターゲティングにするのかなどを考えます。また、顧客が目標とする行動をとっているかどうかを確認します。顧客をニュースレターへの登録や、特定の製品の購入に導くことが目標の場合は、そうした行動をとっているかを確認します。広告関連のユーザー行動を追跡するだけでは不十分です。カスタマージャーニー全体で顧客を追跡する必要があります。
ターゲットに設定するのは個々の顧客ですか?それとも顧客セグメントですか?
その両方と言えるかもしれません。一般的にはグループに重点を置きます。その方がわずかに容易なためです。しかし、企業が特定の顧客をターゲットに設定するケースもあります。例えば、買い物かごを放棄した顧客などです。こうした顧客も、買い物かごを放棄した顧客というグループの一部ですが、「スポーツやアウトドアのアクティビティに興味がある30~35歳の女性」といった大規模なセグメントではなく、サイト上での特定の行動に関係しているので、非常に具体的です。
SEMでは、企業はどのような課題に直面しますか?
SEMの価値は過小評価される場合があります。一般的に、企業はラストタッチがコンバージョンや行動の要因になったとみなします。これは顧客をコンバージョンに導いた最後のチャネルです。多くの場合、検索連動型広告が貢献したとみなされるのは、顧客が検索結果ページの広告をクリックしてから直接コンバージョンに至った場合のみです。
しかし、検索エンジンマーケティングが、ラストタッチになるのが稀なことは明らかです。検索連動型広告をクリックし、webサイトにアクセスしてから、何も購入しない顧客がいたとします。それから1週間後、ターゲットとなったその顧客には、サイトを再訪して製品を購入するよう促す電子メールが届きます。こうした顧客は、その段階では購入しなくても、翌日にディスプレイ広告を見て、最終的に購入を決断する場合があります。その場合コンバージョンに貢献したとみなされるのはディスプレイ広告のみなので、企業は検索連動型広告の価値を把握できないことがあります。
しかし、最初の検索連動型広告がなければ、顧客の情報を把握して電子メールを送信したり、ディスプレイ広告を表示したりすることはできなかったはずです。つまり、マーケティングチャネルを包括的に分析できれば、各チャネルの相関関係をより詳細に把握できます。
長い間、貢献度分析と成功指標は分断されており、電子メールのマーケターは電子メールの状況のみを見て、ディスプレイ広告のマーケターはディスプレイ広告のみを見ていました。しかし現在では、どのような影響があるのかを把握するために、他のチャネルも分析するようになっています。
コンバージョン以外の指標を追跡しないという問題もあります。ここ2~3年で、ファネルの中間の指標を把握したいと考えている企業が増加しています。これは、顧客が広告をクリックした後にとる行動に関する指標になります。長い間、クリックやコンバージョンはすべて同一と考えられてきました、
しかし分析が導入され、広告のクリックとコンバージョンの中間に位置するサイトでの他の行動にも企業が目を向け始めると、顧客の行動について、より的確に把握できるようになりました。コンバージョンに至るまでに長い時間がかかる顧客を、より効果的に把握できます。
考えられるその他の課題としては、検索連動型広告の予算を最も効果的に配分する方法を把握することも挙げられます。企業は、個々のキーワードを最大限に活用する方法だけでなく、複数のキーワードがどのように連携して機能するのかも考える必要があります。様々なキーワードの限界利益や成果を比較することが重要です。
今後、SEMはどうなっていくのでしょうか?
アドビは現在、様々な種類のマーケティングチャネルをまたいで、顧客体験を効果的に統合する方法を研究しています。顧客のオンラインエクスペリエンスとオフラインや実店舗でのエクスペリエンスを統合する方法や、検索連動型広告をオンラインの行動やオフラインの行動と結び付ける方法を探っています。
検索連動型広告では、将来的に、より的確かつ詳細に特定のオーディエンスをターゲットに設定できるようになるでしょう。既に、検索連動型広告で得たリストをリタゲーティングに活用していますが、今後は1stパーティのデータをもとに、より効果的にユーザーやその行動を特定し、よりきめ細かくターゲットに設定できるようになることが予想されます。広告の効果がさらに高まるでしょう。