マーケティングの基本中の基本といわれている顧客分析。顧客分析手法のひとつである「RFM分析」は、有効性が高く多くの企業が取り入れています。
この記事では、RFM分析の概要やメリット/デメリットのほか、RFM分析のやり方、活用方法などもまとめて解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
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02-01-2025
マーケティングの基本中の基本といわれている顧客分析。顧客分析手法のひとつである「RFM分析」は、有効性が高く多くの企業が取り入れています。
この記事では、RFM分析の概要やメリット/デメリットのほか、RFM分析のやり方、活用方法などもまとめて解説するので、ぜひ参考にしてください。
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RFM分析とは、顧客の行動に関する以下の3つの指標により、顧客をグループ分けする分析手法のことです。RFM分析という名称は、各指標の頭文字に由来します。
顧客のグループごとに効果的なマーケティング施策を実施し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化するのがRFM分析の目的です。
続いては、3つの指標について詳しく見ていきましょう。
Recencyは、顧客が最後に製品を購入したのはいつかを抽出し、その時期によってグループ分けするための指標です。最終購入日からの経過時間が短い顧客のほうが、何年も前に購入した顧客よりも優良な顧客だと考えます。
Frequencyは、製品の購入頻度からグループ分けするための指標です。購入頻度が高い顧客ほど、優良な顧客だと考えます。
Frequencyの値からは、以下のような傾向がわかるでしょう。
Monetaryは、購買履歴から購買金額の総額を計算して、グループ分けするための指標です。累積購入金額が大きいほど優良な顧客だと考えます。
なお、Recency、Frequency、Monetaryのいずれも、どれくらいの期間の購買行動を対象とするかは、製品やサービスの特性などによって決定します。
ここでは、RFM分析を行うメリットを紹介します。
先述のとおり、RFM分析では「最終購入日」「購入頻度」「累積購入金額」の3つの顧客データを使用します。
いずれも購買履歴から把握できるものであり、個人情報などの詳細なデータは必ずしも求められません。手元にある情報が限られていても、すぐに分析に着手できる点がメリットです。
顧客をグループ分けすることで、顧客の求めるタイミングやニーズに合わせたマーケティング施策を実施できるので、施策の効果が出やすくなります。
例えば、休眠顧客に対して休眠の理由を探るためにアンケートを送付し、アンケート結果をもとに対策を取るといった具合です。
グループごとにマーケティング施策を変えることは、効率化にもつながります。
例えば、Recency、Frequency、Monetaryのすべての値が低い顧客は、ほかの顧客と同様にアプローチをしても効果が出ない可能性があります。よって、マーケティング施策の対象から外すという選択も可能です。
浮いた分の時間や費用、人的リソースは、製品の購入見込みが高い顧客へのマーケティング施策に充てられます。
RFM分析は、5つの手順で進められます。以下で、順に見ていきましょう。
RFM分析を始める前に、必ずやっておかなければいけないのは、現状の把握と仮説を立てることです。例えば、ある製品の売上が伸びていない場合はデータを集め「なぜ売上が伸びないのか」をマーケティングチームで議論します。
ここで立てた仮説が「何を分析するか」「3つの指標のうちのどこに注目するか」を考えるもとになるので、極めて重要なプロセスです。
続いては、立てた仮説を検証するために、必要なデータを収集します。
例えば、売上が伸びていない原因が「リピーターが少ない」ことにあり、ターゲット設定が適切でないという仮説を立てたとします。この場合は、購入頻度や累積購入金額に加え、顧客の年齢、性別、職業などの属性データを確認する必要があるでしょう。
一方で「DMを送った顧客の購入金額が低かった」ことが原因だと考えられるなら、過去10回のDMから製品を購入した顧客の平均購入額データなどを取得する必要があります。
データの収集が完了したら、エクセルやRFM分析ツールを使って、顧客のグループ分けをします。
まずは、Recency、Frequency、Monetaryの3つの指標について分布を確認したうえで、最初に立てた仮説を考慮して、いくつかのランクに分けます。
ランク付けの仕方は、分布状況や分析の目的、扱う商材、BtoBビジネスかBtoCビジネスかなどによって違ってくるので、現状に合わせて考えましょう。例えば、次のようになります。
Recency、Frequency、Monetaryの項目ごとにランク付けをしたら、どこからどこまでを1グループとするのかを決めていきましょう。
上記の表では、顧客を5x5x5=125通りに分類できます。あまりに数が多いと分析に時間や人的コストがかかりすぎてしまうので、目的に合わせて3~5つのグループに集約することが一般的です。
例えば、以下のような5つのグループに分けるのもよいでしょう。
最初に立案した仮説と、前項の分析結果を照らし合わせ、グループごとにマーケティング施策を企画します。
仮説と分析結果が合っていれば、仮説にもとづいた施策の実施が有効だと考えます。仮説と分析結果にずれが生じていれば、新たな仮説を立てて分析をやり直すのが基本です。
ただし、仮説と分析結果が合っているように見えても、さらに別の原因が潜んでいることも考えられるので、このプロセスは何度も繰り返しましょう。
最終的に行うべきマーケティング施策が決定したら、実行に移します。前項の5つのグループに分けた場合、一例として考えられるのは以下のような施策です。
このとき、単発のマーケティング施策をただ繰り返すのではなく、顧客をブランドのファンや優良/ロイヤル顧客へと育成する視点を忘れないようにしましょう。
RFM分析は、一度行えば終わりではありません。顧客の購買行動を短期間で見るのか、長期間で見るのかでも結果が変わります。
また、データは日々更新されるので、それに合わせてマーケティング施策を調整していく必要があります。課題の発見からマーケティング施策の企画、実行、効果検証に至るまでのPDCAサイクルを回していくことが重要です。
なお、顧客ごとに紐付いたデータを蓄積しておくと、RFM分析の精度が向上します。顧客データの収集や管理を効率的に行えるツールとして、次の2つが挙げられます。
RFMは有効性の高い顧客分析手法ですが、次のような課題が存在します。
RFM分析の指標は「最終購入日」「購入頻度」「累積購入金額」であり、顧客が何を購入したかは考慮しません。
そのため、子どもの成長に応じて商材をすすめるなど、顧客の細かな状況に合わせた提案はRFM分析だけでは難しいでしょう。
RFM分析は、ある一時点における顧客分析なので、継続性がありません。例えば、季節性の高い製品のRFM分析を行う場合、分析のタイミングによって、最終購入日や購入頻度にかなりの差が出ます。
また、ベビー用品など、子どもの成長とともに購入頻度が変わる商材を扱う場合も注意が必要です。
第1子が生まれたときに定期的に購入しており、成長によって買わなくなった顧客が、第2子の誕生により再度購入し始めたというケースもあるでしょう。この場合、RFM分析上は安定顧客→離反顧客→安定顧客と位置付けられてしまいます。
RFM分析は、繰り返し購入する製品やサービスに適した分析手法です。以下のような、購入サイクルが長い製品やサービスには向いていません。
このような製品やサービスに対しては、最終購入日時や購入頻度ではなく、メンテナンスサービスの利用状況や関連商品の購入履歴などを把握し、分析する必要があります。
RFM分析に新しい指標を追加したり、そのほかの分析手法を組み合わせたりすることで、RFM分析の弱点を補うことができます。
ここでは、大きく分けて3つのパターンを紹介するので、目的に合わせて取り入れてみましょう。
RFM分析の3つの指標にアイテム(Item)を組み合わせた「MRFI(マーフィー)分析」や、カテゴリ(Category)を組み合わせた「RFMC分析」があります。
RFM分析によって最適化されたグループを、購入商品情報に応じてさらに分けることで、より細かい顧客分類やマーケティング施策の実施が可能です。例えば、MRFI分析では下記のように分類します。
購入商品や顧客属性の代わりに、エリア情報をRFM分析に組み合わせることもできます。これが、RFM分析にディスタンス(Distance)の指標を加えた「RFM-D分析」です。
RFM-D分析では、コンビニエンス性を求める近距離圏の顧客と、独自性を求めて来店する長距離圏の顧客を分け、それぞれのニーズに合ったマーケティング施策を実行します。
近距離圏の顧客のリピート率上昇と、長距離圏の顧客の増加を目指せることから、特に店舗などのマーケティング戦略を考えるうえで有効です。
デシル分析とは、一定期間中の購入金額の高い順に顧客を10グループに分け、各グループの特性を分析する手法です。例えば、70人の顧客がいたら、購入金額が最も高い7人が「デシル1」、次の7人が「デシル2」と分類されます。
デシル分析単体ではRFM分析よりも精度が低いので、簡単な傾向を知りたいときに用いるのが一般的です。一方、RFM分析とデシル分析を組み合わせることで、RFM分析で見落としていた収益性の高い顧客を掘り起こすこともできます。
例えば、RFM分析で休眠顧客と判断されたグループのなかから、比較的購入金額が高い顧客をデシル分析で見つけることで、優先してアプローチする対象を見極められるでしょう。
RFM分析もその応用となる分析手法も、最終目的はLTVの最大化です。
分析結果にもとづく単発のマーケティング施策を繰り返しているだけでは、RFM分析を効果的に活用しているとはいえません。優良/ロイヤル顧客やブランドのファンが増えて初めて、RFM分析が意味を成します。
現状はRFMそれぞれの値が低くても、将来優良顧客やロイヤル顧客になる可能性のあるグループを見つけ、顧客を育成することが重要です。
具体的には、カスタマージャーニーにもとづいたシナリオを作成し、顧客のロイヤリティを上げる提案を行うのが有効でしょう。
カスタマージャーニーとは、ペルソナ(想定する顧客像)の行動、思考、感情の動きを時系列で見える化したものです。カスタマージャーニーにもとづいてシナリオを作成することで顧客の理解が深まり、より長期的な視点でLTVの最大化に取り組めるようになります。
Anatomy of an Experience Mapの画像を加工して作成
顧客に合わせたマーケティング施策をきめ細かく行い、顧客育成を進めるには、顧客ごとに紐付いたデータの蓄積と、そのデータを活用する仕組みが必要になります。
そこで活用したいのが、顧客情報管理に特化したCRMツールと、新規顧客の獲得や見込み顧客の育成などのマーケティング施策をサポートするMAツールです。
MAツールを使えば、社内に蓄積された顧客情報を一元管理できるうえ、人力では実施が難しいシナリオを自動化でき、スムーズな分析とマーケティング施策の実施が可能です。
直接RFM分析を行うことはできませんが、データ収集から効果検証まで同じツールで行えるので、余計な手間やコストを抱えずに済みます。
また、MAツール提供会社のほとんどは、顧客企業がMAツールをスムーズに導入、活用できるように、導入サポートやコンサルティングサービスなどを提供しています。
これらのサービスを活用することで、従来のシステムからMAツールへの移行もスムーズになり、より効率的な運用が期待できるでしょう。
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顧客エンゲージメントを強化するためにMAツールへの乗り換えを検討している方や、現在利用しているMAツールに不満がある方は、以下のガイドをぜひ参考にしてください。
RFM分析は、Recency、Frequency、Monetaryの3つの指標を用いて、顧客をグループ分けする分析手法です。グループごとに効果的なマーケティング施策を講じることで、LTVの最大化を図ることができます。
RFM分析を最大限に活かすには、顧客一人ひとりに紐付くデータと、きめ細かなマーケティング施策を実施するリソースが欠かせません。データの一元管理やシナリオ設定によってマーケティング施策の大部分を自動化できる、MAツールが有効です。
この機会に、Adobe Marketo Engageの活用を検討してはいかがでしょうか。
(公開日:2022/7/1)