アトリビューション分析とは?メリットや基本モデル、効果的なやり方を紹介
2011年頃から話題になった「アトリビューション分析」は、現在では普及フェーズに入っています。しかし、アトリビューション分析を十分に理解できていないマーケティング担当者も、未だ多いのではないでしょうか。
この記事では、アトリビューション分析の概要やメリット、基本モデル、効果的な進め方などを解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
アトリビューション分析とは?

アトリビューション(Attribution)は、日本語で「帰属」という意味を持つ言葉です。その意味から派生し、マーケティング分野におけるアトリビューション分析とは、広告の貢献度を分析する手法のことを指します。
具体的には、成果に直結した接点だけを評価するのではなく、顧客がコンバージョン(CV)に至る過程で、間接的に影響した接点の貢献度合いを明らかにするものです。そのため、アトリビューション分析は「間接効果の分析」とも呼ばれています。
また、アトリビューション分析の結果をもとに、マーケティング予算やリソースの組み替えをすることを「アトリビューションマネジメント」といいます。
【関連記事】
アトリビューション分析が効果を発揮するビジネス
アトリビューション分析は、以下のようなビジネスにおいて、特に効果を発揮します。
- 取り扱う商材の価格が高く、見てすぐに購入する人が少ない
- 最初の接点からCVに至るまでの期間が長い
- 最初の接点からCVに至るまでに複数のチャネルを経由する
一般的なBtoBビジネスはこれらの特徴に該当するので、アトリビューション分析が適しているといえるでしょう。BtoCビジネスでは、住宅や車、金融商品などを取り扱うケースが該当します。
アトリビューション分析の具体例
当社へのお問い合わせを例に、アトリビューション分析をより詳しく見ていきましょう。
下の図は、アドビのMA(Marketing Automation)ツール「Adobe Marketo Engage」の導入を検討する企業様から、当社にお問い合わせいただく経路を簡略化したものです。
CVのきっかけになった直接の接点はリスティング広告ですが、そこに至るまでに展示会、業界メディア、Facebookの情報にも触れています。
アトリビューション分析の考え方が広まる前は、左の図のように展示会や業界メディアなどは評価に入れず、リスティング広告だけを成果に貢献した接点として評価していました。
しかし実際には、MAツールの導入を検討している方が、Adobe Marketo Engageの広告や当社のwebサイトだけを見て、いきなり購入を申し込むケースはほとんどありません。
多くの場合、まず展示会や業界メディアの記事でAdobe Marketo Engageを知り、SNSで当社のセミナーや導入事例に何度も触れるというプロセスがあります。そして、ニーズが高まった段階で初めて問い合わせをするのです。
リスティング広告だけでなく、展示会や業界メディアなどの接点も最終的な問い合わせに影響を与えており、その影響がなければCVには至らなかったと考えられるでしょう。
アトリビューション分析では、こうした「間接的に影響した接点」を取りこぼさずに分析していきます。
アトリビューション分析を行うメリット
ここでは、アトリビューション分析を行うおもなメリットを紹介します。
予算やリソースの配分の最適化
アトリビューション分析を行わないと、CVに近い接点ばかりが「成果に貢献している」とみなされ、予算やリソースが偏って配分されてしまいます。
上の図は、顧客の検討段階ごとに有効な情報コンテンツをマッピングしたものです。
アトリビューション分析を行わない場合、右側寄りのフェーズにある「顧客事例」「価格表」「選ばれる理由」といったwebコンテンツにリソースを集中させることになります。
しかし、例えば「顧客事例」や「価格表」のコンテンツを無限に作成することはできず、早々にマーケティング施策の限界が訪れてしまうでしょう。
一方で、アトリビューション分析をすれば、左側寄りのフェーズにある「ブログ」「コンセプト動画」など、CVから遠くても成果を上げているマーケティング施策を発見できます。
これにより、予算やリソースの適切な配分が可能となり、柔軟な施策の展開にもつながります。
間接的な施策の費用対効果の明確化
アトリビューション分析の考え方を持っていない場合、成果に直結しない施策の費用対効果を説明しにくいでしょう。
その結果、成果に直結する施策ばかりを行うことになり、間接的には大きな影響を与えている施策を、気づかずにやめてしまう可能性があります。
アトリビューション分析なら、顧客がCVに至るまでの各接点の貢献度を明確に裏付けられるので、マーケティング戦略の精度を高めることが可能です。
よりよい顧客体験の提供
CVに直接貢献する施策に偏ると、製品やサービスを売り込むコミュニケーションばかりになり、顧客からの好意はだんだんと下がっていくでしょう。長い目で考えたときに、顧客からの好意を高めるマーケティング施策が必要なことはいうまでもありません。
アトリビューション分析で一連の施策の予算やリソースを最適化することは、よりよい顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を提供することにもつながります。
アトリビューション分析の5つの基本モデル
アトリビューション分析における各接点の評価方法には、5つの基本モデルがあります。
1.ラストクリックモデル(終点モデル)
ラストクリックモデル(終点モデル)とは、CVに至った最後の接点(タッチポイント)に100%の貢献度を割り振るモデルです。言い換えれば、最後に接触した広告だけが成果に貢献したと考えるモデルを指します。
そのため、ラストクリックモデルの場合は、アトリビューション分析を実施しないときと結果は変わりません。
ラストクリックモデルが適しているのは、CVを重視するキャンペーンやイベントなど、短期間で完結するマーケティングです。
2.ファーストクリックモデル(起点モデル)
ファーストクリックモデル(起点モデル)はラストクリックモデルの反対の考え方で、CVに至った経路の最初の接点に100%の貢献度を割り振るモデルです。
CVから最も離れた接点を評価するので、新しいユーザーと積極的に関わることができます。そのため、ブランドや製品の認知度向上を目的としたマーケティングでよく用いられるのが特徴です。
3.均等配分モデル(線形モデル)
均等配分モデル(線形モデル)とは、CVに至った経路のすべての接点に、均等に貢献度を割り振るモデルです。5つのモデルのなかで、最も汎用性が高いといえるでしょう。
例えば、ユーザーがCVに至るまでに5回広告と接触したのであれば、貢献度は20%ずつとなります。
検討期間が長く各接点を何度も行き来する、BtoB商材および高額商材のマーケティングに向いています。
4.減衰モデル(タイムディケイモデル)
減衰モデル(タイムディケイモデル)とは、CVに至った経路の接点のうち、CVに近いものほど高い貢献度を割り振るモデルです。
ラストクリックモデルと同様に、なるべく短期間で成果に結びつけたいマーケティングで用いられる傾向にあります。
5.接点ベースモデル(ポジションベースドモデル)
接点ベースモデル(ポジションベースドモデル)は、CVに至った経路の接点のうち、最初、途中、最後で異なる貢献度を割り振るモデルです。一般的には、最初と最後に高めの貢献度を割り振ります。
貢献度の割り振り方のとおり、CVに至る入口と出口を重視するマーケティングに向いているでしょう。
なお、アトリビューション分析のモデルについては、下記の資料でも詳しく説明しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-dg2pm
アトリビューション分析モデルの選び方
アトリビューション分析のモデルは、現在の自社の成長フェーズや戦略などを基準に選択します。
見込み顧客を多く獲得して積極的な成長を図りたいと思っている企業であるほど、基本的にはCVから遠い接点に多くの貢献度を振るモデルが向いているでしょう。具体的には、ファーストクリックモデルや接点ベースモデルが該当します。
反対に、慎重にビジネスの拡大を狙いたい場合は、CVに近い接点に多くの貢献度を振り分けるモデルを選択するのがおすすめです。具体的には、ラストクリックモデルや減衰モデルが該当します。
アトリビューション分析のやり方
アトリビューション分析をする際の具体的な手順は、以下のとおりです。
- 接点の洗い出しと仮説の立案
- 仮説に応じた分析モデルの選択
- 接点ごとの貢献率の算出
- 接点ごとのCPAの判断
- 各施策への予算の割り当て
- 仮説の検証
ここでは、各手順の概要やポイントを解説します。
1.接点の洗い出しと仮説の立案
初めに、ユーザーとの接点をすべて洗い出しましょう。
一つひとつの接点において、ユーザーがどのような経路をたどってCVに至る可能性があるかを考え、できるだけ具体的な仮説を立てます。
2.仮説に応じた分析モデルの選択
「1」で立てた仮説とビジネスモデル、現時点での事業フェーズなどをもとに、適したアトリビューション分析のモデルを選択します。
必要に応じて、貢献度の割り当てやスコアリングの調整も行いましょう。
3.接点ごとの貢献率の算出
ラストクリックCVとともに、間接貢献CVについて、アクセス解析ツールやアトリビューション分析ツールを使って把握します。
ラストクリックCVは、CVに至った最後の接点において計測されます。一方の間接貢献CVは、最後の接点を除いた接点すべてにおいて計測されるものです。
間接貢献CVをラストクリックCVで割り、接点ごとの貢献率を算出しましょう。
4.接点ごとのCPAの判断
CPA(Cost Per Acquisition/Cost Per Action:顧客獲得単価)とは、購入や商談といったCVを1件獲得するためにかかったコストのことです。コストは、広告費などマーケティング施策にかかった費用の原価で計算します。
目安にしたいCPAの基準の一つが、限界CPA(許容CPA)です。限界CPAは、売上などのCVの価値からコストを引いた数値で、限界CPAを超えると利益がなくなり赤字になってしまいます。
「3」で算出した間接貢献CVの値から、消化済みのコストと間接貢献CVで指名検索以外の限界CPAを算出します。これをもとに、接点ごとのCPAが限界CPAを超えていないか判断しましょう。
5.各施策への予算の割り当て
続いて、分析結果をもとに、適切な予算の割り当てをします。この作業は、「アロケーション」と呼ばれるものです。
アロケーションによって、重要な接点に予算を多めに配分する、効果の少ない接点の予算を削減するなど、予算を成果に合わせて見直して、効果的な配分に近づけることができます。
6.仮説の検証
最後に、実際にCVに至ったユーザーの行動を調べ、接点ごとの仮説を検証します。仮説の立案と検証を繰り返し、CV向上を目指しましょう。
アトリビューション分析の注意点
アトリビューション分析を行うにあたって、注意したいのは下記の3点です。
ビジネスによっては分析が適さないことがある
冒頭の「アトリビューション分析とは?」の章でお伝えしたとおり、アトリビューション分析はCVに至るまでの検討期間が長く、複雑な経路をたどるビジネスに向いています。
一方で、おもにBtoCのなかで以下のような特徴を持つビジネスは、アトリビューション分析をする意味があまりない点に注意しましょう。
- 取り扱う商材の価格が安い
- 購入場所やタイミングが変わっても価格に差がない
- CVに至るまでの経路がシンプルである
例えば、わざわざ比較検討せず、見てすぐに購入することが多い日用品や食料品などは、アトリビューション分析の必要性が低いといえます。
広告以外のCVも想定する
広告などの有料メディアは、数あるマーケティングチャネルのなかでも使用頻度が高いものです。
そのため、アトリビューション分析はおもに広告費の最適化に活用されてきました。現在でも、広告経由でのCVを想定してアトリビューション分析を行うケースが多くあります。
しかし、アトリビューション分析が活用できる範囲は、結果が測定でき、ユーザーの選択がたどれるビジネス領域であれば広告施策に限りません。商談や販売後のコミュニケーションにおいて、効果的なインタラクションを検討するのにも役立ちます。
特に、BtoCの検討型商材においては、広告だけでなくすべてのマーケティング施策を考慮してアトリビューション分析をしましょう。
PDCAを繰り返す
アトリビューション分析は、アロケーションして終わりにせず、必ずPDCAを回しましょう。何らかの変化があれば、再び仮説を立てて検証するサイクルを継続することが大切です。
その際には、時間をかけて突き詰めようとするのではなく、大まかな傾向をもとに短いスパンでPDCAを回すようにします。
より長期的な視点で収益改善を目指すなら、CV後のユーザーの行動も確認するとよいでしょう。リピート率や購入頻度などに注目してアトリビューション分析をすると、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上につながります。
アトリビューション分析を効果的に行うには?
アトリビューション分析を効果的に行うには、MAツールの導入や、利用中の計測ツールをMAツールと連携させる方法が有効です。
アトリビューション分析だけでは、CVに至った顧客のうち、どの顧客が商談や成約にまで至っているのかがわかりません。
Google広告やGoogleアナリティクスにも分析機能はありますが、MAツールを活用すれば、データ収集から効果検証までを同じツール上で行えるというメリットがあります。データをMAツールに蓄積することで、精度の高い分析も可能です。
また、人力では実施が難しい分析結果にもとづいたマーケティング施策も、自動化により効率的に行えます。
MAについては、下記の資料で詳しく説明しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
アドビのMAツール「Adobe Marketo Engage」
アドビが提供するMA製品「Adobe Marketo Engage」は、収益エクスプローラーによりアトリビューション分析ができます。収益エクスプローラーとは、マーケティング計画で重要となるROI(Return On Investment:投資利益率)を追跡できる機能です。
収益エクスプローラーを使うことで、個々の商談と顧客とのコミュニケーション履歴を紐づけ、どの施策やメッセージが顧客に響き、商談に影響を与えたのかを確認できます。
例えば、下記は商談金額に貢献したプログラムと、それぞれの投資対効果を洗い出した表です。
今まで見えにくかった、セミナーなどのリードナーチャリング施策の費用対効果も可視化できます。結果として、リスティング広告やバナー広告といった見込み顧客獲得施策に偏らず、リードナーチャリング施策も含めた予算やリソースの配分の最適化が可能になります。
なお、MAツール導入時は、混乱を避けて早く成果につなげるために、ツール提供会社の導入サポートサービスやコンサルティングサービスを利用するのがおすすめです。
Adobe Marketo Engageにも、初期導入支援サポートやコンサルティングサポート、有償または無償のトレーニングコースなどがあるので、ぜひご利用ください。
MAツールの導入で、より詳細なアトリビューション分析が可能に
BtoBビジネスや一部のBtoCビジネスで効果的なアトリビューション分析は、予算やリソースの配分を最適化し、マーケティング施策の成果を最大化するうえで欠かせません。
自社の成長フェーズや戦略などをもとに適したモデルを選択し、PDCAを繰り返しながら進めていきましょう。
アトリビューション分析をさらに効果的に行うには、MAツールの活用が有効です。この機会に、アトリビューション分析機能を備えた「Adobe Marketo Engage」の導入を検討してはいかがでしょうか。
(公開日:2022/7/7)